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「マレーシア・クアラルンプール国際空港の不可解な事件」

「マレーシア・クアラルンプール国際空港の不可解な事件」

1.3つの疑問点

 2月13日午前9時頃、マレーシアのクアラルンプール国際空港で、朝鮮国籍の男性が死亡した。翌14日深夜、マレーシア警察が「事件」について発表。朝鮮国籍の外交旅券を所持している「キム・チョル」という男性が、空港で体調異変を訴え、病院へ搬送中に心臓発作で死亡したことが伝えられた。
 死亡した男性が、「金正男」氏とも、毒殺であったことも発表していない。

(疑問1)
韓国メディアはマレーシア警察の発表よりも早い時間の14日夜、死亡したのは金正男氏で、朝鮮の工作員とおぼしき2人の女性によって毒針で刺されたと一斉に報じた。
 なぜ、韓国メディアはマレーシア警察よりも早く、しかも、事件の仔細な内容の第一報を報道できたのか。その裏には、マレーシア側が、朝鮮大使館よりも先に韓国大使館に連絡し、最初にマレーシア駐在の韓国情報機関関係者が遺体と対面、金正男氏であることを確認した後、米国と日本に通報した経緯が隠されていた。
マレーシア側の事件通報の最初が、朝鮮ではなく韓国であったのが不可解である。

(疑問2)
 その後、マレーシア警察は死亡した男性がパスポート記載通りの「キム・チョル」で、キム・チョル氏はベトナム国籍とインドネシア国籍の2人の女性によって毒殺されたと発表。また、朝鮮国籍の容疑者8人のうち、4人が秘密警察の国家保衛省、2人が外務省にそれぞれ所属しているとした。4人は事件直後に平壌に向かったとして、犯行そのものは朝鮮の国家保衛省による国家ぐるみの犯罪であることを示唆。それ以降の発表内容や報道は、朝鮮犯行説が前提となっている。
 2月20日前後になると、マレーシア警察は、実行犯の女性2人は3ヵ月ほど前に朝鮮国籍の重要参考人の1人、リ・ジウ(別名、ジェームス)に「いたずらビデオ撮影」のために勧誘されたのだと発表した。ところがマレーシア警察は、2人の女性が韓国と日本に行ったことについては口を閉ざしている。
 2月23日付けの朝日新聞は、ベトナム女性の友人に取材をした結果として、歓誘した男性と彼女が「韓国の済州島に行く」と話していたことを報道。また、2月20日付けの産経新聞は、インドネシア女性の家族の話として、彼女が日本に渡航したことなどを伝えている。
 朝鮮の工作員が日本や韓国に入国しようとしても、入国の段階で逮捕されてしまう現実を無視している(日本は入国禁止)。朝鮮の工作員が日本や韓国に入国したとする話(偽造パスポートを使用したとしても)は、どのように考えても納得できない(韓国の人間なら入国に障害はないだろう)。

(疑問3)
 マレーシアのカリド警察長官は2月24日、容疑者の女性が液状の猛毒VXクリームをオイルに混ぜて素手で被害者に塗った可能性があると発表した。キム・チョル氏の死因を、心臓発作から、猛毒のVXだと変更したのだ。
 ではなぜ、サリンガスの10倍といわれる猛毒VXを素手で扱った女性に被害はない上、死亡男性と接触した人たちの中からも1人の死傷者も出なかったのか(使用されたのがVXガスかどうかも疑問だが)。しかも、VXだということを、韓国のメディア各社がマレーシア警察発表より1週間以上も前の16日に報道していたことも大きな疑問である。
 洪水のように流れる報道を前にして、幾つもの疑問、矛盾、問題点などを感じてはいたが、その多くは韓国発の情報であった。常に韓国情報機関による事件内容の発表が先行し、マレーシア側がその発表内容を追いかけて捜査している、といった印象を受けた。


2.強固になった日米韓連携
 
韓国政府は2月16日、長官級会議を開き、事件を朝鮮の犯行と断定、朝鮮の暴発と脅威を警戒して高高度ミサイル防衛システムの早期配備を承認した(米軍は3月上旬、部品の一部を搬送し、既成事実を作り上げようとしていた)。一方、トランプ米政権は、マレーシア側が事件にVXが使用されたと発表した直後の2月24日、朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)米州局長が申請していた入国ビザ発給を認めず、ニューヨークでの朝米非公式対話を流会にしてしまった。
 朝鮮側は1月半ばに入国ビザ発給を申請し、3月1日からの専門家会談(民間)に備えていた。米側も、トランプ新政権に対する朝鮮の姿勢を知る好機と判断、2月13日の事件発生後も対話の方針を維持していた(ビザ発給に支障はないとして手続きに入っていた)。しかし、24日に化学兵器にも使用されるVXガスが使用されたと発表された直後、ビザ発給の不許可を決めている。韓米の情報機関の思惑どおりに、トランプ政権は動き、対朝鮮政策を強硬路線に仕向けた瞬間である。
 さらに、3月1日から始まった米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル」を、史上最大規模に格上げして、戦略爆撃機B1Bをはじめとする米最新鋭兵器を動員し、朝鮮に対する脅威の精度を上げている。また、朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の日本、米国、韓国首席代表は2月27日、ワシントンで会合を開き、対朝鮮問題での意見交換を行った。その席上、トランプ政権が米独自の金融制裁などを行う「テロ支援国家」に、朝鮮を再指定する検討を始めたことを日韓両国に伝達した。トランプ政権が、「テロ支援国家」再指定を含めた対朝鮮政策の練り直しに着手していることをアピールしたのだ。トランプ大統領自身、朝鮮はアジア地域の安全保障にとっての「直接の脅威」だとして、強い国際的圧力が必要だとの認識を持ち、日米韓3カ国による強い連携を求め、アジア地域の安全保障に力を入れることを表明するようになった。このような強硬政策への転換は、すべて情報機関からのサゼスチョンによる。
 日本は、事件当初から、「死んだのは金正男氏で、事件の主犯は北朝鮮」との立場で、韓国と米国の情報機関に、金正男氏の顔写真、指紋、DNAをはじめ、身元確認作業の協力をしていた。このように事件の捜査、情報提供、事件の捜査結果発表、報道内容など、マレーシア側をしのいで、日米韓3か国同盟の連携プレーは、見事なまでに行われていた。

