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「米国こそ核放棄せよ」

「米国こそ核放棄せよ」

 北朝鮮が12日午前、日米首脳会談・食事中を狙い撃ちして新型の弾道ミサイルを発射した。

 あわてた安倍晋三首相とトランプ米大統領は、並んで北朝鮮非難声明を発表した。

 三百代言のように日米は、北朝鮮が「挑発」をしたとして「制裁」論を繰り返している。

 今回もまた、日米韓3か国は、国連安保理に「北朝鮮制裁」案を共同提出した。

 一方、中国とロシアは「遺憾と懸念」を表明している。

 「問題の根源は朝米、朝韓間の矛盾にあり、最終的な出口は対話にある」(中国外務省)

 「日米韓など関係諸国は冷静さと、さらなる緊張激化につながる行動を自制すべき」(ロシア外務省)――と、北朝鮮との対話を要求している。

 北朝鮮への「一方的な抑止力拡大」だけでは、問題解決にはならないと、日米韓3か国をけん制している。

 北朝鮮も米国との対話を望み、要求している。

 ところが米国は対話を拒み、圧力と制裁政策、核攻撃恫喝を続けてきた。

 北朝鮮側としては、米国からと日米韓3か国からの政治的・軍事的・経済的「攻撃」から体制と民族を守るため、核とミサイルで武装した。

 米国は北朝鮮の核放棄要求のため、圧力と制裁を強化。

 北朝鮮もその都度、核とミサイルの精度を上げていく。

 それをいいことに米国は、アジア地域の安保体制を強化している。

 結局、米国は北朝鮮の核・ミサイル問題を理由に、アジア地域と日米韓3か国の安保を強化しているのだ。

 北朝鮮の核とミサイル問題の「問題」こそ、米国のアジア地域戦略そのものにあった、ということである。

 今回も国連安保理で北朝鮮「制裁」が議論されようとしているが、「制裁」では北朝鮮の核・ミサイル開発を止められないことを、国連は理解すべき時に来ているのではないか。

 むしろ、米国に対して、アジア地域安保(地上配備型ミサイル迎撃システム、ミサイル防衛システムなど)の非難決議、北朝鮮との対話を行うよう要請すべきではないか。

 国際社会は、米国の核政策放棄に向けて、結束し、声を挙げるべきだ。


                                                                  2017年2月14日 記
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「北朝鮮からの号砲」

「北朝鮮からの号砲」

 北朝鮮が日本時間の12日午前7時55分頃、新型中距離弾道ミサイル(射程2500~4000キロ)を発射した。

 日米首脳会談直後のことで、そのタイミングを狙っていたものと思われる。

 訪米した安倍晋三首相はトランプ米大統領との共同記者発表で、「断じて容認できない」と強く非難した。

 トランプ氏は「日本を100%支持する」と、日米連携で北朝鮮のミサイル発射に圧力に加えると強調しただけ。まだ、対北朝鮮政策が定まっていないことを示した。

 トランプ政権は、政権発足直後にマティス国防長官を日本に派遣し、連携して北朝鮮に対処する方針を確認。今回の日米首脳会談でも、同盟強化で一致して、対北朝鮮政策に取り組むとの大枠を発表したばかりだった。

 つまり、オバマ前政権の基本的な各種政策を否定し、転換する「大統領令」を続出してきたトランプ政権は、前政権の北朝鮮情報も素直には引き継いではいないだろう。

 そのため政権内の北朝鮮情報、認識、知識の精度は低く、当面はオバマ政権の路線を踏襲し、日韓両同盟国とのミサイル防衛網を強化し、対北朝鮮制裁を強化していく路線に立つしかなく、その位置に立っていた。

 トランプ氏は、大統領選挙期間中に、北朝鮮との対話を示唆する発言をしていたが、それはあくまで北朝鮮が核とミサイル発射・保持を手放す手段としてであって、対話路線に切り替えるという意味ではなかった。(条件付きであって、北朝鮮の出方次第ということになる)

 北朝鮮の情報と知識が不足しているからである。

 だからこそ、トランプ氏は大統領候補中から、「北朝鮮の核・ミサイルの脅威を防ぐ」、若しくは「無くす」と発言していたと思われる。

 従って、北朝鮮がミサイルを発射した今回のタイミングは、オバマ政権に対北朝鮮を含むアジア地域の安保関連で、日米、米韓、日韓の2国間と、日米韓3か国の連携強化を加速させる口実を与えた可能性がある。

