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たかし言質論第4集 『朝鮮問題へのレッスン』 発刊のお知らせ

 たかし言質論第4集 『朝鮮問題へのレッスン』 発刊のお知らせ

 朝鮮半島に関連した何らかの情報やニュースは、マスメディアによって毎日、発信されています。あなたは、そのマスメディアからの朝鮮半島関連ニュースを信頼していますか。
 著者は、それらのニュースの源となっているすべてが米情報機関によって作成されたものだと断じています。朝米対決、敵対関係の源泉、南北分断と朝鮮戦争から、様々な資料を分析したのが本書です。
 ぜひご購入ください。


書名/朝鮮問題へのレッスン
著者/名田隆司
定価/2,000円(税込み) 送料300円
発行/さらむ・さらん社
申込先/松山市土居田町544サーパス土居田東602
電話/089-971-0986 郵便振替口座/01640-4-31068

愛媛現代朝鮮問題研究所
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「朝鮮制裁論は非現実的」

「朝鮮制裁論は非現実的」

1.
 ドイツのハンブルグで開かれていた主要20カ国・地域(G20)首脳会議は8日、(日本時間同日夜)、首脳宣言を採択して閉幕した。

 議論された自由貿易、地球温暖化対策(パリ協定)などについて、米国の孤立が際立っていた。

 さらに、各国との首脳会談で、「北朝鮮制裁強化」問題でも、日本の安倍晋三首脳が受け入れただけで、南朝鮮の文在寅大統領をはじめ各国首脳は、対話での解決を主張していて、日米が主張する制裁強化論には賛同しなかった。

 それでも、トランプ氏は、「いい会議だった」と国内向けに取り繕うコメントを残して、そそくさと帰国してしまった。


2.
 さて、朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、それほど国際社会に脅威を与えているだろうか。

 朝鮮の核保有が、アジア地域の平和と安定をどれほど脅かしているのだろうか。

 日米両国のマスメディアは、朝鮮の核と大陸間弾道ミサイル保有は、国際社会に脅威を与えているとして、日米両国が主張する制裁強化論に理解を示し、G20サミットで制裁論が進展と賛同を得られなかったことに、手詰まり感があると断じた。

 そのうえで、日米韓はさらに連携を強め、現状を打破せよと訴えている。

 これでは、米国の対朝鮮政策を、そのまま宣伝していることになる。

 米国は朝鮮戦争停戦協定締結直後から毎年、様々な軍事演習を実施し、規模や精度を高め、朝鮮に対して軍事的威嚇を続けている。

 核兵器の使用さえプログラム化している米国の態度を、マスメディアは一度でも問題にし、糾弾したことはあるのだろうか。

 米国の現実こそ、停戦協定違反であり、国連憲章に違反しており、アジア地域に戦争の不安感と驚異を造成しているのだ。

 自らは不当な脅威を与え続けながら、相手側が防御的武器を開発すると、それを口実に、「国際社会への挑発」だとして、より軍事的圧力や制裁、国際的孤立化キャンペーンを繰り返している米国。

 傲慢で、帝国主義国家の姿を見せている。

 そうした米国の不条理な現実に目をつむり、黙して朝鮮の核についてのみ、保有を許すわけにはいかない、放棄しろと主張する。

 これではあまりにも、判断基準が一方的すぎる。

 朝鮮は核を開発して保有した理由を、米国からの核脅威に対して自らを守るために必要だった、自主防御の核だ、と主張している。

 そうした朝鮮側の主張、論理について、一度でも検証したことがあるのだろうか。

 中ソ両国は、朝鮮の核開発と米韓による合同軍事演習の同時凍結を糸口とする、朝米対話を米国に主張している。

 朝鮮の核が「脅威」だと言うなら、大規模な米韓合同軍事演習も「脅威」である。

 そのように理解をするなら、中ソの提案は現実的だ。

 その現実を受け入れず、拒否するなら、米国の軍事力こそが、国際社会への真の脅威となっていることを自ら認めていることになる。


                                                                  2017年7月10日 記

「文在寅氏の宿題―親日派清算」

「文在寅氏の宿題―親日派清算」

1.文在寅大統領のデビュー

 5月、南朝鮮で進歩系の政権が9年ぶりに誕生した。

 朴槿恵前大統領の一連の事件に怒った民衆が、進歩系の「共に民主党」候補、文在寅氏を大統領に選んだ。

 韓国ギャラップの6月30日発表の世論調査の政党支持率でも、「共に民主党」48%、「自由韓国党」(朴槿恵系)7%、「正しい政党」(ハンナラ党から分裂)9%と、保守政党を大きく引き離している。

 これが、現在の南朝鮮の声である。

 文在寅大統領も、前政権のマイナス遺産を払拭し、閉鎖感の漂う社会を変えていくことを約束した。

 その文氏の前には高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備問題、慰安婦問題を巡る日韓合意問題、中国との関係改善問題、南北対話と交流再開問題―など、それぞれ周辺国との関係で、難問が待ち構えている。

 それら難問を解くテストが、7月7日開幕のドイツ・ハンブルグでの主要20各国・地域首脳会談(G20サミット)前の各国首脳との会談(デビュー戦)で、試されることとなった。

