「安倍首相の本音」
安倍晋三首相は、正当性に疑問があるシリア攻撃を行ったトランプ米政権を早々に支持し、自衛隊を米韓合同軍事演習中の米艦艇との共同訓練をあたらせ、米軍と一体となった動きで朝鮮に圧力をかけた。
その理由として、「北朝鮮の脅威は新たな段階になった」などとふれまわっていた。
このように朝鮮半島危機を米国と共に造成しながら、朝鮮脅威論を吹聴している。
まるで狼が来たと叫んでいるようであった。
ところで、狼が来ることはなかったが、代わりに本物の怪物が出現した。
怪物とは、軍事大国志向の安倍政権のことである。
安倍政権は、日米同盟の対象能力を強化するためとの理屈をつけて、巡航ミサイルの導入に向けた本格検討を始めている。
巡航ミサイル導入で、敵基地攻撃能力の保有を高めようとしている。
「法理論上、自衛の範囲」だとして、憲法に違反しないとしている。
だが、巡航ミサイルは従来の自衛隊装備品(武器)とは違い、攻撃用武器である。
日本の防衛の基本方針である「専守防衛」から、大きく逸脱する。
安倍氏の「狼が来た」と叫んでいた本音は、専守防衛の自衛隊から先制攻撃が可能な「軍隊」を誕生させることであったようだ。
政府は、巡航ミサイル導入をめぐって、来年度予算案に調査費などを計上しようとしている。
まずは、野党各党の踏ん張りどころだ。
2017年5月6日 記
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「朝鮮の革命的原則」
1.
トランプ米政権は、中国は朝鮮に対して経済制裁を強め、実施することを期待している。
同時に、核とミサイル開発への忠告を行うことも期待している。
中国頼みである。
トランプ氏は、中国との貿易とからめて、朝鮮の核とミサイル開発阻止に向けての役割を押し付けた。
いまや米中貿易は、米中どちらの側からも対立と協調路線を歩まざるをえない地点にある。
中国は、経済上の観点から、朝鮮の核開発問題で米国に多少、歩み寄ったようである。
一方で、現在の朝鮮は、石油をはじめとする諸物資の90%以上を中国から輸入しているのも事実である。
こうした現状などから、中国の意向次第で、朝鮮の政治や経済が左右されると、米国その他の国々は錯覚している。
朝鮮が中国の意思を受け入れる環境の中にいるのだと、表面的で浅い理解しかしていない人たちが、中国の影響力を云々している。
彼らは、朝中間の深い歴史と地政学上の関係を無視しているのだ。
朝鮮はこれまで、もっとも困難な時期でさえ、他国の指示に従ったことはない。
自主の国である。
2.
朝中流通の窓口となっている中国東北地方には、朝鮮族自治州がある。
朝鮮族自治州を拠点にして、朝中貿易が発展してきた。
中国側にとっても、東北地方の経済発展を支える要として、朝鮮族が特別な存在となっている。
トランプ氏が単純に考えているように、中国が朝鮮に対して完全な経済的締め付けが行えるのかは、簡単な問題ではない。
中国も朝鮮の核開発を止めたいと考えている。
その点で、米国に歩み寄り、国連安保理での朝鮮制裁決議に賛同し、朝鮮への経済制裁を実施せざるをえないというジレンマに陥っている。
だが、米国に対しても対話での解決を促している。
そうしたバランス外交を多少、米国側に寄せたのか。
最近、中国は朝鮮への石油パイプラインを調節し、朝中貿易上の統計数字を公表するなどして、朝鮮への経済制裁を実施しているとの状況を暗黙裏に示そうとしているようだ。
3.
朝鮮は国土、人口、経済などの点でも小国である。
だからといって、弱小国家ではない。
世界の警察官を自負している米帝国主義と、75年以上にわたって政治的、軍事的に対立しながら、一歩も退かずに今も戦っている。
3年間の朝鮮戦争後、米国からの核の恫喝敵対関係から、現在は朝米核対決を戦っている。
その朝鮮の力の元は、思想的精神の全民一致である。
金正日総書記は2008年9月(建国60周年)、『朝鮮民主主義人民共和国は不滅の威力をもつチュチェの社会主義国である』との論文を発表している。
論文の中で、戦争によってすべてが破壊された廃墟のなかで、無からはじめて革命と建設において変革をもたらしたとしたうえで、その精神力を以下のように指摘している。
「現在、帝国主義反動勢力は、チュチェの祖国、わが共和国を『閉鎖』だの『孤立』だのと言って誹謗中傷し、われわれに『改革』、『開放』を強要しようと無益な策動をしています。われわれは一度たりとも他国に門戸を閉ざしたことはなく、世界の多くの国、数十億の人民と互いに尊重し合い、好ましい関係を結んでいます。改革について言うなら、われわれはすでに、数十年前に古い社会制度を革命的に改革し、いまも古く立ち遅れたあらゆるものを絶えず革新しながら新しいものを創造しています。事実、わが国を敵視し封じ込めようとしているのも、われわれを孤立させようとしているのも帝国主義者と反動勢力であり、彼らの言う『改革』『開放』なるものも、朝鮮式の社会主義を崩壊させようとする侵略的な瓦解策動です。帝国主義反動勢力のこうした策動は、わが国との関係をいっそう悪化させるのみであり、失敗は免れないでしょう」
チュチェ思想で一致団結している朝鮮人民の主体精神は、何らの変化もなく、後退もしていない。
また、他国からの援助の度合も気にしていない。
4.
朝鮮でガソリンや消費物資が値上がりしていると伝えられている。
朝鮮中央通信は3日、「朝中関係の根本を否定し、親善の伝統を抹殺する容認できない妄動だ」とめずらしくも中国批判の論評を発表した。
中国が朝鮮の核開発に対して拒否感を示していることについても、「世紀を継いで発展してきた朝中関係を丸ごと壊していることに憤慨を禁じ得ない」「われわれにとって核は尊厳と力の絶対的象徴」で「朝中友好がいくら大事だと言っても、核と引き換えにして物乞いするわれわれではない」と主張した。
つまり、米国の態度が変化しない限り、核は絶対に手放さないことを改めて宣言したことになる。
一方、中国の環球時報は4日、「北朝鮮と論戦をしないし、核問題で妥協もしない」とし、中朝関係の主導権は、「間違いなく中国側にある」との反論を出した。
どちらも、評論員という個人名義での発表であって、党や通信社の公式な論評ではない。双方とも配慮していることがうかがわれる。
中国外務省も4日の定例記者会見で、「中国は長年、客観的で公正な立場で問題解決にあたってきた」と反論しつつ、「中朝関係を友好的に発展させる中国の立場は一貫している。関係各国は地域の平和安定に責任を持つように望む」と強調し、朝鮮半島の非核化に向けては、対話解決で努力していくことを、あらためて米国に対して要求したことになる。
中国が石油輸出制限を含む厳しい制裁を、朝鮮に行ったことは事実であろう。
ただ、その効果を、トランプ米政権に見せつける必要から、朝中双方は評論員での主張という形で、「演技」を行ったのではないか。
もしそうであるとすれば、トランプ氏はこの状況をどのように判断するのだろうか。
2017年5月5日 記
「朝鮮半島の挑発者は米国だ」
1.