 同時に、問題は中国の対応である。

 米中経済協力・発展のため、トランプ氏は「(台湾との)一つの中国」を表明したばかりだが、対北朝鮮制裁への協力は、前政権同様に強く要求していくだろう。

 中国はこれまで「朝鮮半島情勢は非常にデリケートだ。関係各国は緊張を高める言動を取らないよう望む」(外務省)と、北朝鮮を含む関係各国に忠告してきた。

 今回のミサイル発射で日米韓3か国の連携強化が進んでいけば、北朝鮮への行為への不信感をさらに高めていくことになる。

 以上、様々な様相をはらんだ北朝鮮ミサイル発射ではあるが、これが新しく始まる朝米関係(戦争)への号砲になったのではないかと言える。

                                                                  2017年2月13日 記

「駐韓大使不在の異常」

「駐韓大使不在の異常」


 従軍慰安婦を象徴する少女像が釜山の日本総領事館前に建てられたことを受け、安倍晋三政権は長嶺安政駐韓大使を一時帰国させ、韓国政府に抗議をする措置を取った。

 通常は数日から10日程度で帰任させるのが、すでに1カ月余り経っている。

 異常だ。

 大使不在の長期化は、不正常な状態を強く印象付けるだけでなく、日韓間の慰安婦問題の解決をますます難しくしていくだろう。

 韓国社会はいま、朴槿恵大統領の弾劾訴追から早期退陣要求運動の方向で動いている中でも、日本の慰安婦問題への対応について、怒りの声を上げ続けている。

 60余りもの少女像設置への動き、釜山の日本総領事館前の少女像を守る運動、地方議会での竹島(独島)に少女像を設置しようとする動きがあり、野党や市民団体からは「韓国も駐日大使引き上げを検討すべきだ」、「(日本が提供した)10億円を返還すべきだ」などといった声も出ている。

 オバマ米政権の強い要請のもと、日韓合意で決着をみたと思われた慰安婦問題がオバマ政権退陣と同時に悪化してしまったことは、皮肉なことだ。

 原因は、日本政府が軍関与を認めて公的に謝罪しないという、日本の歴史認識・清算問題の中にある。
 
 そうであるから、大使の一時帰国措置は短絡であり、長期にわたる大使不在は日韓関係正常化への努力不足ではないかと言える。

 韓国政権はこれまで、それなりに努力している。そうした機会に事態収拾、大使帰任への環境づくりをするチャンスがあったはずだ。

 これまでのオバマ前大統領との日米首脳会談では日米韓3カ国、日韓連携の強化を強調している。日米同盟が「命」だと公言する安倍政権は、慰安婦問題で不協和音を奏でている現在の韓国との関係を、今度はトランプ政権によって調停してもらうつもりなのか。

 安倍政権は、口先だけではなく、しっかりと負の歴史問題に向き合って、主体的な「未来志向」へと歩んでもらいたい。


                                                                  2017年2月12日 記

「日本の研究者に米軍資金が」

「日本の研究者に米軍資金が」

 危惧していたことが現実であったことにショックを受けている。

 米軍の研究資金が日本の科学者に幅広く渡り、活用されていたことだ。

 8日付けの毎日新聞は、米空軍が2010年度以降の6年間に、延べ128人に総額8億超えの研究資金などを提供していたことを報じた。

 米海軍の海事研究局の出先機関を通じて申請することによって、一人約150万~4500万円を受け取っていたことも明らかにしている。

 さらに翌9日付けの朝日新聞は、2008年から16年までの9年間で少なくとも135件、総額8億8千万円の米軍からの研究助成が提供されていることがわかったと報じた。

 米軍の助成金は、米国の陸海空軍がそれぞれ提供する形で、20年ほど前から始まっていたとも伝えている。

 公開されていなかったから、一般には知られていなかった。

 資金提供対象は基礎研究に限り、研究テーマおよび軍に協力的な研究者に声をかける方式で、日本政府は関与せず、米軍が直接資金を提供してきたと伝える。

 そのため米軍側は普段から、軍に協力的な人脈を探し、そのネットワークづくりのために、めぼしい研究者に声を掛けていたようだ。

 資金提供する米軍側の目的は、基礎研究推進である。

 基礎研究を推進する目的について、米国防総省側は、「成果を軍備増強に活用することで、軍事的優位を保つこと」(国防科学委員会)と、軍事目的であることを明らかにしている。

 その上で、海外の民生分野の研究成果を低コストで集めて軍備に応用、民生技術が他国やテロ集団に流れることを防ぐことも目的だとしている。軍事目的であり、かつ、その基礎研究を他国に先駆けて開発することとしている。

 積極的に資金提供をうけて研究を進めていた科学者たちの言い訳は、「軍事研究には当たらないと判断した」、「研究自体は平和目的。資金源が米軍だから問題だとは思わない」(8日付け、毎日新聞)など、民生転用可能な基礎研究だからと言い訳を正当化して、自ら軍事研究の道に進んでいた実態が明らかになった。

 その背景には、研究資金不足が上げられるという。

 資金不足を理由に軍事分野の研究に手を染めている研究者たちに、一部の科学者たちは、「助成金を決めるのは国防総省。特定の目的を持って支出しているのは明らかだ」(西崎文子・東大教授)、「基礎研究であっても軍事力の強化という目的によって方向づけられており、軍事研究にほかならない」(小森田秋夫・神奈川大教授)と危惧を表明、正当な声を挙げている。

 研究費の資金源、資金提供者が問われているのだ。

 米軍提供の資金に手を出した科学者たちは、研究成果が民生利用であることを自己評価して、あるいは自己弁明して、日本学術会議の軍事研究を禁じる声明、決議を「否定」してしまっていることには気付いていないようだ。

 一方、防衛省も、「安全保障技術研究推進制度」を設け、大学の研究者に資金を提供している。

 日本政府は、意図的に防衛省から資金を出している。大学や研究機関の資金不足に付け込み、防衛省からの資金提供予算を増額している。本来なら文科省関連からの資金提供、資金増額を検討、実施すべきだろう。

 こうした軍関係組織からの資金を受け取り、研究を続けることに、科学者・研究機関の間では抵抗感が薄くなっているとしたら、非常に危険な現実になっていると言わざるを得ない。

