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「衆院選後の政治風景」

「衆院選後の政治風景」

1.ポピュリズム的風景が出現
 資本主義体制の疲弊、既成政党や権威への民衆の反発から、欧米をはじめ世界ではポピュリズム(大衆迎合主義)が席巻し、左派の既成政党の支持が減少傾向にある。
 10月22日に投開票された衆院選挙結果の政治風景は、どの世論調査でも安倍晋三政権の5年間に不満や疑問を持つ国民は多かった。
 にもかかわらず、選挙結果は、自民党と公明党合わせて定数の3分の2を超える議席を獲得。また、保守リベラル政党(野党)が乱立している。
 野党の中には、憲法や安保問題で政権を助ける補完勢力も存在しており、与党内も与野党間でも、自由に議論する活力が薄れているように感じる。
 安倍政権には不満があるが、そうはいってもいきなり野党に政権を任せられない―といった選挙だったのか。議論なき政治、議論を封じる政治、ちぐはぐな答弁しか行わない政策論争が続くのなら、それは政党政治の危機であり、民主主義の危機である。
 選挙戦によって、そのような政治状況を演出している戦犯は4人いる。
 まず第1に安倍晋三氏、次に前原誠司氏、小池百合子氏、マスコミ各社。
 東京中心のテレビメディアなどは「小池劇場」ブーム、安倍対小池という単純な図式を作り出した。
 安倍氏が森友・加計問題を頬かむりしたままでの政権スタートは許せない。

2.「国難」とは何か
 安倍首相は、臨時国会の冒頭で、衆院解散を表明した。
 解散の理由を「国難突破解散だ」、「北朝鮮の脅威に対し、国民の命と平和な暮らしを守り抜く、この国難とも呼ぶべき問題を私は全身全霊を傾け、国民とともに突破していく決意だ」として、「国難突破選挙だ」と強調。
 突然ともいうべき「北朝鮮の脅威」「国難突破」との発言の意図は、安倍氏自身のアキレス腱である森友・加計問題に触れられたくないため、朝鮮半島情勢を誇張して、国民の不安を煽り、利用することである。
 不安に煽られた国民は、対話などの軟弱な対応ではだめで、国際的な包囲などの強硬発言の安倍・自民党を支持する流れを作り出そうとした。
 衆院選の「外交・安全保障」項目の公約。
 自民党は「北朝鮮による挑発行為はエスカレートし、重大かつ差し迫った脅威だ。北朝鮮への国際社会による圧力強化を主導し、完全で検証可能かつ不可逆的な方法ですべての核・弾道ミサイル計画を放棄させることをめざすとともに拉致問題の解決に全力を尽くす」としている。
 解散総選挙の大義に、「北朝鮮の脅威」を掲げたのは、安倍政権がはじめてである。
 安倍氏が言う「国難」というほどの「北朝鮮脅威」とはどういうものなのか疑問だ。
 選挙後、「国難」に対する答が偶然出てきた。麻生太郎副総理兼財務大臣による26日夜、自民党議員のパーティーでの発言である。自民党の勝因について、「明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろんな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだろう」と正直に語った。
 二階俊博幹事長は、「ジョークでおっしゃった部分もあるだろう」と批判をかわそうとしたが、野党は反発。「危機を利用したととられかねない発言だ。政府ナンバー2の発言で、世界に誤ったメッセージを出すことがあってはならない」(立憲民主党)
 「国難利用解散だったということ。自民党の議席を守ることしか頭にないことがはっきと出た」―などと批判。
何が脅威で、どのように解決するのかも含めて、国会でしっかり追及すべきだ。
 
3.各党の「外交・安全保障」公約
 自民党以外の「朝鮮政策」も見ておこう。
 希望の党。
 「現行の安全保障法制は憲法にのっとり適切に運用する」とあいまいな態度。その上で、「北朝鮮に対し、日米韓が中心となり、中露を含め国際社会と緊密に連携し、制裁の厳格な実施を働きかける」としており、安倍政権と同一思考である。
 公明党。
 「北朝鮮問題では国際社会との連携と連帯を深め、制裁決議の実効性を高めるとともに、『対話と圧力』『行動対行動』の原則の下、核・ミサイル・拉致といった諸懸案の包括的解決に向けた取り組みを進める」と、自民党とタッグを組む以上、表現的な違いはあるものの、内容は自民党と同じである。
 日本共産党。
 「米朝両国が、軍事的緊張をエスカレートさせる行為を自制するとともに、危機打開のために直接対話に踏み出すことを強く求める」、「日本政府が『対話否定論』にしがみつく態度を改め、『対話による平和的解決』をはかるイニシアチブを発揮することを強く求める」
 立憲民主党。
 「北朝鮮を対話のテーブルにつかせるため国際社会と連携し、北朝鮮への圧力を強める」
 日本維新の会。
 「北朝鮮の核・ミサイル、拉致問題には国際社会と連携して断固たる措置を実施する」
 社会民主党。
 「北朝鮮の核とミサイル技術開発に反対する。圧力・制裁一辺倒ではなく、徹底した対話による粘り強い外交努力で、平和的解決を目指す」

