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「不当な朝鮮中央会館売却許可決定を糺す」

「不当な朝鮮中央会館売却許可決定を糺す」


1.
 東京地方裁判所民事第21部は3月24日、朝鮮総聯の朝鮮中央会館の土地と建物に対して、マルナカホールディングス(高松市)への売却を許可したことを発表した。

 朝鮮中央会館の競売問題は、バブル経済破綻時代の朝鮮信用銀行融資絡みによって発生した問題である。

 朝鮮総聯は債務返済問題で、これまで整理回収機構(RCC)側とで、合理的な解決策の提案をし、協議を続けてきた。

 当時の日本政治は、政権が一年毎に代わる政治不安定時代であったが、総聯は、RCCと司法当局との間で誠実に交渉を重ねていた。

 その結果、680億円余の不良債権を総聯が43億円で買い取る和解策で、RCC側と合意していた。民主党の野田政権のときであった。

 それはまた今回と同じく、敗戦直後に北朝鮮で死亡した日本人遺骨問題からスタートし、日朝課長級協議が行われている時であった。

 そのことで、利権に聡い政治家たちが暗躍し、会館問題と拉致問題とがバーター取引きされるなどとの、勝手な憶測情報が流されていた。

 しかし、共和国がミサイル発射実験を行ったことで、課長級会談は延期となり、総聯とRCCとの締結調印までが延期となってしまった。

 安倍晋三政権となり、合意内容を無視したRCCは、東京地方裁判所に競売を申し立ててしまった。そのことに政治側の黒い影を感じる。


2.
 東京地方裁判所民事第21部は、朝鮮中央会館の競売の手続きに入った。

 競売は最も高い金額を提示(入札)した買い手に落札される販売方法である。

 第1位落札者に対する売却が不許可となった場合、第2位に高い金額を提示した買い手に購入資格が移ることもあるが、その場合でも、最も高い金額との差が保証金以内だということになっている。

 東京地裁は、朝鮮中央会館の不動産価格を以下のように定めていた。

 1 基礎価格   41億4466万円
 2 売却基準価格 26億6826万円
 3 最低入札価格 21億3460万8千円(2の80%)
 4 買受け保証金 5億3365万2千円(2の20%)
 
 以上、東京地裁が定めた基礎価格41億4466万円は、総聯がRCC側に提示した43億円よりも大幅に低いことになる。

 その分、債権者のRCC側は損をしたことになり、債権者たる日本国民も不利益を被ることになる。

 さて、第1回目の入札(4者が応募)は昨年3月、宗教法人最福寺(鹿児島市)が45億1900万円で落札した。

 ところが最福寺は資金調達に失敗して、購入できなかった。最福寺は、売却決定者となった直後の記者会見で、「朝鮮総聯に引き続き入居してもらい、賃貸契約を結ぶ」などと表明しており、融資を予定していた金融機関や企業から資金提供を拒否されたことには政治の力が働いていたように思う。

 ちなみに4者の競売応募のうち、2番手が34億2800万円、3番手が34億1000万円、4番手が27億1000万円での入札金額であった。


3.
 昨年10月の2回目の入札者は2社で、モンゴルのアバール・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーが50億1000万円で落札した。

 しかし、東京地裁は、アバール社が提出した書類の不備を理由に、入札を無効(1月23日)とした。

 同時に地裁は3回目の入札手続きに入るか、第2位者を決定者とするのかのどちらかを後日、決定するとした。

 3月24日、地裁は次位のマルナカを落札者と決定した。

 マルナカの買受け金額は22億1000万円であって、それは1回目4番手の27億1000万円よりも低く、全体でも最低の金額であった。

 若し、マルナカの22億1000万円で決定すれば、競売前に一時的に合意していた43億円と比べれば、約21億円ものマイナスになり、マルナカの入札金額は余りにも低い金額だということになる。
 