 結果は、それぞれの問題で課題と火種を残しつつ、各国との連携を重視する姿勢を見せ、受け入れられたようだ。

 そこに文氏の現実主義姿勢が見える。

 だが、この現実主義スタイルが、北との関係で通用するかは疑問である。


2.文氏の南北政策

 G20サミット出席のため、ドイツを訪問中の6日、文氏はベルリンで南北関係を主題とした包括的な演説を行った。

 朝鮮による4日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を批判した上で、「条件が整い、半島の緊張とにらみ合いの局面を転換させる契機になれば、いつでもどこでも北の金正恩委員長と会う用意がある」と、南北首脳会談を呼び掛けた。

 ベルリンは東西ドイツ統一を成し遂げた都市であり、当時の金大中大統領が2000年3月、「ベルリン宣言」を発表して南北首脳会談を実現させた象徴的な場所である。

 文氏は、そのことを念頭に、「まず、簡単なことから始めることを提案する」として、以下の5ポイントを挙げた。

①北の崩壊を望まず、吸収統一は推進しない
②北の体制を保障し、半島の非核化を求める
③軍事境界線で南北経済ベルトをつなぐ
④南北宣言から10周年の10月4日に、離散家族の再会事業を行いたい
⑤平昌五輪に北が参加してほしい

 以上、提案は新味ある内容でもなく、南北対話も北の「先核放棄」を前提条件にしているから、朝鮮側がそのまま受け入れるかは疑問である。

 文氏のベルリン演説で判断する限り、金大中、盧武鉉時代の「太陽路線」への回帰、継承を必ずしも目指しているようには見えない。

 日米両国が、強行な対北朝鮮制裁論で迫っている現実があるからであろうか。

 実際、米国、中国、南朝鮮内のTHAAD配備問題、日本との慰安婦問題では、大統領候補時と比べて、微妙にトーンダウンした主張をしている。

 そこが文氏の現実論者だと言われる所以だろうか。


3.北からの批判

 今年、全朝鮮民族の一様な期待と念願を合わせて、南北関係の発展と統一の新たな転機をもたらす方向で、北・南・海外の「6・15共同委員会」が設立された。

 共同委員会は、6・15、7・5、8・15、10・4のそれぞれ統一事業を開いていった記念日に関して、平壌、ソウル、海外各地で、それぞれ共同行事を行うことで動いていた。

 ところが、文政権は、「米韓首脳会談前の6・15共同行事の開催は負担になる」「国際制裁の枠内で検討する」などとして、6・15共同宣言発表17周年共同行動のソウルでの開催を見送ってしまった。

 そのことと関連して6月15日、民族和解協議会のスポークスマンは、「現南朝鮮当局の優柔不断な態度は6・15共同宣言と10・4宣言の精神を継承した政権、キャンドル民心を代弁しようとする政権であるのかを疑わざるを得なくしている。南朝鮮当局が今のように進むと、北南関係の改善はおろか、執権全期間にまともな対話を一度もできずに内外の非難と呪いだけを買った保守政権の恥ずべき轍を踏む結果しかもたらさない」との話を発表した。

 さらに、朝鮮民主主義人民共和国平和統一委員会は、『わが民族同士の崇高な理念に基づいて北南関係の発展と自主統一の新たな転機を開いていくべきだ』と題する声明の中で、「民族自主は、統一問題解決の根本保証、基本原則である」と主張。

 その上で、文政権に対して、「朝鮮半島をめぐる情勢が複雑で先鋭であるほど、民族問題、統一問題の解決において自主の旗印をさらに高く掲げるべきであり、外部勢力の干渉と専横が甚だしいほど、朝鮮民族同士がいっそう固く手を取り合わなければならないというのが祖国統一の実践が示す絶対的真理である。・・・・いかなる外部勢力もわが民族が一つに統一されて強盛になることを絶対に願わないというのが、民族分裂の長きにわたる歴史が残した骨身にしみる教訓である」と、文政権の言動に疑問を呈している。

 金大中、盧武鉉政権当時のような期待感は持っていないようだ。

 文氏が主張している「先核放棄」前提の南北首脳会談に、金正恩氏は応じないだろう。

 文氏に民族自主精神が感じられないからである。


4.親日派の清算を

 朝鮮半島を南北に分断し、朝鮮人に民族分断を強いているのは米国である。

 その米国の分断政治に追従して、南朝鮮の政治的実権を握ってきたのが親日派である。

 親日派とは、日本に友好的で、日本文化を称揚する人々を指す用語ではない。

 植民地時代の日本帝国主義(日帝)の侵略戦争に対して、意識的に協力をした者、日帝の政策に従って同胞に対して、身体的・精神的被害を加えた人物たちを指す。

 朝鮮人たちは彼らを売国奴、附日協力者、民族反逆者、戦争協力者、民族的犯罪者として、今も蔑んでいる。

 従って、親日派清算問題は、朝鮮半島の自主統一と不可分の関係にある。

 解放後の朝鮮半島の緊急課題は、日帝時代の親日派をどのように清算するかということであった。

 38度線以北では、満州パルチザン闘争を展開した抗日武装勢力が政権を掌握し、人民委員会によって総督府官吏、警察官僚、親日的知識人、親日資本家と地主らを公職追放した。

 このため、親日派の多くが我先にと南朝鮮に逃亡。

 彼らは南で反共右翼勢力を構築し、反共・反北運動を展開した。

 以南では、米軍政庁と李承晩政権の保護、育成政策の下で、親米派に変身して政権の中枢に居座り、国家権力を実質的掌握する地位に就いた。

 以北では、清算、北南では再生というまったく相反する方法で処理された。

 その後、南朝鮮政治の中枢を握った親日派の子孫たちが、自らの祖先が日帝時代に行った民族的犯罪を隠すために、そのことを知っている人たちを殺害した。

 親日派の子孫たちは、自らの汚れた過去を徹底的に隠蔽するとともに、彼らを暴露し告発し、語ることを社会的タブー視する政治構造を作り上げ、常に反共右翼思想で一般市民を威嚇、抑圧した。