 以上、対話による解決を主張していたのは日本共産党と社会民主党のみ。
 他は国際的圧力をかけるとの自民党と同じ主張である。
 自民党を含む各党の公約から、どの党も米国発信情報に基づいて判断し、朝鮮側の主張を聞かず、理解していないことがはっきりとした。
 これでは、日本全体を朝鮮偏見社会へと導いているとしか思えず、その責任は与野党問わず、すべての政党にあるといえるだろう。
 ここにもポピュリズムの風が吹いているようだ。

4.トランプ氏と安倍氏の国連演説
 朝鮮の声を聴く前に、トランプ・安倍両氏の国連演説の酷さを検証しておこう。
 トランプ氏は9月19日、国連総会で初の一般討論演説を行った。
 持論である「米国第一」を掲げる一方、朝鮮の核・ミサイル開発問題を「世界全体の脅威だ」と指摘した。
 朝鮮の金正恩体制について「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と述べ、朝鮮の核・弾道ミサイルは金体制の崩壊につながると警告した。
 「米国はあらゆる手段を講じて自国と同盟国を防衛する」とし、もし軍事攻撃に踏み切る事態となれば、「北朝鮮は完全に破壊される」と強調した。
 以上、国連総会という場には相応しくない表現で、朝鮮と金正恩氏を罵倒するとともに、軍事攻撃さえ示唆した。
 さらに20日午後(日本時間21日未明)に演説した安倍晋三氏は、16分間の8割近くを朝鮮問題に割き、「対話による問題解決の試みは無に帰した」と断言し、国際的圧力強化を訴えた。
 国連安全保障理事会決議採択後もミサイルを発射したことを踏まえ、「決議はあくまで始まりにすぎない。必要なのは行動だ」と強調して、すべての国連加盟国に一連の制裁決議の厳格な履行を求めた。
 トランプ米政権を後押しする発言に終始していた。(それが結局、「国難」公約へとつながった)

5.朝鮮の声
 朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は9月21日、トランプ氏の国連演説に対して、国務委員会委員長名で声明を発表した。
 「最近、朝鮮半島の情勢が前例なく激化し、刻一刻と一触即発の危機状態へと突っ走っている深刻な状況で、国連の舞台に初めて立った米国執権者の演説内容は世界的な関心事にほかならない」
 「米国大統領なる者が以前のように自分の事務室で即興的になんでも出まかせに言い放ったのとは多少区別される、型にはまった準備された発言でも行うものと予想した。しかし、米国執権者は情勢の緩和に役立つそれなりに説得力のある発言はおろか、わが国家の『完全破壊』という歴代のどの米国大統領からも聞けなかった前代未聞の横暴非道なラッパを吹いた」
 「トランプが世界の面前で私と国家の存在そのものを否定して侮辱し、わが共和国をなくすという歴代もっとも最悪な宣戦布告を行った以上、われわれもそれに相応する史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に検討するであろう。・・・私は朝鮮民主主義人民共和国を代表する者として、わが国と人民の尊厳と名誉、そして私自身のすべてをかけてわが共和国の絶滅を言い散らした米国統帥権者の妄言に対する代価を必ず支払わせるだろう」
 トランプ氏の挑発言辞に対して、金正恩氏も強硬的言辞を使用した。それは当然の権利であり、反応である。
 「国家の完全破壊」云々とまで挑発している相手に対して、沈黙している国家指導者は、人民を守っているとは言えない。
 人民の自主権を擁護する指導者であってこそ、(敵の)威嚇には即、最大の言辞を投げ返す必要がある。
 その表現がきついからと言って、朝鮮が「挑発」しているなどと、米国は国際世論化して、反朝鮮世論づくりに利用している。だが冷静に見ている者には、政治的、軍事的、言辞的のあらゆる側面で、米国が朝鮮を挑発して利益を得ていることがわかっている。
 