朝米間は1953年に結んだ停戦協定のままで、いまだに対戦国関係の状態が解消されていない。
敵国関係なのである。
歴代の米政権は、主として核威嚇政策と米韓合同軍事演習で、朝鮮に軍事的挑発と脅威を与え続けてきた。
これに対して朝鮮は、当初は専守防衛体制に専念しながら、米本土に到達できる核兵器を保有し、手に入れることになった。
米国はこのことを脅威に感じている。朝鮮が核やミサイルの発射実験(確実にレベルアップしている)を実施するたび、国連安保理での「制裁」論を騒ぎ立てているからである。
朝鮮半島周辺国、または国連安全保障理事国の知性は、朝鮮の開発した核とミサイルは「脅威」「挑発」であるから、「制裁」の対象となるが、米国が朝鮮に向けて実施している各種軍事演習や軍事的圧力は何ら問題なく、「制裁」の対象にすらならないと、本気で考えているのだろうか。
国連安保理の機能は、現朝鮮停戦協定を平和協定に転換するように促し、朝鮮半島の軍事的緊張と危機を造成させないよう、関係各国と共に努力することであったのではないか。
敵国関係にある一方だけの見解に基づいた議論だけで判断し、可決することは無効ではないのか。国際正義に反している。
2.
韓国の大統領選挙は5月9日に実施される。
今のところ、主要5候補のうち、「共に民主党」の文在寅候補が支持率トップの位置にいる。
主な5つの論点についての文氏の主張。
①北との関係では交流、対話、協力を進め、開城工業団地について、早期再稼働を進める。
②サードの配備では、次期政権で公論化し、国会の同意を経てから配備の有無を決定する。
③国家情報院改編問題については、国民のための情報機関として、「海外安保情報院」に再生する。(国家情報院は、これまで大統領選不正介入、政治介入、民間人査察、スパイねつ造事件を起こし、常に改革対象となっている。今回、国会情報院改革を掲げたのは文氏のみ)
④「北朝鮮主敵概念論」について、6・15精神を否定するものだとして、6・15精神を進める。
⑤「少女像」移転問題では、韓日合意は朴政権の屈辱外交であり、日本の法的責任と公式謝罪がない合意は無効で、再交渉を要求していくとしている。
以上、文氏の主張は革新的で、米国の許容を超えてる。
その文氏の主張が、現韓国社会の声である。
若者たちの就職難が深刻化し、15~29歳の失業率が上昇の一途をたどり、昨年は9.8%に達しているという背景が韓国社会を動かしている。
「ヘル(地獄)朝鮮」と自嘲する若者たちの声は、朴槿恵政権を倒し、革新系の文氏を支持している。
3.
米国は、アジア地域の安保戦略上、朝鮮半島を要として重視している。
南北分断の現実を利用して、南北対立を煽り、朝鮮半島危機と緊張状態を作り、軍事力を誇示してきた。
そのための拠点となる韓国政治は、北との距離を取る保守政権が好ましい。
韓国の大統領選や国会議員選挙のたび、裏面では米情報機関が暗躍し、表面的には南北の対決構図を悪用して、そのレベルを上げることで、保守政権を誕生させてきた。
その一つが、「定例的」と主張している米韓合同軍事演習の活用である。
トランプ政権は最初に、反朴民衆の韓国パワーに驚き、5月9日の大統領選の動向に危機感を抱いたのではないか。
朴政権を倒したパワーが、予想以上に革新系候補を押し上げて「定例」という合同軍事演習を昨年を上回る史上最大規模としたことに、トランプ政権の意図が隠されている。
途中で、原子力空母「カール・ビンソン」を追加して、朝鮮を一段と刺激し、緊張状態を高めている。
このようにして、朝米対決を一段と高める一方で、革新系候補が大統領となった場合にも備え、4月26日にサード装備の一部(レーダー、迎撃ミサイル、発射台など核心装備)を電撃的に搬入した。
新政権が成立するまでには、すでにサードが配備されており、新政権が米国との話し合いを行う余地さえなくそうとしている。
4.
安倍晋三首相は、ロシア、イギリスなどの訪問国で、「北朝鮮への国際的な圧力包囲網」を力説して、トランプ政権の代弁役を果たしている。
安倍氏もまた、「北朝鮮脅威」論を叫ぶことによって、政権内のさまざまな不祥事から、国民の目を逸らそうとする魂胆があるようだ。
同時に、日朝間で日本が基本的に解決しなければならない問題の永久放棄すら考えているとの疑いもぬぐえない。
毎日新聞社が22日、23日の両日に実施した全国世論調査では、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対して「外交努力を強める」64%、「軍事的圧力を強める」21%と結果が出ている。安倍氏の政策は世論にも反しているのだ。
安倍氏が進める日米同盟の密着こそが、朝鮮半島の危機をまねている。結束した国際社会は、朝鮮の制裁を議論する場を設けるのではなく、米国に朝鮮への対話を促していくべきである。
2017年4月29日 記
「米国こそ脅威の元凶者」
1.朝鮮半島の現状
米原子力空母カール・ビンソン打撃群と海上自衛隊基地の共同訓練が4月23日、西太平洋のフィリピン海で行われた。
同訓練は3月7日から10日と、27日から29日に東シナ海でも実施(4月下旬に四国沖でも)している。
その後、空母打撃群は韓国との合同軍事演習に参加する予定だという。
日本政府は、米韓合同軍事演習中の米軍との共同訓練を、朝鮮への「強い牽制」だと位置づけ、日米が(軍事的に)共同で対処できる態勢を示すことで、金正恩朝鮮労働党委員長に6回目の核実験や弾道ミサイル発射を思いとどまらせる「抑止」策だとしている。
自民党の茂木敏充政調会長は23日の記者会見で、「日米で北朝鮮の問題なか協力して対応する強いメッセージを発することができる。今ある脅威を考えたら、共同訓練は当然のことだ」
「米国のあらゆる選択肢がテーブルの上にあるという強い姿勢の下、北朝鮮に自制を求める一環で、平和的な外交面での解決が基本だ。中国にも大きな役割を果たしてほしい」と語った。
軍事政策の強化を目指している安倍政権の本音を語っていると同時に、トランプ政権の代弁役をも果たしている。
軍事力を含めた「あらゆる選択肢」を排除しないとするトランプ政権は、今回の空母派遣が朝鮮への対応であることを早くから公言している。これは単なる牽制ではなく、恫喝そのものである。
従って、日米共同訓練は、通常行為以上の政治的意味合いをもった軍事的メッセージを朝鮮に発信していたことになる。
共同軍事訓練などで日米が、朝鮮半島の緊張激化を誘発しているのだ。
これ以上の緊張激化を続け、高めていくならば、予期せぬ軍事衝突が起こる可能性がある。
安倍晋三首相は24日、電話での日米首脳協議で、朝鮮に自制を求めることで一致したと発表した。
「すべての選択肢がテーブルにあることを、言葉と行動で示すトランプ大統領の姿勢を高く評価した。危険な挑発行動を繰り返す北朝鮮に強く自制を求めていくことで完全に位置した」
「引き続き、米国と緊密に連携して、高度な警戒監視体制を維持する」と述べた。
自制するのは日米の側であって、その日米が朝鮮に自制を要求するというのは欺瞞そのものだ。
朝鮮半島の現状は、過去の戦争がまだ継続中なのである。
朝米間は、1953年に停戦協定を結んだままで、平和協定には転換されていない。
米国がそれを拒否してきたから、朝鮮戦争がいまだに継続しているのである。
そのような朝鮮海域周辺で、大規模な軍事演習を実施すればどうなるか。
相手側は侵略者が再び上陸し、戦争を始めるのではないかと考え、対抗措置をとることになる。
この場合、どちらが挑発者と言えるだろうか。
緊迫する朝鮮半島情勢の本質は、朝米間の問題である。