 学術会議は4月の総会で、これまで議論してきた安全保障と科学研究の関係について結論を出す予定である。

 軍事と学術の問題は、産官学体制社会の中では常に問われ、警戒されなければならない。

 学術会議総会の結論次第では、日本は産軍体制から進んで、戦前と同じ体制となってしまう。

 戦前、科学者が軍部に隷属した反省から、「軍事研究否定」の立場を貫いてきた学術会議の良心を貫いてほしい。汚ない資金提供を受けたことで、使用されている詭弁言語に惑わされてはいけない。

 真に平和を願う者ならば、いかなる部門であれ、戦争につながる軍装備が目的の科学研究などに協力できないはずだ。

 たとえそれで、研究ができなくなり、科学技術の発展が遅れようと、そのような研究成果など必要ない。

 戦争技術につながる一切の研究開発を否定する。


                                                                    2017年2月9日 記

「駐韓大使不在の異常」

「駐韓大使不在の異常」


 従軍慰安婦を象徴する少女像が釜山の日本総領事館前に建てられたことを受け、安倍晋三政権は長嶺安政駐韓大使を一時帰国させ、韓国政府に抗議をする措置を取った。

 通常は数日から10日程度で帰任させるのが、すでに1カ月余り経っている。

 異常だ。

 大使不在の長期化は、不正常な状態を強く印象付けるだけでなく、日韓間の慰安婦問題の解決をますます難しくしていくだろう。

 韓国社会はいま、朴槿恵大統領の弾劾訴追から早期退陣要求運動の方向で動いている中でも、日本の慰安婦問題への対応について、怒りの声を上げ続けている。

 60余りもの少女像設置への動き、釜山の日本総領事館前の少女像を守る運動、地方議会での竹島(独島)に少女像を設置しようとする動きがあり、野党や市民団体からは「韓国も駐日大使引き上げを検討すべきだ」、「(日本が提供した)10億円を返還すべきだ」などといった声も出ている。

 オバマ米政権の強い要請のもと、日韓合意で決着をみたと思われた慰安婦問題がオバマ政権退陣と同時に悪化してしまったことは、皮肉なことだ。

 原因は、日本政府が軍関与を認めて公的に謝罪しないという、日本の歴史認識・清算問題の中にある。
 
 そうであるから、大使の一時帰国措置は短絡であり、長期にわたる大使不在は日韓関係正常化への努力不足ではないかと言える。

 韓国政権はこれまで、それなりに努力している。そうした機会に事態収拾、大使帰任への環境づくりをするチャンスがあったはずだ。

 これまでのオバマ前大統領との日米首脳会談では日米韓3カ国、日韓連携の強化を強調している。日米同盟が「命」だと公言する安倍政権は、慰安婦問題で不協和音を奏でている現在の韓国との関係を、今度はトランプ政権によって調停してもらうつもりなのか。

 安倍政権は、口先だけではなく、しっかりと負の歴史問題に向き合って、主体的な「未来志向」へと歩んでもらいたい。


                                                                  2017年2月12日 記

「日本は『神頼み』社会か」

「日本は『神頼み』社会か」

 
 受験シーズンが近づく頃になると、賑わうのは各神社への「合格祈願」、絵馬奉納の風景である。

 普段は気にもしていない神社に参拝し、神頼みをして、さらに「おみくじ」を引く。

 多くの人たちは、神道への信仰心を持ち合わせてはいないと思われる。

 神頼みした神社の祭神名も、その霊験さえ知らず、関心もない風である。

 だから神頼みはどこの神社でもよかったのだろう。出来るだけ多くの人々が行く有名神社に赴くことで、より安心感を得るという。

 それはそれでいいだろう。

 受験生本人や家族たちが、不安な気持ちを鎮めようとする行為の一つだから。

 だが、それらがファッション化し、商業化している現象はなげかわしい。

 神社周辺、縁起が良い(合格、受かるなど)地名駅、物品などの類を発掘し、ブームづくりをしている不思議。

 さらに不思議なのは、プロ野球応援団関係者やスポーツ選手たち、または各種選挙関係陣営者たちが神社に「必勝祈願」していることである。

 自己の力量が問われる彼らが、神頼み「行事」に参加することで、精神の安定を得ているのだろうか。

 実力のみが問われるのに、神頼みすること自体が矛盾しているのではないか。

 神社参拝祈願や縁起をかつぐことは日本文化であり、社会的風習、恒礼行事、伝統的習慣の社会的な行事や行為だと受け止めているのだろうか。

 こうした風景を不思議にも思わず、疑問視もせずにマスコミも報道し、一般社会も受け入れている。

 そう、日本社会は未だに、信仰もしていない神、その名前さえ知らぬ神への祈願が一般化している社会だと言える。おかしな現象だ。

                                                                   2017年2月8日 記

「進んでいる軍産復合体」

「進んでいる軍産復合体」

 日本の科学技術政策の司令塔とされ、経済財政諮問会議などと並ぶ国の重要政策会議の「総合科学技術・イノベーション会議」(議長、安倍晋三首相)が、軍民両用技術の研究推進に向けて動き出した。