3.韓国国家情報院の焦り

 今回のマレーシア事件では、マレーシア側の最初の事件通報、初動捜査以降、ずっと韓国情報機関が関与している(関与しえいることが表面化しないよう気を遣っていたようだが)。そのことは事件当初から韓国の国家情報院(国情院)発表が、マレーシア側より先行していたことでわかる。死亡した男性が「金正男」氏であること、死亡原因が猛毒VXであること、事件は朝鮮による国家ぐるみの犯行と断定したことなど、事件の骨格をなす部分のすべては、断定した韓国発信が先行していた。それでも朴槿恵政権の危機を救えないと焦った国情院は、いち早く朝鮮がVXを使用したと公表して、朝鮮の国連加盟国としての権利を停止にすべきだと国内外に呼び掛けた。
では、事件当時の韓国社会はどのような状況であったのか。朴槿恵大統領の罷免、弾劾をめぐり、大きく揺れていた。昨年10月以降、大統領の退陣を要求する世論が強くなり、保守支持層が危機感を募らせていた時期である。すでに死に体となっている朴政権を見て、大統領選ともなれば野党候補が有利であるとの情勢にもっとも焦ったのは国情院であっただろう。
弾劾問題の耳目を他に外す必要がある。そのために国情院にできることは唯一つ。「北朝鮮脅威論」を作り出すことである。朝鮮犯行の大型謀略事件を創作する必要を迫られていたのではないか。一般に、国際的な事件では、「その事件で得をした者を疑え」とする鉄則がある。そこから探っていくと、今回の事件によって新たな「北朝鮮脅威論」(仮想敵)を作り上げた日米韓の3国体制がより固く連携を強め、アジア地域の安全保障への軍事力を強化することで合意した事実が浮かび上がる。それによって軍産複合体の既得権益を守ったことが、もっとも大きな成果だと事件の主犯たちは、ほくそ笑んでいるのではないか。
 
4.マレーシア首相の発言
 
韓国が流していた「金正男」暗殺説。
 金正恩党委員長の「危険分子の除去」作戦を、国家保衛省が最大限の忠誠心を「誇示」した事件だと、日米韓が分析し解説していた。日米韓の推理は正しいのだろうか。
 「キム・チョル」名のパスポートは、昨年11月中旬に再発行されている。パスポートを受け取るには、本人が平壌か北京の大使館に出向く必要がある。本当に「除去」作戦があったとすれば、パスポートを取りに来た平壌か北京大使館で殺害した方が、自国内であったから誰にも騒がれずに済んだはずだ。それなのに何故、衆人環境で防犯カメラが多くある国際空港で犯行が行われたのか。これはまるで、全世界に犯行を見せつけようとして、空港が選ばれたとしか思えない。
また、金正男氏がはたして、朝鮮や金正恩氏にとって危険人物と言えるのか。金正男氏は数年前から、複数の日本人ジャーナリストらに、平壌に帰る意思もなく政治にも興味はないと語っていた。彼が危険人物には思えない。
 さらに、金正恩体制が盤石であるという点も見逃してはならない。朝鮮はいま、米国をはじめとする帝国主義陣営に対して、軍民一致の精神で、核対決に向かっている。そのような時に、体制内部に対立点や弱点はあってはならない。事件を起こした側は、金正恩体制が不安定で、何をするかわからない凶暴な性格とのイメージを世界に拡散させようとしたのではないか。
 そのことをさらに強調するためか、3月中旬に金正男氏の子息の「キム・ハンソル」氏のビデオメッセージを流した。ビデオは事件直後に撮影されたようで、そのことにオーストラリア、中国、米国ともうひとつの国(多分、韓国であろう)の4カ国が協力したとしている(ハンソル氏は米国に一時保護されたかもしれない)。 問題は、ビデオの映像が放映される以前に、さかんに「第2の暗殺」説が流されていたことにある。それが狙いだったのだろう。マレーシア側がDNA鑑定のため家族の協力を呼び掛けていた時期でもあり、災いを断ち切るという儒教的精神風土観から、子息のハンソル氏の殺害もあり得るのだとして、朝鮮の犯行説を補強しようとしたとしか考えられない。
 また、最後になるが、マレーシア首相の「朝鮮との国交断絶は行わない」との一言がこの事件の真実を物語っているのではないか。その点に注目したい。
 事件の内容が発表されるたび、マレーシアと朝鮮の両国は、大使の召還・追放、大使館員家族たちの出国禁止、ノービザ特権の廃止など、冷えた関係が続いていた。韓国は、国交断絶まで進むだろうとの観測情報まで流していた時だけに、マレーシア首相の「(北朝鮮との)国交断絶は行わない」との発言で、事件は謀略事件であったとの確信を持った。


5.追記

この原稿は3月25日に書き終わっていた。
同日、マレーシア入りした朝鮮の第2次代表団が、マレーシアと非公式協議を行っているとのニュースがあった。交渉の結果などを、マレーシアのナジブ首相が27日にも発表するというので、その情報を待った。しかし、情報が錯綜している。
 正男氏の遺体は26日、安置先のクアラルンプールの病院から別の施設に移された、否、まだ病院内だとか。遺体はすでに火葬された、否、まだ遺体のままであるとか。また、マレーシアの捜査員4人が26日、朝鮮大使館に入り、3人の容疑者に事情聴取した模様だとか――、不確定情報が錯綜している。
 ナジブ首相の発表や、マレーシア側からの公式な反応は27日夜、まだ何も示されていない(途中で、韓国情報機関が割り込み、交渉を難しくしているのかもしれない)。
 いずれにしても、難しい2国間協議であるのは事実だ。だが、協議が続行していることに意味がある。
 それを見守りたいと思う。

                                                                  2017年3月28日 記
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「米韓合同軍事演習を中止せよ」

「米韓合同軍事演習を中止せよ」

 3月22日、米戦略爆撃機B1Bが朝鮮半島に飛来した。
 米空軍領のグアム空軍基地を飛び立ったB1Bは、空自のF15戦闘機6機と九州周辺の空域で共同訓練を実施した後、朝鮮半島で米韓合同軍事演習に参加したのだ。
 これはつまり、日米と米韓の両合同軍事演習がリンクし、日米韓3カ国の強固な軍事的連携を見せつけたことになる。
 トランプ米政権は、3月1日から始まった「キー・リゾルブ」「フォールイーグル」米韓合同軍事演習を、史上最大規模だと吹聴している。
 ひとつの戦争以上の兵力、兵器を動員した軍事演習を、「年次的」「恒例的」だと、まるで一般的な「行事」のように喧伝し、その実、朝鮮の核およびミサイル基地を、「探知」「防御」「かく乱」「破壊」する4D作戦計画と、金正恩党委員長の「斬首作戦」、「先制攻撃作戦」などの作戦計画を、実行に移す北侵核戦争演習を展開しているのだ。
 演習には、戦略爆撃機B52、B1B、B2、ステルス戦闘機F22、F35の最先端兵器を投入。カール・ビンソン原子力空母打撃群まで出動させて、膨大な米帝国侵略軍の核攻撃手段を南朝鮮とその周辺水域に埋め尽くし、「演習」という騒動を2ヶ月もの間、繰り広げようとしている。これが「年次的」「恒例的」なのか。
 このような戦争騒動を目前で展開されている朝鮮からすれば、当然、これは許せるものではない。演習がいつ戦争へと変化するかもしれないという危機感から、防御的措置を追求し、備えるのは当然のことである。