 彼らは現在、保守右翼を形成し、反共反北イデオロギーのもと、南北統一事業を妨害する勢力を形成し、保守政権誕生の原動力となっている。親日派を清算しないことには、南北統一の実現が難しいことを物語っている。

 南朝鮮における親日派清算問題とは、日帝統治時代の残滓を清算する、単純に過去の歴史を掘り返すだけの問題ではない。

 解放後から軍事独裁政権期に至る期間、政権中枢にいた新日派子孫たちが、自らの先祖が犯した日帝時代の犯行を知っている人たちに、どのような方法で殺害していったかを明らかにする現代史の問題、軍事独裁時代の清算と結びついた、現代南朝鮮政治の問題、課題であった。


5.盧武鉉政権の「過去史」整理

 2003年2月に成立した盧武鉉政権は、親日派清算と過去史整理を掲げた。

 盧武鉉大統領は祖国光復60周年(2005年)の記念演説で、「歴史から譲り受けた分裂の傷は親日と抗日、左翼と右翼、そして独裁時代の抑圧と抵抗の過程から始まった。これを克服するにはその時代の歴史に対する正しい整理と清算が形成されねばならない」と指摘。

 この発言の後、与野党間の難しい調整を経て、「親日真相糾明法」と「過去史基本法」(軍事独裁の清算)を成立させた。

 両法案を成立させた盧武鉉政権は、親日保守派勢力を排除しようとした最初の政権となった。

 政権の命運をかけた重大な命題として、南朝鮮近現代史全体の包括的な見直し作業に着手した。

 日本では、進歩派政権としては、金大中氏(政権)の方が有名である。

 何度も死に直面し、民主化運動の象徴となり、南北交流と「6・15時代」を切り開き、ノーベル平和賞者として、記憶されている。

 現南朝鮮の政治と社会の宿痾となり、民主化を阻害している親日派保守勢力の清算と、保守勢力を支えている「国家保安法」の破棄問題は、進歩政権にとっては退けることができない、第1課題であった。

 金大中政権は1999年、悪名高い「国家安全企画部」(旧KCIA)を廃止し、その権限を縮小した「国家情報院」を新設した。

 金大中氏にとっては、KCIAは、自身の命を脅かした宿敵であったから、手をつけたのだと思われる。

 その後、「国家保安法」の廃止と親日派保守層の清算へと進む予定が、野党の右翼保守勢力と時間に阻まれ、提起すらできなかった。

 そうした結果を見ていた盧武鉉は2004年9月5日、全国テレビ中継で、「国家保安法は韓国社会の恥ずべき歴史の一部、独裁時代の古い遺物である。独裁時代の古い遺物は廃棄し、鞘におさめて博物館に送りましょう」と約束した。

 国家保安法は、反共国家体制の基本法として、民主化運動の弾圧に猛威をふるった。

 かくして国家保安法廃棄は、過去史整理法、私立学校法、言論関係法と並んで、盧武鉉政権の4大法案となった。

 2004年の南朝鮮国会は、過去清算関連法律を13法案も立法化した。

 しかし、野党ハンナラ党の強硬な抵抗で、中枢的法案の「過去史基本法」でさえ、「大韓民国の正当性を否定したり、大韓民国を敵対視する勢力」が対象となることが規定された。

 これでは、過去に国家保安法で処罰された民主人士たちに、苦痛を与えることになるとして、与党ウリ党から多数の反対議員を出しながら通過した法案である。

 それでも、盧武鉉氏の指示で真相糾明委が設置され、調査活動が進められた。


6.南朝鮮「過去史」の調査

 2005年末から、「過去史基本法」に基づいた調査が、警察・検察、国家情報院、国防部などの国家機関で始まった。

 国家情報院は金大中拉致事件、人民革命党事件、民青学連事件、大韓航空機爆破事件など7件、警察庁は朴鐘哲拷問死事件など13件、国防部は実尾島事件などを調査した。

 人民革命党・民青学連事件(政権転覆容疑で8人が死刑)は、朴正煕政権下の74年、朴正煕の直接指示で捏造された凄惨な弾圧事件。

 国防部も、全斗煥の指示で民主派学生ら1100人を前線に送り、軍保安部もまた民主化運動の学生900人を軍隊内で思想純化教育を行い、拷問で6人が変死したことを、それぞれ公表した。

 また、政権の歴史見直し路線を受けて、民間学術団体の民族問題研究所と親日人名事典編纂委員会は、「親日人名事典」に収録する第1次予定者3090人の名簿と、主要人物157人の略歴と親日行為を発表した。

 親日人名の中に朴正煕と張勉(元総理)が含まれていた。

 朴正煕は、解放時に日本軍中尉だったから、親日人士選定基準の「日帝の植民地時代、軍人は少尉以上、官僚は5等官以上の当然犯か地位犯」にも該当していた。

 朴正煕は代表的な親日派である。

 彼は満州軍官学校と日本陸軍士官学校を出て、満州軍官学校と日本陸軍士官学校を出て、満州国軍少尉として任官した経歴に加え、解放後は日韓条約を締結、ベトナム派兵を強行して、米帝に追従した。