 昨年、閣議決定した今年度からの「第5期科学技術基本計画」に、初めて安全保障に関する項目を設け、検討会議に稲田朋美防衛相を臨時議員として加入させた。

 検討会では海洋、宇宙、サイバーなどを重要視するとしているが、これは、戦後の日本が引いていた科学技術政策と防衛分野との一線を、突破してしまっている。

 そうした背景には、安全保障政策を進めてきた安倍政権の防衛戦略に、民生技術の取り込みが必要との認識があるからだろう。

 科学技術政策で、「軍民」の区別があいまいになることは、軍産復合体制を推進していくことになる。

 ここでは、1950年と67年に出した日本学術会議が決議表明した「戦争と軍事目的の研究を否定」を支持し、同会議の検討会、総会での科学者としての良心的結論を期待すると表明しておく。

                                                                   2017年2月5日 記

「トランプ米政権の対北朝鮮政策は」

「トランプ米政権の対北朝鮮政策は」


1.
 トランプ米政権の閣僚としてマティス国防長官が2日に韓国、3日に日本を訪問した。

 このことでトランプ政権が東アジア地域の安全保障、日米韓3か国軍事同盟を重視しているとの意見もあったが、必ずしもそうだとばかりは言えないだろう。

 むしろ、トランプ氏自身も含む米政権内部での北朝鮮関連の情報及び知識不足をカバーするための日韓現地での情報収集、併せて、日米韓3国体制の強化を目的としたものであったと思われる。

 トランプ氏はオバマ前政権の政策を全て否定し、それを覆すことから政治を始めているから、対北朝鮮問題でも従前の「関与政策」を継続することはないだろう。

 大統領選挙中、貿易と軍事進出で中国批判繰り返していたが、アジア太平洋地域全体、朝鮮半島関連では、常識的な事柄を数少なく語っただけで、今日まで対北朝鮮アプローチについて、明確な態度は表明していない。

 彼自身に、朝鮮に対する知識がなかったからであろう。

 それでマティス国防長官を、情報収集と確認のため、日韓に派遣した。

 韓国との会談では、米軍の高高度迎撃ミサイル(THAAD)の早期配備、3月予定の米韓合同軍事演習の実施で合意。

 日本とは尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用確認(米国の防衛義務)、米軍普天間飛行場の沖縄県辺野古への移設計画の推進、北朝鮮の核・ミサイル開発を認めないこと、日米韓の安全保障協力が重要だとの認識で一致。

 日米同盟の関係強化を確認した。オバマ政権時代を追認しただけである。

 以上のマスメディアの発表とは別に、日韓両国との間で、対北朝鮮政策を協議したが、それがマティス氏の本来の目的であったはずだ。(日米韓3国軍事協力の問題で)


2.
 マティス国防長官が日本と協議したなかで、今後、注目し、懸念すべき問題が浮上してきた。

 集団的自衛権の行使容認が与えられている自衛隊の存在である。

 米軍の後方支援というポジションを得た自衛隊は、朝鮮半島有事の際は、「軍隊」として朝鮮に侵攻することが可能になった。

 自衛隊はすでに、米軍との間で、各種訓練を実施している。

 2016年秋から、北朝鮮による弾道ミサイル発射に備え、海上自衛隊と米海軍が日本海での共同警戒監視を始めている。

 日米両軍のイージス艦で、24時間の迎撃態勢を維持するためである。

 さらに在日米軍駐留経費の日本側の負担問題がある。

 トランプ政権は、海洋進出の動きを強める中国の「脅威」が増してきていると判断しており、アジア安保の環境が変化してきたと認識している。

 ところで、これまで北朝鮮の「脅威」だけに備えていた在韓米軍は、他地域にも展開できる部隊へと変化しつつある。(駐留経費削減などでオバマ政権下からすすめていた)

 在韓米軍司令部を竜山(ヨンサン)基地から烏山(オサン)基地に、年末までに移転する計画。

 また、南北軍事境界線近くに展開する部隊の後方移転、朝鮮半島以外での軍事演習参加などと、守備範囲の拡大が進行している。

 こうした状況下での自衛隊と在韓米軍の日頃の共同行動は、それだけには終わらないはずだ。

 トランプ氏の「力こそ全て」の世界観しだいでは、在韓米軍の負担が、在日米軍と自衛隊に降りかかる可能性もある、という危険性が内在していて、マティス氏は日本に伝えたのではないか。

 
3.
 マティス氏の日韓両国訪問で、もう一点、危惧すべき問題がある。

 韓国国防省はマティス氏との会談後、3月に行う「定例」の米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」を野外機動訓練「フォール・イーグル」を行うと発表した。

 マティス氏も「米韓同盟はアジア太平洋地域の平和と安定の要」、「米国や同盟国への攻撃は撃退する」と強調し、合同訓練を「強化して行う必要性で一致した」ことを明らかにしている。

 これに対し、北朝鮮の祖国平和統一委員会は、米韓合同演習に対して中止と対話を求めるとともに、実施すれば、「想像できない破局的な結果につながる」と、早くから警告をしていた。

 「キー・リゾルブ」、「フォール・イーグル」は、単なる合同軍事演習ではない。第2次朝鮮戦争を誘導するものである。

 その演習に自衛隊も参加する可能性があり、日米韓3国対北朝鮮の敵対関係が、「知性」なきトランプ政権下で展開されようとしているのである。

 朝米関係の長いロードマップの始まりの始まりが、今月下旬に展開されるのだ。


                                                                   2017年2月4日 記

「新自由主義――広がる貧富の格差」

「新自由主義――広がる貧富の格差」


 国際非政府組織(NGO)オックスファムは16日、世界で最も裕福な8人と、世界人口(73億5000万人)のうち経済的に恵まれていない半分にあたる36億7500万人の資産総額が4260億ドル(約48兆7000億円)で、ほぼ同じだとする報告書を発表した。