 朝鮮戦争停戦協定(53年7月)以降、朝鮮半島では、いかなる平和保障体系も樹立されていない。これは、停戦協定から平和保障体制への転換協議を米国が拒否してきたからである。
 戦争再発を防ぐため、朝鮮は米国に対して、74年3月に平和協定締結を、94年4月に平和保障体系の樹立を、96年2月に朝米暫定協定をそれぞれ提案するという平和への努力を重ねてきた。
 その結果、2000年10月には、朝米共同コミュニケを発表するところまでこぎつけた。共同コミュニケでは、停戦状態を公式に終わらせて平和保障体制に転換するための様々な方途について、対話していくことが確認された。
 一方、南北関係においても、6・15南北共同宣言(2000年6月15日)、10.4宣言(2007年10月4日)などによって、朝鮮半島の停戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築するとの認識を南北両朝鮮が共有した。
 これらは、朝鮮政府の民族自主精神による政治的な長期間の努力の結果によるものである。しかし、その果実は、後に発足するオバマ政権によってもぎ取られてしまうのである。朝鮮敵視政策を先行させたオバマ政権は、核先制攻撃を含む政策で、朝鮮半島地域の核戦争危機を高めていったのだ。
 オバマ政権は、朝鮮を第一攻撃目標に定め、各地域に展開していた武力を、朝鮮半島とその周辺に持ち込み、「脅威」を朝鮮に与え続けた。合同軍事演習においても、戦略爆撃機、空母、原子力潜水艦などの兵器の投入し、規模と回数を増やしていった。また、軍事演習の性格と内容も、「平壌占領」、「精密攻撃」、「斬首作戦」など、その帝国主義的性格、侵略的性格をますます露骨に表していった。
 さらに、2012年からは、日米韓3カ国の連合海上訓練を実施して、日本の自衛隊がいつの間にか米韓合同軍事演習に潜り込み、朝鮮半島上陸に備えている。
 これら米国の帝国主義的野望はとどまることを知らず、いまや南朝鮮への高高度ミサイル(THAAD)の配備(3月上旬に、部品の一部を搬入)を進め、日本への導入も検討されているのだ。
 こうした緊迫と危機に対して朝鮮は、2016年の水爆実験をはじめ、核や長距離戦略弾道ミサイル発射実験を実施して、防御体制を高めていった。これは、民族自主権の行使であり、米帝国主義からの自衛的措置でもあった。
 朝鮮は、国連憲章で保障されている自主権、自衛的措置を行使したまでであった、制裁対象となるような行為を実施したのではない。国連に加盟している主権国家として、当然の権利を行使したまでである。

 朝鮮は、米国を中心とする帝国主義国からの北侵戦争策動に十分な対策を取りつつ、一方で、朝鮮半島の平和と安全、安定を維持するための努力を、現在も行っている。
 金正恩委員長は2017年の新年の辞で、全民族の志と力を合わせて、自主統一のお大道を開いていくことを呼びかけた。
 それに応えた北と南、海外の全朝鮮民族は、6・15共同宣言実践民族共同委員会を結成。中国・瀋陽での会議を重ねて、7・4共同声明発表45周年と10・4宣言発表10周年にあたる今年を、全民族の力を合わせ、南北関係を改善し、自主統一の新しい局面を開いていくための年として、実践的な問題を討議し合意した。
 「外勢との各種合同軍事演習と、軍事力増強策動、祖国の平和を脅かし、戦争の危機を高めるすべての軍事的対決策動に反対する立場を貫く。どのような難関が立ちはだかろうと、全民族的統一大会としての連帯会議を必ず実現し、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制を構築する多様な活動を続けていく」ことを確認。
 そのうえで、北と南、海外の各階層の往来と接触、対話と交流を実現して全民族的範囲で統一運動を活性化するために、6月15日から10月4日までを南北宣言発表記念期間と定め、6月15日、7月4日、8月15日、10月4日を契機に、平壌とソウルをはじめ、北側、南側の各地域で、民族共同行事を行うとした。
 これは全朝鮮民族の意志であり、世紀の願いであり、何人と言えど、これを妨害してはならない。
 妨害する者はすなわち、朝鮮人民の敵である。

 米国は、朝鮮が核実験やミサイルを発射するたび、「脅威」や「挑発」などのレッテルを貼り、国連安保理で「制裁」を云々している。しかし、国連憲章のどこにも、核実験とミサイル発射が「不法」で、「制裁」の対象になるとの規定はない。
 しかも、朝鮮半島周辺諸国をはじめとする多くの国が、軍事衛星打ち上げやICBM、各種ミサイルの発射実験を行っている。これに対して、米国や安保理が沈黙を守っているのはどうしたことなのか。
 朝鮮の場合だけが「制裁」の対象となるのは、安保理が二重基準を設けているからか。そうであれば、国連安保理は、米国の強権に押されて不当な判断をしていることになる。
 朝鮮半島で核戦争を追求し、様々な脅威と危機を作り出しているのは、まさしく米国とその同盟国たる日韓の3カ国である。安保理が真に議論し、制裁の対象とすべきは、日米韓3カ国の軍事的挑発であって、朝鮮が実施している自衛的措置ではない。
 
 以上の観点から、朝鮮半島に戦争の再来を狙って実施されている米韓合同軍事演習の中止を要求する。
 「専守防衛」から攻撃部隊に変身し、朝鮮半島再上陸を狙って米韓合同軍事演習に参加する自衛隊にも抗議する。

                                                                  2017年3月23日 記

「朝鮮半島の『3月1日』を考える」②

「朝鮮半島の『3月1日』を考える」②

5.中国の動き

 (A)韓国へのメッセージ

 中国政府は、韓国が配備を進めている米軍の高高度迎撃システム(THAAD)の高性能レーダーの範囲が、自国にも及ぶとして反対してきた。

 2月27日、ロッテグループが系列のゴルフ場の土地提供に同意したことで、米韓両政権は予定より早く7月までに配備を終える計画で、スピーディに事を進めている。

 反発した中国は、中国に進出しているロッテマート(115店舗)、ロッテ百貨店(5店舗)への批判キャンペーンを3月から展開。不買運動が進んでいる。

 「国家の利益を前に、私たちはロッテに『ノー』と言う」(中国青年報、3月1日付け1面の見出し)などの報道もあり、中国国内ではロッテマートへの抗議や商品引き上げの動きが加速している。

 さらに中国の国家旅遊局は2日、口頭で北京市内の旅行社に3月15日以降の韓国への団体旅行の禁止を伝えた。

 中国の「韓国たたき」はさらに強まるのか。(すでにTHAADの部品の一部は韓国に搬入された)

 「THAAD」が今後、アジア地域の安全保障上、大きな問題になってくるだろう。


(B)国防費の伸び

 中国の2017年の国防予算の伸び率が前年比7%前後となり、史上初めて1兆元(約16兆5千億円)を超えることになった。(兵器の研究開発費や装備品の輸入項目は含まれていない)

