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「北南共同宣言」

「北南共同宣言」

「朝鮮は一つだ!」
7千万朝鮮人民の この志向と意志
この世紀の叫び声
合唱となり 大河となり
時代の激流となって
不信と対決の氷河を解かした この日
2000年6月15日 平壌
二人のペンは
「北南共同宣言」に署名し
和解と団結 統一の新時代へと
自主朝鮮の民族史へと
新しい項を開いた

金日成主席祖国統一遺訓を集約し
金正日将軍の清い愛国愛族と
強い統一意志を反映した
北南共同宣言
統一へと
大河となって流れる民族の志向を
みごとに結実してみせた 言葉たち
民族の主体的な力となって
団結した大きな力となって
ここから明けていく
民族統一の その日は

詩集『21世紀の太陽賛歌』より
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「世界非核化に向かって新しい波」②

「世界非核化に向かって新しい波」②

6.「世界の声」に耳を傾けよ
 
 朝鮮労働党は7日、中央委員会第7期第2回総会を開いた。
 金正恩委員長が情勢報告を行い、核開発(軍事路線)と経済改革を同時に進めていく併進路線を堅持してきたことは正しく、今後もこの路線を貫徹していくことを改めて強調した。
 さらに、報告で、朝鮮を取り巻く複雑な国際情勢の分析を行い、党の活動方向や戦略などを示し、米国との対決路線の堅持を改めて訴えた。
 「核兵器は米帝の核の脅威から祖国の運命と自主権を守るための人民の闘争が結実したものだ」と強調し、「自らの力を強化し、無謀な核戦争挑発策動と卑劣な制裁圧殺を断固として粉砕」、併進路線を貫徹し、「国家核武力建設の歴史的大業の完成」することを呼び掛けた。国連制裁決議についても、科学技術の発展と経済の自主化を強化、自力更生路線で対抗していくことを訴えた。そこには、核保有国になったことへの自負心と、米国への対決心が強く表れている。
 朝鮮は、米国との核対決から、朝鮮半島だけではなく、世界の非核化を導いていく戦線に立っている。世界の非核化は米国も主張しているが、米国にとってのそれは米国が唯一の核保有国として残り、核の番人となることを意味している。一方、朝鮮のそれは、そのような米国の意図を見抜いた上で、米国を含む核兵器(自らの核も)を、この地球上から全廃するための交渉の「武器」と捉えている。
 その考え方は、米国の核恫喝政策上から発しているのだ。米国は必ず、対朝鮮政策で行き詰ったときには核攻撃を計画し、さらに平時から核攻撃の作戦計画に基づく軍事演習を繰り返している。そうした米国の核圧力に対して朝鮮は、米国とは核で対決(自衛権)するしかないことを学んだ。自衛権は国連憲章も認めている自主権の行使でもある。朝鮮も他の核保有国と同じように、「核抑止」論の線上に立った。
 従来、核抑止力が核戦争を防ぎ、平和を保っていると認識されてきたが、そうした認識による非核論は、どうしても国家エゴ論が前面に出る。相手を核放棄させるための作戦上から、核廃絶や非核化などの美しい言葉を重ねるだけで、現実に非核化を進めていく意思はない。「核抑止力」論は結局、核5大国と言われる国連安保理常任理事国の「安全」論理であり、5大国自身の力と地位を不動のものとするものに他なく、それをあつかましくも国際的「常識」だと押し付けてきたものであった。
 そうした「常識」を一変させたのが、核兵器禁止条約の国連採択と、ICAN運動のノーベル平和賞であった。2017年10月、核兵器の製造、保有、使用、それを使った威嚇、近代化、さらに「抑止力」としての考え方すらも、人道上絶対に許されない悪魔だと規定されたのだ。核廃絶へのヌーベルバーグ(新しい波)である。
 今後、この波は世界の非核化に向かって確実に打ち寄せていくだろう。
 朝鮮にも、新しい波を感じてほしい。戦略上、米国との核対決を進めながら、非核化の「世界の声」と合流(統一戦線)することで、米国の不合理な核政策を包囲していく戦術もあるのではないか。
 国際的な統一戦線論は、コミンテルン第7回大会(1935年)で採択された「反ファシズム統一戦線」があり、日本を含むファシズム国家を打倒し、朝鮮解放を勝ち取った。
 また、60年代から始まった非同盟運動がある。自主的な立場、世界平和、民族自決権、平和共存を理念とした非同盟運動の主張は、今も国連や国際社会の中で力の源となっている。朝鮮半島の核問題を解決していく上で、こうした統一戦線方式が参考になるのではないだろうか。
 核兵器禁止条約については、参加を表明し、運動を支持し、米国の核恫喝の現実を理解するための協議会を設定する。ICANには1~2の平和団体が加盟または連携し、米国の核政策の不当性への理解キャンペーンを行う場にする。
 世界はまだ、朝鮮半島内での米国の横暴政策の現実を知らない。米国のプロパガンダ情報が世界を支配しているため、正しい朝鮮の声が残念ながら届いていないのだ。
 まずは、非核化を推進している「世界の声」たちに、朝鮮の現実を語り掛けていくことから始めてみるのも、遠い一歩を踏み出す出発点になるかもしれない。