 1988年から2011年にかけて、下位10%の収入は年平均3ドルも増えていないのに対し、上位1%の収入の増加幅は182倍に達したとしている。

 8対73億5000もの比率がある貧富の格差の現実は、「経済犯」だと言ってもよい。

 オックスファムは、このような極端な貧富拡大を招いた一因として、大企業などが政府の規制や国際政策に影響を及ぼす「縁故資本主義」(相続による資産蓄積)を第1に挙げている。

 縁故資本主義を許したのは、1980年以降の新自由主義に基づく経済政策である。

 米国のレーガノミックス(レーガン政策)、英国のサッチャーリズム(サッチャー政権)、日本の「臨調路線」などに代表される保守的政・経路線で、「小さな政府」(自由放任、弱肉強食の市場機構)を主張し、市場競争による価格の自由な動きに任せ、強い資本(巨大資本)だけが幅をきかせる経済の仕組みを、政治が支えて、資本家がひとり利益を独占してきた。

 そこから脱するには、所得税における再分配機能の回復しかない。

 そのために取り組むべき政策課題は、累進課税(稼ぎの大きい人からは多めに、小さい人からは少なめに)の推進と、相続の縁故主義廃止である。また、現在進めている法人税の引き下げ競争を止め、課税制度の是正が必要だ。

 昨年、近現代の世界資本主義をリードしてきた米国が、トランプ大統領を誕生させたことと、英国で欧州連合(EU)離脱を決めたことの背景には、所得格差の拡大や移民流入と雇用喪失に対する強い不満の声がある。

 しかし、トランプ氏が進めようとしている、国境の壁建設、移民排斥、イスラム教徒の入国禁止、二国間貿易、日本の安倍政権が進めようとしている規制緩和、減税対策(大企業)、マイナス金利などのアベノミクス政策は、結局は新自由主義経済を進めるだけである。

 アベノミクスはすでに破たんしているが、トランプ現象(現在も混乱しているが)もやがて失速し、世界を混乱の渦に巻き込むであろう。

 NGOオックスファムは、税収拡大(富裕層からの)や軍事費削減などに取り組めば、最貧困層の4分の3を救うことができると主張している。

 医療や福祉関連の予算を削減し、軍事・防衛予算を増大している政権(どの国家であれ)には、現状を変える「人道的な経済」の仕組みを作る意志などはない。

 そしてまた、新自由主義は新たな「敵」を発見し、国民に憎悪を植え付け、戦争を作り出している。

 核兵器廃絶、軍事費増大に反対、軍産学体制に反対、軍事強化への研究に反対・・・あきらめずに声をあげていこう。


                                                                  2017年1月30日 記

「軍事と民間の距離が縮んでいる」

「軍事と民間の距離が縮んでいる」

 
 米国防総省が軍装備への採用を念頭に日本の民間企業の技術を積極的に調査していたことが明らかになった。

 共同通信の取材に対して国防総省は、1980年以降、核や生物化学兵器の防御、バッテリー、太陽光発電など16分野の民間技術を詳しく調査してきたと回答。

 日本政府が武器の「原則禁輸三原則」を撤廃する「防衛装備移転三原則」を決めた2014年7月以降、経済産業省の仲介で、日本企業を対象に米軍の装備採用への協力を呼び掛ける説明会を開催するまでになった。

 2回目を2016年に開き、日本企業約60社が参加。

 米国防総省は、説明会の目的について、「米軍の能力を高める技術を実用化する」ためだとしている。

 一方の経産省は、日米の安全保障面での連携に加え、「商機にもなる」との観点から、説明会への企業参加を要請したとしている。

 日本は商機(経済面)を重視しているが、安全保障面での民間技術との距離を縮める役割を、安倍晋三政権が積極的に果たしている姿が浮かび上がってきた。

 米国の狙いは経費削減と日米軍事一体化にある。

 米国で開発を進めている高度な技術で、日本の技術を取り込めば、開発費の削減とともに、装備の共有と連携・一体化を進めていける。

 こうした動きに連動したかのように、日本の防衛省も現在、民間企業や大学の技術研究に力を注いでいる。

 防衛省は2015年7月、安全保障に役立つ技術開発を進めるため、「安全保障技術推進制度」を創設。資金規模は3億円。

 17年度には110億円にまで拡大している。

 研究者への資金提供には、兵器を強化していくための最新技術、有能な研究者との関係構築を目的としているのだ。

 これに対して大学などの「日本学術会議」は昨年6月から、「安全保障と学術に関する検討委員会」で議論し、16日に中間とりまとめを公表した。

 「学術研究の自主性、自立性の担保」と「国の自衛のための研究は国民としての義務――社会貢献」とする意見で、議論が分かれたとしている。

 「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない」(1950年4月)との声明から70年近く経過し、自衛(軍事)のための研究が、「義務」であり、「社会貢献」だとの意見が研究者の間から出てきたことは、科学研究の後退ではないのか。隔絶の感がある。

 安保関連法を成立させた安倍政権下で、日米の防衛当局双方とも、民間技術との距離を縮める動きは加速しているのだ。

 時あたかも、米国で米軍駐留経費の削減を主張するトランプ政権が誕生した。

 これが、安倍政権が進めている「軍事大国」化への道を後押しする可能性があり、危険な兆候だと言える。

 産軍学の強化、一体化には反対である。

 今後は2月10日の日米首脳会談後の日米2国間貿易、米軍駐留経費と戦争協力問題、米軍が日本にTHAAD(高高度迎撃ミサイル)配備を検討している問題、アジア安保関連問題のほか、日本学術会議の4月総会の結論など、幅広い分野での変化をチェックしていくことが必要である。