6.朝鮮の核の標的は米国だけ
 朝鮮の李容浩外相も23日、国連総会で演説した。
 李容浩氏は主として、国連安保理が作り出した反朝鮮決議の不当性と不公正さについて述べた。
 「第1に、国連安保理は宇宙空間の平和利用を各国の自主的権利であると明示した国際法に違反して、そして人工衛星の打ち上げを行う他国に対しては問題視することなく、唯一、朝鮮に対してだけ衛星の打ち上げを禁止するという不法で二重基準的な決議を作り出した。第2に核実験に関する国際法がまだ発効していないので、この問題は徹底的に各国の自主権属する問題であるにも関わらず、まして核実験をはるかに多く行っている他国には一つも問題視することなく、唯一朝鮮にだけ身勝手に核実験を禁止するという不法で二重基準的な決議を作り出した。第3に、加盟国の自主権を認めた国連憲章第51条に反して、そして各種の新型核兵器を絶えず開発している他国は問題視することなく、唯一朝鮮にだけ核兵器開発を『国際平和と安全に対する脅威』であると罵倒し、それを根拠に制裁を加える不法で二重基準的な決議を作り出した。このような不当で不公正な決議が引き続き通過するのは、核保有国である常任理事国が自分らの核独占の地位を守るのに共通の利害関係を持つからである」
 李容浩氏は、朝鮮政府は強力な核抑止力に依拠して、必ずやわれわれの力でわが国の平和と安全を守り、世界の平和と安全についても積極的に寄与していくことを強調した。
 一方、政府関係者や専門家が核問題を協議する「モスクワ不拡散会議2017」に出席していた朝鮮外務省の崔善姫北米局長は10月20日、「歴代米政権による敵視政策によって、朝鮮は自衛の手段として核開発を行った。核保有国となり、米国の軍事力とほぼ均衡を保てる状態まで来た」などと、米国との力の均衡が朝鮮の安全を保障するとの考えを示した。また、米国以外は核兵器のターゲットではないとも語り、今後は核不拡散の取り決めを順守するとの考えも示した。

7.「北朝鮮脅威」の裏側
 朝鮮の核は米国に向けられており、米国の核兵器を含む全世界の核兵器全廃への取り組みを目指しての第1歩を踏み出したのだ。
 朝鮮は直接日本を狙っているのではない。
 ではなぜ、安倍氏は「国難」騒ぎをおこしているのだろうか。
 安倍・トランプ両氏の目先にあるもの、それを考える必要がある。
 安倍政権は、沖縄・離島防衛名目で、自衛隊を増強してきた。
 来年3月、陸上自衛隊に離党防衛の専門部隊「水陸機動団」(日本版海兵隊)が新設される。
 今後、与那国島、奄美大島、宮古島、石垣島にも陸自の警備部隊を配備する準備を進め、尖閣諸島などの防衛・監視態勢を強化しようとしている。つまり西太平洋で、中国が軍事活動を強化していることに対応した自衛隊の「南西強化」を推進している。
 自衛隊増強シナリオの先に見えてくるものは、高額な防衛装備品の購入、防衛予算の増額、9条を含む憲法改正がある。その世論づくりが、安倍氏が言う「国難」さわぎだった。
 では、トランプ氏が言う「北朝鮮騒動」とは何なのか。
 トランプ氏の目先にあるものは、中国への軍事と経済両面の封じ込めであった。
 「北朝鮮騒動」をテストケースにしながら、中国経済の拡大に歯止めをかけると同時に、日本や南朝鮮など周辺諸国に高額なミサイル防衛品の押し売りに成功している。
 米国ではいま、「北朝鮮特需」で沸いているという。
 米上院は今月18日、2018会計年度の国防予算の大枠を決める国防根源法案を圧倒的な賛成多数で可決した。
 その予算規模は総額約7000億ドル(約77兆円)で、政府案を約600億ドルも上回った。
 主要軍事産業の株価も上伸を続けているという。
 トランプ氏の一連の過激な言動は結局、米国の軍産複合体への利益に貢献している。
 つまるところ、トランプと安倍の日米両政権の「北朝鮮脅威」論の仕掛けの裏で利益を得ているのは、米軍産複合体制であったということ。
 日本の安全保障政策は、日本の国益と安全を考えて構築すべきである。
 主体性のない安倍政権は、米国の指示通りに動き、自衛隊の「国軍」化、憲法改正への道を進み、米軍産複合体の利益に貢献しようとしている。
 米国との協調とは、米国への隷属である。
 野党各党は、日米同盟の重視、米国との協調や、「北朝鮮への国際圧力」論から脱して、日本の主体的な安全保障論に立つ必要がある。
 
