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「『戦後70年の首相談話』を危惧する」

「『戦後70年の首相談話』を危惧する」


 2015年は、第2次世界大戦終結から70周年を迎える。

 世界は、少なくとも戦火を支えてきた加害・被害者各国は、様々な「記念行事」を計画している。

 「戦勝」「勝利」「終戦」「解放」「独立」「抗日勝利」など、当時の立場の違いによって冠せる名称は様々だが、70年という大きな節目を記念し、未来の平和につなげていこうとする姿勢は同じだろう。

 再び戦火を交えてはならない、戦争につながるいかなる準備もしてはならないとの決意を込めて、それぞれの国は記念集会を開催するはずだ。

 日本の場合、安倍晋三氏が首相として再登場した直後から、新たな「戦後70年の首相談話」を発表するとして、問題化してきた。

 どのような内容にするのか、なぜ、「村山談話」(95年、戦後50年)、「小泉談話」(05年、戦後60年)以外の談話を出すのかなど、基本的な立場は何も応えてこなかったからでもある。

 首相のこれまでの言動から、国の内外から談話の中身が注目され、危惧されてもきた。

 米国のオバマ政権は、未だに中国や韓国との首脳会談ができない安倍氏の政治スタンスを心配して、早くから「村山談話」や従軍慰安婦をめぐる「河野談話」の歴史認識を継承するようにと、クギをさしていた。

 安倍首相は5日の会見で、「安倍内閣としては村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」とした。

 また、翌6日の政府・与党連絡会議では、「安倍政権として、先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、アジア太平洋地域や世界のためにどのような貢献を果たすか、世界に発信できるものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく」と意気込みを語った。

 しかし、「おわび」がどのように受け継がれるのか、「先の大戦への反省」がどのような表現になるのかについては、まだよくわからない。

 表現によっては、周辺国との新たな紛争を引き起こすことになるだろう。

 その懸念が、完全に払拭されていない。

 言葉の上では、歴代内閣の立場を引き継ぎ、「未来志向」を強調し、談話づくりを有識者に検討させるなどとして、世間の風には従順に見える。

 しかし、安倍晋三氏の談話姿勢が未だに不明のため、内容を有識者に検討させる前に、自らの歴史観をはっきりと示し、国会で十分に議論する必要があるのではないか。

 村山談話では、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れたとした上で、「植民地支配とアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与え」、ここにあらためて「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」とした。

 小泉談話もまた、かつての「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して、多大な損害と苦痛を与えました」とし、「こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します」としている。

 両談話とも、アジア諸国に対して「痛切な反省と心からのお詫び」を表明し、日本の植民地支配と侵略政策を認めている。

 安倍談話の場合、このような歴史観と精神が受け継がれていくのか、米国でさえ疑問視し、折に触れてメッセージを送ってきた。

 米国務省のサキ報道官は5日(定例会見)、「これまでに村山富市元首相と河野洋平元官房長官が談話で示した謝罪が近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだったというのが我々の見解だ」と、米国の意図を明確にしている。

 中国外務省の報道局長も6日、「日本の政府と指導者が今年、侵略の歴史について外国にどのようなシグナルを送り、どのような態度を採るのかについて注目している。日本側が歴史問題についてこれまで表明してきた厳粛な態度と約束を固く守り、平和発展の道を歩むことを希望する」と発言。

 韓国の外務省報道官も6日の定例記者会見で「歴代内閣の談話を継承し、正しい歴史認識に基づいた誠実な行動をすることで、周辺国と国際社会の信頼を築いていくことを期待する」とした。

 内外とも、安倍談話に危惧を抱いている。

 それはまた安倍晋三氏のこれまでのファッショ的言動から、談話内容を疑問視しているからでもある。


                                                             2015年1月10日 記

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愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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