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「国際世論は核兵器廃絶へ」

「国際世論は核兵器廃絶へ」


1.
 国連総会第1委員会(軍縮)は9月27日、「核兵器禁止条約」を、123か国の賛成多数で採択した。(反対38カ国、棄権16カ国、欠席16カ国)

 決議の骨子は次のとおりである。

 ①核兵器を禁止する法的措置の交渉のための国連会議を2017年に開催することを決定。

 ②会議はニューヨークで開かれ、国際機関や市民参加を促す。

 ③すべての国連加盟国に会議への参加を奨励し、可能な限り早く結論を出す最大の努力を求める。

 ④国連事務総長に、核軍縮の進展具合の報告書を提出することを求める。

 つまり、「禁止先行型」(NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」などが推進)とされ、核兵器を禁止する条約をまず作り、廃棄プロセスや検証制度は条約成立後に定めるとしている。

 この方式で対人地雷禁止条約(1999年発効)、クラスター爆弾禁止条約(2010年発効)などが成立している。

 賛成国はメキシコ、オーストラリア、エジプト、南アフリカ、スウェーデンなど、非核保有国のアフリカ、中南米、東南アジア諸国であった。

 その中で共和国が賛成したのは、驚くにあたらない。

 これまでの主張とともに、その真意をしっかりと読み説くことを勧める。


2.
 反対運動の先頭に立ったのは米国である。

 米国を含むロ英仏中の5大核保有国は、核不拡散条約(NPT)体制下での段階的な核軍縮を求めている。

 1970年に発効したNPTは、5カ国だけに核兵器を持つことを認め、保有国に核軍縮を誠実に交渉する義務を課していた。

 だが、米ロ間(両国併せて90%以上を保有)での削減交渉は進まず、核兵器はまだ世界に1万5千発以上も存在している。

 NPT体制のままでは、核軍縮が進まず、不十分だとの認識と、核兵器の非人道性を訴える国際世論が近年広がったことが、「核兵器禁止条約」が成立した背景にある。

 焦った米国は、主導する北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米核の傘の下にいる国に反対するように文書で求めた。

 結果は、反対38カ国(韓国も反対しており、この面でも南北は対立している)と少数で、核5大国の中国は棄権をしている。

 「核なき世界」を提唱してきたオバマ米政権の「二枚舌」に、非核保有国側はさらなる不信感を募らせていくだろう。

 3.
 同時に27日の第1委員会では、核兵器廃絶を求める日本提出の決議案(賛成167カ国、反対4カ国、棄権17カ国)も採択された。

 94年以来、毎年、国連総会に提出し、採択されている。核兵器の禁止は求めず、NPT体制を支持しているものだ。

 政府は、「核保有国と非核保有国の橋渡し役」の象徴的実績として誇ってきたとしているが、必ずしも核保有国の賛同は得られていない。(昨年は米英仏が棄権、今年は米国が賛成、英仏は棄権、中国は反対)

 世界で唯一の被爆国を売りにしている日本の主張として、核兵器の完全廃絶ではないだけに、「核兵器禁止条約」に比べて、核兵器に対する立場があいまいである。

 「核兵器禁止条約」を反対の立場にまわった安倍政権を、広島および長崎の被爆者たちは、「核兵器で脅しをかける米国に追随した」、「まるで米国を代弁しているようにしかみえない」と、厳しく批判している。