 日本の17年度の防衛予算(5.1兆円)の3倍超で、引き続き米国に次ぐ2位の規模を維持。

 2位とはいえ、米国のケタ違いの予算には及ばない。

 中国の国防予算の伸びの背景には、役230万人の兵力を30万人減らす方針(15年に習近平国家主席が発言)の一連の軍改革での削減を目指す一方での、米軍の圧力に対する強い警戒感がある。

 それが南シナ海や東シナ海での領有権をめぐる米国との、海洋権益摩擦となって表現されている。

 これまで「国土防衛」から「攻撃」への転換で、兵器も空母、ステルス戦闘機、新型潜水艦発射弾道ミサイルなど、精密兵器が必要になっているからだ。

 「中米間の最大の問題は、互いの戦略に対する強い不信感だ。米軍に対するために、中国軍も能力の増強を迫られている」(中国国際問題研究院)という意識が、国防予算増大の背景にある。

 中米ともに、軍拡大スパイラルに陥り、そこから抜け出せずにいる。

(C)米国外交の始動

 中国の楊潔チ国務委員は2月27日、米ホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。

 楊国務委員は「中国は米国と両国首脳が電話会談で合意した精神に基づき、衝突せず対抗せず、相互尊重、協力・ウィンウィンの原則を堅持して、ハイレベル及び各レベルの交流を強化し、幅広い2国間の問題や重大な国際・地域問題で協調を進め、相互の核心的利益と重大な懸念を尊重し、中米関係の健全で安定的で前向きな発展を推進し、両国国民と世界の人々によりよく幸福をもたらしたいと願っている」と、原則論を述べた。(抽象的である)

 トランプ米大統領が、習近平国家主席との電話会談で、「一つの中国」(台湾問題)を認めたことで、楊氏が習主席の代理として訪米、軍事対決とは別に、習・トランプ時代の幕が明けようとしている。


6.トランプ米政権の「力による平和」とは

(A)トランプ氏の議会初演説

米大統領は2月28日、米連邦議会で初演説を行った。

「アメリカンスピリット(米国の精神)の再生」と題した約1時間の演説。

主に掲げた優先課題は以下の5点。

①オバマケアの廃止と代替案導入(具体案や予算は未定)
②メキシコ国境沿いの壁建設(216億ドル)
③法人税や中間層向けの減税
④インフラ整備につながる法整備(1兆ドル)
⑤史上最大級の国防費で軍を再建(6030億ドル)

 以上、「米国第一主義」の公約実現に向けて、大幅減税を含む税制改革や1兆ドル(約113兆円)規模のインフラ投資実現を掲げた。

 また、「力による平和」を外交政策の基本に位置づけ、法律で決められた国防費の上限額から540億ドル(約6兆円)増やした国防費総額6030億ドル(約68兆円)を計上した。

 国防費の増額分は、非国防費の予算を削ってでも捻出すると言っているから、軍拡へと転換したことを伺わせる。

 米国の国防費は、現在でも世界の軍事予算の3分の1以上を占めているのに、さらに増額した。

 その軍事超大国が、ポピュリズムに乗って、さらなる軍拡へと走り出す。

 そのことで、世界をいっそう混乱に陥れてしまう可能性がある。(防衛産業のテコ入れで、雇用を増加させようとの思惑も透けて見える)

(B)北朝鮮との距離

 北朝鮮が2月12日に発射したミサイルが、トランプ米政権に強硬姿勢を引き出し、3月6日の発射で金正恩委員長殺害計画実行へと動かしたのかもしれない。

 3月1日付けのウォールストリートジャーナルが、「トランプ政権のアジア戦略の今後は、金正恩政権転覆計画がある」と報道した。

 トランプ氏は2月23日、金正恩委員長との会談の可能性について、「『NO』とは決して言いたくない。(しかし)あまりに遅い、当面の状況から見れば遅すぎた」と話した。

 同日のロイター通信のインタビューでも、「彼がしたことに対して非常に腹立たしく思っている」とも述べた。

 気分屋のトランプ氏らしい発言である。

 一方で、北朝鮮と北朝鮮の核問題を米国の最大の脅威だと考えていると、CNN放送(2月28日)が伝えた。

 2月27日に中国の楊氏との会談で、「あなたたち(中国)が北朝鮮問題の解決に向けて努力すべきだ」と中国頼み、対北朝鮮アプローチは中国を通じた対北朝鮮圧迫基調のままで留っている。

 オバマ前政権の政策を否定し、批判するものの、自身の政権内における対北朝鮮政策の基本は、まだ定まっていないようだ。


7.マレーシア事件の余波

 マレーシアのクアラルンプール国際空港で2月13日に起きた男性殺害事件は、マスメディア側(特に日本)の報道だけが過熱して、マレーシア警察の捜査は進展せず、難航している。

 逆に、マレーシアと北朝鮮両国の関係は冷却化し、感情的対立が目立っていた。

 マレーシア警察は、一度は殺害されたのは、「金正男」氏だと発表したが、その後は、パスポート記載名の「キム・チョル」氏だとした。

 家族のDNA協力がまだ得られず、鑑定ができないためだという。

 ただ、事件の容疑者8人全員を北朝鮮籍、実行犯の女性2人はベトナムとインドネシア国籍だと発表。

 女性2人を逮捕し、裁判にかけることになったが、指名手配した容疑者4人は事件当日に帰国したとみられ、3人は北朝鮮大使館内に潜伏中とみている。

 3月に入り、男性殺害に使用されたのは、猛毒の神経剤VXだと判明したと発表。

 公共の場で使用されたことを、「一般市民を危険にさらす行為だ」と非難声明を発表(3日)した。

 しかし、マレーシアでの製造現場は発見されず、薬品類は持ち込まれた可能性があるとした。

 不確定で、あいまいさが残る捜査発表であった。

 こうした状況下、マレーシア政府は事件発生直後に、在北朝鮮大使を召還し、北朝鮮国民がビザなしでマレーシアに渡航できる制度を6日から中止し、ビザ取得を義務付けるとした。(2日、マレーシアのザヒド副首相)

 さらに、姜哲駐マレーシア大使を「好ましからざる人物」として、国外追放にすると発表した。

 同時に、事件に関与した疑いで逮捕していたリ・ジョンチョル氏を証拠不十分で釈放し、国外退去処分(3日)とした。

 北朝鮮側は、死亡したのは外交官特権を持っていた「キム・チョル」(パスポート名)で、VXは韓国が持ち込んだものであると繰り返し表明。

 韓国と協力した国が起こした謀略事件だとした。

 事件は解明に向かって新しく展開するのではなく、より不可解で、周辺各国間の対立点だけが、際立ってきた感じがする。

 事件現場となったマレーシアを挟み、ここでも朝中対日米韓の従来からの対立が、アジア地域における安全保障上の新たな対立構図として、浮かび上がってきた感がある。

 それにしても、日本と韓国は、事件の内容と報告を、余りにも先走りすぎていたように感じる。


8.日本の敵基地攻撃の検討

 トランプ氏は2月28日の米議会で、アジア太平洋地域への関与継続・強化の方針を示した。

 同時に、「私たちのパートナー(同盟国)は財政上の義務を負わなければなりません」と、応分の費用負担を求めていたことに、今後、留意する必要があるだろう。

 これに対して安倍政権内では、「日米が緊密に連携し、平和と繁栄のための対応策を取るのは従来とまったく一緒だ」(菅官房長官)など、防衛費増額の懸念を打ち消して見せた。