そこに日本が軍事レベルで介入したことを、安倍氏はどのように判断しているのだろうか。
朝鮮の隣国として、朝鮮半島の緊張激化には危機感を持ち、それに対処していくことは、政権担当者の義務の範囲内である。
だが、今回は日本および安倍氏はあまりにも緊張激化の中に深入りしてしまった。
いや、むしろ、トランプ政権の「力の誇示」政策に同調して、朝鮮に軍事的圧力を強め、緊張を作り出す「同盟者」となっていた。
日米が、緊張を激化させたという「危うさ」がつきまとう朝鮮の平和安定を日本が望むのならば、米国に対しては、対話での解決を求めるよう話すのが基本で、日本自身のためである。
そのために日本は、自らの過去を清算したうえで、朝鮮と正常な2国間関係を結ぶ努力をすべきである。
ところが日米両国は、それらとは真逆の「危険な挑発行動」を続けている。
真に「自制」を要求しなければならないのは、日米両国である。
2.作られた危機
最近、ミサイル攻撃を受けた際の避難方法を紹介した政府の「国民保護ポータルサイト」へのアクセス数が急増しているという。
その背景には、安倍政権の対朝鮮政策、朝鮮有事の際に、自衛隊が「参戦」するプログラムが進んでいるといった、「危機」状況があるだろう。
すでに外務省は、在韓邦人の保護などの具体的な準備を進めており、複数の市町村では、ミサイルが発射された際の避難訓練を4月に実施したところもある。
愛媛県は24日、朝鮮からの弾道ミサイル攻撃を想定して、落下時の住民避難の方法を、県のホームページのトップページ「重要なお知らせ」として掲載した。
「弾道ミサイルは発射から短時間で着弾するため、日本に落下の可能性があれば、政府は防災行政無線や緊急速報メールで情報を発信する。爆風や破片などによる被害を避けるため、近くの頑丈な建物や地下街への避難が有効」だと、政府のホームページと同内容を掲載した。
さらに、市町村の協力が得られれば、住民の避難訓練の実施を検討するとしている。
20日以降、民放各社がニュースやトーク番組などで、「北朝鮮で何が起こるかわからない」との意味不明な危機を発信していたことと、政府が朝鮮半島危機を高めていたこととが重なっていたことが、(北)朝鮮からミサイルが撃ち込まれるかもしれないとの間違った認識と恐怖感を、社会全体に浸透させていた。
朝鮮が29日朝、ミサイルを発射したとの情報を受けて、地下鉄を運行する東京メトロとJR東京が、列車を一時(10分程度)停車させた。
政府の全国瞬時警報システム(Jアラート)を判断基準としている他の鉄道会社は通常通り運行を続けていたにもかかわらず、Jアラートが作動されなかったのに、列車を止めた東京メトロなどを、早とちりだと批判するより、すでに「朝鮮脅威」の意識が一寸のことでパニック状態に陥ってしまう日本社会の異常さこそ、問題にすべきではなかっただろうか。
翌日の韓国各紙は「大げさ」、「軽率」、「裏に政府の存在がある」などと、揶揄していた。
3.日本ペンクラブの声明
日本ペンクラブは24日、「北朝鮮をめぐる軍事的破局を回避せよ」との声明を発表した。
朝鮮の指導部に対しては、「核実験その他の軍事的な挑発をただちにやめなければならない」と訴えると同時に、日本、韓国、米国、中国、ロシアなど朝鮮半島周辺諸国政府には、「軍事力をもてあそぶことなく、あくまで平和的に解決する努力を続けるべきである」と求めた。
朝鮮半島の軍事的危機が一段と高まっていたころだから、適切な時期の適切な声明の発表だったと言えるだろう。
だが、朝鮮が置かれている現状への認識がやや欠如していたのではないかと思われる表現と部分があった。
毎年、朝鮮半島で起きる軍事的緊張の基本は、朝鮮戦争の延長からくるものであり、敵対する朝米間の軍事的駆け引きからの発生、それが根本となっている。
したがって、まずは朝鮮戦争停戦協定を、朝米平和協定へと転換する手立てが必要である。
米国は、53年の停戦協定調印以降、朝鮮に対して、軍事的な圧力を強め続け、核先制攻撃さえ示唆している。
朝鮮はそのような米国からの侵攻を防ぐために、核およびミサイルを開発して、防衛力を高めた。
停戦協定を平和協定に転換しない限り、朝鮮半島での軍事衝突は、いつでも現実味をおびてくる。
世界でもっとも危険なホットスポット、それが朝鮮半島の現風景なのだ。
朝鮮の核やミサイルの照準は、敵・米国(米軍基地が存在する日本にも)に向けられているが、決して先制攻撃のためではない。
ところが、朝鮮が核やミサイルを発射するたび、国際社会への「挑発」「暴挙」だと批判している。
一方、米国が朝鮮に向けて米韓合同軍事演習など軍事的圧力を実施していても、「挑発」とか批判の声が聞こえてこないのはどうしたことか。
それそのものが米情報機関による情報操作であったのだ。
今年、朝鮮側の中止要求メッセージを無視したトランプ政権は、史上最大規模の合同軍事演習を強行、途中で原子力空母カール・ビンソンを投入するなどして、朝鮮半島に戦争危機を作り出した。
これこそが暴挙だ。
そのようなトランプ政権に賛同を表明し、日米訓練を実行し、朝鮮に軍事的圧力を加えた安倍政権も同罪だ。
日本ペンクラブとしては、米国に対して合同軍事演習のただちの中止と、朝鮮との対話(平和的解決)努力への要求、安倍政権に対しては、トランプ政権の軍事的圧力政策に加担するのではなく、朝鮮との対話解決を提案すべきではなかっただろうか。
4.「力の誇示」政策は失敗する
トランプ政権内の対朝鮮政策は、まだ定まっておらず、揺れている。
それが、「テーブルの上には何でもある」という表現になっているのであろう。
その「何でも」が日替わりメニューのように、トランプ氏の気分次第で変わり、統一性がない。
朝鮮に対する情報や知識不足、政権内部の意思疎通がないことによるのだろう。
だから、経済人一流のはったりで、トランプ氏は強気姿勢(軍事的圧力)で、朝鮮側の反応をテストしているようだ。
4月にはそのレベルを上げた。
そこに安倍政権が同調し、朝鮮に対して日米の軍事的密接度を見せつけた。
これまで概念上の日米韓軍事体制が語られ、さまざまな協議を重ねている。
それがトランプ政権の誕生と、軍事重視の安倍政権が結びつき、一足飛びに現実化へと向かっている。
そのテスト版が、米韓合同軍事演習中の日米訓練(演習)であった。
日米でさらに、朝鮮への軍事的圧力を見せつけた。
安倍政権にとっては、安保関連法での現実施行への追い風として、「北朝鮮脅威」論が必要であったのだ。
安倍氏は、トランプ政権の朝鮮圧力政策を利用して、自ら進めている戦争法の整備、環境整備を行っている。
このように、朝鮮に対して使用している「脅威」「挑発」「暴挙」などの表現の裏側には、安倍政権やトランプ政権の、帝国主義的危険な思惑が隠されているのだ。
2017年4月29日 記
「4月25日のテレビニュースから」
4月25日。
朝鮮人民軍創建85周年の記念日。
この前後、朝鮮が核実験若しくはミサイルを発射するのではないかとの観測が早くからあり、Xデーとして注目する情報が、テレビ各局から流されていた。
4月に入ってトランプ米政権が、米韓合同軍事演習と共に軍事的圧力を高めていたため、朝鮮半島の危機的状況が高まっていた。
その中でのXデー。
直前からNHKをはじめ、民放各社は、程度の差こそあれ、朝鮮関連情報が増えていった。
テレビに煽られた一般社会も、何かが起こる、何かがあるのではと、恐怖心と興味を混ぜたような心理状態に陥っていたようだ。
では、Xデー当日の各局のニュースはとうだったのか。
NHKと民放5社からのニュースの標題とい限られた内容であるが、ここから、マスメディアの朝鮮関連報道の姿勢、傾向を見てみたい。
2.