 1961年秋、日本を訪問した朴正煕は、満州国官僚であった元首相の岸信介、首相の池田勇人、元新京軍官学校長の南雲中将ら、満州国人脈と会った。

 朴正煕を含む日韓の満州国人脈たちが、日韓会談の再開を軌道に乗せ、日韓基本条約の骨幹を作り上げていった。

非常戒厳令下の1965年、日韓基本条約は締結された。

 条約は、日帝時代の植民地支配への謝罪や補償にはまったく言及せず、植民地併合条約の違法性をあいまいにした経済的支援が基本であった。

 それはまた、米国主導のもとの、日本の旧軍国主義者と南朝鮮の親日派との野合表現・作品でもあった。

 以後、条約は南北朝鮮統一の妨げともなっているし、日韓両国内の民主化闘争をも阻害している。

 その象徴的なものが、軍慰安婦問題である。

 文在寅氏が慰安婦問題を解消しようとするなら、2015年の日韓合意以前の、日韓基本条約の問題点にまで翻って考える必要があるだろう。


6.文政権はどこへ向かうのか

 さて、文大統領。

 盧武鉉元大統領と同じく弁護士出身で、盧武鉉政権当時の閣僚でもある。

 それゆえか、それとも6・15共同行事を実施しなかったためなのか。10・4に拘っているようだ。

 10・4は、盧武鉉氏が金正日氏と共に発表した宣言で、南北交流を具体的に進めていく基礎となっている。

 その10周年にあたる今年、その日に南北離散家族の再会事業を提案している。

 離散家族再会事業だけの呼びかけでは、希望している南北対話が行われるかは疑問が残る。

 文氏が今後、言葉だけではない、民族自主の道へと進み、実践するのであれば、必ず、親日派保守右翼の一掃と国家保安法の廃棄に手をつけるべきだ。

 そうしてこそ、盧武鉉氏の未完の政治を継ぐ革新者と言えるし、何より、キャンドルデモの人々の真の声を聞き、実行する政治家となり得る。

 文氏が民族自主化の姿勢を見せるとき、はじめて北の金正恩氏と朝鮮の未来について語り合えるだろう。


                                                                    2017年7月7日 記

「池上彰氏の朝鮮戦争論に疑問」

「池上彰氏の朝鮮戦争論に疑問」

 
 ジャーナリストの池上彰氏が6月27日付の朝日新聞、『池上彰が歩く韓国』で、「朝鮮戦争の今」をレポートしていた。

 レポートの核心部分となる朝鮮戦争論で、池上氏が展開している内容に疑問を感じることがいくつかあった。その疑問を簡単に綴る。

 *まず、朝鮮半島は今も、朝鮮民族が居住する地域である。
 残念ながら38度線を境に、南北2つの政権が存在し、対立している。
 だが、38度線を政治的境界としたのは、朝鮮人ではなく米国である。
 北に朝鮮民主主義人民共和国、南に大韓民国の2つの国家があり、共に国連に加盟し、国家的活動を行い、多くの国と国家間交流を行っている。

