「国際世論は核兵器廃絶へ」
「国際世論は核兵器廃絶へ」
1.
国連総会第1委員会(軍縮)は9月27日、「核兵器禁止条約」を、123か国の賛成多数で採択した。(反対38カ国、棄権16カ国、欠席16カ国)
決議の骨子は次のとおりである。
①核兵器を禁止する法的措置の交渉のための国連会議を2017年に開催することを決定。
②会議はニューヨークで開かれ、国際機関や市民参加を促す。
③すべての国連加盟国に会議への参加を奨励し、可能な限り早く結論を出す最大の努力を求める。
④国連事務総長に、核軍縮の進展具合の報告書を提出することを求める。
つまり、「禁止先行型」(NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」などが推進)とされ、核兵器を禁止する条約をまず作り、廃棄プロセスや検証制度は条約成立後に定めるとしている。
この方式で対人地雷禁止条約(1999年発効)、クラスター爆弾禁止条約(2010年発効)などが成立している。
賛成国はメキシコ、オーストラリア、エジプト、南アフリカ、スウェーデンなど、非核保有国のアフリカ、中南米、東南アジア諸国であった。
その中で共和国が賛成したのは、驚くにあたらない。
これまでの主張とともに、その真意をしっかりと読み説くことを勧める。
2.
反対運動の先頭に立ったのは米国である。
米国を含むロ英仏中の5大核保有国は、核不拡散条約(NPT)体制下での段階的な核軍縮を求めている。
1970年に発効したNPTは、5カ国だけに核兵器を持つことを認め、保有国に核軍縮を誠実に交渉する義務を課していた。
だが、米ロ間(両国併せて90%以上を保有)での削減交渉は進まず、核兵器はまだ世界に1万5千発以上も存在している。
NPT体制のままでは、核軍縮が進まず、不十分だとの認識と、核兵器の非人道性を訴える国際世論が近年広がったことが、「核兵器禁止条約」が成立した背景にある。
焦った米国は、主導する北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米核の傘の下にいる国に反対するように文書で求めた。
結果は、反対38カ国(韓国も反対しており、この面でも南北は対立している)と少数で、核5大国の中国は棄権をしている。
「核なき世界」を提唱してきたオバマ米政権の「二枚舌」に、非核保有国側はさらなる不信感を募らせていくだろう。
3.
同時に27日の第1委員会では、核兵器廃絶を求める日本提出の決議案(賛成167カ国、反対4カ国、棄権17カ国)も採択された。
94年以来、毎年、国連総会に提出し、採択されている。核兵器の禁止は求めず、NPT体制を支持しているものだ。
政府は、「核保有国と非核保有国の橋渡し役」の象徴的実績として誇ってきたとしているが、必ずしも核保有国の賛同は得られていない。(昨年は米英仏が棄権、今年は米国が賛成、英仏は棄権、中国は反対)
世界で唯一の被爆国を売りにしている日本の主張として、核兵器の完全廃絶ではないだけに、「核兵器禁止条約」に比べて、核兵器に対する立場があいまいである。
「核兵器禁止条約」を反対の立場にまわった安倍政権を、広島および長崎の被爆者たちは、「核兵器で脅しをかける米国に追随した」、「まるで米国を代弁しているようにしかみえない」と、厳しく批判している。
4.
国際司法裁判所が96年、「核兵器の使用・威嚇は一般的に国際人道法に違法する」との意見を出した。
ところが米国は、96年以降も、朝鮮に対して核恫喝政策を続け、数回、核攻撃の準備を進めたことがある。
この数年間の韓国軍との合同軍事演習では、核攻撃の精度を上げる内容を実施している。
核兵器使用や威嚇を禁じた国際司法裁判所の意見を無視して、朝鮮への核恫喝を続ける米国に対して、朝鮮はやむを得ず「核抑止力」で対抗した。
朝鮮のその「核抑止力」に対して米国は、(国際社会への)「挑戦」であり、「暴挙」だと批判を高めている。
一方で、国連総会では核抑止力の役割は高まっているとの理由で、米国は、核兵器廃絶条約決議の反対運動を展開していた。
同じ「核抑止力」論を主張しながら、条約に賛成した朝鮮とはまったく反対の立場を、米国は改めて示していたことになる。米政権の矛盾表現である。
朝鮮が米国に対して主張しているのは、朝鮮半島の核兵器全廃と同時に、全世界の核兵器廃絶であり、そのための恒常的な協議の場を設置することであった。
内容的には、国連で採択された「核兵器廃絶条約」と重なり合っている。
来年、米国の強い反対があったとしても、国連総会などの場で、朝鮮と非核保有国の核兵器廃絶への主張が展開されていくだろう。
米国の新政権は、核兵器廃絶へと向かっている国際世論をしっかりと認識した上で、朝鮮半島および世界の非核化政策を構築する必要がある。
2016年11月1日 記
1.