                                                                   2017年10月8日 記

「世界非核化に向かって新しい波」①

「世界非核化に向かって新しい波」①

1.「核兵器は非人道」にノーベル平和賞

 ノルウェーのノーベル賞委員会は6日、2017年のノーベル平和賞を、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN・アイキャン)に授与すると発表した。
 ICANは、85年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会議が母体となり、2007年にオーストラリアで発足した国際NGOネットワーク。核の非人道性を訴え、核兵器禁止条約の制定を目指して、各国政府や市民社会に働きかける運動を行ってきた。現在、スイスのジュネーブと豪州のメルボルンに拠点を置き、世界101か国の468団体と連携している国際的連合組織である。日本からはNGOピースポートや人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」、被爆者たちが参加している。
 平和賞受賞理由は次の通り、発表されている。
 ①核兵器の使用が人道上破壊的な結果をもたらすことへの関心を高め、核兵器禁止時条約の制定に向けた革新的な努力を尽くした。
 ②われわれは核が使用されるリスクがこれまでになく高い世界に生きている。北朝鮮にみられるように、多くの国が核兵器を手に入れようとする脅威が現実のものとなっている。核兵器は人類と地球上のすべての生物にとって持続的な脅威だ。
 ③核兵器は地雷やクラスター(集束)弾、生物化学兵器より破壊的だが、法的に禁止する国際的枠組みがない。ICANは、国際法による核兵器禁止に向けた取組で主導的な役割を果たした。
 ④核兵器禁止条約だけでは核兵器を一発も削減できない。現段階では核保有国とその同盟国は賛同していない。
 ⑤核なき世界実現に向けた次の一歩を踏み出すには、核兵器保有国の参加が不可欠ということを強調したい。核保有国には、核兵器削減に向けた真剣な交渉を始めるよう求める。
 ⑥核拡散防止条約(NPT)は核兵器の拡散防止と削減を促す主要な法的手段であることは変わりない。
 ⑦核なき世界実現に向けた新たな機運を作ったことに敬意を表したい。
 ―として、特に今年7月に国連で採択された核兵器を違法とする核兵器禁止条約の成立で、NGOとして多国間交渉を積極的に支えるなどの主導的役割を果たしたことへの評価を授賞理由とした。

2.核兵器禁止条約が国連で採択
 核兵器禁止条約は今年7月7日、非核保有国122か国が賛成(核保有国や日本など「核の傘」に依存する約60か国が不参加)して、国連で採択された。
 米国を中心に、核兵器保有国が採択を阻もうと圧力をかけ続け(日本など同盟国やNATO諸国を動員して)てきたが、ICANを先頭とした市民グループや被爆者の声が各国代表に通じた結果、採択された。9月に始まった条約の署名は現在、53か国に達している。
 第2次世界大戦後の国際社会は、核兵器不拡散・禁止の戦いの歴史であったとも言える。そしてそれはまだ続いている。
 国連の第1回総会(1946年)の最初の議題は、核兵器廃絶問題であった。広島・長崎の被爆現実が世界にショックを与えたのだ。その総会での決議第1号は、「すべての核兵器および大量破壊兵器の廃絶」であった。
 だが、現実の世界は、決議第1号を裏切り続け、旧ソ連(49年8月、カザフスタンで原爆実験に成功)、英国(52年10月、オーストラリアで原爆実験に成功)、フランス(60年2月、サハラ砂漠で原爆実験に成功)、中国(64年10月、新疆ウイグル自治区で原爆実験に成功)などと、核は拡散していった。
 危機を感じた国際社会は、68年7月、核拡散防止条約(NPT)の署名を開始、70年3月に発効した。NPTは、核兵器の保有を米・英・仏・ソ連・中国の5か国に制限するとした。以後、この5か国が国連安保理常任理事国として、世界に君臨し、核拡散の番人として支配権を握ってきた。
 NPTでは、非核保有国には核を持たせないという不拡散の義務を課す一方で、5核保有国には核軍縮に取り組む義務を課している。だが、現NPT体制下では、核軍縮交渉は停滞したままで、何ら進展もない。
 そこで、核実験全面禁止条約(CTBT)が96年9月、国連総会で可決されたが、それも機能しなかった。国連も、NPTも、CTBTも、いずれも核不拡散、核兵器禁止を決定しながら、何も実現していないのだ。
 これらは米国の存在によるものである。米国は、世界の非核化実現を主張する一方で、自国については、最後の一国になるまで核を放棄しないとする、二重基準、三重基準の政策を続けているのだ。