4.
 国際司法裁判所が96年、「核兵器の使用・威嚇は一般的に国際人道法に違法する」との意見を出した。

 ところが米国は、96年以降も、朝鮮に対して核恫喝政策を続け、数回、核攻撃の準備を進めたことがある。

 この数年間の韓国軍との合同軍事演習では、核攻撃の精度を上げる内容を実施している。

 核兵器使用や威嚇を禁じた国際司法裁判所の意見を無視して、朝鮮への核恫喝を続ける米国に対して、朝鮮はやむを得ず「核抑止力」で対抗した。

 朝鮮のその「核抑止力」に対して米国は、(国際社会への)「挑戦」であり、「暴挙」だと批判を高めている。

 一方で、国連総会では核抑止力の役割は高まっているとの理由で、米国は、核兵器廃絶条約決議の反対運動を展開していた。

 同じ「核抑止力」論を主張しながら、条約に賛成した朝鮮とはまったく反対の立場を、米国は改めて示していたことになる。米政権の矛盾表現である。

 朝鮮が米国に対して主張しているのは、朝鮮半島の核兵器全廃と同時に、全世界の核兵器廃絶であり、そのための恒常的な協議の場を設置することであった。

 内容的には、国連で採択された「核兵器廃絶条約」と重なり合っている。

 来年、米国の強い反対があったとしても、国連総会などの場で、朝鮮と非核保有国の核兵器廃絶への主張が展開されていくだろう。

 米国の新政権は、核兵器廃絶へと向かっている国際世論をしっかりと認識した上で、朝鮮半島および世界の非核化政策を構築する必要がある。


                                                                   2016年11月1日 記
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「怒る南朝鮮」

「怒る南朝鮮」

※各項目の作成日時点での報道をもとに執筆しています。


1.国政はオールストップ(2016年10月30日 記)

 朴槿恵大統領が、親しい民間人女性・崔順実氏に演説草稿などを渡していた問題で、韓国検察の特別捜査本部は29日、青瓦台(大統領府)を捜索した。

 異例のことである。

 崔氏の国政介入疑惑や青瓦台幹部から崔氏への内部文書流出疑惑の解明を主として捜査しているようだ。

 南朝鮮政界に激震が走り、朴政権は混乱しており、政権支持率も過去最低へと急落している。

 ソウル中心部では29日、市民たちが「朴槿恵大統領は退陣しろ」などとする大規模集会が開かれた。

 南朝鮮メディアも「国政はオールストップ」、「大統領としての地位は維持できても、その役割は保てないだろう」などと報じている。

 窮地に立たされた朴氏は、とりあえずは人事刷新で切り抜けようとして28日夜、首席秘書官ら8人に辞表提出を指示。その程度で収まる問題ではなく、与党セヌリ党内も内閣一新(閣僚の大幅刷新)を求めているが、今後は、朴氏の政治不信感は国の内外に広がり、大統領辞任要求の声はいっそう高まっていくことだろう。


2.コントロールされていた朴大統領(2016年10月30日 記)

 南朝鮮の複数のメディアは25日、崔順実氏が関わって設立した「ミル財団」の元事務総長の李ヘンソン氏の証言を報じた。

 証言によれば、朴氏の「門番3人衆」とされている1人の大統領府のチョン・ホソン室長が毎晩、崔氏の事務所に厚さ30センチ以上の「大統領報告資料」を持参していたという。

 崔氏はそれらの資料から、大統領のスケジュールや国政全般を論議する「秘密会議」を開いて指示を出し、その通りに修正して提出すると、一言一句変わることなく、大統領府の公式文書になったとしている。

 南北関係や日韓関係の「国家機密」が多く含まれていたとされているが、最近の朴氏の対北発言が、反共反北の崔氏のマインドコントロールによるものではないかと疑われている。

 そうであるとすれば、朴槿恵氏にはもはや、政治を語る資格もないように思う。

 とはいえ、大統領職である間は、内外情勢とその政治に責任を持たねばならない。

 崔氏という支えが外れた後の、朴氏の言動もまた、誰も信用できず、南朝鮮の内外政治は混乱の度を増していくだけだろう。

 ここから早く抜け出すためには、朴氏がこれ以上、大統領職にしがみつくのではなく、一日も早く退陣することが必要だ。

 それが彼女に残された唯一の選択肢である。


3.朝鮮現代史の汚点(2016年11月5日 記)

 朴槿恵大統領は、崔順実氏に操られていたのか。

 崔氏の父親は、儒教を融合したキリスト教的な新興宗教家だったと言う。

 彼女もその父親の影響を受けて育っただろうから、怪しげなシャーマン的な「託宣」が口について、朴氏に伝授されていた可能性がある。

 問題は、その「託宣」の内容と分野で、南朝鮮の未来にとって決して好ましいものでなかったことである。

 反共反北精神構造から出てくる彼女の「託宣」で、北朝鮮に関しては、全否定的で憎しみを煽る作用を果たしていた。

 それが朴氏の口を借りて政治化され、国会や閣議、または諸外国との外交の場で語られてきた。

 朴氏のこの罪は、崔氏への機密文書提供と膨大な資金斡旋、さらに対北批難託宣言語を実行して、南北対決を煽ってきたことである。

 この罪は、南朝鮮政治史において、永久に消えることはないだろう。

 そればかりか朝鮮現代史の汚点として、父親とともに彼女の名も記録されるだろう。
 

4.朴政権の恥部を明るみにせよ(2016年11月9日 記)