各局ともニュース番組は、朝、昼、夕方5時、7時、9時、10時及び11時の時間帯に放送している。
最近、1日のニュースの時間帯が多いのはいいが、朝から夜まで同じテーマを扱っており、しかも各局が横並び傾向であるから、どれか1本だけ観れば、後は同じものを見つめているのと同じである。(局によって、切り口を変える努力をしているものもあるが)
では、4月25日のニュース番組を、朝から順に記す。
NHKは以下の4本。
「北朝鮮、日米を威嚇」
「北朝鮮軍創設85年で、核実験・ミサイル警戒」
「北朝鮮はどう出る?軍記念日で各国が警戒」
「緊張高まる北朝鮮情勢、武力衝突はありうるか」
次に民放5社。(アトランダムに)
「北朝鮮軍創建85周年で日米中は?」
「緊迫北朝鮮ミサイル発射はどうする」
「北朝鮮、今日、軍の創建85周年の記念日に軍事挑発の動きは」
「金正恩どう動く?核実験?ミサイルは?」
「北朝鮮・・・軍創建記念日で動きは」
「厳戒記念日、北朝鮮TV何を報じる」
「迫る脅威、北朝鮮きょうXデー?」
「日米韓が警戒の中で、北朝鮮軍創建記念日」
「核実験は挑発、北朝鮮に日米どう対応?」
「北朝鮮きょう核実験か」
「金正恩氏、今日85周年記念日」
「北、警戒」
「緊迫感増す北朝鮮情勢」
「きょう記念日Xデーか」
「きょう北朝鮮で記念日、軍創建85周年で核実験は」
「北朝鮮の新たな挑発は。記念日で情勢緊迫」
「北朝鮮きょうXデー」
「北朝鮮対米強硬姿勢・・・金王朝本音」
「緊張続くきょう、軍創建記念日・北朝鮮の挑発」
「日米中警戒強めるか、朝鮮人民軍創建85周年の記念日」
以上、標題から見る限り、各局とも核もしくはミサイルが発射されるとの前提に立って、番組作りをしていることがわかる。
また、従来の対朝鮮表現では、日米韓3カ国がセットとなっていたが、今回は韓国の代わりに中国が入り、「中日米」の3カ国がセットとなっている。
これもトランプ氏が中国の役割(経済的圧力)に期待を表明していたことに関連したものなのだろうか。
3.
モニター的にいくつかの番組を観た。
どこも、どの時間帯も米国の観点で作られていて、朝鮮が「挑発」を行うなどと、朝鮮「懲罰」姿勢の内容(コメントも)で貫かれていた。今更驚くには当たらないことではあるが。
朝鮮が核実験、もしくはミサイルを発射するかもしれないとするその背景、米韓合同軍事演習の強行、原子力空母「カール・ビンソン」の動向、日米が合同軍事演習を行ったことの現実など、米国が従来以上に、軍事的圧力を朝鮮にかけていた事実を、しっかりと伝えていなかったことは、完全に米国の宣伝機関となっていることを表している。
朝から、どのチャンネルに切り替えても、同様の内容を見ていた人たちの意識は、それ以前の朝鮮情報とも重なり、朝鮮への恐怖感や不快感を大きく募らせただろう。
それだけでもテレビ界の罪は重い。
そればかりか、「北朝鮮脅威」意識を増産したことで、意識と時間双方で、国内政治の重要な問題点を隠し、安部晋三政権を助けている罪の方がもっと重い。
テレビ界の奮起を望む。
2017年4月26日 記
「日本の近代史をもっとよく理解しよう」
1.近代日本の性格
かつて大阪で内国勧業博覧会が開かれたとき(1943年4月)、「学術人類館」が設置された。
その展示館にはアイヌ人(北海道)、琉球人(沖縄)、朝鮮人、台湾、原住民(高砂族)の生きた人間が、「学術標本」として展覧された。
今では考えられないことだが、明治維新政権の帝国主義観そのままに、彼らを未開の植民地人だとする蔑視観として、現れている。
朝鮮人や台湾人への蔑視観は、戦前期を通じて、植民地化が深まるほどに強化されていった。
その残余がいまも、日本人の心をむしばんでいる。
ヘイトスピーチの発生は言うに及ばず、日本社会全体が在日朝鮮人を排斥する構造から、未だ解放されていない。
その蔑視観や差別観は、少しのきっかけで、恐怖感へと転化して、関東大震災時の朝鮮人大量虐殺事件や様々なデゴマーク事件を作り上げて、国籍の違いによる差別と弾圧を行ってきた。
残念ながら、その構造は現代も変わらず、対象を朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に向けている。
朝鮮が核やミサイル実験をするたび、「挑発」「脅威」だとして、「制裁」すべきだとする感覚そのものが、米国のプロパガンダに汚染されていることに気付いてほしい。
2.民族同化政策
明治維新政府の日本近代化づくりの基本方針は、朝鮮をはじめとするアジアを植民地化する「脱亜入欧」であった。
はじめての海外派兵は1874年。台湾に出兵した日本は、清国に琉球の領有権を認めさせると、翌年、軍事力を用いた江華島事件で朝鮮を強制的に開国させた。
内国勧業博覧会が開かれる1903年頃になると、朝鮮支配権でロシアと対立するようになり、対露強硬論が政権内外から起こってくる。
翌年2月、ロシアに宣戦布告(日露戦争)。
朝鮮に対しては1904年2月、日韓議定書を強要。
日韓議定書締結の直接的な目的は日露戦争を有利に展開することにあり、韓国の政治、軍事、経済面での支配を強化することにあった。
韓国保護国化への第1歩であったそれ以降、日本は朝鮮の支配を加速させていく。
同時に朝鮮と台湾の植民地化は過酷を極め、固有の民族権利すべてを否定し、同化政策を強要した。
彼らの名前、ことば、生活習慣、伝統文化を否定し、果ては歴史まで日本神話に都合よく作り変えている。
3.アイヌ「旧土人」法とは
一方、国内では1899年、「北海道旧土人保護法」を制定した。
「旧土人」とは、「未開に住む、野蛮な人々」「無知で知識が幼稚な人々」という意味になり、差別的な表現だ。
もともと北海道には、少数先住民のアイヌ民族が住んでいた。
彼らはその土地を、アイヌモシリ(人間の土地)と呼んでいた。
明治維新政府は、1868年3月、蝦夷地支配に乗り出す。
函館戦争後の69年8月、北海道と改称。
アイヌに対しては、生業剥奪、強制移住、言語・生活風俗の禁圧などによって、日本人への同化強制が行われた。
彼らの保護論が高まり、99年に「保護法」が制定された。
「保護」とは言え、彼らの生活権利をますます奪い取るための法的措置で、アイヌが自由に使っていた土地を取り上げ、農業への従事と医療・教育面での扶助を与えたが、かえって差別と貧窮が固定化することなった。
民族精神を奪い取り、日本への同化を強要した「韓国保護法」と同根である。
4.明治150年事業を危惧する
「旧土人保護法」制定から約100年後の1997年7月、「アイヌ新法」が施行されている。
正式には、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」で、アイヌ民族の文化振興などを目的としている。
その第1条には「アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせてわが国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする」としている。
アイヌ文化の継承者の育成、普及啓発、調査研究の実施などを挙げているが、「土人法」廃止が遅れたこと、その経緯、先住民族としての位置づけ、文化振興を行う理由については、明確になっていない。
維新政府から連綿を引き継いできた侵略観、排外思想が否定も整理もされずに、言葉だけをを時代の精神に合わせただけである。
今年、安倍政権は、「明治150年」記念行事を大々的に施行する、としている。
明治維新期の天皇制ファシズムを完全に清算しないまま、安倍政権のナショナリズムとが結びついていく契機となる可能性を危惧している。
2017年4月19日 記
「教育勅語教材化の背景」
1.