                                                                  2017年1月29日 記

「トランプ言語に惑わされるな」

「トランプ言語に惑わされるな」

 米大統領となったドナルド・トランプ氏の言動に世界は揺れている。

 自身に不都合な内容や気に入らないことは認めず、言いたいことをネット上で一方的に発言し、「うそ」も意に介さず平気で公言する。

 選挙戦中のクリントン氏に対する中傷、批難の70%は「うそに近い」間違い(米非営利組織)だったと指摘されている。

 20日の大統領就任式の参加人数についても、米メディアは過去最多のオバマ前大統領就任時に比べて少なかったと報道(直後に、ホワイトハウスは確認できる観衆は約72万人と発表)した。

 これに対して、スパイサー大統領報道官が「過去最大の聴衆だった」と、報道各社の内容を否定。

 トランプ氏自身も翌21日、「150万人に見えた」などと報道を否定。

 いずれも根拠を示さず、記者からの反論も質問を受け付けなかった。

 さらに昨年の大統領選で、得票数で280万票、民主党のクリントン氏に及ばなかったことに対して、不法移民が大挙してクリントン氏に投票したため、「300万から500万」の不正投票があったと強弁。

 この数百万票を差し引けば、得票総数でも勝っていたのだと、根拠のない主張で、自己を大きく見せ正当化している。

 不都合な事実からは目を背け、虚偽・虚構を正当化する言動で、相手に激しい攻撃態勢をとる。

 一私人であれば、トラブルメーカーとして嫌われもするが、世界一の大国の大統領とあれば、そうもいくまい。

 いまこそ、世界のメディア各社は、トランプ氏の不当な言動と虚偽をしっかりと暴き、正確な情報を伝達できるのか、その真価が問われている。

 日本の安倍晋三首相にも、同じことが言える。

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加の国会承認に汗をかいたばかりの安倍氏に、トランプ氏はTPPからの離脱と日米2国間貿易を突きつけてきた。

 さらに現行の日米安保を基準だと主張する安倍氏に、これにもトランプ氏は日本の防衛分担増と、自分の国は自分で守れと突き離している。

 いずれも、古い情報や偽りの情報を正当化して判断し、結論を導いているトランプ氏にどれだけの交渉ができるのか、安倍氏もまたその力量が問われている。


                                                                 2017年1月27日 記

「安倍政権の性格は」

「安倍政権の性格は」


1.防衛費の増大

 安倍晋三政権が20日、国会に提出した2017年度予算案は、一般会計歳出総額97兆4547億円、そのうち防衛費は5兆1251億円であった。

 ともに5年連続で過去最大で、そのことだけでも安倍政権の特質が物語っていると言える。

 国債の依存度は35%を超え、危機的な財政状況になっている中、医療・福祉関連より防衛・安保関連を重視した予算案である。

 このように防衛費を重視する安倍政権は、安保関連の法的整備、さらに自衛隊を軍隊化するため、海外派遣への環境整備費用等に予算を投下し、その具体化を進めている。


2.自衛隊は変化している

 直近の動きを幾つか挙げてみる。

 防衛装備庁による軍事研究費の増大。

 中古の防衛装備品を無償で他国に譲渡する問題。

 自衛隊の海外派兵への制約を限りなく解く。

 米艦防護の平時、戦闘、情報公開などの実施において、国会や第三者のチェック機能がなく、現地指揮者の判断に任せる問題。

 その自衛隊は、米韓両軍以外との二国間または多国間合同軍事演習の回数か増え、半ば慣例化しつつある。

 平時から米軍などの艦船を守る「武器等防衛」の机上演習(陸海空3自衛隊合同が2年に1回行っている大規模机上演習の一環)を初めて1月23日〜27日に実施する。

 防衛省は現在の弾道ミサイル防衛(BMD)の切り札として、高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備を検討する方針を明らかにした。

 こうした防衛省・自衛隊内での議論や行動は、私たちの一般認識をはるかに超えているようだ。

 そのような背景を受けてか、また政権側に迎合してか、一部の民間シンクタンクでは、アジアの安全保障政策上、防衛費を増やすべきだとの提言を行っている。

 以上はほんの一例にしか過ぎない。

 これらは偶然で、個別的な発信というより、一つの意図のもとに動き、結びついているのではないかとも思う。私たちがそうと気付かないだけのことで。


3.戦前の仮想敵国

 参考までに、戦前の国防方針と軍事予算の推移を簡単に掲げる。

 全体の傾向として、現安倍政権の安保政策と類似している面もあるからである。

 戦前、日本は4回の国防方針を決定している。

 ◯初度(1907年、第三次日韓協約、第一回日露協約)

 仮想敵国では、ロシア、アメリカ、ドイツ、フランスと続く。

 陸軍側はロシア、清国、ドイツとしていたが、海軍に妥協。

 ◯第一次改訂(1918年、シベリア出兵宣言)

 仮想敵国はソビエト、アメリカ、中国の順。

 ◯第二次改訂(1923年、中国21カ条廃棄通告、関東大震災)

