fc2ブログ

「『日本のイメージを悪くしている』のは、果たして誰か」

「『日本のイメージを悪くしている』のは、果たして誰か」


 近年、韓国や米国地方都市で、軍慰安婦の被害を象徴する「少女像」の設置が相次いでいる。

 その少女像の撤去などを求めることを目的とした、日本の地方議員らがつくる「慰安婦像設置に抗議する全国地方議員の会」が存在している。

 その同会の訪米団(団長、松浦芳子・東京都杉並区議)の13人が1月14日、米西部カリフォルニア州ロサンゼルスのグレンデール市や、ブエナパーク市ほかを訪問した。

 最初にブエナパーク市議会を訪れ、同市議会が昨年8月、象設置提案を「国際問題に市は関与しない」として廃案にしたことを、松浦団長は「良識ある活動に感謝したい」と礼を述べた。

 少女像は、ソウルの在韓国日本大使館前にある「少女の銅像」と同じデザイン。

 次いで一行は、象が設置(市公園内に)されている同州のグレンデール市を訪問し、市関係者に「事実ではない『性奴隷』という言葉を石に刻み、慰安婦像として残すことは、将来に禍根を残す」との抗議文を手渡して、像の撤去を求めた。

 同会が「事実ではない」と主張し、抗議している内容が、軍慰安婦の存在を否定しているのか、「性奴隷」ではなかった、強制連行ではなかった、軍は関与していなかった――などと言っているのかが、その真意が分かりづらい。

 しかし同会が主張しているトーンは、第2次安倍政権下で語らっている、軍慰安婦の存在を否定的にとらえていることと、一致する符号のようだ。

 だから同会も、安倍政権と同様に「河野談話」と「民間基金」を否定しているのだろう。

 河野談話は、日本、朝鮮、中国、米公文書館などの膨大な資料を検討、研究者や慰安婦たちからの聴き取り調査を経て、制度として旧日本軍が関与し、少女らを強制連行し、強制的に性奴隷にしたことの結論を出した。

 そのうえで、日本政治は関係する国と被害女性たちへの謝罪と償いを行うことを要求していた。(政権末期であったため)

 さらに村山政権時代の「民間基金制度」は、政府の資金ではなく、民間募金による慰安婦たちへの償い金であったから、日本政府が償ったことにはならない、との批判はあった。それでも慰安婦たちの存在は認めた。

 現安倍政権以前の政府は、慰安婦たちの存在は認めていたものの、彼女たちへの謝罪と償いができていなかった。

 そのため、安倍政権や同会のような認識が、はびこる原因を作ってしまった。

 90年団以降、国連人権委員会では何度も慰安婦たちへの謝罪と償いを、日本政府に要求する決議を採択している。

 そればかりか、各国の議会や市民団体なども、日本への抗議の声が続いてきた。

 それでも日本政府は、それらの声を無視してきた。

 このような歴代日本政府の歴史否定的な態度に、世界の良心は怒りの声を挙げている。

 元軍慰安婦の彼女たちが、恥を忍んでやっと声を出すことができたのは、高齢になってからであった。

 彼女たちは、心と体の傷に長年悩まされ、病苦の中にいた。

 その彼女たちの声と痛苦を代弁したのが、ソウルの在韓国日本大使館前の「少女の銅像」である。

 少女像を建てることによって、日本の過去の歴史清算を、少なくとも被害者たちへの謝罪を早急に行うことを、日本政府に要求したのである。

 その像を否定し、撤去を求めることは、それ自体で、被害女性たちの存在と、その人権とを否定していることになり、同時に自らの歴史をも否定していることになる。

 松浦議員らは一度でも、元慰安婦たちの苦汁に満ちた証言を聞いたことがあるだろうか。

 老「少女」たちの「言葉」に接することもなく、「真実かどうか」と言うのは、歴史と共に彼女たちの人権を冒瀆していることになる。

 また、「分らない」との発言は、傲慢以外の何ものでもない。

 これまで日本政府が、老いたる「少女たち」の存在を認め、謝罪と補償をしてこなかったため、被害者たちの代弁として、各地で「少女像」設置運動を展開してきたのは、当然の行為である。

 「恥ずかしい」のは、過去の歴史を清算も謝罪もしてこなかった日本であり、米国まで行って「像」撤去要求行脚をしていた行為のことである。

 松浦議員らの行為は、河野談話や「民間基金」の精神を否定し、強制的に軍慰安婦にされてしまった女性たちの人生を否定し、さらに歴史事実を歪曲し、現安倍政権が推進しようとしている「戦争コース」のレール敷きにしていて、とても看過できない。

 同時期、安重根の記念館が、事件現場のハルビン駅前に開設(1月19日)された。

 これに対して、菅義偉官房長官は20日の記者会見で、安重根は初代韓国統監を務めた伊藤博文を暗殺(1909年)し、「死刑判決を受けたテロリスト」だ、「一方的な評価に基づき(中韓が)連携して国際展開する動きは、(地域の)平和と安定の構築に資さない」と主張した。

 安重根を「テロリスト」「犯罪者」だと決めつける安倍政権の歴史認識と、元軍慰安婦たちの存在を「真実かどうか分らない」とする「像撤去全国地方議員の会」の主張とが、共に同根で、このような論理が「戦争」を近付けている。

 日本のイメージを悪くしている、彼らの論を批判する。


                                          2014年1月20日 記

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

takasi1936

Author:takasi1936
愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR