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「朝鮮問題へのレッスン第2部:朝鮮戦争を考える」19.国連が果たした役割

19.国連が果たした役割

 国際連合(国連、UN)は、46年4月に解散した国際連盟に代わって、第2次世界大戦後の世界秩序と平和を目的とする国際機構として発足した。

 総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、事務局などの機関からなり、その下に、多くの補助機関と専門機関がある。

 なかで、安全保障理事会(安保理)は、侵略者に対して軍事力による制裁を決定するなど、強力な権限が与えられている。

 国連の主要な任務は、国際の「平和と安全の維持」「平和への脅威に対する集団的措置」「国際問題の平和的解決と国際協力の増進」「基本的人権の尊重」などで、これらは憲章化されている。

 国際社会間の平和、安全、安定を維持していく機関であって、決して紛争を呷り、侵略者の片棒を担ぐ機構ではない。

 では、朝鮮半島の場合はどうだったのか。

 結論から言えば、国連は米国の南朝鮮占領政策を合法化する下請け機関と通り、さらに朝鮮半島全域の侵略政策(戦争)を国連の名を借りて推進する米国に力を貸した。

 その結果は、国連が朝鮮戦争の当事者となった。

 第2次世界大戦直後の、絶対的な力を誇示していた米国といえども、世界は反ファシズム戦争、植民地解放闘争、民族自主化闘争に勝利した後だけに、朝鮮半島でのあからさまな帝国主義的反共政策と軍事政策を、少しは隠蔽するという「しおらしい」姿勢も必要としていた。

 その隠れ蓑に、国連を活用した。

 国連本部がニューヨークにあり、供出金額と職員が過半数を占めていたから、そればまるで米国のもうひとつ別の機関のようになっていた。

 ポツダム宣言を無視し、米ソ共同委員会を破綻させた米国は、その本質を現して、朝鮮問題を国連に持ち込んだ。(47年10月20日)

 国連は、当時の朝鮮半島情勢には無知で、しかも朝鮮解放後に朝鮮人の意見を一度も聞かずに、米国の一方的な報告だけで、朝鮮人たちの意向に反した決定を、次々に決議する機構になっていた。

 以下、そのことを1.朝鮮半島の分断化、2.米軍参戦の法的根拠、3.間違った「侵略者」指定、4.偽証罪―の4分野に分けて、それぞれの内容を検討していく。

 1朝鮮半島分断化の罪

 国連総会は47年11月14日、米国提案の「朝鮮総選挙案」と「国連朝鮮臨時委員団設置案」を強行可決した。

 その内容は、全朝鮮での選挙(人口別の議員選出)の実施、その選挙に国際的監視団の設置であった。

 朝鮮では、選挙を希望していたのは李承晩系の右翼集団だけで、ごく少数であった。

 その本質は、米占領政策の正統化と永久化にあった。

 国連朝鮮臨時委員団は翌48年1月8日、ソウルに到着した。

 南朝鮮各地では、選挙反対のストライキや救国闘争で迎えられながらも、彼らにはそのような風景は見えなかったようだ。

 北朝鮮人民委員会からの38度線以北への立ち入り拒否声明と、米軍政と李承晩政権の意見だけを、国連小総会(2月26日)に届け、南朝鮮単独選挙実施案(選挙実施可能な地域)を可決した。

 国連におけるこの可決こそ、南北分断を固定化させて2つの政権をもたらし、朝鮮戦争を誘発させた、今に至る統一闘争への始まりとなった。

 国連機関が朝鮮半島の南北分断を決定したも同然である。

 1948年8月15日に大韓民国が成立し、同年9月9日に朝鮮民主主義人民共和国が誕生した。

 2米軍参戦の法的根拠

 国連は、朝鮮半島に2つの政権を誕生させただけではなく、さらなる罪を重ねてしまった。

 48年12月12日の第3回総会(パリ)で、韓国政府を朝鮮半島における唯一の合法政府だとして、承認してしまったのだ。

 それは多分、選挙監視役の臨時朝鮮委員団が確認した地域での選挙結果の政権、という意味合いではあったろうが、米韓の意思は違っていた。

 米韓側は、「大韓民国は国連によって賦与された正統性の故に、韓半島の全域を支配すべき唯一の合法政府だ」だと、現在でも時によっては解曲的な主張をしている。

 日韓基本条約の条文でもめたのも、この「唯一」「合法政府」の解釈であった。

 米国の場合は、朝鮮戦争に参戦する際の法的根拠としたのが、第3回国連総会での決議内容であった。

 「臨時朝鮮委員団が監視しえた朝鮮半島の部分において、有効にこれを管理し統轄しうる合法政府が樹立された」ことと、そして「朝鮮でこの種の政権としてはこれが唯一のもの」を都合良く解釈し、大韓民国を国連が認めた「政府」だとして、その政府を救出するのだとの理由付けで、朝鮮戦争に参戦した。