 仮想敵国はアメリカ、ソビエト、中国。

 海軍が主張したアメリカを第一次の仮想敵国とした。

 ◯第三次改訂(1936年、2・26事件、日独防共協定締結)

 将来の戦争は長期にわたることを予測し、アメリカ、ソ連を仮想敵国の目標にし、中国とイギリスにも備えるとした。

 この時に作成した用兵綱領では、対ソ作戦としてウスリー方面の撃破、ウラジオストクの攻略、樺太・カムチャッカ半島、樺太対岸の占領。

 対米作戦として東洋の艦隊を撃破し、ルソン島、グアム島の占領。

 対中国作戦として青島、上海を占領、揚子江制圧。

 対英作戦で在東洋英軍の撃破ーーを想定した。

 現安倍政権の仮想敵国は、中国、北朝鮮、ロシアで、それらは米国のアジア・太平洋戦略の中にある。

 米国と同様、中国とロシアとは国交を結び、二国間経済関係では深い利害関係にある。
 
 北朝鮮とは国交を結ばず、防衛力増強の目的として利用している。

 なお、国家財政に占める軍事費の比率は満州事変以前の平時で13%台、満州事変から日中戦争までは12〜18%、日中戦争から太平洋戦争開始までは35〜54%、太平洋戦争開始後は58〜70%と急激な戦時インフレーション、国民生活の必需品不足を招いた。

 軍事予算のみは、陸海省の主導で作成された。


4.軍事国家化の社会現象

 さて、現日本の社会はどうなっているのか。

 いくつか直近の現象を見てみよう。

 すでに、自らの戦争被害体験を語ることができる世代が超高齢化し、発信力が弱くなっている。

 同時に戦争を維持してきた各種施設を世界遺産に登録しようとする運動が各地で活発に展開されだした。

 そうした背景のもと、国粋的、歴史修正主義的な声が、マスメディアからも聞こえるようになった。

 それら一連の運動の中枢を担っているのが、戦前回帰を目指す日本会議である。

 会員に、現安倍政権の閣僚の7割近く、官邸枢要スタッフのほとんど、自民党員を中心とする国会議員らが名を連ねている。

 彼らが昨年、安全保障関連法制度を実現させ、今また憲法改正運動に取り組んでいることは、不気味としか言いようがない。

 さらに、もう一つ気になる動きがある。

 自衛隊の蜂起、天皇親政を叫んで自決(70年11月)した三島由紀夫の肉声(自決の9ヶ月前)録音テープの存在が明らかになったことである。

 そのタイミングが、どこか「抜群」に思える。

 以上の事例は、何の関連もないようでいて、今国会に提出された主要審議テーマ、安保法制関連、共謀罪(テロ等準備罪)、天皇の退位問題と複合的な関係を持っている。決して偶然ではないだろう。

 こうした社会現象からして、安倍政権の性格はすでに、「昭和戦前期」内閣になっている。

 自民党一強、安倍一強現象を囃し立てるだけでなく、そこに潜む姿を明確にしていく必要がある。

 これまで多くの識知たちは、戦前期を反省する言論の中で、わからないうちに、いつの間にか反対し抵抗できない社会現象になっていたことを自戒論的に展開している。

 今まさにその時ではないのか。

 物が言いにくくなる社会へと転落していく直前、その分岐点が現在と言えるのではないか。


                                                                  2017年1月19日  記

「元号問題」

「元号問題」

 天皇の退位に関連する問題が連日報道されている。

 元号についても、平成は30年31日で終わり、明けて1月1日から新元号にすることが検討されているという。

 元号は日本独自のもので、孝徳天皇(在位645〜654年)統治下の「大化」(645年)からはじまる。

 元号「大化」の建立は、中大兄皇(天智天皇)、中臣鎌足らが宿敵の蘇我氏を倒して孝徳天政権を樹立するために必要(大化改新)とした。

 孝徳側は大化改新を経て、律令制を確立、中央集権的官僚国家体制を作り上げ、その頂点に唯一最高君主としての天皇が君臨する古代天皇制を打ち立てた。

 その際の民衆支配の道具として、元号は機能した。明治維新体制は一世一元制度にして、強力な支配機構の絶対天皇制国家の精神的基準とした。

 国民が天皇治世下で生きることを強いたのだ。

 元号制度は結局、私たちに天皇の時代を生きることを強要し、日本文化や歴史、社会規範、個々人の精神までをも侵食し、規制、束縛している。

 敗戦を迎えて、私たちはやっと軍国体制と共に元号治世下(天皇制)から解放されるかと思っていた。

 事実、皇室規範から「元号ヲ建テ、一世ノ間ニ再び改メザル」との規定が削除され、元号使用の法的根拠がなくなった。

 以後は単なる慣行として使用していただけである。

 慣行で使用している昭和以降を、廃止してもよかったのである。

 そうしたことに危機感をもった自民党が1979年、元号法を成立させた。

 ①元号は政令で定める。
 ②皇位継承かあった場合に限り改める。

 このたった2条の短い法律を成立させ、新元号の平成を建立した。

 現在、安倍政権が改元を進めているのも、79年の元号法に基づいている。

 だが不思議なのは、野党や歴史学会、識者の側から新元号は無用だとの意見が全く出ていないことである。

 元号は天皇統治と不可分の関係である以上、象徴天皇の現在、「一世一元」の元号を建てる必要があるのか。

 新元号を建てようとしている安倍政権の意図が、明治政権と同じだとまでは考えてはいないが、それでも天皇統治下で「生きる」ことを強要されることになる。

 元号制定は、憲法が定める個人の自主権や平和権などとも抵触してくる。

 私自身の人生と思考を、元号によって縛られたくない。

 新元号は必要ない。元号法も廃止すべきだ。

                                                                   2017年1月16日 記

「中国抗日戦を満州事変からに」

「中国抗日戦を満州事変からに」

 中国の教育省は2017年から使用する小学校から大学までの全教科書が、抗日戦争は1937年の盧溝橋事件からではなく、31年の満州事変からとする「14年の抗日戦争」に改められた。