 支援者への機密文書提供など一連の疑惑で、野党はもちろん与党セヌリ党の一部議員、さらに多くの在野人士たちから批判を浴びている朴槿恵大統領。

 支持率はさらに低下し、絶体絶命の淵に立っている。

 8日、国会を訪れて丁世均(チョン・セギュン)議長と会談。

 「国会で、与野党合意で首相に適した人を推薦してくれれば、その方を首相に任命し、実質的に内閣を統括できるようにする」と、首相人事での譲歩案を示した。

 12日にソウルなどで大規模な抗議集会が予定されているため、その前に事態を収拾しようとして動いたようだが、野党側は、自らの権限をどのようにするのかを明確にするよう要求しながら、世論の動向を見つめている。

 だが、機密文書の流出、私人がその文書に手を加え、重要な外交案件に影響を与えたとする問題は、政治史の一大汚点だ。

 政局をにらんでの駆引きはあってはならない。

 この際、朴政権の恥部を全て明るみ出す闘争が必要ではないだろうか。


5.意思疎通に欠ける朴氏(2016年11月12日 記)

 南朝鮮の国防省は11日、日韓の防衛情報を共有する「日韓秘密情報保護協定(GSOMIA)」を来週中に仮署名する方針を明らかにした。

 政府内では、発表すれば野党がさらに批判をするので、事態が沈静化するまで交渉再開の発表を先送りすることを具申したが、朴槿恵大統領が押し切ったという。

 自身に関する一連の疑惑で、政権支持率も5%以下という中で、さらに墓穴を掘るにふさわしい決定(独断)を、彼女はなぜ強行したのだろうか。

 それに対して、北朝鮮情勢をめぐる安全保障上の懸念を重視、予定通り27日に発表することを指示したと伝えている。

 10月27日とは、9月末にGSOMIAの締結交渉に取り組む方針を決め、締結交渉の再開を発表する段取りを整えていた、その日である。

 三百代言のように「北朝鮮脅威」を云々し、政権運営を行ってきた朴氏だが、彼女の口から出る「脅威」の中身も実態性、具体性に欠ける観念論(これも崔氏からの知恵か)に終始している。

 GSOMIAそれ自体、南朝鮮の在野が「日本軍の再上陸の可能性がある」として反対している。

 そうした南朝鮮の民意を無視して強行することと、自ら墓穴を掘る朴氏の「決定」に疑問を感じる。


6.退陣を求める大規模キャンドル集会(2016年11月13日 記)

 朴槿恵大統領の退陣を求める大規模集会が12日、ソウル市中心部の光化門周辺で開かれた。

 主催者発表で100万人、警察発表でも26万人(双方の発表数字に開きがある)は、今世紀最大規模で、朴氏の一連の疑惑に対して、南朝鮮の民衆の怒りが渦巻いていることを示している。

 朴氏の退陣を求める大集会およびデモは、10月29日以来、3週連続して開かれている。(キャンドルデモは毎日展開されている)

 抗議集会を呼び掛けたのは、朴政権退陣を求める汎国民運動組織「朴槿恵政権退陣非常国民行動(退陣行動)」(9日に発足)。

 退陣行動には労働者、農民、青年、学生、宗教人など、各界各層の約1500の市民社会団体が参加している。

 19日にもキャンドル集会を開き、朴政権が退陣しない場合は、26日に数百万人規模のキャンドル集会を予定している。

 集会参加者の若者たちは、「国の政治がまったく機能していなかったことに一番の怒りを感じる」、「大統領が自分のために外部の人間と政治をしていたことが許せない」などと、国政の私物化と乱用、経済鈍化による将来不安の声を上げていた。