 しかし南北とも、2つの国家体制は認めていない。認めれば、永久に朝鮮民族が分裂、分断され、別々の歴史を歩むことになるからである。

 そのため、南の軍事政権や保守政権であっても、南北統一(彼らの場合、吸収合併、自由主義統一論)を主張してきた。

 統一の方法論に違いがあるとはいえ、朝鮮人は誰でも南北統一を願い、そのための運動を続けてきた。

 金正日氏と金大中氏の南北首脳会談で、「初級の連邦制と連合制は同一」のもと、南北交流、協力から統一へと至るロードマップが確認された。

 その時も、「2つの政府、2つの体制」の存在を認め、2つの国家体制は認めなかった。

 朝鮮人であれば、どのような立場でも、どこに居住していても、朝鮮半島内で2つの国家があることを決して望んではいない。

 2国家体制を云々しているのは、朝鮮人以外の人々で、朝鮮半島を軍事的に経済的に支配していこうとしている国家である。

 これが朝鮮半島現状認識の原則である。

 次に朝鮮戦争。

 以下3点指摘する。

 ①「北朝鮮軍先制攻撃」論

 これは、当時の米韓国大使のムチオ氏が、ホワイトハウスに送った第1報である。

 ムチオ大使の報告は、38度線付近には居なかった韓国軍将校及び偵察者らの間接情報であった。

 韓国軍司令部の作戦命令第1号は、25日午前3時に部隊は待機せよ、と命令が出ていた。

 「北朝鮮軍の突然の攻撃」論には、疑問が残る。

 北先制攻撃論は、米国が国連安保理で必要な「作文」だったと言える。

 ②「北朝鮮軍侵略」説

 侵略とは、一般に他国に侵入して領土を奪うことである。

 朝鮮半島の南北には、2つの政府が存在しているだけで、2つの「国家」が存在していたわけではない。

 したがって、南北どちら側も、相手政府を「他国」という概念ではとらえていない。

 そのことから多くの研究者は、朝鮮戦争の当初は、民族紛争であり内乱であったものが、米軍と中国軍が参戦したことで、戦争へと発展してしまったと指摘している。

 だから、北朝鮮の「侵略」説は、論理的にもおかしい。

 「侵略」論を言っているのは米国で、安保理で米軍の出動、「国連軍」編成の必要性から、貼り付けたレッテルである。

 一方で、米軍機は25日午後、安保理決議以前から、日本の各基地から飛び立ち、ソウルを中心に爆撃を行っている。

 さすがに、38度線から北上はしなかったものの、「侵略」行為を行っていたのは米軍であった。

 ③「スターリンと毛沢東の承認」説

 当時のスターリンは、米国と戦争になることを恐れていた。

 戦争になれば、第3次世界大戦となり、社会主義諸国対資本主義諸国の大戦となり、必ず核兵器を使用する核戦争になると考えていたからである。

 毛沢東の場合は、台湾に逃れた国民党軍との決戦を思考していて、台湾海峡に米軍が出てくることを恐れていた。

 中国が参戦したのは、米軍が北上し、さらに国民党軍を引き入れて、台湾近海まで攻めてくるかもしれないと危惧していたからであった。

 それを防ぐために大部隊の「義勇軍」を朝鮮に送った。

 以上の3論点は、米軍が北朝鮮軍を攻撃し、北上して朝鮮に侵入、朝鮮民主主義人民共和国政府を崩壊させるために都合のよいシナリオであった。

 そのシナリオを安保理に提起し、強引に可決させた。

 この米国の思惑をマスメディア、研究者たちが流布し、信じ込ませた。

 池上氏の論理構成も、この米情報機関の情報が下敷きになっているようで、残念としか言いようがない。

                                                                  2017年6月28日 記

「6月23日、日本の政治風景から」

「6月23日、日本の政治風景から」


 6月23日、この日に行われたいくつかの行事や出来事などを重ねていくと、安倍晋三政権が「戦争行進」を準備している現象風景がはっきりと現れ出ていた。

1.沖縄戦慰霊式典

 72年前、沖縄戦での日本軍の組織的戦争が終わった日とされ、毎年、6月23日に戦没者らの追悼式典が行われ、「平和の実現」を誓ってきた。

 72年目の今年、糸満市の平和祈念公園で行われた式典には、約4900人が参列した。

 翁長雄志知事は平和宣言で、恒久平和の実現に向けた決意を述べるとともに、宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設計画で、政府が辺野古での埋め立て工事に着手していることについて、「民意を顧みず強行している」、「工事を強行している現状は容認できない」、「基地負担の軽減と逆行していると言わざるを得ない」と、政府を強く批判した。

 また、沖縄になお基地が集中している現状にふれ、「日米安全保障体制のあり方について国民が当事者であるとの認識を深め、考えていただきたい」と訴えた。

 一方、安倍首相の方はどうだったのか。

 知事とは目を合わせることもなく、「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と強調したものの、辺野古問題にはふれなかった。

 米軍普天間飛行場の移設計画で、安倍政権は辺野古での埋め立ての護岸工事に強引に着手(4月)して、沖縄県側とは対立している。

 護岸は少しずつ沖へ向かって伸びており、国と県の対決色は高まるばかり。

 菅義偉官房長官は23日の記者会見で、「埋め立て工事を進めたい」、「翁長知事と話をする意味がない」などと強調。工事を続行していく姿勢を改めて示していた。

 式典で安倍氏は、「我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国としてひたすら歩んでまいりました。戦争の惨禍を決して繰り返してはならない。この決然たる誓いを貫き、万人が心豊かに暮らせる世の中を実現する。そのことに不断の努力を重ねていくことを改めて御霊にお誓い申し上げます」と、「平和」を何度も重ねた。

 だが、安倍氏の言葉は、式典会場の糸満市から、日本国内に、世界にむなしく響いていただけであった。

 式典会場内の安倍氏と翁長氏は、目を合わせることもなく、国と県、両者の関係が冷え切ってしまっていることを象徴していたと伝えていた。

 そのような安倍氏の姿勢は、日米安保、米軍基地、日本の平和進路問題などで、戦争志向を浮かび上がらせ、それを日本国民に見せつけていた。


2.安保法の集団訴訟

 同じ23日、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は違憲で、平和的生存権などが侵害されたとして、沖縄県の住民ら67人が、国に1人あたり1万円の損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。

 沖縄県の「慰霊の日」に合わせたとしている。

 集団的自衛権が行使されれば、在日米軍施設が70%以上も存在する沖縄は、テロなどの攻撃対象になり、基地反対など抗議活動を行った場合、「共謀罪」法で起訴される可能性がある。