3.NPT体制のほころび
 米国は、イスラエルの核開発が暴露(86年10月)されて以降、イスラエルを含む、インド、パキスタンの核保有を黙認してきた。NPT体制にはほころびが出始めたのである。(その犯人も米国である)
 もっとも、NPT体制のほころび、違反行為そのものを、米国自身が朝鮮半島ですでに行っていた。朝鮮戦争停戦協定(53年7月)直後から、米軍は各種戦略核兵器を南挑戦に持ち込み、配備している。まだNPTが成立する以前とはいえ、停戦協定違反である。
 米国は91年、南朝鮮からの各種兵器の撤廃を一方的に宣言したものの、朝鮮側が要求した公開合同検証を拒否している。だから米国が言う「南朝鮮からの核兵器全廃」は、現在も疑問符がついたままなのである。
 その上、その直後から、米韓合同軍事演習時以外にも、核搭載・攻撃可能な最新鋭機と艦船を朝鮮近海まで近づけ、核脅迫を行っている。
 NPTでは、核保有国は非核国に対して核によるいかなる脅迫も行ってはならない、としているが、このような朝鮮への核脅迫は、NPT体制を壊す行為である。
 問題は、朝鮮の「核開発疑惑」が出た後、朝米核対立が始まって以降のことである。米国は、朝鮮の核開発を認めず、朝鮮をNPT体制内に押し込めようと政治的圧力、国際包囲網、核恫喝を含む軍事的脅迫を繰り返して行ってきた。
 これに反発した朝鮮は、米国の核脅威からの自衛権行使だとして、核・ミサイル開発を続け、06年10月に1回目の核実験に成功(以降、6回目が17年9月)。世界の核をコントロールしていると自負してきた米国は、朝鮮に圧力と制裁を続けてきた核政策の失敗を認めず、さらなる圧力と核脅迫政策を続け、結局は朝鮮を核保有国にしてしまったのだ。
 また、朝米はともに、自らの核保有について「抑止力」戦略を主張している。
 「核抑止力」論は、核戦争を防ぐために、核保有を安全保障の根底に位置付ける考え方で、核5大国の存在がその前提に立つ理論であるが、ICANが主張する世界の非核化論とは相反するものである。ICANは、「核抑止論」ではなく、「核なき世界」、「いかなる理由であれ核兵器を禁止すること」を目指している。
 世界の非核化に至る過程において、核兵器の使用だけでなく、威嚇の禁止、核兵器保有をも国際条約で禁じていくことを目指している。
 ICANが目指している非核化論の前では、「核抑止力」は、もはや古色蒼然としているのだ。

4.非核化への市民の声
 核兵器を史上初めて非合法とする核兵器禁止条約は、前文で、「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記している。
 また、ICANが広島や長崎の被爆者や団体と連携し、核の非人道性を訴えてきた成果が、ノーベル平和賞受賞につながったことも強調している。
 唯一の戦争被爆国だと主張する日本の安倍晋三政権は、米国の核の傘に依存したまま、核兵器禁止条約の交渉に参加せず、批准もしていない。被爆者の活動に敬意が示されたノーベル平和賞受賞に対してさえ、安倍政権は公式コメントを出さなかった。「受賞決定は承知している。核廃絶の目標は共有しているが、アプローチは異にしている」「核廃絶には核保有国と非核保有国の協力が必要だ」(以上、外務省担当者)。
 安倍政権が、被爆者の願いよりも米政権の意向を重視していることが、これだけでもよくわかる。まったく情けないことだ。
 授賞理由で、「核兵器は、人類と地球上のすべての生物によって持続的な脅威」だと、核廃絶こそが国際的な規範であることを示した意義は大きい。来る衆院選で、安倍首相は、朝鮮を核保有国と明言。「核保有国が日本という非核保有国を脅したのは初めて」だと、「北朝鮮」の核・ミサイル開発を「国難」だとして、日本の安全保障政策をアピールした。
 核廃絶の政策を問う具体策を、与野党とも争点として打ち出してはいない。ということは、与野党とも冷戦時代そのままの思考で止まっており、そこからの脱皮が求められているのだ。
 「保有国が参加しなければ、非保有国との分断が深まる」との、批評家的で核保有国を擁護する発言は棄てて、被爆国の日本の立場をはっきりと打ち出すときだったはずである。唯一の戦争被爆国日本は、核兵器禁止条約の交渉で、核保有国と非核保有国の橋渡し役を放棄した。安倍首相が「国難」と連呼する選挙戦に入って、ポピュリズムの気配が漂い出しているようだ。
 ポピュリズム政策を推進するトランプ政権は6日、「条約で世界がより平和になるわけではない」と表明し、核兵器禁止条約の署名を拒否し、核独占政策、核抑止政策、核威嚇政策を推進していく姿勢を強調した。
 他の核保有国も、ニュアンスに違いはあるものの、「核の均衡が国際的な安全保障」(ロシア)との立場に立っている。NATOの各国も、「現実を無視している」と、NPT体制の維持を表明し、核兵器禁止条約を否定している。
 一方、朝鮮の慈成男国連大使は6日、国連総会第一委員会(軍縮)の演説で、核兵器禁止条約について、「核兵器の完全廃絶という点には賛同している」としつつも、「朝鮮を核で威嚇している米国が条約を拒絶しているため、朝鮮も条約に参加しない」と述べた。米国が条約に署名・批准すれば、朝鮮も参加を検討する可能性があることを表明したことになる。核兵器禁止条約を否定したわけではないのだ。
 また、現在、米国などが朝鮮との対話条件に掲げている「朝鮮の非核化」については、核兵器や弾道ミサイル開発を米国などとの交渉材料にしないとの姿勢を改めて強調したことになる。
 朝鮮は一貫して、核開発は米国の核兵器による脅威に対する抑止力で、自衛目的のものであることを主張している。核兵器を全肯定しているわけではない。
 だから、7月に採択された核兵器禁止条約について、「核兵器の全面撤廃という人類の念願を反映したものだ」と評価しており、昨年10月の国連総会第一委員会での条約制定交渉開始の決議案に賛成をしている。
 ところが、今年3月の外務省報道官声明では、「米国をはじめとする核保有国が参加を拒否する中では、そうした念願を反映した結果が出るか疑問だ」と主張して、条約への不参加を表明した。米国が反対運動を展開していたことと、史上最大の米韓合同核軍事演習を強行し、朝鮮に核攻撃圧力をかけていた時期であった。
 朝鮮から見れば、米国による核脅威は常に現実のものである。朝鮮は、米国のよる核威嚇政策がなくならない限り、自らの核抑止力に依拠しつつ、朝米非核化交渉を米国に呼び掛けていく立場を鮮明にした。
 それが、「世界の非核化が実現する時まで、核保有国の責任を果たしていく」という立場、朝鮮の立場だとした。