 韓国ギャラップ社の世論調査(11日発表)による19~29歳の支持率が0%という結果が、集会参加者に若者たちが多くなっていることを反映していると同時に、現在の南朝鮮社会の「心情」を表現し、「辞任」「退陣」「弾刻」の声が響いていることを表している。

 一方、野党3党は、事件を「朴槿恵―崔順実ゲート」と命名し、朴・崔国政乱用問題を追及する共闘を確認している。

 GSOMIAの協議中止、サード対策特別委員会の設置、セウォル号特別調査委員会の延長、労働争議の平和的解決などでも野党共闘を確認。

 南朝鮮の民心は、朴氏の下野を望んでいるため、野党は今後、朴氏に退陣か実権を完全に手放すかの選択を迫っていくことになるだろう。

 どちらの選択にせよ、決断は一日でも早い方が良い。

 なお、日本でも12日、在日韓国民主統一連合(韓統連)が東京、大阪など4カ所で、「朴槿恵退陣」要求行動を行っている。


7.常態化している韓国の政経癒着(2016年11月13日 記)

 朴槿恵政権の政経癒着、権力型不正問題は、以前から囁かれていたが、機密漏えい事件で表面化した。

 今回、その実態の一部が表面化したにすぎない。

 大統領府、朴氏「影の実力者」とされる崔順実、全国経済人連合会(全経連)の3者が癒着して設立した「ミル財団」と「Kスポーツ財団」の疑惑。

 政府は2財団をわずか1日で認可(ミル財団は昨年10月、Kスポーツ財団は今年1月)し、企業は短期間に777億ウォン(約77億4000万円)を拠出した。

 そのすべてで大統領府が介入したとされている。

 2財団は、朴氏の大統領退任後に備えて設立されたとの疑惑が噴出、全経連が組織的に大金を拠出した理由は利益の拡大化を図ろうとする思惑(財閥企業が赦免、復権、減税などの安全キップを購入)が絡んでいる。

 南朝鮮の歴代大統領は、その政権末期に身内が絡む権力型不正疑惑で批判にさらされている。

 朴氏はそれ以上に機密漏えいを重ねていて、もはや誰も彼女を支持していない。

 それでも、朴氏が大統領府に居座るようなことがあったら、それは南朝鮮のさらなる不幸の始まりである。 

「日本の核ニ重基準(インドへの原発輸出)」

「日本の核ニ重基準(インドへの原発輸出)」


 安倍晋三首相は11日、来日中のインドのモディ首相との間で、日本からインドへの原発輸出を可能にする「日印原子力協定」に署名した。

 インドは核不拡散条約(NPT)非加盟国で、核保有国である。

 安倍晋三首相は会談後の記者会見で、「原子力の平和利用について、インドが責任ある行動を取ることを確保する法的な枠組みだ」と強調。

 「NPTを締結していないインドを国際的な核不拡散体制へ実質的に参加させることにつながる」と話した。

 インドが核実験をしない保証が不十分なまま原子力技術を供与する内容では、安倍首相の説明には納得できない。

 世界唯一の被爆国として、「核廃絶」を主張してきたにも関わらず、「核拡散」への道を開いた矛盾。

 さらに、同じNPT非加盟国の朝鮮の核開発に抗議しながら、なぜ、インドはよいのか。

 この点でも矛盾しており、二重基準となっている。

 しっかりと説明をするか、今後は朝鮮の核開発に対してクレームをつけないことだ。

 インドが「核開発は自国の権利」と言っているように、朝鮮の核開発も同じく、権利であるからだ。

                                                                 2016年11月12日 記

「国際社会での朝鮮の主張」

「国際社会での朝鮮の主張」

1.国連での演説

 朝鮮の李容浩外相は、9月15、16日の両日にベネズエラで行われた第17回非同盟諸国首脳会議に先立つ閣僚会議、さらに第71回国連総会に参加し、演説した。

 さらに、金永南最高人民会議常任委員会委員長も、第17回非同盟諸国首脳会議に参加し、演説した。

 両氏とも朝鮮の現状と立場を表明し、真の国際的正義に向けて、古い国際秩序を壊すことを訴えた。

 まず、李容浩外相の第71回国連総会演説(23日)を紹介する。

 「・・・朝鮮半島は核戦争勃発の危険まで抱えている世界最大のホットスポットと化した。人民経済全般を活性化し、国の経済を持続的に発展させられる土台を築くための国家経済発展5カ年戦略の遂行に入ったわが共和国にとって何よりも必要なのは平和な環境である。・・・朝鮮半島の情勢がたびたび制御不能の状態に陥るのは、米国が対朝鮮敵視政策を捨てず、朝鮮半島とその周辺で侵略戦争演習を引き続き行っていることに根源がある」
 