国連総会第1委員会(軍縮)は9月27日、「核兵器禁止条約」を、123か国の賛成多数で採択した。(反対38カ国、棄権16カ国、欠席16カ国)
決議の骨子は次のとおりである。
①核兵器を禁止する法的措置の交渉のための国連会議を2017年に開催することを決定。
②会議はニューヨークで開かれ、国際機関や市民参加を促す。
③すべての国連加盟国に会議への参加を奨励し、可能な限り早く結論を出す最大の努力を求める。
④国連事務総長に、核軍縮の進展具合の報告書を提出することを求める。
つまり、「禁止先行型」(NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」などが推進)とされ、核兵器を禁止する条約をまず作り、廃棄プロセスや検証制度は条約成立後に定めるとしている。
この方式で対人地雷禁止条約(1999年発効)、クラスター爆弾禁止条約(2010年発効)などが成立している。
賛成国はメキシコ、オーストラリア、エジプト、南アフリカ、スウェーデンなど、非核保有国のアフリカ、中南米、東南アジア諸国であった。
その中で共和国が賛成したのは、驚くにあたらない。
これまでの主張とともに、その真意をしっかりと読み説くことを勧める。
2.
反対運動の先頭に立ったのは米国である。
米国を含むロ英仏中の5大核保有国は、核不拡散条約(NPT)体制下での段階的な核軍縮を求めている。
1970年に発効したNPTは、5カ国だけに核兵器を持つことを認め、保有国に核軍縮を誠実に交渉する義務を課していた。
だが、米ロ間(両国併せて90%以上を保有)での削減交渉は進まず、核兵器はまだ世界に1万5千発以上も存在している。
NPT体制のままでは、核軍縮が進まず、不十分だとの認識と、核兵器の非人道性を訴える国際世論が近年広がったことが、「核兵器禁止条約」が成立した背景にある。
焦った米国は、主導する北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米核の傘の下にいる国に反対するように文書で求めた。
結果は、反対38カ国(韓国も反対しており、この面でも南北は対立している)と少数で、核5大国の中国は棄権をしている。
「核なき世界」を提唱してきたオバマ米政権の「二枚舌」に、非核保有国側はさらなる不信感を募らせていくだろう。
3.
同時に27日の第1委員会では、核兵器廃絶を求める日本提出の決議案(賛成167カ国、反対4カ国、棄権17カ国)も採択された。
94年以来、毎年、国連総会に提出し、採択されている。核兵器の禁止は求めず、NPT体制を支持しているものだ。
政府は、「核保有国と非核保有国の橋渡し役」の象徴的実績として誇ってきたとしているが、必ずしも核保有国の賛同は得られていない。(昨年は米英仏が棄権、今年は米国が賛成、英仏は棄権、中国は反対)
世界で唯一の被爆国を売りにしている日本の主張として、核兵器の完全廃絶ではないだけに、「核兵器禁止条約」に比べて、核兵器に対する立場があいまいである。
「核兵器禁止条約」を反対の立場にまわった安倍政権を、広島および長崎の被爆者たちは、「核兵器で脅しをかける米国に追随した」、「まるで米国を代弁しているようにしかみえない」と、厳しく批判している。
4.
国際司法裁判所が96年、「核兵器の使用・威嚇は一般的に国際人道法に違法する」との意見を出した。
ところが米国は、96年以降も、朝鮮に対して核恫喝政策を続け、数回、核攻撃の準備を進めたことがある。
この数年間の韓国軍との合同軍事演習では、核攻撃の精度を上げる内容を実施している。
核兵器使用や威嚇を禁じた国際司法裁判所の意見を無視して、朝鮮への核恫喝を続ける米国に対して、朝鮮はやむを得ず「核抑止力」で対抗した。
朝鮮のその「核抑止力」に対して米国は、(国際社会への)「挑戦」であり、「暴挙」だと批判を高めている。
一方で、国連総会では核抑止力の役割は高まっているとの理由で、米国は、核兵器廃絶条約決議の反対運動を展開していた。
同じ「核抑止力」論を主張しながら、条約に賛成した朝鮮とはまったく反対の立場を、米国は改めて示していたことになる。米政権の矛盾表現である。
朝鮮が米国に対して主張しているのは、朝鮮半島の核兵器全廃と同時に、全世界の核兵器廃絶であり、そのための恒常的な協議の場を設置することであった。
内容的には、国連で採択された「核兵器廃絶条約」と重なり合っている。
来年、米国の強い反対があったとしても、国連総会などの場で、朝鮮と非核保有国の核兵器廃絶への主張が展開されていくだろう。
米国の新政権は、核兵器廃絶へと向かっている国際世論をしっかりと認識した上で、朝鮮半島および世界の非核化政策を構築する必要がある。
2016年11月1日 記
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