 これまで、盧溝橋事件(日中戦争)から全国的な民族の抗日の戦いは東北部では東北抗日連軍の組織的な戦いがすでに満州事変以前から始まっていた。

 満州事変以降の14年に及ぶ抗日戦争の歴史を一体のものとして認識し、確認して、体系的に正確に教えるとしている。

 1940年以降、延安の中国共産党中央と党満州省委員会の連絡が途切れ、なおかつ満州省委員会傘下の各省委員会の連携ができないほどの厳しい中(武器・弾薬、食糧の補給もなく)で、東北抗日連合軍の各部隊はよく日本軍と戦っていた。

 そのような抗日パルチザンたちの英雄物語の事実が明らかになっていくことは、彼らの埋もれた歴史が発掘されていくことで、嬉しいことである。

                                                                  2017年1月12日 記

「『少女像』を10億円で買うな」

「『少女像』を10億円で買うな」

1.
 安倍政権は1月6日、韓国・釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦被害を象徴する少女像が設置されたことに対し、その対抗措置を発表した。

 同日、菅官房長官が記者会見で発表。

 それによると、①駐韓大使と釜山総領事の一時帰国、②日韓スワップ協定(経済危機に陥った際に貿易決済や通貨防衛に必要なドルを互いに融通し合う取り決め)の再開に向けた協議の中断、③次官級の「日韓ハイレベル経済協議」の延期、④釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ――としている。

 通貨スワップ協定の再締結は「中止」ではなく、「中断」とし、駐韓大使は「召還」ではなく、「一時帰国」とし、次官級経済協議も「中止」ではなく、「延期」とするなど、出口論も用意しているのは事実だ。

 しかし、一つ間違えば日韓間の暗いトンネルを招きかねない、これほどの厳しい対抗措置が果たして必要だったのか、との疑念の声が日本国内にもある。

 
2.
 慰安婦問題の決着に向けた日韓合意は、2015年12月28日に調印。

 日本政府は、責任を痛感しているとして、安倍首相がおわびと反省の気持ちを表明。

 韓国側は、元慰安婦を支援するために「和解・癒し財団」を設立。

 財団に日本政府が10億円を拠出。(財団は16年9月に、日本からの10億円入金を確認)

 日本政府はこれで懸案の問題が「最終的かつ不可逆的に解決される」との文言を押し込み、10億円を拠出したことで、慰安婦問題の解決だと考えていた。

 韓国政府が妥協策として要求した安倍首相名のおわびの手紙を、元慰安婦に出すことは拒否し、ソウルの日本大使館近くの「少女像」撤去を求めた。

 韓国政府は「適切に解決されるよう努力する」とした。

 日韓双方とも、自国民に都合良い説明ができる部分を残して、急ぎ手打ち式を行った結果が、慰安婦問題の日韓合意であったことがわかる。

 その背景には、オバマ米政権に向ける「いい顔」が必要であったからであろう。

 アジア重視政策を推進するオバマ政権は、日韓の連携を重要視してきた。

 オバマ政権は、日本の安倍政権と韓国の朴槿恵政権が発足して以降、日韓関係の改善に苦慮してきた。

 それで2014年のオランダ・ハーグでの日米韓首脳会談で、オバマ氏は、安倍氏と朴氏を初めて公式の首脳会談に引き合わせている。

 その結節点の一つが、慰安婦問題解決の日韓合意であったことになる。

 しかし、韓国の野党や市民団体は、日韓合意は新たな欺瞞だとして破棄運動を展開している。

 その表現が、釜山の日本総領事館前の「少女像」設置であった。
 

3.
 韓国最大野党「共に民主党」は、日本政府に対して「自らの正当性ばかり主張する姿勢は、人権と世界正義を争うつもりか」と非難。

 日韓合意の破棄と日本政府の謝罪(元慰安婦たちに対して)を要求している。

 こうした意見は野党側だからというより、韓国社会の共通した意志として、反日運動が繰り返し行われている。

 その源泉は、日韓基本条約(1965年6月)にある。

 日本は米国の支援を得て、経済援助という名のもとに、韓国への企業および資本進出を果たし、日本経済を発展させた。

 そのため、戦争および植民地に対する歴史清算がいつまで経ってもできず、個人補償問題が残ってしまった。

 在日朝鮮人問題、朝鮮人強制連行問題、朝鮮人強制労働問題、朝鮮人被爆者問題、そして軍慰安婦問題に関わる人々への、公式的な認識と謝罪、補償など、日本政府がいまだできていないため、しばしば問題が発生する。

 今回もまた10億円という拠出金で、軍慰安婦問題を永久に無くそうとした「金満」安倍政権に対する韓国民衆からの抗議が「少女像」設置運動へとつながっているのだ。

                                                                    2017年1月8日 記
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愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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