 一方で、将来的に現行の対国内総生産(GDP)比1%弱で推移する日本の防衛費の増額を求められる可能性も否定できないとして、予算や自衛隊の機能・装備品などの見直しを進め、準備をしている。

 さらに、自衛隊の後方支援、戦闘地域論に続いて、「敵基地攻撃」論が検討されている。

 攻撃される前に敵のミサイル基地などをたたく敵基地攻撃論。

 安倍首相は検討に前向きな姿勢を示し、自民党の弾道ミサイル防衛に関する検討チームが、議論を始めている。

 ということは、すでに2019年度からの次期中期防衛整備計画を視野に入れて、動いていることになる。

 トランプ氏の米議会発言を追い風と受け止めているようだ。

 日本は専守防衛のもと、攻撃的防衛力を持たないことを原則としてきたため、自衛隊の装備品は専守防衛の武器体系となっている。

 敵基地攻撃は、「攻撃」であるから、「攻撃」用の装備が必要になってくる。

 当然、防衛費はGDPの1%枠をはるかに超えて、防衛費は膨らみ続け、アジア地域の安全保障に緊張をはらみ、悪化していく。

 安倍政権は、平和とは対極の最悪の環境を作り、維持していこうとしており、そのための仮想敵・北朝鮮を必要としているのだ。

 北朝鮮脅威論を喧伝して、北朝鮮敵視政策を巧妙に続けているのも、そのためだ。

 
 2017年の「3月1日」は、内向き、保護主義、国民保守主義、米国第一主義、ポピュリズム傾向が、米国以外にもヨーロッパなどではっきりと姿を現してきた。

 保護主義が軍拡の衣をまとって進んでいる姿は、日本の安倍政権にも見られる。

 60数年前の民族自主の原点となった「3・1運動」とは、隔絶の感がある。

                                                                   2017年3月9日 記

「朝鮮半島の『3月1日』を考える」①

「朝鮮半島の『3月1日』を考える」①


1.近代から抜け出した「3.1運動」

 朝鮮近現代史には、数多くの記念日が存在する。

 それ自身で、封建体制並びに帝国主義による抑圧への抵抗とたたかい、軍事独裁体制への反抗と核新精神を表現している。

 ながらく儒教体制の中で惰眠をむさぼっていた貴族層(リャンバン)は、近代化への目覚めが遅く、19世紀末から始まる帝国主義列強からの侵食攻撃にさえ、対抗手段を持たなかった。

 帝国主義侵略者とたたかい、実際に祖国を守ったのは農民など下層階級であった。

 近代的な武器や戦術を持たない彼らは、人海戦術によって朝鮮の風光明媚な領土と、伝統ある文化の破壊を、侵略者から守るためにたたかった。

 その間に、民族自主の精神を育んでもいる。

 その最大の発露と表現が、1919年3月1日の「3.1民族独立運動」であった。

 すでに日本帝国主義によって領土と民族精神を奪われていたとはいえ、否、それ故にこそ、朝鮮民衆たちの抵抗心は熱く燃え上がり、武装した日帝の軍警に臆することなく対峙した。

 ところが、軍動を指導したブルジョア民族主義者たちは、封建的儒教精神から抜け切れず、民衆の意志とは遊離していて、犠牲者の数を重ねてしまった。

 「3.1独立運動」は結果的に弾圧されたとはいえ、民衆たちは抵抗と弾圧、犠牲の中から、帝国主義者とのたたかい方を学び、以後、民族闘争、抗日武装闘争を組織し、民族解放の日を引き寄せた。

 南北朝鮮が今なお、この「3.1」を記念するのは、民族自主闘争のシンボル、民族的に貴重な日と認識しているからである。

 以下、「3.1独立運動」精神に照らし合わせて、現代、2017年3月1日を起点とする朝鮮半島関連の現状、動きを追っていく。


2.「3.1運動の史的意義」

 改めて「3.1独立運動」の概観を記しておこう。

 「3.1」が起こった1919年の朝鮮は、日帝に併合されて10年目である。

 併合10年目の3月1日、一部の親日派と民族反逆者を除いて、地主・資本家・農民・労働者・知識人・学生ら老若男女を問わず、朝鮮の民衆は日帝の武力支配に抗して朝鮮全土で立ちあがり、「朝鮮独立万歳」を叫び、朝鮮の民族自主を熱望する意志を全世界にアピールした。

 この運動の精神は現在、朝鮮史だけではなく、全世界の被圧迫民族にも大きな希望と光明、力を与えている。

 ただ、武装した帝国主義軍隊と警察官に対して、素手で「独立万歳」と叫ぶだけの示威行為であった点で、運動を導いていた側に、時代を乗り越えていく意志と力量に欠けていたと言える。

 運動が起こる時代背景には、第1次世界大戦後のベルサイユ講和会議で提起されたウィルソン米大統領の14カ条中、民族自決主義の提唱によって、全世界の被圧迫民族の解放が叫ばれていたことと、ロシア革命の勝利が民族の実際的な分離独立、民族解放の現実を見せてもいた。

 この新しい世界の潮流に勇気づけられた朝鮮民衆は、朝鮮独立を叫んで立ちあがった。

 朝鮮国内600カ所以上(それ以外にも中国東北地方、ロシア沼海州なども)、2000万人以上が参加。

 以上の数字は、運動が4月末頃にはほぼ鎮圧されたとはいえ、その後も各地で示威行動と抵抗が繰り広げられていたことを示している。

 5月30日までの3カ月間だけで死者8000人余、負傷4万5000人余、検束4万9000人余という惨状が、それらを物語っている。

 運動の発端は、ブルジョア民族主義者33人の署名した独立宣言書(無抵抗的で嘆願的な内容)を発表したこと。民衆たちの意図は、独立宣言書を越えていた。

 従って、運動を契機に、上海に亡命していた民族主義者たちは大韓民国臨時政府(1919年4月)を結成(主なメンバーは李承晩、李東輝、金九、金奎植ら)。

 他方、中国・間島一帯で武力闘争の根拠地を創設して日本軍と戦い続けた。

 臨時政府は、戦時中に重慶に亡命し、重慶臨時政府(金九、金奎植ら)ともいう。

 どちらの臨時政府とも、朝鮮国内の指導者たちや民衆との連携も結合することもなかったから、朝鮮国内の朝鮮人たちも知らず、朝鮮人民のための「政府」と言うにはあまりにも距離があった。