安倍政権は18日、教育勅語を教材として使用することについて、憲法や教育基本法に反するかどうかの判断や、不適切に使った場合の対応を、都道府県などに委ねるとする答弁書(民進党の長妻昭氏の質問主意書への答)を決定した。
答弁書では、憲法や教育基本法に反する形で教育勅語を用いることは「許されない」として、原則論を主張して責任逃れをしている。
基本的には、教育勅語を教材として使用したいとする安倍首相の意向を受けて、政権側は教育勅語の教材化を進め、その使用の判断と責任を都道府県側に押し付けるものとなっている。
さらに、文部科学大臣は道徳の教材使用を否定せず、副大臣は朝礼での朗読まで認めた。
いずれも、教育基本法に反しない限りとしているが、その基準が示されておらず、あいまいなままである。
安倍政権は、すべてを現場判断だといいわけできる状況を作り、戦前、戦中の道徳教育風景を展開しようとしているのだ。
2.
教育勅語の基本はどのように考えても、天皇が国民に対して、守るべき儒教的内容の道徳を命令したものである。
国民は、(天皇)国家のためには、一身の犠牲をもかえりみないことが最上の「道徳」だと教え、思想及び良心の自由もなく、市民的不服従の権利、良心兵役拒否などを否定した。
一方で、現日本国憲法第19条は、「思想及び良心の自由」を規定している。
思想及び良心の自由に基づき、場合によっては国家の命令に従わない、市民的不服従の権利が保障されている。
現憲法の規定と教育勅語の道徳感は完全に相反しているのだ。
それを道徳教育の教材として使用することは、小学生の幼少期の精神世界に、戦中の戦争風景を植え付ける準備をしているということである。
安倍政権は、改憲・戦争ができる国に向かって、外堀埋める作業を急いでるのだ。
2017年4月20日 記
「つぶやき余録」
1.切り抜き資料
気がつけば、新聞および雑誌などの切り抜き作業をやっている。
朝鮮半島関連情報だけでなく、これまでも追っていた環境、原発、古代史などのテーマについても切り抜いている。
膵臓癌とわかり、入院・手術・抗癌剤治療を繰り返していた3年近くの間、その切り抜き作業をやめていた。というよりも意欲が湧かず、できなかったというべきか。
部屋2つ分を埋め尽くしている資料群、食卓を兼ねている大きなテーブルに積み上げたままの雑誌類と書きかけの原稿群、私はこの風景が落ち着く。
家族からは少しはなんとかしてと、何度も頼まれるものの、これが私の現在地なのだと開き直ってきた。
癌と宣告されて以降、2度の大きな手術から生還して以降も、不思議に自分自身の死について悩んだことはなかった。
ずっとそれ以前から、非宗教的方法での結末処理を考えていたからかもしれない。
それよりも、いかに生き抜き、戦っていくかを考えていた。
とはいえ、身体は正直なもので、抗癌剤治療後は長らく、様々な後遺症に悩み、あらゆることに対して気力が落ち、外出もできなかった。
当然のことながら、筋力は極端に落ち、癌と不実な社会と戦う意志とは別に、現実は負のスパイラルに陥っていた。
そのような現実から脱出しようとして、乱雑に積み上げられている資料の山を崩し、整理作業を1、2度試みた。
整理作業とはいっても、一つの山を崩して、また積み直す程度のもので、きれいに片付いたという印象はない。それでも小さな段ボール箱1杯分以上の紙ごみが出てきた。
必要だと思っていたものも、ちょっとの時間の経過で「紙ごみ」になってしまう。
私の死後、すべてのものが「紙ごみ」となって捨てられるのかと考えると、整理する家族たちのことも考えて、せめて切り抜きは止めようと思ったこともある。
今もそうであるが、以前から切り抜きや資料を使って原稿を書いているわけではない。資料や切り抜きは安心材料であり、別の発想源にもなっていて、現在のように短い原稿執筆に困ることはない。
切り抜きは長年の私の習慣のようなものであり、これを再開できていることに意味があるのだ。今の私にとっては、癌とたたかう「武器」である。
過度にならないことを心がけることで、今しばらくは家族に許してもらうほかない。
3.野の小さな花々
3月下旬から、天候の良い日に外出、散歩を試みている。
散歩といっても、マンションの周りの見慣れた風景の中をせいぜい20~30分程度のことである。
足の筋力が極端に低下し、歩行は揺れ、歩幅も小さくなっている。
車とすれ違う時など、車に吸い込まれそうで、自分でも危ないと思うことがある。
今の私にとって、歩くことは「戦い」でもあるのだ。
元気な頃の目線は、はるか先を見つめて歩いていたから、案外、足元の状況には気付かずにいた。
その頃の姿勢を試みようとするのだが、すぐに目線が足元から先のところに落ちてしまう。
まだ、腰は曲がっていなし、背も丸まっていない。
杖もついてはいないが、体力・筋力の落ち込みの影響からか、目線の落ち着く先はどうしても足元である。
それも気にせず、歩くことに集中していると、道端のところどころに、数ミリほどの小さな花が、一輪ニ輪と咲いているのに気づいた。
道路の端のコンクリートの割れ目から、街路樹の中の砂から、または雑草の片隅で、ひっそりと花を付けている。
長年、同じ道を歩き、勝手知った場所にも関わらず、小さな花々の存在には気付かなかった。
その気になって歩きながら見つめ、気にとめていると、赤、ピンク、黄色、紫、青、白、オレンジなど、豊富な色彩と形を発見して、心が豊かになってくるのを覚えた。
雑草に埋もれるようにして、地面に這うように咲いている花の名は知らないが、どの花もしっかりと自己の存在を主張しているように思えた。
毎年、同じ場所で同じころに咲く花々。誰に認められようと認められまいと、花たちは一生懸命、それがまるで使命かのようにして、季節の変化を知らせている。
私はそんな花の存在が好きだ。
雑草の上で、大輪の花を咲かせているものたちは、華やかですぐに人目につき、その存在を誇示しているようだ。小さな雑草の花を知ってから、華やかさを競う大輪の花々を、華やかさだけを口先で誇示する人と結びつけて考えてしまった。これは、私が癌と戦う生活を送っているひがみだろうか。
改めて、雑草の花たちに、これまでの自分自身の生を重ねながら、残り少ない生の期間の生きる指針としていきたい。
今日も、花を見に行こうと思う。
3.最初の記憶
私自身、最初の記憶は、3歳の時のことである。
若い看護師に車いすで海辺に連れて行ってもらった時のこと、ベッドで折り紙などで遊んでもらっていたことなど。
母から後に、そこは堺市大浜海岸近くにあったサナトリウムだと教えてもらった。。
結核だったのか、心臓血管に問題があったのか、退院した後もまた入院している。
医師から、小学校入学が難しいだろうと告げられたが、両親は、乏しい家計から私にだけ栄養物を食べさせた。
激しい運動はいけないということで、小学校時代の体育の時間は、「見学組」となった。
2年生までは軍国教育が当然の戦前であったから、担当教官の、「役立たずの非国民」的目線の下で、私の存在は無視されていた。
10代になっても幾つかの病気と戦い、病院との付き合いも欠かせなかった。
母は、当時としては貴重なたまごや牛乳、肉などを私にだけ食べさせるために、どこからか調達してきた。(まだ、疎開先の農村地帯に住んでいた)
経済的な関係で栄養物の貴重な食品も私一人だけで、幼い弟(3人)たちには回らなかった。
弟たちが物欲しそうに見ている前で食べるのは、私にもつらかった。
「生きるためだから」と、私と弟たちは納得させられていた。
時折、母が席を立ったときなど、一口ずつ弟たちに食べさせていた。
食べ物のことで、弟たちと争うことがなかったことも、母の大きな愛のおかげだったのだと、後年になって感謝するようになった。
長らく、心血管、結核カリエス、虚弱体質などに悩み、家族も私自身も、20歳まで生きられないだろうと、何となく感じていた。
それが今、56歳で亡くなった母と、79歳で亡くなった父の年齢を越えて、私は80歳を生きている。
これは、母が苦労して毎日、高価な栄養食品を食べさせようと苦労した結果だ。
このことをしっかりと受け止め、癌との戦いに挑んでいく。
2017年4月19日 記
「トランプ政権の運営、まだ未熟」
米軍事専門誌の「ディフェンス・ニューズ(電子版)」は17日、原子力空母「カール・ビンソン」は15日時点で「朝鮮半島から5600キロ離れたインドネシア周辺を航行していた」と報じた。
米政権内の情報共有、連絡にミスがあったとしか思えない。基本欠如だ。
米海軍筋によると、25日の朝鮮人民軍創建記念日前後には、朝鮮半島近海に展開する可能性を否定していない。
朝鮮の出方を探っているのか、中国の影響力行使に期待しているのか、それともトランプ米大統領自身が「手の内を見せたくない」とする戦術なのか、まったくの無策で思いつきのはったりだったのか、どこに焦点があるのか不明だ。
ただ聞こえてくるのは、前政権の「戦略的忍耐」を全否定、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」「レッドラインについて、明確に示す考えはない」などと、力の政策の誇示である。その一方では、はっきりとした判断基準がないこともわかる。
「カール・ビンソン」空母打撃群が8日、シンガポールを出航した際にトランプ氏も11日、「無敵艦隊」を朝鮮半島近海に派遣したと発言していた。
すべてが経済人一流のはったりだと言うより、トランプ政権内ではまだ、対朝鮮政策が固まっていないということなのだろう。
それ故、発言のぶれと不一致があり、周辺国は翻弄されている。
一時期は、朝鮮半島に「実戦」的緊張が高まっていた。
朝米両国とも、「チキンレース」を実施していたのだ。
トランプ政権にとって、韓国との最初の合同軍事演習であった一方、朝鮮の金正恩体制にとっても、オバマ前政権の「戦略的忍耐」を否定したトランプ政権の戦略を確認しておく必要があった。
結果、朝米ともチキンレースとならざるを得なかった。
それにしても米国は迷惑なものだ。発端となっている米韓合同軍事演習は中止されるべきだ。
それによってはじめて、朝米間の新しい関係が始まるだろう。
2017年4月19日 記
「朝鮮危機は米国の謀略だ」
1.
