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「『核実験禁止』ではなく『核兵器禁止』を」

「『核実験禁止』ではなく『核兵器禁止』を」


 国際社会は、世界の非核化に向かって動いている。

 昨年12月、国連総会決議で設置された「核兵器のない世界」に向けた法的措置を話し合う国連作業部会は、第1回会合を2月に、第2回会合を5月に開いたのに続き、第3回(最終)会合を8月(5日~19日)に開催し、9月の国連総会に提出する報告書を採択する。

 報告書草案の「法的拘束力のある核兵器禁止文書の交渉を2017年の国連総会で開始する」ことを、大多数の国が支持しているからである。

 一方で、一部の国は国際的な安全保障環境などを理由に、「交渉は時期尚早だ」として、現行の枠組み(核実験全面禁止条約=CTBT)のままで、核兵器の段階的削減の「漸進的アプローチ」の方を支持している。

 つまり、核兵器の保有や米国の核の傘に依存している国と、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などが、現行のCTBTの早期発効や、米ロ軍縮交渉などを通じた漸進的な取り組みで、問題がないとしているのだ。

 CTBTは96年の国連総会で採択され、宇宙や地下などあらゆる空間での核爆発実験を禁止している。

 だが、発効には、潜在的な核開発能力を持つ44カ国(発効要件国)の批准が必要である。

 核保有国の9カ国と潜在的能力国の8カ国(エジプト、イランなど)が、未批准国である。(現在、署名183カ国、批准は164カ国、日本はいずれも調印している)

 このため、署名開始から20年を迎えるCTBTは、未だに発効されず、ペーパー条約のままで止まっている。

 また、CTBTは、臨界前核実験や特殊装置を使った新型の性能実験を禁止していないため、米国はこれらを繰り返し実施して、核保有大国の地位を維持し、また核恫喝政策を実行している。

 CTBTは米国にとっても、米国の核の傘にある国にとっても、NATO加盟国にとっても、都合よくできているのだ。

 ということはCTBTそのものに「世界の非核化」が実現できないという大きな限界がある。

 こうした限界を突き破るため、中南米や東南アジアの「非核兵器地帯」に加盟している10カ国(メキシコ、ブラジル、インドネシア、マレーシア、エクアドルなど)が、CTBTより厳格な「核兵器」禁止条約(法的措置)交渉の早期開始に向けて動き出した。

 その支持は確実に広がっている。

 そうした国際社会の動きに逆行するかのように、オバマ米大統領は核実験の全面禁止を求める決議案を、国連安全保障理事会に提案(9月)することを検討している。

 CTBTと同様の内容の「核実験禁止」である点で、新しい発想ではない。むしろ、核兵器禁止条約に向けた国際的な動きに抵抗し、「核兵器禁止」の流れを妨害しようとしているのではないか。

 オバマ氏個人の満足度と、米国内のCTBT批准問題を解決できない矛盾を、そのまま表現している。

 いまや世界は、単なる「核実験禁止」ではなく、「核兵器全面禁止」を主張していることを、米国も日本も深く自覚しなければならない。


                                                                    2016年8月8日 記

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愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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