 蒋介石政権の援助を受け、解放直前に、数百人規模の軍隊を組織したが、一度も日本軍と戦うことはなく、いずれの国からも「臨時政府」とは認定されず、解放後、米国も「政府」とは認めなかった。

 ところが、現在の大韓民国は、この「臨時政府」を建国のルーツだとして、そのことを憲法に記載している。

 日帝に抵抗し、その力量で解放を迎えたのだとする「神話」が必要だったのか、初代大統領の李承晩の影響なのか、「亡命政権」ともいえない「集団」に源を求めようとした大韓民国の「政治信条」を疑わざるを得ない。

 一方、中国の間島地方を中心に抗日武装闘争を展開していた革命家たちは、白頭山革命根拠地を建設し、朝鮮人民革命軍として、朝鮮北部へと進出、解放を勝ち取った。

 以上のように3.1運動から朝鮮解放までの闘争は階級的性格をもち、武装闘争へと発展して、巨大な帝国主義軍隊に勝利したという点で、歴史的意義は極めて大きい。

 その意味するところが南北朝鮮で違うとはいうものの、「3.1」は朝鮮民族にとって重要な記念日であることに変わりはない。
 
3.韓国の「3.1」

 (A)黄首相の「3.1節」演説

 韓国では毎年、3月1日に政府主催の「3.1節」の記念集会を開き、大統領が演説することになっている。

 今年は職務が執行停止されている朴槿恵大統領に代わり、黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行首相が演説した。

 黄氏は、「高高度ミサイル(THAAD)配備問題」、「マレーシアでの朝鮮人暗殺事件」、「日韓関係―軍慰安婦問題」など、現政権が当面する問題に言及した。

 「THAAD」配備については、「堅固な韓米連合防衛体制を土台に、北のいかなる挑発と威嚇にも断固として報復」し、「国際社会と共に、北が核兵器と弾道ミサイル開発を放棄するしかないようにする」ためだと強調した。

 朴槿恵氏と同一思考を展開した。

 米国との間では、早期の運用開始に向け、準備を加速することで一致し、次期政権発足前に搬入するとしている。

 「THAAD」設備部品の一部は米軍によって予定より早く持ち込まれ、実際の建設と既成事実化が始まっている。

 一方、マレーシア事件については、マレーシア側がまだ発表していない段階から、毒殺されたのは「金正男」、毒薬は「VX」だとして、北朝鮮の国家犯罪であると言及。

 あまりにも前のめりな感が否めず、韓国の「位置」が気にかかる。

 
(B)米韓合同軍事演習

 この日から、大規模な合同軍事演習「フォール・イーグル」と「キー・リゾルブ」が始まった。

 トランプ米政権にとっては最初の軍事演習ではあるが、米歴代政権は「恒例」の行事だと公言してきた。

 朝鮮側は、トランプ政権発足前から、合同軍事演習が朝米間の対立点を煽り、戦争への導火点となる可能性があり、中止を要求していた。

 中止をしない場合は、超強硬的な対応措置を実施すると、米国にメッセージを伝えていた。

 そうした朝鮮側の主張を無視し、史上最大規模だと公言していた昨年よりもさらに上回る規模で合同軍事演習を展開。

 米原子力空母カール・ビンソンをはじめ、原子力潜水艦、戦略爆撃機B1B、B52など、多くの最新戦略兵器を動員している。

 韓国国防部は、「昨年と同様に、過去最高水準の演習で韓米同盟の決意を顕示する」、「北の核と大量破壊兵器に対応し、報復能力を確保するための訓練を強化する。演習後半部は統合火力撃破訓練を通じ北と国民向けにメッセージを強く打ち出す」として、米国の戦略兵器を展開している。


(C)2つの民衆集会

 3月1日には、2つの大きな民衆主導の集会が開かれ、現在の韓国社会の様相を現していた。

 1つは、朴槿恵政権退陣非常国民行動主催による「第19回ろうそく集会」である。

 「ろうそく集会」は昨年10月から毎週続き、この日は19回目を数えた。(すごいエネルギーだ)

 憲法裁判所の弾劾決定前、最後の可能性が高いとして、この日の午後7時30分基準で90万人余が集まり、ソウルの光化門広場を埋め尽くした。

 「朴槿恵のいない3月、それでこそ春だ」として、全土でも同様の集会が開かれていた。(10日、憲法裁が朴槿恵氏を弾劾したことで、民衆は勝利)

 もう1つの集会は、韓国全土で展開されていた「12.28『慰安婦』合意撤回」の声である。

 3.1節と重なった3月1日の第1272回水曜集会には、普段より多い1000人を超える市民たちが「少女像を守る千の椅子」行事に参加した。

 1000の椅子に座った参加者たちは被害「少女」と同じように、一斉に靴と靴下を脱ぎ、裸足でかかとをあげたまま1分間沈黙デモを行った。

 同様の行事はソウルや釜山など、像がある各地でも開かれた。

 主催者側は、「国民の名においての侵略と戦争犯罪を知らぬ存ぜぬで一貫する日本政府を糾弾する。ろうそくの名において悪い政府と悪い政策を正して弊害の清算を約束する」と主張。

 日本政府のしっかりとした公的謝罪と歴史清算が求められている。


4.北朝鮮の3月

(A)ミサイル発射

 北朝鮮は3月6日、相次いでミサイル4発を発射した。

 在日米軍対応部隊が、米韓合同軍事演習に対抗してミサイル発射訓練を実施したと発表した。

 このことで日米韓3か国は、相変わらず北朝鮮の「脅威」だとして、「厳重抗議する」と、国連安保理の制裁へと動き出した。

 これに対して中国はやや冷静に、「朝鮮のミサイル開発については、国連安保理の明確な規定がある。中国は朝鮮が決議に違反してミサイルを発射することに反対する」として、「現在、米韓が朝鮮に向けて大規模合同軍事演習を行っているのも、中国は注意深く見ている。関係各国は自制を維持し、緊張を高める行為を慎むことを望む」と、朝鮮との対話を求めた。

 北朝鮮のミサイル発射、日米韓はどれほどの「脅威」だと感じているのだろうか。

 米国が2月8日に試験発射した大陸間弾道ミサイル「ミニットマン3」、14日にテストした潜水艦発射ミサイル「トライデント」は、脅威ではないのか。

 北朝鮮が、合同軍事演習や米国のミサイルに対して「脅威」だと受け止めていることを無視して、産軍体制維持のために、さらなる脅威を作り出している日米韓3か国こそ、国連安保理での審判を受けるべきだろう。

