「朝鮮半島平和協定が姿を現してきた」
「朝鮮半島平和協定が姿を現してきた」
1.中国側の提起
米中両国は、対朝鮮の制裁問題を国連安保理で協議する前に、双方の意思を確認する会談を行っていた。
中国は米国に対して、朝鮮半島の非核化問題は、制裁だけでは解決しない、非核化実現と朝米平和協定の協議が必要だと、米国に提案した。
王毅中国外相は17日、訪中したオーストラリアのビショップ外相との会談後の記者会見で、「中国は朝鮮半島の非核化実現と、停戦協定から平和協定への転換協議を並行して進める交渉方式を(米国に)提案する」と、改めて中国側の考えを述べていた。
朝鮮半島の非核化問題も、朝米平和協定の実現も、これまで朝鮮側が何度も米国に提起している。
朝鮮半島情勢が悪化の一途をたどっている現在、中国が改めて交渉による問題解決を提起した意味は、決して小さくはない。
朝鮮半島の平和安定問題は単純なように見えて、余りにも時間が長く経過していて、問題権益の政治的、経済的、軍事的な複雑さが絡み合っている。さらに関係国間の不信感が重層的に重なって、これまでの交渉で到達した言語(合意文など)の解釈においてでさえ、常に非難合戦となってきた。
そして、問題「解決」への出口が見出せないまま、70余年が過ぎ去った。
「解決」とは何を指すのかさえ不明のまま、時間だけが流れ去り、朝鮮半島に緊張感だけが繰り返されてきた。
その間、様々な協議体が誕生し、協議が重ねられてきたが、朝米間の政治的不信感情から、交渉は途中で決裂している。
その不信感と会談決裂の根源的な問題は、朝鮮半島が停戦協定を維持したままの準戦時状態で、朝米間が敵国関係にあったからである。
そこから抜け出すことが、朝鮮半島には求められていたのだ。
2.朝米平和協議の進行
昨年11月頃、朝米間に平和協定に関連する協議があったものの、成果なく終わったとの情報が流れていた。
米紙ウォールストリート・ジャーナルが2月21日付で、「米朝平和協定に向けた秘密の協議」があったことを報じているが、内容等の仔細は伝えていない。
それらからして、朝米間に平和協定関連の協議があり、協議が成果なく終わった事実だけは確かなようである。
秘密協議とはいえ、朝米間で平和協定関連問題がテーマとなっていたことに、一つの前進を感じる。
米国がこのテーマでの協議を受け入れたことを考えたとき、リ・スヨン朝鮮外相の昨年10月1日の第70回国連総会基調演説に行きつくことになる。
演説では、停戦協定が締結されてから60年が経ったが、朝鮮半島ではいまだに恒久平和が遂げられずにいる、 朝鮮半島で停戦状態が持続する限り、緊張激化の悪循環は繰り返され、戦争の瀬戸際へと突っ走るのは不可避である、このような深刻な事態を防ぐため、朝米が一日でも早く停戦協定を廃案にし、新たな平和協定を締結するべきである、と朝米平和協定協議の必要性が強調された。
さらに、公式ルートを通じて米国側に、平和協定の締結に心から応じることを促すメッセージを送ったとして、米国が提案に肯定的に応じることについても、公表したことが始まりとなった。
こうして、朝鮮半島に恒久平和保障システムの樹立、平和協定をめぐる議論が始まった。
しかし、朝鮮は平和協定以外は協議しないと主張、米国は非核化に向けた議論が、平和協定協議の一部になるべきだと主張して対立した。
非核化についての米国の立場は、朝鮮半島ではなく、「北朝鮮」を対象としており、それも先行実施を要求している。
朝鮮側にとっては、妥協の余地もない考えで、非核化の話は封印し、平和協定関連協議にこだわった。
平和協定に向けての協議の進展状況に応じて、朝鮮側には、「関連」問題としての非核化を協議する意思があったようである。
その意思をはっきりしたメッセージで米国側に伝える前に、両国ともそれ以上に対話を続けていく意味を見つけられなかったようだ。
それはまた、敵対関係にある両国の不信感情の深さを物語っている。
朝米間に横たわるその不信感情が、表現上の解釈の違いによっても対立を生み、過去、何度も朝鮮半島の緊張を激化させていった。
その後の米国は、朝鮮への制裁を強化した内容を、国連安保理で決議する意思を固め、中国と協議した。
ただ、中国がその場で平和協定の必要性を提起したことで、これに向けた動きが以前よりは確かさを見せ始めたことが分かる。
3.南朝鮮側の疑念
朝米間で、平和協定をテーマに協議をしていたことを知った南朝鮮内では、動揺が走っている。
特に、米中外相会談後の2月23日、平和協定に向けた協議の可能性が言及されたことに、朴槿恵政権の一部から、「平和協定は、韓国が主体にならなけらばならない」と、不快感を表明する声がはっきりと聞こえるようになった。