 国連安保理は50年6月27日、米軍の朝鮮出動を合法化する決議を採択(すでに米空軍機は日本基地から飛び立っていたから事後承認)した。

 続く7月7日、国連軍の創設を決定し、マッカーサーを司令官とする「国連軍」の編成を命じた。

 米軍を含む16カ国の「国連軍」が9月15日、仁川に上陸して朝鮮戦争を国際紛争化へと拡大してしまった。

 地域の平和を維持するとの国連がもつ機能とは裏腹に、朝鮮半島では戦争当事者となり、その戦争を拡大させ深刻化させる方向へと進めている。

 しかも、その「国連軍」が38度線を北上する直前の10月7日、第5回総会で朝鮮を統一(軍事的統一)した後の作業として、「国連朝鮮統一復興委員会」を結成する決議を採択させている。

 10月1日には一部の米軍部隊が北半分に侵入していたからか、復興委員会結成を急いだようだ。

 その決議を待っていたかのようにして10月9日、「国連軍」は正式に38度線を越えて北上していった。

 結局、この決議は「国連軍」の共和国侵攻を合法化し、なおかつ、軍事的統一の実現への道具として用意したものであった。

 3間違った「侵略者」の指定

 開戦直後の国連安保理は、38度線を南下して進撃していた朝鮮人民軍を、「侵略軍」とのレッテルを貼ることで、米軍参戦への道を開いた。

 国連はいつから、侵略の定義を新しくしたのであろうか。

 朝鮮人民軍は、南朝鮮の韓国軍からみても外国軍ではなく、逆に米軍の方が外国軍になる。当初は内戦であった。

 外国軍が内戦に介入する場合、救援を受けたい政権、若しくは軍隊からの要請が必要である。

 李承晩政権はいつ、どの機関決定で、米軍の救援を要請したのであろうか、はっきりしていない。

 安保理が共和国を「侵略者」だと認定したことで、米軍は「国連軍」の中心となって日本の基地から出動していった。

 さらに、中国人民志願軍参戦後の51年2月1日、中国を「侵略者」だと認定した。

 中国は50年9月24日と27日の2回、米軍機および艦船が中国を侵犯(東北地方)したことに対して、国連事務総長に抗議電報を送っている。

 これに対して国連事務総長は無視したままである。

 中国軍が鴨緑江を越えて朝鮮に入ったことが「侵略」だとすれば、米軍および「国連軍」が仁川から上陸したことは、侵略にならないのだろうか。

 中国軍の朝鮮参戦は、金日成政権からの要請に基づいたものである。

 安保理規定では、「侵略者に対して軍事力により制裁を決定する」としている。

 米国はこの規定を共和国や中国に当てはめようとしてきたが、それはむしろ米国自身の行為に該当している。

 4偽証罪

 開戦直後に開かれた安保理で、国連朝鮮委員会の2人(ピーチとランキン)の軍事監視員の報告によって、朝鮮人民軍を「侵略軍」と決め付けた。

 2人はともに、開戦2日前の6月23日までの3日間ほどを38度線以南で、韓国軍将官および米軍顧問官からの聞き取り情報だけを精査して、報告していた。

 従ってそれらの報告内容には、軍事前線での南北両軍の動きを、彼らが直接見たものではなく、風聞内容を都合良く加工しただけである。

 それも開戦2日前までの状況を、さも開戦当日のごとくにして報告している。

 偽証とさえ言えるものである。

 その後のムチオ報告(米韓国大使)にしても、同じく風聞に基づく報告である。

 それらの風聞報告を、米国が参戦できる都合の良い内容へと加工したものを、第1次報告・資料として国連は採用した。

 しかもソ連と中国代表が欠席している安保理であったから、会議の要件さえも満たしていなかった。

 さらに当該者の朝鮮代表を呼び、意見を聞くこともしていない、欠陥会議であった。

 以後、朝鮮問題関連を協議する国連安保理は、その欠陥会議から立ち直ることができていない。

 1年後にソ連が安保理に戻ってきたため、安保理決議では不利と考えた米国は、その場を総会または小総会に移した。

 米国は国連から「国連軍」を引き出しただけではなく、「国連臨時朝鮮委員団」|国連朝鮮委員会」「国連朝鮮統一復興委員会」(50年10月9日設置)などの組織を作り上げ、活用してきた。

 特に「朝鮮統一復興委員会」の設置では、「平和のための統一」「朝鮮全土に及ぶ安定の確保」などの欺瞞的な美辞麗句を並べ立てている。

 このような表現は、「国連軍」が38度線を北上した場合の、事後承認と共に米軍の侵略を合法化するためのものとして用意した。

 米国は国連と関連組織を通じて、朝鮮半島に深く関与している。そのうえで共和国には「武力による国土統一を企てた」と非難キャンペーンを繰り返しながら、南朝鮮の歴代政権が主張する「武力統一」を支持してきた。

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