南朝鮮を訪問中のペンス米副大統領は17日、朝鮮に対して核・ミサイル開発の放棄、近隣国への敵対行動の中止などを求めた。
また、朝鮮と向き合う最前線(軍事境界線)を訪れ、トランプ政権が最大限の圧力を柱とする対北朝鮮政策を打ち出すことを示した。
黄教安首相との共同記者会見では、朝鮮への対応について、「すべての選択肢はテーブルの上にある」として、挑発的な行動を批判し、核・ミサイル開発の放棄を要求した。
トランプ米政権は、シリアやアフガニスタンへの爆撃、米原子力空母カール・ビンソンの朝鮮半島近海派遣などによって、朝鮮への挑発的行動を高めていった。
米国は、朝鮮の行為を批判しつつ、逆に朝鮮への挑発行為を続けてきた。
それは、南朝鮮の大統領選挙で有利な環境を作り出すためでもあった。
2.
南朝鮮の大統領選が17日、始まった。
選挙戦でもっとも熱く繰り広げられている論戦は、米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の配備と対北融和論である。
選挙戦は、革心系で最大野党「共に民主党」の文在寅前代表と中道系で野党第2党「国民の党」の安哲秀常任共同代表による、事実上の一騎打ちが展開される。
THAAD配備について、当初、文氏と安氏の2人は否定していた。
ところが、立候補に際して安氏は配備を認める姿勢に転換。
文氏は「次期政権に委ねるべきだ」として明言を避けた。2人ともトーンダウンしたのだ。
米軍は当初、早期配備へと方針転換し、次期政権成立までに既成事実を作るため、一部の装備もすでに搬入を進めている。
こうした状況を見越してか、米ホワイトハウスは16日、THAAD配備について「次期大統領が判断するのが適当だ」と、ゆとりのコメントを出した。
また、文氏、安氏ともに、北との融和方針を主張していたが、選挙戦となり、北の核・ミサイル開発に懸念を示す方向に主張を変えている。
結果、トランプ政権が対朝鮮への脅迫作戦で軍事レベルを上げたことが、狙い通り、韓国大統領選にもフィットした。
朝鮮半島とアジア地域に危機をもたらし、「挑発」を作り出していたのは、他ならぬ米国のアジア戦略であったのだ。
残念ながら、米国の判断基準と目線に慣らされてしまっている日本社会と日本人は、朝鮮半島および朝鮮を見る「ものさし」が米国および日本政府と同じになっている。
4月前半、トランプ政権が、朝鮮の軍事パレードやミサイル発射を、朝鮮が「挑発」している、「威嚇」しているなどとの情報戦を盛んに展開して、朝鮮半島危機を高めていたが、これは米国側が作り上げている危機であった。
そうとは気付かず、朝鮮批判の立場に立っていた日本人は、米国のアジア戦略の一員に組み込まれてしまっているのだ。
2017年4月18日 記
「『共謀罪』を葬れ」
1.監視・萎縮社会が訪れる
衆院法務委員会で14日、組織犯罪を計画段階で処罰できる「共謀罪」の成立要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰改正法案が審議入りした。
いわゆる「共謀罪」の法案について、政府の主な説明は、以下のとおりである。
①適用対象は、「組織的犯罪集団」(2人以上)に限定し、一般市民は対象にならない。
②対象犯罪を676から277に絞った。
③犯罪の計画に基づいた準備行為(資金・物品の手配、犯行現場の下見など)があって、初めて適用できる。
金田勝年法相は趣旨説明で、「3年後に東京五輪・パラリンピックを控える中、世界各地でテロが続発している。国内でも暴力団の抗争や高齢者に対する特殊詐欺が後を絶たない。必要とする法整備を行う」などと述べ、テロ対策として、「国際的組織犯罪防止条約」を締結する必要性を強調した。
日本の刑事法は、犯罪の実行を処罰することを原則としてきた。
「共謀罪」はその原則を崩し、犯罪を計画したこと自体が罪に問われ、処罰対象になる。そのため、密告や司法取引による関係者の供述が決定的となり、捜査する側にとって重要になる。
まだ実行していないことが取り締まりの対象となるため、人の心の中を取り締まるのであるから、裁判所が適切な歯止めをかけられるかどうかが重要となってくる。
社会は息苦しくなり、メディアや表現者、一般市民までもが無意識に萎縮すると同時に、監視社会化が広がり、批判精神の自由が奪われていくことが怖い。
特に、メディアが萎縮現象(今でも、政府の公報機関となっているが)に陥っていけば、時流に媚びる姿勢をとり、自ら言論統制を実行していくだろう。
そのような姿を、戦前の新聞社などの事例で知っている。
「共謀罪」が成立すれば、捜査に歯止めがきかなくなり、治安維持の強化策が進んでいくだろう。恐ろしいことである。
以下では、戦前の言論統制がどのように進み、どのような社会が形成されたのかを報告する。
2.軍部のプロパガンダとなった新聞
1941年3月、「思想犯予防拘禁礼」「改正治安維持法」「国防保安法」などが設立されると、新聞・雑誌社は、軍や政府発表以外のものはほとんど書くことが許されなくなり、自らも書かなくなった。
言論統制社会となり、各社とも自己規制してしまった。
さらに、同年8月の「新聞指導要綱」、11月の「対英米問題に関する興論指導方針」などによって、言論統制から戦時の情報宣伝へと、新聞の役割は転換していった。
こうした情勢下で対英米戦(太平洋戦争)に突入すると、新聞各紙は軍部のプロパガンダに成り下がり、戦争遂行のための思想戦、宣伝戦の一翼を積極的に担っていった。
1941年12月9日(太平洋戦争開戦の翌日)、陸軍省情報局は、各新聞社、通信社、雑誌社に対して、次のような記事差止事項を通達した。
*一般世論の指導方針
①今回の対英米戦は帝国の生存と権威の確保のため、まことにやむを得ず起ちあがった戦争であることを強調すること
②敵国の利己的世界制覇の野望が、戦争勃発の真因であるというように立論すること
③世界新秩序は「八紘一宇」の理想に立ち、万邦おのおのそのところをえさせる目的を強調すること
*具体的指導方針として
①戦略的にも、わが国は絶対優位にあることを鼓吹すること
②敵国の政治、経済的、軍事的弱点に努め、これを宣伝して彼らの自信を弱め、第三国より信頼を失わせるよう努力を集中すること
③国民の中に英米に対する敵愾心を執拗に植え付けること。同時に英米への国民の依存心を徹底的に払拭するよう努力すること
*この際とくに厳重に警戒すべき事項として
①戦争に対する真意を曲解し、帝国の公明な態度を誹謗する言説
②開戦の経緯を曲解して、政府および統帥府の措置を誹謗する言説
③開戦に際し、独伊の援助を期待したとする言説
④政府、軍部との間に意見の対立があったとする論調
⑤国民は政府の指示に対して服従せず、国論においても不統一であるかのような言説
⑥中満その他外地関係に不安動揺ありとなす論調
⑦国民の間に反戦、厭戦気運を助長させる論調に対しては一段の注意を必要とする
⑧反軍的思想を助長させる傾向ある論調