 弁護団側は「安保法は沖縄の平和への思いを踏みにじる法律で認められない」、テロなど「恐怖や不安といった精神的苦痛を受けた」と主張している。

 集団訴訟はすでに東京や大阪など、全国各地で起こしている。

 沖縄の訴訟もその一環である。

 裁判官がどのように判断するのか。日本の平和方向を決める重要な裁判となるだろう。

3.弾道ミサイル飛来想定訓練

 愛媛県西条市が23日、(北朝鮮による)弾道ミサイル飛来を想定して、国と県と共同して、住民避難訓練を7月10日午前10時に実施すると発表した。

 国から県に要請があり、西条市が実施を決めた。

 訓練の実施は全国で6か所目で、四国では初めて。

 訓練は午前9時から防災行政無線で、外国からのミサイル発射の情報を、①ミサイル発射、②ただちに避難、③落下場所―の3つの放送を順次流し、住民らの避難を促す。

 放送を聞いた参加者は、小学校の体育館や公民館、JA倉庫などに避難する。

 屋外避難が間に合わない場合、物陰に隠れたり、地面に身を伏せる、としている。

 また、宇和島市、伊予市、久万高原町、松前町、砥部町の6市町でも、同様の放送を防災無線で流す情報伝達訓練を行うようだ。


4.石川県知事の暴言

 石川県の谷本正憲知事が21日に金沢市内のホテルで開かれた県町長会の総会で、朝鮮に対して、「兵糧攻めで北朝鮮国民を餓死させなければならない」と発言。

 発言は、北朝鮮のミサイル発射を想定し、県が年内にも予定している避難訓練に絡み、県内にある北陸電力志賀原発が狙われたら、との質問に対して出た。

 翌22日、県庁の記者団の取材に発言を撤回したものの、制裁は「実効性のあるものにしなければならない」と、制裁論を強調していた。

 知事の立場の発言とは思えない。

 この谷本知事の暴言に対して、北陸3県の在日本朝鮮人総聯合会の代表は23日、「大虐殺を主張する前代未聞の暴言で、激しい怒りをもって糾弾する」との知事宛の抗議文を県に提出した。

 対立を煽るだけの発言が出てくる背景には、朝鮮のミサイル発射を最大限に利用している安倍政権の政策、Jアラート情報訓練がある。

 すでに、訓練情報だけで、市民たちに不安を与え、朝鮮への恐怖感を植え付けている。

 安倍政権の対朝鮮政策から、関東大震災(1923年9月)時、警察が流したデマ情報から、多くの朝鮮人や社会主義者らが虐殺された事件を思い出す。


5.Jアラート広告

 全4段の政府広報(内閣官房、消防庁)が23日、全国紙、地方紙に掲載された。

 キャッチコピーは、「Jアラートで緊急情報が流されたら、慌てずに行動を」、「弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場合、『Jアラート』(全国瞬時警報システム)を通じて、屋外にスピーカーなどから、国民保護サイレンと緊急情報が流れます」と説明し、①屋外にいる場合、「できる限り頑丈な建物や地下に避難する」、②建物がない場合、「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」、③屋内にいる場合、「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」などと説明。

 戦時中、小学校(国民学校)で習った空襲時の避難方法と、どこか酷似していることを感じた。

 政府広報のどこにも「北朝鮮」とは記載していないものの、内容的には、「北朝鮮からの弾道ミサイルが日本に落下する可能性があることを意識させて、「Jアラート」の機能を利用して、全国民に「北朝鮮恐怖感」を周知徹底させようとしているようだ。

 今年に入って、朝鮮から発射された弾道ミサイルが数発、日本海(東海)の経済水域近くに落下するたび、安倍政権は「日本を狙っている」「危険水域を超えている」など、実際以上の情報を発信して、朝鮮恐怖感をあおり、朝鮮制裁行動を加速させていた。

 安倍政権のこのような対応は、もはや朝鮮を「敵」扱いしている。

 安保法制化、自衛隊の後方支援活動など、戦争「準備」を整え、進行させつつある現状の下、明確な「敵」を設定する必要性に迫られているのであろう。

 大金を投じた「Jアラート」広報の意図、朝鮮を「敵」へと昇格させる手段だったのだろう。

 安倍政権は、対朝鮮政策で、すでに危険水域を超えているのだ。

 6.米軍岩国基地が拡大

 山口県岩国市の福田良彦市長は市議会最終日の23日、米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地へ空母艦載機部隊(61機)の移駐計画受け入れを正式に表明した。

 日米が朝鮮、中国シフトを強めているが、沖縄の嘉手納基地と並ぶ米軍の前方展開を支える極東最大級の軍事拠点が生まれる。

 移駐部隊は今月初め、日本海(東海)に2隻の米空母が航行、朝鮮を強くけん制したうちの空母ロナルド・レーガン(神奈川県横須賀が母港)を発着する艦載機(米軍厚木基地に所属)部隊。

 7月から移駐を始めるのは、戦闘攻撃機EA18グラウラー6機など約60機。艦載機が移駐すれば、岩国基地には約130機が所属することになる。

 軍人・軍属、家族らも1万人を超え、市の総人口約13万7千人の約1割に相当し、本土最大の米軍基地の街が生まれる。

 米軍の戦力が西日本に集中し、緊迫化していく朝鮮半島にもっとも近い軍事拠点として、岩国基地が重視されていくだろう。

 軍事面で岩国市が朝鮮と向き合うことになる。

 騒音対策などの事前説明会では、「北朝鮮のミサイルの目標になるのでは」と危ぶむ声も出ていた。

 
7.防衛省、陸上イージスを予算要求

 防衛省は22日、陸上配備型の新たな迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入に向けた関連経費を、2018年度当初予算に計上するよう要求する方針を固めた。

 主として、朝鮮の弾道ミサイルへの対処能力を高めるのが目的。

 当初の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の導入は見送った。

 日本の弾道ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し、打ち漏らせば地対空誘導弾(PAC3)が大気圏内で迎え撃つという2段構えとなっている。

 イージス・アショアの導入で、それらを補完する。

 イージス・アショア1基あたり約8000億円(2017年6月現在の試算)。

 日米が現在開発中のミサイル「SM3ブロック2A」を用いれば、2基で日本全体を監視、防衛できるとしている。

 THAADは1基あたり1千億円超えで、全国に6基程度配備する必要があるとされていて、当面の費用の点で、イージス・アショアの導入を判断したようである。

 しかし、イージス・アショアは、現在開発中のミサイルSM3ブロック2Aとセット運用が予定されているから、費用はさらにはね上がっていくだろう。米軍産複合体制の思うつぼではないか。