 債務者及び債権者双方の利益を損なっていることになる。

 
4.
 実は、マルナカには入札資格がなかったことが、2点指摘されている。

 1点目は、マルナカが入札した22億1000万円のままでは、買受けの申請をすることができないということである。

 競売に参加する際には、事前に保証金を裁判所に支払う義務がある。

 その保障金額は、裁判所が決めた売却基準価格の20%である。

 今回、東京地裁が決艇した朝鮮中央会官の土地と建物の売却標準価格は26億6826万円で、その20%は5億3365
2千円となり、その金額が保証金とされた。

 失脚した1位者の次、2位者以下が買受けできる金額は、従って1位者の買取り金額から保証金を差し引いた金額以上の入札者に限られることになる。

 今回の場合で言えば、50億1000万円から5億3365万円2千円を差し引いた金額以上で入札した者に限られるということである。

 マルナカの22億1千万円は、買受けの申請をする金額には届かず、それだけで資格がなかったのだ。

 もう1点は、マルナカが納めた保証金は、地裁がアバール社を落札者と決定した1月の段階で、すでに裁判所から還付されていたのだ。

 過去の競売関係の判例では、「納付した保証金が一度還付されている場合は、売却決定はなし得ない」としている。

 だから、競売慣例からしてもマルナカは、すでに入札資格を失っていたことになり、競売の「次順位」の資格さえ失っていたことになる。

 そのマルナカに再度入札資格を与えた東京地裁は、自らで法を犯したことになる。

 法の番人たる裁判所が違法な判断を強行する場合、それは法治国家ではない。

 その違法性、不当性を在日朝鮮人組織に振り向けようとしている力は、とうてい司法だけの判断ではあるまい。


5.
 今回の東京地裁は、競売手続きの慣例を無視した、違法行為を犯しているだけはなく、マルナカの買受けを誘導した、確信犯的な行為も加わっている。

 東京地裁は1月14日、すでに入札資格を失っていたマルナカに、1月23日の売却決定期日の通知を送っていた。(これはアバール社への売却を最終的に不許可と発表した23日の9日前である)

 入札資格を失っていることを自覚していたマルナカ側は、不審に思いつつも、その不審を正すために、通知を受け取った14日の午前、東京地裁の民事部担当書記官に電話をかけた。担当書記官は、「一般論的に言えば、貴社の入札が最高価格となることもあり得ないことではない。そういう意味でも利害関係があるということで通知している」と返答し、暗にマルナカへの売却許可が出る可能性を伝えた。

 そして、3月10日に、開札日を再度設けることを前提に、マルナカに対してすでに還付されていた入札保証金の再納付をすることを確認したうえで、翌11日に改札期日と売却決定期日を指定した。

 このような裁判所の行動は、すでに落札権を失っていたマルナカに、朝鮮中央会館を売却させようとする誘導以外のなにものでもないということになる。

 しかも入札第1位者より28億円も低い金額である。

 いま会館のある周辺では、東京オリンピック開催が決まったことで、高価格が見込まれている。それだけでもRCC側は膨大な損失を被っており、本来ならこの決定に不服を申し立てるべき立場にあったにも関わらず、何故か静かにしていることも不可解である。


6.
 高松にあるマルナカの企業性について、ジャーナリストの成田俊一氏が「週刊金曜日」の3月28日号で、次のように報告している。

 「マルナカの創業者の現会長の中山芳彦は・・・5代目の渡辺組長(山口組)時代も年間2000万円以上、間違いなく上納している」と地元高松市の有力暴力団関係者に語らしている。

 暴力団山口組への資金提供の疑いが消えない反社会的な企業、マルナカに売却誘導をした東京地裁は、二重の意味で日本社会に重大な汚点を記そうとしている。

 一つは、これまで述べてきたように法の番人が法を犯し、かつ反社会的な暴力団と関係のある企業に利益誘導をしたことである。

 もう一つは、これが最も許し難く、現政府の反朝鮮政策に加担していることである。

 朝鮮総聯は、在日朝鮮人の合法的民族権利を擁護し、朝鮮民主主義人民共和国(共和国)の海外公民団体である。

朝鮮中央会館は、彼ら在日朝鮮人の権利と利益を保障する活動拠点となっており、日朝間で国交が開かれていないため実質的に共和国の外交代表部(大使館)的役割をもっており、日本人との友好交流発展を保障していくための、公益性のある建物である。

 歴代日本政権は、反朝鮮政策、対朝鮮敵視政策を推進して、朝鮮総聯や在日朝鮮人への政治的弾圧、民族的差別と迫害を続けてきた。

 今日の朝鮮中央会館問題は、そうした日本政治の延長上で発生したものである。

 しかも、朝鮮総聯が提示した和解案で合意していた内容までを無視して、あえて競売という手段で問題化させ、その落札者決定過程での違法性、さらには反社会的活動をしている者と関係のある企業を買い受け人と決定したことなど、これらすべての事柄は、とうてい民主主義を標榜している国家がなすべき行為ではないと言える。

 北京で開かれた再開日朝局長級会談後、宋日昊朝日交渉大使は記者会見(3月31日)で朝鮮中央会館売却決定について、「朝日関係に大きな影響を与える」「朝日交渉を行う意味もない」と懸念を表明していた。

 それは共和国側のメッセージであり、在日朝鮮人たちの意思でもあったことを、安倍政権はしっかりと認識すべきである。

                                           2014年4月5日 記

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