                                                                 2017年10月28日 記
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「主体性のない日本国」

「主体性のない日本国」

1.
 米軍普天間飛行場所属の大型輸送ヘリコプターCH53Eが11日に沖縄県東村高江の民有地に不時着・炎上した事故で、在日米海兵隊を総括する第3海兵遠征軍のニコルソン司令官は12日朝、沖縄県内駐留の同型機について、4日間(96時間)の運用停止を命じたと発表した。
 小野寺五典防衛相は、安全確認が終わるまで日本国内で同型機の飛行を停止するよう求めただけで、抗議はしていない。
 また、ヘリの一部に放射性物質が使用されていたことについて、小野寺氏は「沖縄防衛局と県が協力して放射線量を調査した。報告を受けた限りでは異常はない」としているが、日本側がどの程度の調査ができたかは疑問だ。
 それを裏付けるかのように、在沖縄米軍は17日、原因不明のままCH53Eの飛行を18日に再開すると発表した。
 「安全性」が確認できたとしているが、事故原因や再発防止策などには言及していないから、日本側が求めていた「安全性」確認には、ほとんど応えていない。防衛省は抗議すべきだ。沖縄県民の安全性を無視した米軍の勝手な論理である。
 事故から7日後の再開に対して、沖縄の反発は強い。
 翁長雄志知事は17日夜、「日本政府は手出しができず当事者能力がない。国の姿勢そのものが沖縄にとっては国難だ」と、厳しく批判した。

2.
 米軍岩国基地所属の戦闘攻撃機FA18が11日に広島県北部の低空を訓練飛行中、対空ミサイルを回避するために発射する火炎弾「フレア」を使用していた。
 フレアは、熱を感知して標的を狙う対空ミサイルを避けるため、おとりの熱源として発射する火炎弾。
 通常は高度発射のため、空中で燃え尽きるが、低空で使用された場合は地上に落下する恐れがある。(11日の場合、民家に落下する危険もあった)
 目撃した住民からの情報を受けた防衛省は、米軍に問い合わせ、米軍が認めた。
 同省は17日、在日米軍に対して陸地の上空でこうした訓練を実施しないよう申し入れた。
 小野寺防衛相は、記者団に、「フレアの訓練は通常、海上の高い高度で行う。実戦に即した訓練は重要だが、住民が不安を覚えるような訓練は適切でない」「遺憾だ」と述べた。評論家的である。
 米軍によるヘリ事故、火炎弾発射事件。
 2件とも米軍からの謝罪がない。対等な日米軍事同盟体制だというが、事件に対する日米の対応は、米軍が占領軍的な態度で、小野寺防衛相ら日本側は事故に対する合同調査もできず、当事者でありながら蚊帳の外から「遺憾」を申し入れるだけと、情けない。
 衆院選の中のことであったが、このような在日米軍の存在も問題にすべきではなかったのか。

                                                                2017年10月18日 記

「謝罪会見現象」

「謝罪会見現象」

 テレビ画面から男性数人が並んで「申し訳ありません」と深々と頭を下げる映像が、途切れることもなく続いている。
 芸能人から各種企業、教育関係、個人的なスキャンダルから企業・組織のコンプライアンス、欠陥製品までと幅広い。
 不思議なのは政治家(国会議員たち)の不祥事や失言問題に対しては、記者たちの取材先での「遺憾」「ご迷惑をおかけしました」などの言い訳がましい態度で終わっていることだ。
 マスコミ各社の政治家への甘い姿勢がうかがえる。
 (不倫など個人スキャンダルの追及には民放、週刊誌は熱心だが、政策や政治姿勢については無関心のようだ)
 日本はいつの間にか、「申し訳ございません」的謝罪文化が定着しているようだ。それも形式的に頭を下げるというスタイルがすっかり定着してしまっている。
 10月に入ってからも、謝罪の映像がテレビ画面から流れ続けている。
 国の制度融資での不正が暴露された商工組合中央金庫、無資格検査問題での日産自動車、製品の検査データ改ざんの神戸製鋼所など、いずれも日本の経済を牽引している大企業。
 さらに、男子生徒が自殺した問題で責任逃れしていた福井県池田町立池田中学校。
 いずれも、謝罪のための型にはまった言葉を並べ立ててはいるが、誰に対して、何を謝罪しているのかが不明である。
 男子生徒が自殺した池田中学校の場合、まず謝罪をしなければならないのは、被害者家族に対してであろう。
 その上で、自分たちの不祥事、不注意、不見識、自己保身を社会に対して謝罪し、2度と同じことを起こさないよう教育界全体で取り組んでいくというなら、なぜ謝罪会見をしているのかが理解できる。
 教育界も企業も、彼らの謝罪会見は、自己弁明をそれらしく真摯に演じているようにしか、テレビ画面からは感じられない。
 いずれにしても、次々に出てくるテレビでの「謝罪会見」、このような映像現像を見ている社会もまた、異常社会だと言える。

                                                                 2017年10月16日 記
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Author:takasi1936
愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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