 特に米韓両国は、朝鮮戦争対戦国、朝鮮側から見れば敵国である。

 60数年間、朝鮮戦争を休止したままで、講和(平和)協定を結ぶための会議さえ、拒否してきた米韓両国が、新たな大規模軍事演習を実施していることは、53年の朝鮮戦争停戦協定違反を犯しているのであり、それだけで「戦犯」なのである。

 (B)外交攻勢に出た

 北朝鮮は、トランプ米政権の発足直後から、外交攻勢へと動き出した。

 ニューヨークでの米専門家との非公式対話を3月初めに希望し、朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)米州局長が1月半ばに入国ビザの発給を申請したことから、水面下で動き出した。

 トランプ政権も北朝鮮の姿勢を知るよい機会だと考え、対話に前向きになっていた。

 崔善姫氏へのビザ発給には問題がなかったのだ。

 ところが、マレーシアのクアラルンプール国際空港での男性の死因が、猛毒の神経剤VXが使用されたことによるものだと判明(2月24日)した直後、ビザ発給の不許可を決めた。

 以上のように3月初めの非公式朝米会談こそ中止になったものの、トランプ政権が北朝鮮との対話を望んでいたことが明らかとなった点で、接触への試みは無意味ではなかった。

(C)マレーシアと中国に外交官を派遣

 2月28日、2人の高位級外交官を送りこんだ。(高官代表団)

 1人は、マレーシアに向かった李東一前国連次席大使。

 クアラルンプール国際空港事件で、マレーシア側に拘留されている男性の早期無条件釈放、空港で死亡した男性の遺体引き渡し、マレーシア政府との関係修復のための協議だと説明。

 2日の記者会見で、「男性の死因は心臓発作の可能性が濃厚(マレーシア警察の見解を否定)、死亡したのはキム・チョル(パスポート記載名)で、彼は以前から心臓病で治療を受けていた」と発表。

 希望していたマレーシア政府側との会談は実現しなかったものの、男性(リ・ジョンチョル容疑者)の拘留期限が切れる3日に、国外退去処分となり、北朝鮮に帰国した。

 もう一人は、中国に向かった李吉成・外務官。

 彼は中国外務省の招きで、2月28日に北京に入った。

 中国外務省は、「両国関係に加え、ともに関心をもつ国際的、地域的問題について、意見交換する」ためだと説明。

 北朝鮮が開発を進める核・ミサイル問題、北朝鮮産石炭の輸入および貿易関係、マレーシア事件などについて、説明と意見交換をしたと思われる。

 マレーシア警察が、殺害された男性の身元確認(キム・チョル氏なのか金正男氏なのか)をする必要から、DNA鑑定のため、北京とマカオに居住する家族に訪問を呼び掛けていた。(中国政府に協力を要請していたのだろう)

 中国側は、マレーシア警察の協力要請にも沈黙を守り、2月13日の事件後すぐ、家族を安全な場所に移したものと思われる。

 そのため、事件に対して第3者的な立場を貫き、沈黙し、静観していた様子が伺われる。

 朝中協議はタイムリーだったとも言える。

(続く)

「教育勅語、解禁か」

「教育勅語、解禁か」

 松野博一文部科学相は14日、教育勅語について、憲法や教育基本法に反しないような配慮があれば、「教材として用いることは問題としない」との見解を示した。

 「配慮」が適切かどうかの判断は、「所轄庁が判断するものだ」と、都道府県の教育委員会に任せた。

 憲法や教育基本法に反しないこととは、何を指しているのだろうか。

 教育勅語そのものなのか、その中の個々の表現なのか。

 それとも基調精神なのか――いずれにしても、憲法や教育基本法とは対極の地点にある。

 (明治)天皇体制下の臣民として生きることを強いられ、軍拡、侵略戦争の兵員になるための精神を注入するために作られた教育勅語。

 戦後の民主主義体制発進のため、全面否定されたはずだ。

 よもや噂の塚本(森友)幼稚園児たちが、教育勅語を唱和していたことを肯定し、「問題なし」見解を出したのではないだろう。

 安倍政権のナショナリズム色、戦前回帰路線への色調が、またひとつ出てきた。


                                                                  2017年3月15日 記

「個人情報配布問題」

「個人情報配布問題」

 埼玉県熊谷市の市立熊谷東中学校が1月、自校の生徒13人を「非行生徒」として、地域の「非行防止ネットワーク会議」(自治会長ら)に提出していたことがわかった。

 地域のサポートが必要な生徒として、氏名、住所、非行歴などが記載されたリストを配布、情報を共有しようとした。

 個人情報の取扱に慎重で厳しい昨今、学校側の行為はあまりにも不適切で不注意だった。

 学内で、13人の生徒の扱いに困っていたのかもしれないが、リスト提出の背景には、集団からの異種排除感、人権感覚の希薄があったのではないか。

 また、何が「非行」なのか、非行の背景に存在する人間模様も解明する必要があるだろう。

 学校側は、3月中に保護者説明会を開くとしているが、対応が余りにも遅いのではないか。


                                                                  2017年3月15日 記

「なぜ今、南スーダン撤収発表か」

「なぜ今、南スーダン撤収発表か」

 安倍政権は10日、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)を開き、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の施設部隊約350人を5月末に撤収させる方針を決め、発表した。

 南スーダンは2011年にスーダンから分離独立した後、キール大統領とマシャル副大統領(当時)が、民族の違いを利用して主導権と利益を争ってきた。

 昨年7月、キール派とマシャル派との間で大規模な戦闘が再燃。戦闘は現在も南部や北部を中心に続いていて、内戦状態に陥っているという。

 現地の情勢は安定しない状況が続いていると伝えられていた。

 そのような状況下で、安倍晋三首相は安全保障関連法で可能になった「駆け付け警護」任務を付与された部隊を派遣した。

 南スーダンは現在、日本が参加する唯一のPKO。

 安倍首相は記者団に、「南スーダンの国づくりが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当する施設整備は一定の区切りをつけることができると判断した」と、派遣自衛隊の撤収理由を説明した。

 現地の情勢がいまだ不安定な状況下で、安倍氏が言う「一定の区切りをつけることができた」との意味は、「駆け付け警護」の新任務を付与した自衛隊派遣を実現できたことで、「区切り」を付けたということだろう。

 戦闘が派遣自衛隊部隊の間違いに迫り、死者や負傷者が発生しない段階で撤収させる、というのが本音だろう。

 昨年11月、野党などから、大規模な戦闘があり、内戦状態に陥っている南スーダンへの自衛隊派遣は、「PKO参加5原則は崩れている」などと追及されたにも関わらず、政権側は強引に「駆け付け警護」の新任務を付与した部隊を派遣した。

 それにしても、安倍氏が撤収方針を表明したのが、10日午後6時過ぎ。この時間帯、森友学園の籠池理事長が記者会見をしていた。

 森友学園問題では、安倍首相や妻の昭恵さんの名前を利用して、寄付金集めをしていた可能性がある。

 「森友学園への関心が一番高まっている瞬間、首相の発表がぶつけられた。『森友隠し』だと疑問を感じざるを得ない」(民進党の山井和則国対委員長)