⑨和平気運を助長し、国民の士気を阻喪させる論調(対英米妥協、戦争中止を示唆する論調は当局のもっとも忌み嫌うところである)
⑩銃後治安を攪乱させる論調一切
これに対して、当時の新聞報道は、軍報道部の大本営発表を機械的に右から左へ国民に知らせるだけで、そこにはいささかの批判も許されなかった。
発表文に矛盾があっても、追及することはできず、発表通りの軍広報紙となっていた。
大本営発表は、開戦の12月8日午前6時の第1号から敗戦時までに合計846回あった。
当初は「大本営陸軍部発表」と「大本営海軍部発表」と別々に発表していたが、42年1月15日からは一本化している。
一般に、帝国主義国家では、軍事力に依存する体制となっているから、軍事力を掌握するものが政治的発言権を強く持つようになる。
必然的に軍人たちが政権内部へ浸透し、強い影響力を持ち、ついには政治の決定権を握ってしまう。
戦前の軍国日本の政治風景である。
似たような現象が、安倍政権内で起こっている。
政権側が成立させようとしている「共謀罪」は、今後、私たち市民に向かって、どのように襲いかかってくるのかわからない。
怖い存在になる可能性がある。
民主主義時代には必要のないものだ。民進党はじめ野党各党は、「共謀罪」成立に反対の姿勢を示しているが、しっかり戦ってほしい。
2017年4月15日 記
「朝鮮半島の緊張を高めるな」
1.挑発者は誰か
米国のトランプ政権が、朝鮮半島の緊張を高めている。
8日(米時間)、米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」を中心とする空母打撃群を、朝鮮半島近海に派遣した。
その途上、九州西方の海域で自衛隊の艦艇との共同訓練を行い、米韓合同軍事訓練に参加した。
日米韓3か国が結びつき、朝鮮を牽制したのだ。
米国は3カ国の軍事的結束力の強化を、朝鮮の目前で見せつけて、そのレベルを毎年上げている。
にもかかわらず、トランプ氏は、過去20年間の対朝鮮政策を失敗だと批判し、今後は単独の軍事行動を含む「あらゆる選択肢」を検討するとしている。
だが、3月初旬の民間専門機関による朝米対話のチャンスをつぶす一方で、軍事力(力の誇示)による威嚇ばかりが前面に出ている。
現在、朝米間には危機管理の仕組も、対話の窓口もない、危険な敵対関係が続いている。
そのような状況で、軍事的な緊張を高めていけば、偶発的な衝突が起こる可能性がある。
特に、朝鮮への侵攻と政権転換を狙った合同軍事演習の期間、さらにそのレベルを上げるような行動を取ることは、威嚇のレベルを通り越している。
米国は、3月やそれ以外の合同軍事演習を、北朝鮮の核とミサイル開発を防ぐためのもので、防衛的、定例的なものだと嘯いている。
今回の演習には、「シールチーム・シックス」名の米海軍所属特殊作戦展開部隊(オサマ・ビン・ラディンの殺害を実行した部隊)が、初めて参加している。
「シールチーム・シックス」の訓練内容は、紛争が発生した際に北の指導部を無力化する目的で、金正恩委員長の殺害と核兵器施設の破壊を実行することにあるという。
今年の合同軍事演習は、特殊部隊が侵攻し、朝鮮の戦争指揮命令機能を破壊する訓練を目的としていたことになる。
訓練規模も韓国軍将兵約29万人、米軍の将兵約1万人と、史上最大となっている。
米国と日韓両国は、北が軍事「挑発」を行っていると、批難している。
では、米国が実施している「年次的」という合同軍事演習は、朝鮮への「挑発」ではないのか。
朝鮮側から判断しなくとも、客観的に見て、米国が実施している軍事行動は、「挑発的」な態度を越え、軍事衝突へと向かっていく「危機」的状況を作り出しているものなのではないか。
2.国交正常化への道を閉ざしている米国
なぜ、朝鮮の核開発だけが「脅威」だとして非難されているのだろうか。
公然の秘密となっている核5カ国以外のインド、パキスタン、イスラエルの核について、米国は「脅威」とは感じていないのか。
しかも、米国は、それらの国に対して、軍事支援や協力を行っている。にもかかわらず朝鮮に対してだけは、存続自体を否定し、脅威を与え続けているという矛盾、不可解さ。
そのような不可解さに対して、朝鮮は自衛のために核抑止力を追求せざるを得なかったのだ。
本来、朝鮮は経済発展、科学力発展に重点を置く政策を取ってきた。
核・ミサイル開発は、米国からの核攻撃に備えた自衛力、国の安全のためであった。
朝鮮戦争停戦協定から60数年、朝鮮は平和協定の締結を重視し、要求してきた。
平和協定締結を拒否している米国は、武装解除の代わりとなるどのような安全保障を朝鮮に約束するつもりなのか。
イラク、リビアは核武装の解除に合意した後、米国に爆撃された。
「朝米合意」にまで進んだ直後でも、米国は、人権問題、生物・科学兵器、大陸間弾道ミサイルプログラムなど、多くのことを証明しなければならないと要求して、約束していた朝米国交正常化への道に進もうとしなかった。
米国との間で、たとえ合意にサインし、いかなる約束を交わしたとしても、それはその場限りの口約束でしかないことが証明されてきた。
もう一つの側面は、1953年(停戦協定調印)以降、朝鮮はどことも戦争をしていない一方、米国は、世界のいたるところで戦争を仕掛け、多くの人民を殺害しているという現実である。
この期間、米国が介入した主な紛争例を以下に挙げる。
グアテマラ政府の転覆、キューバ侵攻のため代理の軍隊を送り、ベトナムを爆撃・侵略(200万人以上の命を犠牲にし、今も枯葉剤被害でベトナム人を苦しめている)、カンボジアとラオスを爆撃し、ドミニカ共和国に軍隊を送り、インドネシアの軍事クーデターを支援(50万人以上の人々が亡くなっている)し、チリでの軍事クーデターを組織し、アフガニスタンの非宗教政権を打倒しようとするイスラム過激派組織を支援し育成、グレナダに侵攻、ニカラグアの反政府勢力を軍事支援、アンゴラとモザンビークの右翼ゲリラを支援、クロアチアの勢力を武装・訓練させ、航空支援をしてウクライナに住む20万人の人々を追いだし、ボスニア国土の半分を爆撃し、コソボ解放軍を軍事支援し、ユーゴスラビアを攻撃し、イラクに侵攻し、ユーゴスラビア・ウクライナ・グルジア・ホンジュラス・その他多くの国の政府転覆を支援し、リビアを爆撃し、シリアのジハード勢力を武装させ訓練している。(以上、グレゴリー・エーリヒ米朝鮮半島政策研究所研究員の2017年1月の在米同胞全国連合結成20年記念講演から)
以上の米国の所業から見えてくるのは、米国こそが国際平和に脅威を与えている元凶であり、各地で密かにテロ集団を支援し育成してきたということである。
脅威は朝鮮ではない。
米国は大国である。自らも「世界の警察官」だと自負している。それを認めたうえでもなお、いかなる国への介入、自主権を侵害してもよいとする権利を与えられているわけではない。それを無視した米国は、自己の秩序を暴力で押しつけてきたのだ。
米国はこれまで、アジア太平洋地域への軍事的、経済的支配を正当化するための口実として、朝鮮の「脅威」を作り上げ、利用してきた側面がある。