(続く)

「国務委員長声明を支持する」(内容補足)

「国務委員長声明を支持する」

※内容を補足(3以降)しました。前回のものと合わせて全文を掲載します。

1.
 金正恩朝鮮労働党委員長は21日、トランプ米大統領の国連総会演説(朝鮮を全面破壊云々など)を強く批判する声明を出した。
 トランプ氏の発言を「歴代もっとも暴悪な宣戦布告」だと非難し、「相応の史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と警告した。
 双方とも、言葉による応酬のレベルをはるかに超えて、最高指導者を罵り合う、言葉による暴力の連鎖となっている。
 しかし、それ以上にトランプ氏の国連総会での発言は朝鮮をひどく刺激し、危機のレベルを上げたことは間違いない。
 戦争が継続中の相手国の指導者に対する言葉としても、あまりにも非常識で、戦闘を再開させようとする意図を感じる。
 強大な武力を持つ者は、むやみに騒いではいけない(言葉の暴力も含めて)―というのが、従来の国際政治の常識であったはずだが、そのような常識もない。
 また、大統領の立場にある者には、いくつかの制約があるはずだが、トランプ氏の発言はそれも破っている。
 その上、米国は今も強大な軍事力を背景に、朝鮮に軍圧力をかけ続けているのだ。
 金正恩朝鮮労働党委員長の怒りはもっともなことであり、私は支持する。

2.
 トランプ氏が金正恩委員長を揶揄した国連総会での演説要旨は以下の通り。

 ・金正恩氏を「ロケットマン」と皮肉り、「自爆行為に走っている」と述べ、「北朝鮮ほど自国民の幸福を軽視した国はない」と批判。
 ・北朝鮮の金正恩体制は向こう見ずで下劣だ。核、ミサイル開発を無謀に追求している。世界全体にとっての脅威だ。
 ・北朝鮮が敵対的な姿勢をやめるまで、北朝鮮を孤立させるために全ての国が連携する時だ。
 ・北朝鮮の脅威により、米国や同盟国の防衛を迫られれば、北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢がなくなる。

 以上、トランプ氏は、国連という国際社会の公の場で、ロケットマン、存在が世界の脅威、完全に破壊するなどと、朝鮮の最高指導者をもっとも汚い言葉で激しく非難したのだ。
 言葉の暴力である。
 公の場でそこまで言い切ったトランプ氏の意識には、米本土まで届く核とICBMを開発した朝鮮への恐怖心と、「白人中心主義」に基づくアジア人種蔑視感が存在していたと思われる。
 米国とトランプ氏こそ、下劣で無謀な人間だ。

3.
 朝鮮の李容浩外相は23日(日本時間24日未明)、国連総会の一般討論演説を行った。
 核・ミサイル開発については、「正々堂々たる自衛的な措置」だと主張。9月6日に行った6回目の核実験で、「核武装完成の完結段階に入った」とし、「最終目標は米国と力の均衡を取ることだ」とした。
 また、トランプ氏の国連総会演説を強く批判。「米国の領土がわれわれのミサイルの標的になることを一層避けられなくなる過ちを犯した」、「無辜の命が災いを被るなら、全面的にトランプのせいだ」とした。
 さらに、「米国と追従勢力が、わが国の指導部に対する『斬首』や軍事的攻撃の兆候を見せた時は、容赦なく先制行動として予防的な措置を取る」と警告した。
 朝鮮より先に一般演説を終えていたロシアのラブロフ氏は、トランプ氏と金正恩氏の威嚇の応酬を「幼稚園児のケンカ」だと批判し、理性的な対応を求め、「頭を冷やし、一呼吸置くべきだ」と述べた。
 その上で、ロシアと中国が7月に提案した朝鮮との交渉再開に向けた「ロードマップ」と、米国が5月に発表した「4つのノー」戦略を基に、政治的解決に向けての努力を続けるべきだと主張した。
 「ロードマップ」は、朝鮮の核・ミサイル開発と米韓軍事演習を同時停止して、朝米交渉を開始すること。「4つのノー」は、朝鮮の核放棄を前提にして、金正恩政権の体制転換、体制崩壊を追求せず、朝鮮半島の再統一を加速させず、北緯38度線を超える侵攻を目指さない、などの内容。
 「ロードマップ」は、交渉の入り口となり得ても、目的とか決着点にはなり得ない。「4つのノー」は、全くの米国エゴの集大成であり、交渉の入口論にもなりえない。
 いずれも欠陥内容である。それ故、進展はないだろう。
 もっと朝鮮の声を聞くべきである。