 
8.慰安婦問題で、韓国政府に抗議

 安倍政権は23日までに、韓国の文在寅大統領が海外メディアのインタビューで、慰安婦問題をめぐる日本政府の対応が不十分との認識を示したことに対して、外交ルートを通じて韓国政府に抗議した。

 文氏は20日の米ワシントン・ポスト紙のインタビューで、慰安婦問題を解決するためには、「日本政府がその行為について法的責任を受け入れ、公式に謝罪することだ」と発言。

 また、22日のロイター通信のインタビューで、「日本は、慰安婦問題を含む韓国との歴史問題を解決するための十分な努力をしていない」と指摘。

 日本外務省幹部が23日、在日韓国大使館次席公使に電話で、日本政府の立場を伝えた。

 日本政府の立場とは、「2015年12月の日韓合意で最終的かつ不可逆的解決を確認している」というもの。

 日韓合意は、米国のアジア戦略上、日韓協力体制が必要なことから、当時のオバマ米政権が、両国に強く要請した結果の作品である。

 日韓合意の調印直後から南朝鮮では、反対の声が高まっていた。

 文在寅氏も大統領選挙時、日本に対して見直し交渉を主張していた。

 日本は、65年の日韓基本条約締結時と同様、米国の意向と支援のもと、植民地支配時代の歴史清算を経済支援名目の金の力で「フタ」をしようとしている。

 そうした日本の政治姿勢を、朝鮮人民たちは批判してきた。

 その象徴として、慰安婦への謝罪と補償を問題としていて、日本に突きつけられているのだ。

 その朝鮮人民の声を文氏は代弁して、安倍政権に要求しているのだ。

 安倍政権は、後ろ暗い「最終的かつ不可逆的解決」の影に身を隠さず、もっと誠実に対処すべきだ。それはまた、歴史に誠実に向き合うことでもあるからだ。


9.加計問題での前川氏発言

 前文部科学相事務次官の前川喜平氏は23日、日本記者クラブで記者会見し、学校法人「加計学園」の獣医学部の新設問題をめぐる首相官邸などの対応に、「不誠実で、内閣府や首相官邸は真相の解明から逃げようとしている」と批判した。

 新たな文書が次々と明らかになったことについても、「国民の間で疑惑が深まっている」と指摘。安倍首相に対して、「自ら先頭に立って説明責任を果たしてほしい」と求めた。

 第3者による学部新設の経緯の検証の必要性と自身の国会での証人喚問に応じる考えも改めて示した。

 さらに、「最初にインタビューしたのはNHKだが、放送されないままで、いまだに報じられない」と、NHKの報道姿勢をも批判した。

 前川氏の発言には、批判されるものはなく、むしろ一層、安倍政権への疑惑が深まった。

 疑念の主の1人、萩生田光一官房副長官は23日夜、記者団の取材に「安倍首相からいかなる指示を受けたこともなく、私が誰かに指示をしたこともない」と改めて主張していた。

 そうであるなら国会に出て、はっきり説明責任を果たすべきだ。

 説明できないということは、「加計学園」問題で不都合なことがあり、隠しておきたい何かがあるのだろう。

 その闇を暴き、安倍政権の正体を白日の下のさらけ出す必要がある。

 

―以上、6月23日に発信されたいくつかの事柄をつなぎ合わせてみた。

 安倍政権の「軍事体制」へと歩んでいる姿が見える。

                                                                  2017年6月24日 記

「つぶやき余録」

「つぶやき余録」


*味覚障害

 日本国内でも、貧困児童が増加していて、欠食者が相当いるとニュースになったりしている。

 食べることは、健康な生活を営むための基本だ。

 だから、成長期の児童たちが食事にこと欠くといった現象は、単に家庭や個人の責任ではなく、政治の貧困が原因だと言える。

 一方、私の方の食問題は、同じ「食べることができない」ということでも、2度の手術と薬による影響で、食欲不振と味覚障害によって悩んでいるもの。

 術後の体重が38キロにまで減退し、手足も骨格が浮き出るほどにやせ細ってしまった。

 このまま朽ち果てたくはないとの強い思いで、病院や医師が紹介してくれる栄養補助食を取り寄せてみるが、味覚障害の影響からか、どれも薬のような味がして続けられなかった。

 胃と腸の一部を切除しているので、食事量も健康時の3分の1程度しか入らない。医師は1日5~6回で、1日分の分量と内容を摂取すればいいと言うが、空腹感がなく中間の食事をしたことはない。

 その分、3食をなんとか義務(生きるための)として消化している。 

 常に栄養補給を考え、朝から肉や魚などを調理してもらっているものの、1年余りが経った今でも38キロから体重が少しも増えていない。

 栄養素はどこへ流出しているのだろうか。

 これ以上は体重を減らしてはいけないなどと考える日々が続くと、夢の中でこれまで好物であった物を食べている。

 その夢につられて、レストランや食堂に出かけて注文してみるが、味わいも分量も素直に喉から胃へと進んでくれず、残してしまう。

 味覚障害は人様々だが、私の場合、甘いものはよけいに甘く感じる(食べられない)し、味の濃い飲物はのどを通らない。

 お茶はもちろん、好きだったブラックコーヒーもまったく飲めない。一時は水も飲めなかった。

 薬を服用するためもあって、白湯で水分補給している。

 ということで、食事を満足に摂ることが今の私の戦いの一つになっているのだ。

 食べることはできないが、不思議と食欲はある。

 それで最近、新聞広告の通販食品を取り寄せている。

 送られてくる様々な食品で冷蔵庫を満杯にしてしまい、妻から苦情を受ける始末。これも一つの障害なのか。

 欠食児童と違って私の場合は、冷凍庫を満杯にしつつ、食べることができないという苦痛に悩まされ、闘っている。



*テレビは視ない

 政府答弁が迷走していた通常国会が18日、閉会した。

 会期150日間で焦点となったのは、南スーダンPKOの日報不在問題、森友学園への国有地売却問題、加計学園の獣医学部新設問題、共謀罪法案での政府答弁の不一致問題、憲法改正をめぐる首相の先走り問題―など。