 「撤収決定のタイミングは実に巧妙。必然的に森友学園のニュースは小さくなり、世論は、南スーダンでけが人が出る前によく撤収させた」(自民党ベテラン議員)などと、ささやかれている。

 今後とも、日報関連問題も、森友学園問題も、真相究明が必要である。


                                                                  2017年3月12日 記

「韓国民衆の勝利」

「韓国民衆の勝利」

 韓国の憲法裁判所は10日、朴槿恵大統領の罷免を宣告した(8人の裁判官が全員一致)。

 その理由として、私益、機密文書流出などの違法行為を認定。「国民の信任を裏切り、憲法を守る観点から容認できない重大な法違反行為と見なければならない」とした。

 60日以内に大統領選挙が行われる。(追記:5月9日選挙)

 これは韓国民衆の勝利だ。

 昨年10月から毎週末、ソウル光化門広場や裁判所前でのキャンドル集会が続けられてきた。

 判決1週間前の3月4日、「第19回汎国民行動」は、「朴槿恵のいない3月、それでこそ春だ」の主題で、各地で集会を開き、ソウルで90万人、全土で105万人が参加した。

 この民衆のパワーが今後、閉じられてしまった南北の交流と協力の扉を開いていくことを望む。


                                                                  2017年3月10日 記

「『教育勅語』精神の防衛大臣」

「『教育勅語』精神の防衛大臣」

 稲田朋美防衛相がまた右翼チックな本音答弁をしている。

 8日の参院予算委員会で、社民党の福島瑞穂氏が、学校法人「森友学園」が運営する幼稚園で園児に教育勅語を暗唱させていることに稲田氏が賛同(2006年の雑誌にコメントを掲載)していたことに関して、現在の考えを聞いたことに対する答弁である。

 教育勅語は、明治天皇が国民道徳の根源や教育理念を授けた「教え」であり、国主義と結びつくものである。戦前の国家(国民)では、戦争など国の非常時には身を捧げ、「君国」のために捧げることが教育勅語の本質とされた。

 これに対して、稲田氏は、「まったくの誤りというのは違うと思う。日本が道義国家を目指すべきだという精神は変わらない。その精神は取り戻すべきだ」、「親孝行や友達を大切にするといった核の部分は今も大切だ。核の部分は取り戻すべきだ」などと強調した。

 天皇を頂点とする国家を目指し、軍国主義教育の根拠となった教育勅語の精神を取り戻す――軍国主義教育理念へと結びつくことを是認していることになる。

 こうした精神構造をもつ人物が防衛大臣になっていることに、疑念をもつ。

 安倍晋三首相を含め、安倍政権では、教育勅語を擁護する発言が続く。

 このような安倍政権内だから、稲田氏の発言が見逃されていると思うが、彼女の大臣としての資質に疑問を持つ。


                                                                    2017年3月9日 記

「日本学術会議の新声明案」

「日本学術会議の新声明案」


 日本学術会議は7日、新たな声明案を作成した。

 大学の科学者らが行う軍事応用も可能な基礎研究に助成する防衛省の公募制度について「政府の介入が著しく、問題が多い」などとして、学術発展への悪影響を懸念する見解を示した。

 過去の戦争協力への反省から「軍事研究をしない」とした1950年と67年の声明を「継承する」とした。

 しかし、応募の禁止や制度の廃止は求めず、大学などは、「軍事的安全保障研究の適切性を審査する制度を設けるべき」など、大学側と科学者の良心に判断をゆだねた。

 「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない」とした50年の声明と比較すると、効果は限定的といえる。

 が、かろうじて軍事研究への道に進むことを防いだという点で評価したい。

 4月の総会での可決を期待する。


                                                                   2017年3月8日 記

「共謀罪は不必要だ」

「共謀罪は不必要だ」

1.
 現在、国会で議論している「組織的犯罪処罰法改正案」。

 組織犯罪の計画段階から処罰を可能とする「共謀罪」の成立要件を入れた「テロ等準備罪」である。

 政府の説明では、テロ等準備罪の対象団体を、重大な犯罪の実行を共同の目的とする「組織的犯罪集団」に限定し、重大な犯罪を4年以上の懲役・禁錮刑と定めている罪で、当初は対象犯罪を676としていたが、野党側の追及で、テロや組織犯罪に関連する277に絞り込んでいる。

 金田勝年法相は21日の閣議後の記者会見で、「正当な活動を活動を目的とした団体が、重大な犯罪を1回だけ実行すると意思決定しても、直ちに『組織的犯罪集団』にあたらない」と述べ、厳格に解釈するとの方針を強調した。

 しかし、「共謀罪」の解釈権が取り締まる側にある以上、この法案が成立すれば、一般市民にも対象が及び、言論の自由も大きく制限されてしまう。

 一方、民進党は21日、①「テロ等準備罪」を新設する必要性は乏しい、②一般市民も捜査、検査の対象となり得る――として、「包括的で不明確な共謀罪に反対」との見解をまとめた。

 処罰対象となる「組織的犯罪集団」の範囲に、いつでも一般市民を含み得る法案の存在は、戦前の「保安法」を想起させ、やがては基本的人権の侵害につながる。思想信条及び言論弾圧が隠されており、悪法となって私たちに牙をむいてくるだろう。

 ぜひ、野党共闘でもって、反対論陣を張り、葬ってもらいたい。

 
2.
 私自身、嫌な思い出がある。

 80年代の終わり頃、後輩から、公安担当の警察官が会社の玄関前で私を張り込みしていることを教えてくれた。

 後輩と警察官は偶然にも高校時代の同級生で、互いに声をかけあって立ち話をしたという。

 警察官が言うには、私が過激な思想の持ち主で、北朝鮮をよく訪れているのは何らかの情報を受け取っているのではないか、 さらに、北朝鮮関連の活動ばかりでなく、「玉串料訴訟」、「反原発運動」、「消費者運動」、「環境問題」などの運動のリーダーをしていて、危険人物としてマークしている、とのことであった。

 仲間を先導して、いつ暴力行為を起こすかもしれないと考え、誰と会っているかなどの情報を集めているという。

 しかも、80年からだと言った(御苦労なことだ)。

 後輩は、私を暴力事件を起こすような人ではないと話したというが、その後も見張りをしていたようだ。(後輩が目撃)

 以上の私の事例から、警察が何らかの理由(恣意的)でリストに上った団体や個人は、徹底的にマークし、情報を執拗に集めて、いつでも立件できるようにするための準備をしていたということである。(人権侵害)

 これは、80年代という、はるか昔のことである。

 安倍政権がどのような理屈を展開しようと、「組織的犯罪処罰法改正案」が成立した後の社会は、思想信条の自由が大きく制限される社会となるだろう。

 これは暗黒社会である。


                                                                   2017年2月22日 記
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愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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