                                                                  2017年9月24日 記

「トランプ政権内の不一致が招く『混乱』」

「トランプ政権内の不一致が招く『混乱』」

 ティラーソン米国務長官は北京で、朝鮮との対話を視野に、「2、3の民間接触窓を持っている」と発言した。
 5月と7月、朝米の民間研究団体が接触、会合を持っている。
 ところが、トランプ米大統領は1日、「時間の無駄だ」とツイートした。
 「我々のすばらしいティラーソン国務長官に、小さなロケットマンと交渉しようとするのは時間の無駄だと話した」と、交渉による事態打開は困難だとの認識を示した。
 さらに、「25年もロケットマンに優しくしたが、うまくいかなかった。なぜ、今ならできる?クリントンが、ブッシュが、オバマが失敗した。私は失敗しない」と、引き続き、強硬姿勢で臨むことを示した。
 というトランプ氏も、対朝鮮政策ではぶれている。
 ティラーソン氏もまた、南朝鮮の文在寅政権が7月、朝鮮に軍事会談を提案した際、「米国が大変な不快感を示した」と康京和外相に激しく抗議している。
 以上の現象は、トランプ政権内の意思不統一、トランプ氏の独裁、朝鮮問題への政策未定を表現している。
 だから、トランプ氏は、言葉の暴力で朝鮮を挑発し続けるしかないのだろう。

                                                                  2017年10月4日 記

「『国難』は安倍自民党だ」

「『国難』は安倍自民党だ」

1.
 自民党が2日、衆院選で掲げる公約を発表した。
 北朝鮮の脅威を第1に、アベノミクス加速、生産性革命、教育無償化、人づくり革命、地方創生・復興、憲法改正など6本の柱。
 冒頭、「北朝鮮の脅威、少子高齢化。2つの国難を前に、明日を守り抜く重大な決断と実行力が問われている。国民の信任なくして前に進むことはできない」と、「国難」を強調している。
 安倍晋三首相の遊説第一声でも、「国難の中にあること」を叫び、その解決と責任を自負した。
 安倍氏がいう「国難」とは、「北朝鮮の脅威」を指しているようだが、いつ、なぜ、朝鮮が日本の「脅威」となったのであろうか。疑問だ。
 公約での北朝鮮問題で、「我が国を取り巻く安全保障環境は戦後もっとも厳しい。北朝鮮の政策を変えさせるため、圧力を最大限まで高める。世界をリードできる経験豊かで安定した政権が必要だ。北朝鮮への圧力強化を主導し、すべての核・弾道ミサイル計画を放棄させることを目指す」などと、圧力、制裁一辺倒路線を主張。
 これは、安倍氏自身が国連安保理を中心に展開してきた言動と同じで、トランプ米大統領の意向の先導役を果たしていて、日本の安保問題を「戦争」へと振り向けている。
 こうした安倍氏の突出した言動に、一部自民党議員からも、「危惧」「懸念」の声が挙がっていたほどで、朝鮮が不快感を示したのは当然のことだ。
 「国難」「北朝鮮脅威」は、安倍氏が意図的に招き寄せたものだ。

2.
 公約では憲法改正も掲げている。
 自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参院の合区解消など4項目を中心に、党内外の十分な議論を深めていくとしている。
 9条をめぐっては、自民党内会合でも異論が出ており、まだまとまっていない状態。
 また、朝鮮の核・ミサイル問題に対して、「国難」と言い切る安倍氏は、集団的自衛権における自衛隊がどこまで米軍と行動を共にするのかも、明らかにしていない。
 これまでの安倍氏の政権運営、国会運営などから、自衛隊や「国難」問題について、今後、党派を超えてオープンな議論が展開されるとの期待は持てない。
 この公約も、党内議論を抜きにした「付け焼刃」的な内容で、空虚な言葉だけが踊っている。
 その空虚な言葉の裏に隠そうとしたのは、「森友・加計問題」など、安倍氏自身の不都合な事柄だったのだろう。
 それを「国難」問題で隠そうとした。
 私たちにとっての「国難」は、安倍氏の危機を招く言動を許してしまっている政界なのである。

                                                                  2017年10月3日 記

「10・4宣言」

「10・4宣言」

1.
 南朝鮮では、政府と在野の間で、「10・4」に対する認識と取り組みに、若干の差異があるようだ。
 統一省・盧武鉉財団・ソウル市が9月26日に共催した「10・4宣言10周年記念式」で、文正仁・大統領特別補佐官(外交安保)は、朝鮮半島の戦争危機を克服するためには、朝米対話と南北対話が必須であると語った。
 さらに、現情勢について、「ポプラの木伐採事件(1976年に板門店で起こった事件で、戦争直前まで対立した)の時よりも深刻だ」と解説し、危機克服には、「朝米間の不信の解消」が必要で、朝米対話がもっとも重要だと強調した。「米国が秘密裏に特使を送り、劇的な妥結が望ましく、それもあり得る」と語った。