 これらの問題で、首相、閣僚、官僚たちの強弁ぶりが目立ち、審議を空疎なものとしていた。

 野党各党からの疑問や質問に対して正面から受け止めず、質問とは違う空疎な答弁をくりかえしている姿勢が目立った。

 関連文書の存在は認めず、隠し通し、調べず、見つかっても「怪文書」だと言い逃れ続けた。

 だから何に対しても謝らない国会審議となった。

 連日、その内容をテレビや新聞が報じ、解説していたが、批判精神に欠け、問題の本質には迫っていなかった。

 政府批判もゆるく、テレビ報道(特にNHK)も安倍政権と秘かに結託しているのではないかと感じることが多々あった。

 バラエティー番組など、近年のテレビ番組全体の質が落ちている。

 ドラマはどれも、どの局も警察もので、「警察国家」の階段へと進んでいるのを見せている。

 もはや、テレビ各局は、国会で追及されている問題を、「問題」として追及し、分析する能力をなくしてしまったのか。もうテレビは見ない。



*朝顔にまつわる思い

 
 数年前、中国・撫順の「平頂山事件の式典」参加の、9・18柳条湖事件現場のフィールドワークの後、撫順戦犯管理所を訪問、国際シンポジウムに参加した。

 その折、元日本兵の戦犯たちが、管理所の内庭に植えた朝顔が、花が咲き終わって種になっていたその種を数十粒、もらって帰った。

 撫順戦犯管理所は、日本軍捕虜収容所だった場所。45年8月、旧満州(中国東北地方)に進軍してきたソ連軍が、60余万人の日本兵をシベリアに連行した。

 中華人民共和国建国後の50年、スターリンと毛沢東の会談で、1,000人ほどの日本兵捕虜が、戦犯として中国側に移管された。(選別の理由は不明)

 その中に、清朝最後の皇帝で、満州国皇帝となった溥儀(フギ)がいた。

 彼も一戦犯として、他の日本兵と同じく収容所内で反省する生活を送っていた。

 解放後は中華人民共和国の一国民として生活を送り、67年に死去した。

 私はこの撫順戦犯管理所を数回訪れている。

 それは、当時の中国側の捕虜に対する扱い、共産主義思想に基づく人間的な対応にあったからである。

 そこに共産主義思想の真髄も見ていた。

 戦犯に対する扱いは、国務院総理兼外交部長であった周恩来の指示で、いかなる暴力も暴言も禁じ、説得によって過去に犯した罪を自覚させ、謝罪させ、真の人間となるよう導くこととした。

 管理所職員たちのすべては、日本兵によって家族を虐殺されたり暴行を受けていた。

 彼らは当初、日本兵捕虜と接するだけで深い怒りのため、言葉が出なかったという。

 しかし軍国主義より共産主義思想が優越するとの信念のもと、説得と家族のような気持ちで接していった。

 戦犯たちは当初、自己の罪を隠したりして、帝国主義下で植えつけられた意識から脱することができなかったが、職員たちの人間的な態度に涙して、心を開くようになったという。

 この管理所からは誰一人、死刑や重刑になった人はいない。刑期の違いによって多少の差はあるものの、56年以降、全員が日本に帰国している。

 この日本軍戦犯たちの奇跡的心情は、「人から鬼に、鬼から人に」へと変わった事例として、語られている。

 彼らが朝顔を植えて育てたのは、「鬼から人」へと変心を遂げた時期だったと思われる。

 
 ―例によって、持ち帰った朝顔の種を、資料などの下に置き、忘れていた。

 今年の3月、別の資料を捜していて、袋の中に入れていた種を見つけた。で、今年こそはと、ベランダの鉢に、種を蒔いた。下旬頃になると、花の色は青紫色に変化している。

 この小さな青紫の朝顔の花は、今も私の中でひっそりと咲いている。

 50年前の10月、母が53歳の若さで膵臓癌で亡くなった朝、私は葬儀などの準備のため、病院から急いで家に帰った。

 何気なく玄関を見やると、そこに青紫色の小さな朝顔の花が咲いていた。

 草花などが好きだった母が、毎年、玄関先に朝顔を植えて育てていた。

 母が入院する前、花は咲かず、葉も枯れかけていたので、処理することを話していたが、入院手続きなどで忙しく、そのままにしていた。

 その朝顔が、母の死を悲しむかのように、花を付けて私を迎えてくれている。

 小さくて、平凡な色の青紫の花ではあるが、ベランダの朝顔が、元戦犯たちが帰国後に平和活動を続けたこと、私の心の中で母が懸命に生きてきた姿と重なり、私のたたかいのシンボルとなっている。 

                                                                  2017年6月20日 記載 
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