 「朝鮮半島は1950年代に起きた戦争が完全に終わっていない停戦状態、すなわちどちらか一方でも再び発砲を始めようとする場合、宣戦布告を必要としない交戦状態にある。世界のどの地域よりも、大規模の合同軍事演習のような挑発的な軍事行動が他方を刺激して対応を招きやすいし、偶発的な事故によっても衝突が起き、それが拡大して全面戦争に発展しかねない地域である」
  
 「朝鮮政府は、国連憲章に基づき、朝鮮半島での米国の大規模の合同軍事演習によって、世界の平和と安全が脅かされる事態を国連安保理に何度も提訴した。今年だけでも3月と8月の2回にわたって提訴したが、国連安保理は毎回これに背を向けて自らの自主権と尊厳、国家の安全を守るために講じている朝鮮の正当な自衛的措置を問題視している。(国連事務局に公式に提起したが、4か月経っても返事がない)・・・われわれが核戦力を強化することを決定したのは、米国の恒常的な核の威嚇から自身を防衛するための正当な自衛的措置である」

 「国際的正義はおのずから成らないし、反帝・自主的な国々の力が強いときにだけ実現される。・・・われわれと敵対関係にある核保有国が存在する限り、我が国と朝鮮半島の平和は専ら核抑止力によって守られる。冷戦が終わってから四半世紀が過ぎ、安保感覚が鋭さを欠く欧州諸国や自国の敷居や上空の端に敵対的な列強の核兵器が出没する状況を直接体験していない国は、われわれがなぜそれほど心血を注いで核抑止力を強化するのかについて理解し難いであろう」

 「真の国際的正義を実現して世界の平和と安全を守り、国連が設定したSDGsを達成するためには、『正義』の看板の下で、不正義が横行する古い国際秩序を壊して公正で義に徹した新しい国際秩序を立てなければならない」

 李容浩外相は、このように述べた上で、最後に、「わが共和国政府は米国によって強いられている核戦争の危険を、強力な核抑止力に依拠して根本的に終息させ、朝鮮半島とアジア、世界の平和と安全を守り、世界の非核化を実現する闘いを力強く行っていく」と断言した。


2.非同盟諸国会議での主張

 李容浩外相は、第17回非同盟諸国首脳会議に先立つ閣僚会議で演説(15日)した。

 「・・・朝鮮に反対して毎年数回、南朝鮮で行われている大規模の米国・南朝鮮合同軍事演習は一言で言って、非同盟諸国会議参加国に対する帝国主義列強の前代未聞の軍事的威嚇、核威嚇行為である。・・・朝鮮は、米国の恒常的な核の脅威から国家の安全を守るためにできる限りを尽くした末にやむを得ず核武装の道を選択することになった。米国が数十年間にわたる対朝鮮的政策を撤回せず、さらに執拗に追求している状況で、われわれに必要なのが、まさに抑止力であり、相手が世界最大の核保有国である状況で、専ら核兵器だけが抑止効果を発揮できるのである。・・・朝鮮政府は、核抑止力で米国の核威嚇策動を阻止し、世界の非核化を実現するために努力してきたし、今後も引き続き努力するであろう」

 「今日、対朝鮮『制裁決議』が許されれば、明日は新たな決議が他の非同盟国会議参加国を絞殺するのに利用されるであろう。米国と西側諸国は自分らの『民主主義』と『人権基準』を非同盟諸国会議参加国に強要する上でも国連安保理を盗用している。われわれはいまだに、10余年前、国連安保理がイラクに大量破壊兵器があるとする米国のうそを聞く場として盗用された事実を記憶している。その他にも、アフガニスタン、リビア、シリア、イエメン、スーダンなど内戦と暴力にあえぐ国々の状況を見れば、例外なく国連安保理の干渉と強権の影が指している。非同盟諸国会議は絶対にこのように各個撃破されてはならない」