2.
 一方、民間の6・15共同宣言実践南側委員会は9月27日、「10・4宣言10周年平和統一大会」をソウル光化門広場で開催した。
 李常任代表議長は、「対北制裁政策を推進しながら、北との対話と信頼回復を期待するのは矛盾している」として、文在寅政権に政策転換を要求した。
 その上で、「解決のための唯一の方法は、対北敵視政策を撤回し、朝鮮戦争の平和協定締結など関係正常化に向けた平和対話」の必要性を訴えた。
 共同アピール文も、「10・4宣言の『わが民族同士』の精神に基づき、南北分断を助長する全ての法的、制度的障壁を取り除こう」と、文政権にも「わが民族同士」の精神に立ち返ることを要求した。

                                                                  2017年10月2日 記

「トランプ氏の国連演説に危惧」

「トランプ氏の国連演説に危惧」

1.
 トランプ米大統領は19日午前(日本時間同日夜)、国連総会の一般討論で演説した。大半が朝鮮批判であった。
 朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返し、ついに核弾頭を装備した大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成を現実のもととしたことに対する恐怖心を語ったのだろう。
 これは米国と朝鮮の問題ではなく、「国際社会の問題」だと主張していたことに、そのことが表れている。
 中露両国も巻き込んだ「国際社会の一致した対応」が必要であると、国際社会の協調路線を訴えた。
 これまでのトランプ氏は、「米国第一主義」を掲げ、国際協調には後ろ向きの姿勢をとってきたのに、どうしたことか。一転、朝鮮の核・ミサイル問題に対して、国際社会の危機を訴え、「国際協調」路線の姿勢に転じている。
 その転換点は、朝鮮が9月3日に行った6回目の核実験、11日に行ったICBM発射であり、それにより、トランプ氏は、朝鮮に米本土を確実に攻撃できる能力があることを認識したのだろう。
 トランプ氏は恐怖心を感じた。その恐怖心の裏返しが「国際協調」発言となった。

2.
 21世紀は、「テロ戦争」で幕が開けたと言われている。それを始めたのは、当時の米大統領のブッシュ氏である。
 そのことによって、戦争の概念が、国家から個人へと拡大し、米軍産複合体制に高額の利益をもたらしたのも事実だ。
 2001年9月11日、「テロリスト」と呼ばれた数人たちが、米旅客機を乗っ取り、ニューヨークの摩天楼、ワシントンの国防総省などに突っ込んだ。
 犠牲者は約3千人(日本人24人含む)。
 ブッシュ大統領は「テロとの戦い」を世界に呼びかけると同時に、首謀者をかくまったとして、アフガニスタン攻撃を開始した。
 この時点から、米一国単独行動主義を誇るとともに、テロとの戦争を始めたのだ。
 ブッシュ氏は02年1月の演説で、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」で、「大量破壊兵器(WMD)を使うテロ支援国」だと糾弾した。その攻撃の矛先として、アフガニスタンに次いで、イラクを選んだ。
 イラクは、湾岸戦争停戦時に国連安保理が決議したWMD廃棄を確認する査察を進めていなかったようである。
 ブッシュ氏は、「米国対イラクではない。国際社会対WMDを持つイラクという構図だ」と指摘した。トランプ氏も同じことを語った。
 米英は、イラクの査察を安保理に提出。02年11月に採択し、査察が始まった。
 調査団による、「(イラク側の)説明不足」とする報告の2カ月後の03年3月20日、米英軍はイラク空爆を開始。当時の日本の首相・小泉純一郎氏はいち早く、イラク攻撃支持をブッシュ氏に伝えた。
 ここまでのシナリオ。一国主義からの転換、日本の首相の支持表明、日米の共同行動が悪化を招く――。現トランプ政権下で似たようなことが起こっているのだ。
 小泉政権はブッシュ政権の力を得て、念願の郵政民営化を実現した。安倍氏も同じ手口で憲法改正を狙っているのだろう。
 トランプ氏は当然、当時の歴史を知った上で、行動しているのだと思う。
 ブッシュ氏が、前任のクリントン大統領の政策を否定して、イラク・朝鮮問題を手掛けたことまで同じなのである。
 ちなみに、イラクのバクダッド陥落後の04年、米調査団はイラクにWMDはなかったと発表したが、そのことさえホワイトハウスは隠そうとしてきた。トランプ氏が米国のマイナーな歴史道に進もうとしている現在、これと同じことが起こるのではないかと危惧している。

