「朝鮮警戒部隊の解散を評価」
「朝鮮警戒部隊の解散を評価」
1.
防衛省は7月30日、北朝鮮の弾道ミサイル警戒のため、北海道、島根、愛媛、高知、広島の陸上自衛隊駐屯地に展開していた地対空誘導弾(PAC3)部隊に対して、所属基地への撤収を指示した。
同時に、東京・市谷の防衛省敷地内の部隊も配置を解除した。
理由は6月の朝米首脳会談で緊張状態が緩和され、突然のミサイル発射は想定しにくくなったことであり、2年前から続けてきた厳戒態勢に一区切りをつけるとした。
朝鮮が米兵の遺骨を11年ぶりに返還。局面が落ち着いてきたと判断し、部隊の撤収を決めたとしている。
朝鮮半島情勢が落ち着いてきたと判断したこと、地対空部隊の配置撤収を決めたことと言い、一定の評価をしたい。
2.
一方、同じ30日に陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の配備費用が総額で約4664億円になる見通しを明らかにした。
金額は当初想定から1基あたり約1.7倍。2023年度予定だった運用開始も、米側の事情で大幅に遅れる方向という。
朝米の対話の流れにある中での導入は、緊張緩和に逆行する。小野寺防衛相は「北朝鮮の脅威は変わっていない」と強弁、計画に固執する姿勢であるが、費用対効果の面からも導入の是非を再考すべきである。
配備候補地の秋田市と山口県萩市の住民は、北朝鮮の弾道ミサイル対応を理由に導入を急ぐ政府への反発を強めている。
また、費用などの面についても、本体部分を日米両政府間で取引する有償軍事援助(FMS)で調達するため、金額は売主の「言い値」になりやすく、さらに増える可能性がある。その時になって、巨額を投じたイージス・アショアが無用の長物になっていないか。
それにしても、同じ朝鮮を対象に、「ミサイル発射は想定しにくくなった」としたり、「まだ脅威だ」としてみたり、まったくのご都合主義で、安倍政権の防衛政策の無策ぶりがよくわかる。
3.
2018年「防衛白書」と「外交青書」には、朝鮮を、「日本と国際社会の平和と安定に対する前例なく重大で差し迫った脅威」だと記されている。また、「海洋基本計画」を改定し、中国と共に、朝鮮を脅威だとした。
このように、「朝鮮脅威」論は、国是のように掲げられている。これは、日本が長年続けてきた対朝鮮敵視政策の結果である。
安倍政権は今、不正腐敗、自然災害対策の不十分さ、貿易摩擦と外交的疎外などに陥り、それらから国民の目を逸らさせ、問題を切り抜けるために、外部からの「脅威」を切実に必要としている。これに朝鮮が利用され、日本で朝鮮「脅威」論が生み出されている。安倍政権はここに活路を見出そうとしているのである。
4.
官房長官の菅は、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備を予定している地域に行って、朝鮮の脅威を強調し、政府最大の責任は国民の安全と安定を確保することだと言っている。小野寺防衛相も同じである。
また、河野太郎外相は、ロシアとの外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)をモスクワで開いたおり、ロシア側が、米国から導入する「イージス・アショア」に懸念を表明したことに対して、「朝鮮からの脅威に対して、我が国を防衛する純粋な防御システムだ。ロシアに脅威を与えるものではない」と強調。
外交的にも、朝鮮の「脅威」を強調し、賛同を得ようとしているのだ。
安倍政権のこうした様子は、安倍氏が憲法改正にこだわり、そこに「自衛隊」を明記することへの執着によるものとも言える。
2018年8月1日 記
1.
防衛省は7月30日、北朝鮮の弾道ミサイル警戒のため、北海道、島根、愛媛、高知、広島の陸上自衛隊駐屯地に展開していた地対空誘導弾(PAC3)部隊に対して、所属基地への撤収を指示した。
同時に、東京・市谷の防衛省敷地内の部隊も配置を解除した。
理由は6月の朝米首脳会談で緊張状態が緩和され、突然のミサイル発射は想定しにくくなったことであり、2年前から続けてきた厳戒態勢に一区切りをつけるとした。
朝鮮が米兵の遺骨を11年ぶりに返還。局面が落ち着いてきたと判断し、部隊の撤収を決めたとしている。
朝鮮半島情勢が落ち着いてきたと判断したこと、地対空部隊の配置撤収を決めたことと言い、一定の評価をしたい。
2.
一方、同じ30日に陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の配備費用が総額で約4664億円になる見通しを明らかにした。
金額は当初想定から1基あたり約1.7倍。2023年度予定だった運用開始も、米側の事情で大幅に遅れる方向という。
朝米の対話の流れにある中での導入は、緊張緩和に逆行する。小野寺防衛相は「北朝鮮の脅威は変わっていない」と強弁、計画に固執する姿勢であるが、費用対効果の面からも導入の是非を再考すべきである。
配備候補地の秋田市と山口県萩市の住民は、北朝鮮の弾道ミサイル対応を理由に導入を急ぐ政府への反発を強めている。
また、費用などの面についても、本体部分を日米両政府間で取引する有償軍事援助(FMS)で調達するため、金額は売主の「言い値」になりやすく、さらに増える可能性がある。その時になって、巨額を投じたイージス・アショアが無用の長物になっていないか。
それにしても、同じ朝鮮を対象に、「ミサイル発射は想定しにくくなった」としたり、「まだ脅威だ」としてみたり、まったくのご都合主義で、安倍政権の防衛政策の無策ぶりがよくわかる。
3.
2018年「防衛白書」と「外交青書」には、朝鮮を、「日本と国際社会の平和と安定に対する前例なく重大で差し迫った脅威」だと記されている。また、「海洋基本計画」を改定し、中国と共に、朝鮮を脅威だとした。
このように、「朝鮮脅威」論は、国是のように掲げられている。これは、日本が長年続けてきた対朝鮮敵視政策の結果である。
安倍政権は今、不正腐敗、自然災害対策の不十分さ、貿易摩擦と外交的疎外などに陥り、それらから国民の目を逸らさせ、問題を切り抜けるために、外部からの「脅威」を切実に必要としている。これに朝鮮が利用され、日本で朝鮮「脅威」論が生み出されている。安倍政権はここに活路を見出そうとしているのである。
4.
官房長官の菅は、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備を予定している地域に行って、朝鮮の脅威を強調し、政府最大の責任は国民の安全と安定を確保することだと言っている。小野寺防衛相も同じである。
また、河野太郎外相は、ロシアとの外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)をモスクワで開いたおり、ロシア側が、米国から導入する「イージス・アショア」に懸念を表明したことに対して、「朝鮮からの脅威に対して、我が国を防衛する純粋な防御システムだ。ロシアに脅威を与えるものではない」と強調。
外交的にも、朝鮮の「脅威」を強調し、賛同を得ようとしているのだ。
安倍政権のこうした様子は、安倍氏が憲法改正にこだわり、そこに「自衛隊」を明記することへの執着によるものとも言える。
2018年8月1日 記