 李容浩外相は、国連安保理が公正に活動するためには、非同盟諸国の共同行動を強化することと、安保理内で非同盟諸国会議の作業部会の活動を活性化し、その役割を高めることが必要だと訴えた。

 また、金永南最高人民会議常任委員会委員長は、同首脳会議で演説(17日)した。

 「今日、朝鮮半島には、史上最大規模の核戦略資産と膨大な武力を投入して侵略的な核戦争演習を年中絶え間なく行っている米国の火遊び騒動によって、いつ爆発するか分からない核戦争の暗雲が恒常的に漂っている。米国の強権と核の恐喝に屈服して奴隷になるのか、もしくは自主的尊厳を守るのかという生死存亡の岐路で、わが共和国は、わが人民が選択した思想と制度、民族の自主権と生存権を守るために正義の核の宝剣で不正義の核のこん棒を折る戦略的決断を下すことになった。わが共和国は、核抑止力を中枢とする自衛的軍事力を備えた米国の核戦争挑発策動を粉砕することで、民族の尊厳と自主権、朝鮮半島と世界の平和と安全を頼もしく守っている。これがまさに、朝鮮半島核問題の本質であり、真相である」

 続いて、金永南委員長は、非同盟諸国会議の地位、役割の強化に関する共和国政府の見解と立場を、以下の4点にまとめ、言及した。

 第1に、非同盟諸国は、反帝、自主の旗印を掲げて、人類共通の念願であり志向である世界の自主化偉業を実現するために闘わなければならない。・・・自主性を志向する非同盟諸国は、帝国主義者の狡猾な二面術策と欺瞞的な『援助』にいかなる期待や幻想も持たずに自主的立場を固守していかなければならない。

 第2に、威力ある反戦・平和愛好勢力としての地位を占め、その役割を果たしていかなければならない。・・・その根本理念の一つは、帝国主義に反対する闘いで、基本は米国とその追従勢力の侵略と戦争策動を阻止し、破壊させ、世界の平和と安全を守ることである。

 第3に、真の国際的正義を実現するために努力し、意見の相違を後回しにして団結と協力を重視する原則を堅持しなければならない。・・・真の国際的正義は非同盟諸国、反帝・自主的な国が強いときだけに実現できるとし、その力は団結と連帯を強化する時、さらに大きくなるであろう。

 非同盟諸国は自力、自強の原則に立って、自分の力を育てる闘いを力強く行い、政見と信仰、経済と文化の発展の違いに関係なく会議の共通の理念の下に協力を強化していかなければならない。

 第4に、国連をはじめとする国際舞台で、会議の組織力と行動能力を強化していかなければならない。・・・会議の共通の目的と利益を擁護、代弁する方向で議長国の役割をさらに高め、分野別閣僚級会議とニューヨーク調整委員会の運営を定例化してその実践的行動能力を決定的に強化しなければならない。

 金永南委員長は、以上の発言の後、朝鮮政府はこれまでと同様、今後も、平和で繁栄する世界の建設のための非同盟諸国会議の理念に忠実であろうし、世界の自主化と会議の強化、発展のために参加国としての責任と役割を果たしていくであろうと結んだ。


3.米国主導の古い秩序は壊れている

 国連組織は、連合国が有利となった1943年頃から、戦前の「国際連盟」に代わるより強力な機構、第2次世界大戦後の世界平和を目的として、45年10月に国連憲章を採択して成立した。

 国連憲章には、平和と安全の維持、平和への脅威に対する集団的措置、国際問題の平和的解決と国際協力の増進、基本的人権の尊厳などをうたっている。

 しかし、これらの崇高な理念も、戦勝国の秩序を維持する前提のもとに作成されており、植民地支配や侵略史観を必ずしも反省し、整理したものではなかった。

 その最も象徴的なものが、強力な権限が与えられている安全保障理事会(安保理)であり、そこに常在する米・英・仏・ソ(現ロシア)・中(当初は中華民国=台湾政府)5カ国の常任理事国であり、拒否権を持つ体制である。