現在の朝鮮半島「緊張」云々も、米国の戦略上、必要性があったことから、作りだされたものであって、周辺国を巻き込んで演出されているものと言える。
3.力を誇示するトランプ政権
安倍晋三首相は13日、参院外交防衛委員会で、「サリンを(ミサイル)弾頭に着け、着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」、「ミサイル開発や核開発をやめず、能力を引き上げてきた現実がある」と語り、朝鮮の軍事力強化について、最大級の表現を使用した。
サリンなどと突飛に発言した背景には、トランプ大統領からの意向と、マレーシア事件のことが念頭にあったのだろう。(「事件」を朝鮮に押し付ける説明としても有効との判断で)
また、同日開催した国家安全保障会議(NSC)において、韓国に在留する邦人や渡航者に対して、注意を促す海外安全情報を出している。
安倍政権は朝鮮半島情勢について神経をとがらせ、余りにも過剰反応している。
4月は朝鮮にとって重要な月で、政治日程が続く。11日は最高人民会議、15日は金日成主席の生誕記念日、25日は朝鮮人民軍創建記念日。
過去、重要な政治日程にあわせて核およびミサイル発射実験を行ってきた経緯があり、朝鮮が6回目の核実験を4月に行うのではないかと、米国は早くから予想し、朝鮮半島危機を作り出していた。
軍事力を全面に押し出したトランプ政権は、1月に拠点のカリフォルニア州サンディエゴ基地を出港し、海上自衛隊や韓国海軍と演習をしていた原子力空母「カール・ビンソン」を急きょ、朝鮮半島近海に派遣した。
そのため、朝鮮半島は一気に軍事的緊張が高まった。
緊張を造成する前段階として、中国の習近平国家主席との米中首脳会談時の6日、シリア政府軍を攻撃し、習氏に見せつけている。
シリア攻撃の理由について、「国際合意に違反し、他国の脅威になれば、対抗措置を受けるというメッセージだ」として、核・ミサイル開発を継続している朝鮮に対して、改めて強い警告を出したとしている。
これに対して北朝鮮外務省報道官は8日、「力には力で立ち向かわなければならず、核戦力を大幅に強化してきたわれわれの選択が極めて正しかったことを実証している」と反論。
米国は、空母派遣など、朝鮮半島の軍事的緊張を高め、朝鮮の言動を脅威、挑発だと嘯き、朝鮮政権を崩壊させる「5015軍事作戦」の演習を実施している。
4.緊張を煽る安倍政権
アジア地域の平和と安定のため、日本の存在は非常に重要である。
日本の平和発展と安全保障にとって、アジア地域における軍事紛争や緊張は好ましいものではない。
だとすれば、日本の役割は、平和安定、発展のために努力することである。
だが、安倍政権は日本のその立ち位置を理解できず、専ら朝鮮半島の危機造成に努力し、トランプ政権の「力の政策」を煽るという危険な役割を買って出ている。
トランプ政権のシリア攻撃、空母艦隊の朝鮮近海派遣に際して、安倍首相は早々に賛同を示し、エールを送っている。
軍事的圧力を先行し、誇示しているとはいえ、トランプ政権の対朝鮮政策はまだ定まってはいない。 体制もまだ固まっておらず、朝鮮に対する情報や分析も不十分、ばらばらなのが現状である。
アジア地域の政治・軍事政策においては、まだまだ素人集団から脱していないのだ。
ロシア、中国、シリア、朝鮮などに対して、強いメッセージが出ているのがその証拠で、トランプ氏個人の経済人的感覚によるハッタリでしかなく、強く(高い値段を付けて)出て、高く売りつけようとする商人行為と同じことをやっているのだ。
そのようなときに、周辺から彼の力を評価するような言葉を与えたのでは、自らの行為が正しいと頑固に信じさせるだけである。
アジア地域の軍事的な危機を、安倍首相も造成していることになり、その責任は世界平和に対して、国連憲章に対して、負い続けなければならない。
アジア地域において、日本が本来やるべきことは、朝鮮との対話、または朝鮮半島周辺国による平和安定協議によって、危機回避の努力をしていくことである。
5.無自覚報道のマスメディア
最後に、朝鮮半島間連の報道を行う日本のメディアが、例外なくワシントン、またはソウル発信情報に依拠して、それに何ほどの疑問もなく、分析もなく垂れ流していることにずっと怒りを感じていることを付け加えたい。
朝鮮の核やミサイル発射を「挑発」行為だと断じ、軍事的な緊張を高めていると非難的内容の情報を繰り返し報道している。
たしかに、朝鮮は核やミサイル開発を行い、それを米国に向けて発信(牽制)している。
しかし、それは、米国を攻撃するためではない。
一方、米国は、朝鮮が核・ミサイルを開発するはるか昔から、朝鮮に対して核威嚇政策を続けている。
そうした米国からの核攻撃を防ぎ抑止するため、朝鮮は止むを得ず、核保有を選択し、技術力(防衛)を高めてきた。
米本土に届く核・ミサイル技術が向上すればするほど、米国にとっては、「脅威」になっていくのは事実である。
米国が自らに向けられている「脅威」から逃れるためには、朝鮮と対話する以外に方法はない。米国には、朝鮮戦争停戦協定を朝米平和協定に転換するための協議を行わなければならないのである。
しかし、米国はそのような協議を拒否し続けてきた。代わりに、朝鮮の言動を「挑発」「脅威」「暴力」などとするキャンペーンを繰り返してきた。国際社会から朝鮮を孤立させようとしてきたのだ。
このような米国の意図を考えず、一方的な情報だけを、分析もせず垂れ流し続けている日本のメディア各社は、アジア地域の危機を拡散する役割を担っていると言えるだろう。
多くの人に、朝鮮への恐怖感と不安感、偏見を植え付けてきたその責任は重い。
10数年前まで、私にもNHKや民放各社、新聞社などから取材やコメントを求める依頼があったが、いずれも放映されることはなく、記事にもなっていない。(断片的な取り上げはあったが)
今や、そのような問い合わせや連絡すらもないというのが現状である。
また、朝鮮半島情勢の緊張を高め、不安感を煽ることで、もっとも得をしているのは米国の軍産復合体であり、これは、朝鮮半島情勢を見る上でのメルクマールとなっていることをマスメディアに認識してもらいたいものだ。米国の軍産復合体制は自らの肥大化のために米政権を支え、コントロールしているのだ――。
米政権に組み込まれている日本と韓国の政治が、アジア地域の軍事的不安感の造成に積極的に関与してきた歴史がある。
中国政府はそうしたアジア地域の構図を見越した上で、関係国、特に朝米両国の対話による問題解決を米国に説き続けている。
トランプ政権は、「力の誇示」を選択した。
トランプ氏がどのようなタイミングで振り上げた腕を下すのか、これもまた予測不能であるが、上げたままでいるわけにもいくまい。
そのタイミングへの助言を行う役割こそ、日本政府にあると思う。
安倍政権もトランプ政権も、対話による朝鮮半島の危機回避を探る外交努力を果たしてこそ、世界平和に貢献することになる。
2017年4月14日 記