                                                                  2017年9月22日 記

「南朝鮮の文在寅政権の統一政策とは」

「南朝鮮の文在寅政権の統一政策とは」

1.日米韓の軍事体制
 国連安保理で朝鮮への制裁決議が採択されてからわずか3日後の15日朝、朝鮮が弾道ミサイル(「火星12」)を発射した。
 日米の対応は早く、安保理の緊急会合を開くための調整に乗り出した。14日午後6時9分(日本時間15日朝)、ミサイル発射の12分後で、いかにも手ぐすねを引いていたかのような早い対応であった。さらに、その約2時間後、南朝鮮を引き入れての日米韓3か国が、安保理に朝鮮問題会議を要請した。
 安保理は15日、非公開の緊急会合を開き、朝鮮を「常軌を逸した行為」とする非難声明を出している。声明は、「きわめて挑発的」と断じ、朝鮮には具体的な行動で非核化への姿勢を示すよう要求するとともに、加盟各国には一連の制裁について、「完全、包括的かつ迅速な履行」を求める内容となっていた。
 マクマスター米大統領補佐官は15日、朝鮮半島の非核化が、「米国と北朝鮮の問題ではなく、世界の問題だ」として、中国などの「問題の本質は米朝間の対立、矛盾にある」との主張に強く反論した。米国は常に、責任のすべてを朝鮮と、その朝鮮を擁護する中露両国に押し付けようとする。
 日米両国は、19日から始まる国連総会の一般討論演説(~25日)を、国際的な朝鮮包囲網構築に利用しようとしている。また、米国は、トランプ大統領の一般討論演説機関に合わせ、21日に日米韓の首脳会談を準備した。
 このように、米国は常に、朝鮮半島問題で日米韓3か国の協調体制を重視している。日韓両国はともに、米国の軍事同盟下と、経済システム管理下にあり、米国の要請を阻めない立場に置かれ、米国の対朝鮮(東アジア地域)戦略の補完役を担っているのだ。
 
2.文政権の「5大目標」
 朝鮮半島の全域には朝鮮民族が居住しているが、植民地からの解放後、外国勢力によって、北緯38度を境界線として南北に引き裂かれてしまっている。
 以降、南北両政権とも、統一を目指してきた。南朝鮮の軍事・保守・民主のどの政権も、まずは南北統一・交流政策のプランを提示した。それが全朝鮮人の願望だったからである。南朝鮮の歴代政権が発表した統一論こそ、その政権が持つ「民族度」を示している。
 では、現在の文在寅政権の対北政策はどうなのか。キャンドル民衆革命で誕生した文政権は、7月19日、「国民が主人となり、特権と不正、不公正を一掃し、差別と格差を解消する正義にあふれた国」にするとして、今後の5年間を「国民の時代」と位置付けた。そして、「国民の国、正義があふれる国」を国家ビジョンにすると宣言して、「5大目標と20大政戦略、100大国政課題」を発表した。
 
3.文政権の統一構想
 文政権が掲げた5大国政目標は、以下のとおりである。
①国民が主人となる政府
②ともに生き生き暮らす社会
③国民の生命に責任をもつ国
④均等に発展する地域
⑤平和と繁栄の朝鮮半島
 5番目の「平和と繁栄の朝鮮半島」が、南北関係改善と統一問題に関連したテーマである。テーマの具体的な内容を見てみよう。
 「強力な安保と責任ある国防」「南北間の和解協力と朝鮮半島の非核化」「国際協力を主導する堂々たる外交」の3点を提示した。
 「強力な安保と責任ある国防」では、強固な韓米同盟に基づき戦時作戦統帥権の早期返還、国防改革および文民統制の協力推進などとしている。つまり、米国との同盟関係を強化していく、との姿勢である。
 次の「南北間の和解協力と朝鮮半島の非核化」では、
①朝鮮半島の新経済エリア構想および経済統一の具現
②南北基本協定の締結および南北関係の再定立
③北朝鮮の人権改善と離散家族などの人道問題の解決
④南北交流の活性化を通じた南北関係発展
⑤北朝鮮の核問題の平和的解決および平和体制の構築――などとした。
 南北関係改善と統一問題に関連しては、キャンドル革命側も、文政権への期待度が大きい。だが、「南北経済統一」「北の人権改善」「北の非核化」構想では、果たして期待していいのかは疑問だ。
 過去9年間、李明博・朴槿恵両政権が遮断していた南北関係を、文政権がどのように改善していくのか、南朝鮮人民ばかりか、世界がそれを見つめている。

4.「6・15共同宣言」精神に欠ける
 文政権が提示した「平和と繁栄の朝鮮半島」の内容を、少し掘り下げてみよう。
 *経済統一の具現と関連して。
 南北協力企業(南朝鮮側)に対しては、(朴槿恵政権が放置していたので)至急支援するとした。だが、開城工業団地の正常化と金剛山観光の再開については、「条件が整えば」としているので、6・15共同宣言で定めた経済協力と交流活性化条項を死文化することになる。「再開」というポーズだけを示す可能性もある。
 また、「経済統一」を掲げているが、自由経済方式での統一なのかどうかも含めて、文氏の根底には経済先行型の自主主義統一論があるという印象を受ける。
 *北の「人権改善」と関連して
 北の人権改善では、人権財団の早期発足を通じて、国際社会と協調していくとしている。
 南北対話でも人権問題を議題化し、政策転換を求めていくとしているから、この点で、南北対話も行き詰るだろう。しかも、10・4宣言での内部問題の相互不干渉条項に違反しており、内政干渉であるから、北は受け入れないだろう。
 *北の非核化に関連して
 文政権は「2020年に完全な(北の)核廃棄合意」を目標に掲げた。
 そのために、強固な韓米同盟と国際社会との協調・協力を土台に、北の「追加の挑発」を抑止し、6者協議などの非核化協議の再開で、実質的な進展を実現させていくとしている。
 しかしこのプランは、安保理での制裁決議などでもわかるとおり、すでに破綻している米国理論なのである。
 以上、5大目標からみる文政権の対北政策の基調は、「北の非核化」を目標とした対北制裁と圧力、南北対話の並行推進である。
 北の非核化を目標とすることは現実的ではない。それに、制裁と対話は矛盾していて両立しない。
 また、「国際協調」(米国を中心に考えているのか)の枠組みの中で南北関係の発展を期待するというのは、南朝鮮の現政治体制を維持することを前提にしており、これでは、早晩、文在寅氏の政治姿勢が問われることになる。
 全体的に、文氏の南北統一論は、北を自由主義体制へと転換させようとするもののようだ。
 キャンドル革命を推進してきた人々は、文政権に対して、6・15共同宣言の「わが民族同士」精神に基づく10・4宣言の履行を期待していた。彼らの意思を汲み取るなら、文氏がまず果たすべきは、米韓合同軍事演習の中止を米国に要求することではなかったのか。
 