 これが古い国際秩序である。

 米国は、この機構を通じて、自国の覇権主義政策を推し進め、朝鮮をはじめ、ベトナム、アフガニスタン、リビアなどの戦争を続けてきた。

 この国連の古い秩序が、朝鮮など非同盟諸国の団結と自主権を阻み、押さえつけてきた。

 安保理での採択には9カ国以上の賛成が必要であるが、常任理事国が1カ国でも反対すれば通らない。

 近年は、対朝鮮制裁関連で中国が反対、若しくは内容の修正を迫っていて、米国の思惑どおりには進展していない。

 そこで、米国は朝鮮の核およびミサイル発射実験に対して、(国際社会への)「無謀」「挑発」だとのトーンを上げ、同時に中国が制裁を実行していないとの批難キャンペーンを展開している。

 問題がスムーズに進展しないのを中国のせいにしているため、中国側も外務省報道官を通じて、反論を展開。

 「問題の核心は北朝鮮と米国の対立にある」、「効果的な解決法を探し出す必要があるのは米国である」、「自ら生み出した事態を緩和するのは実行者であるべきだ。米国は当然、支払うべき責任を負う必要がある」、「危機を根本的に解決するには、すべての当事者の安全保障問題に対処し、朝鮮半島の永続的な平和と安全につながるアプローチは対話を通じて見出さなければならない」

 このように、問題の原因は米国にあるということを指摘した。

 
4.国連総会において

 国連総会の場でも変化があった。

 メキシコなどが提案した「核兵器全廃条約」、キューバの経済制裁解除採択である。

 2つとも長年の懸案事項であったが、朝鮮政府が主張する非同盟諸国、非核保有国などの自主化勢力の結集と団結によって実現した。

 キューバの経済制裁解除を求める決議案は、26日の国連総会本会議で採択した。

 制裁は、米国がキューバに民主化を促すためとして科していたが、昨年、54年ぶりに、キューバと国交を回復したため、米国は今年初めて反対せずに棄権している。同決議案は25年連続して採択されていた)

 採択前に、パワー米国連大使は、「米国は、キューバの孤立化を目指したが、逆に米国が国連などで孤立した」と述べ、キューバ政策(封鎖)の失敗を認める発言をしていた。

 米国は、米国流「民主主義」「自由主義」を受け入れない国家に対して、国連および国際機構を利用して、「挑発」「脅威」「暴力」などのレッテルを貼って、政権崩壊や制裁を科す暴力政策を進めてきた。

 朝鮮政府が主張しているように、米国こそが、戦後ずっと覇権主義と暴力政治を追求してきたのであり、国連憲章で掲げる世界の平和と安全、安定を破壊してきた当事者であり、脅威者である。

 朝鮮は戦後70数年の長きにわたり、その米国の暴圧・核脅威を直接受けながら戦い、世界の自主化と非同盟運動を推進してきた。

 前項で紹介した金永南委員長と李容浩外相の演説は、朝鮮が長年の間、体験してきた反帝自主と団結のたたかいの線上にこそ、帝国主義への勝利があることを訴えたものである。

 まさに、第71回国連総会の場は、米国主導による国連の古い秩序のほころびが幾つもみられ、壊れかけている状況を映し出したものであったと言えるだろう。

                                                                 2016年10月26日 記

たかし言質論第3集『北朝鮮はなぜ、核保有宣言をしたのか』発刊のお知らせ

たかし言質論 第3集
『北朝鮮はなぜ、核保有宣言をしたのか』
11月15日発行

 朝鮮民主主義人民共和国の政治原則は、朝鮮半島の非核化を目指してきた。
 それが何故、核保有国を宣言したのであろうか。
 その難しい疑問に、マスメディア等では報道されない資料を通じて解き明かしたのが本著である。
 朝鮮問題の理解を深めるためにも、ご一読を。

著者/名田隆司 発行/さらむ・さらん社
定価/1,000円(税込み) 送料/200円

申込先/松山市土居田町544サーパス土居田東602
電話/089-971-0986 郵便振替口座/01640-4-31068
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