5.米国の補完役となっている
 文在寅氏はドイツ・ベルリンで発表した南北対話の「ベルリン構想」後、軍事当局会談と離散家族再会事業のための赤十字会談開催を北に提案した。
 提案内容の軸足が6・15共同宣言に乗っていなかったこともあって、北は未だに返答をしていない。
 なぜ返答がなかったのか、文在寅氏が理解しているとは思えない。
 それは、北が15日に弾道ミサイルを発射した後、いち早く圧力強化で、日米と足並みを揃える一方、国連機関を通じて北に人道支援を検討していることを発表したためでもある。
 文政権が検討しているのは国連世界食糧計画(WFP)の栄養強化事業(450万ドル)と、国連児童基金(ユニセフ)へのワクチン・医療品支援事業(350万ドル)である。
 人道支援は政治的状況とは関係ないとする文政権だが、日米両国からは疑問視されている。南朝鮮のキャンドル革命民衆たちも、「わが民族同士」の立場に立てない文政権にいらだち、危惧している。
 文政権の南北対話の立場の基本は、米国の対朝鮮戦略を補完する内容となっているからである。
 人道支援そのこと自体は悪くはない。その思いがあるなら、今少しトランプ米政権に言うことがあるだろうと、キャンドル民衆たちは不満を持っている。
 朝鮮も、「米国と追従勢力の制裁圧力騒動を自力更生の威力で粉砕する」(労働新聞電子版9月17日付)と、文政権を批判した。
 
6.文政権は「わが民族同士」の立場に立て
 政治指導者である文在寅氏も、朝鮮半島の現実はよく理解しているのだと思う。
 南朝鮮地域が、米国によって新植民地体制下に置かれ、朝鮮半島は南北に分断されている現実と、その歴史を。
 朝鮮人なら誰でも、民族を分断している軍事境界線(38度線)を撤廃し、南北のどの地域にも自由に往来できることを願い、その元凶の撤廃を願っている。
 その全朝鮮人の願いの実現に向けて努力してこそ、朝鮮民族の政治指導者だと言える。
 ところが南朝鮮では、独裁政権や、軍事政権の誕生で、米国傀儡政治が、あまりにも長く続いてしまった。
 その間、解放直後の米軍政庁によって育成されてきた「反日勢力」が、強烈な反共・反北意識を培養し、保守基盤を築き、今も政界に大きな影響力を発揮している。
 彼らは検察・警察権力と結託し、国政の私物化、不正蓄財を重ねると同時に、一般民衆たちの反米、民主化闘争を阻んできた。彼らのバックボーンには、米国が影のように付いている。
 前朴槿恵政権時代に噴出した問題、それが「積弊清算」である。キャンドル民衆たちは、この積弊清算の中に、反米とともに南北交流・協力を掲げている。
 大統領となった文在寅氏には当然、キャンドル民衆の意向を実現していく役割と責任があるのは当然である。
 一方で、文氏は現実主義者だと言われている。
 文政権下、北の連続した核・ミサイル実験、それに対する高高度ミサイルシステム(THAAD)設備、国連安保理などでの制裁と圧力強化へと米国からの要請に応えている。
 過去の歴代政権がそうであったように、文政権もまた、軍事同盟、貿易関連、金融システムが米国の支配下の西側に組み込まれており、6・15共同宣言の「わが民族同士」の精神より、米国シフトに定めた言動を行っているようだ。現実主義者と言われる所以か。
 そのもっとも顕著な発言が、「北の核政策放棄」提案だろう。南北会談についても、北の非核化が前提条件だとしている。
 これは米国が朝鮮との「対話」を行う際の条件としているのだから、文氏の主張は米国の補完作用しか果たしていない。
 さらに、この米国の主張の裏には、朝米米和協定への転換協議拒否姿勢を隠している。これをもってしても、米国こそが、朝鮮半島危機の真の犯人だということがわかるだろう。
 それでもなお、文氏が北の「先核放棄」を主張するのだとすれば、彼は米国の側に立っているということだ。キャンドル革命の民衆たちはもちろんのこと、全朝鮮人民は悲しみ、怒るだろう。
 このままいけば、彼は現代朝鮮史に汚点を記すことになる。
 
                                                                  2017年9月17日 記
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Author:takasi1936
愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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