中国は、05年9月19日の共同声明と07年2月13日の合意には、平和協定が明示されているとして、非核化との同時進行を米国に提起したようである。
朝鮮半島では、核なくして初めて平和が可能であり、対話することこそが活路であり、協力してこそウィンウィンが可能になると、米国を説得した。
南朝鮮政権の関係者は、こうした中国側の言動に不快感を募らせ、「韓国の安全保障政策に口を出すな」と怒りを中国に向けている。
朴槿恵政権のその不快感、不安感、動揺、怒りは結局、平和協定に対する腹案が何もないことの裏返しであったろう。
南朝鮮では、中国が提案する平和協定案は、北が核保有国と認められ、米国と外交関係を結び、在韓米軍の撤収などによって赤化統一に進むという意図があるとされ、それへの危惧と疑念を強めている。
彼らの疑念は、①北の核開発に正当性を与える、②在韓米軍駐留の根拠が弱まる――の2点に集約される。
こうした疑念が生じる背景には、誤解と情勢分析不足、自由主義体制による統一思考、在韓米軍依存安保体制、北への敵対概念などが、長年の中で体質化してしまった結果があるのだと思われる。
だが、南朝鮮にとっては、疑念の2点は切実な問題であったろう。
そのため、仮に、朝米間で平和協定の協議が進展したとしても、途中で、または協議のテーマによっては、南朝鮮が米国を通じてクレームを付けてくる可能性は大きいと思われる。
朝鮮半島の恒久平和を維持していく上で、南朝鮮も対象者だという地位にあるからである。
かつて金正日総書記は、朝鮮半島の恒久平和保障システムを協議する場として、3者もしくは4者協議を提起したことがあるが、その協議体に倣って、まずは中国を入れた4者での「朝鮮半島恒久平和保障システム」協議体を設立することは可能ではないか。協議体は、朝鮮半島の緊張対立状態に二度と戻らないために、停戦協定の平和協定への転換、朝鮮半島の非核化、南朝鮮と在韓米軍の削減、米韓合同軍事演習の中止、朝米および南北間の常設対話機構の設立、非軍事境界線の通路拡大(南北双方からの外国人観光客の通過拡大)などのテーマを整理し、協議する。(事前協議が必要)
同時に、国交正常化を見据えた朝米協議、交流協力と統一を見据えた南北朝鮮の2国間協議を、それぞれ同時的に併設して進める。
本協議での非核化と平和協定、朝米協議の同時進行、ゴールインまでには、難しい調整と多くの時間を必要とするだろうが、協議が継続している期間中は、平和保障の予備期間だと考えれば、事を急いで対立関係に戻るよりは、平和保障への価値があるだろう。
これが可能になるかは、米国の度量が試されていると言える。
4.朝鮮半島の正義の声
米国は核拡散防止政策をかざして、朝鮮の核保有を認めていないが、朝鮮の先核政策放棄を要求し続けている。
過去の6者会談や朝米協議で、朝鮮半島の非核化問題が議論されるとき、必ず「北朝鮮の非核化」と読み替えて、問題を振りだしに戻し、協議の進行を妨害してきた。
朝鮮半島の非核化となれば、米国による南朝鮮への核の傘政策、核搭載可能な空母、潜水艦、戦闘機などの寄港・飛来、核攻撃を想定した軍事演習、核恫喝政策などのすべてを、米国は中止しなければならない。
米国の朝鮮半島政策、ひいてはアジア戦略の転換を迫るものである。
だが、米国のこの戦略転換なくして、朝鮮半島の恒久平和は保障されない。
つまり、米国のアジア太平洋地域の戦略が、朝鮮半島を危機に陥れ、準戦時状態にしているからである。
朝鮮半島における停戦協定の平和協定への転換要求は、国連憲章に則った正義の声であることを改めて米国に訴える。
2016年3月27日 記
1.中国側の提起
米中両国は、対朝鮮の制裁問題を国連安保理で協議する前に、双方の意思を確認する会談を行っていた。
中国は米国に対して、朝鮮半島の非核化問題は、制裁だけでは解決しない、非核化実現と朝米平和協定の協議が必要だと、米国に提案した。
王毅中国外相は17日、訪中したオーストラリアのビショップ外相との会談後の記者会見で、「中国は朝鮮半島の非核化実現と、停戦協定から平和協定への転換協議を並行して進める交渉方式を(米国に)提案する」と、改めて中国側の考えを述べていた。
朝鮮半島の非核化問題も、朝米平和協定の実現も、これまで朝鮮側が何度も米国に提起している。
朝鮮半島情勢が悪化の一途をたどっている現在、中国が改めて交渉による問題解決を提起した意味は、決して小さくはない。
朝鮮半島の平和安定問題は単純なように見えて、余りにも時間が長く経過していて、問題権益の政治的、経済的、軍事的な複雑さが絡み合っている。さらに関係国間の不信感が重層的に重なって、これまでの交渉で到達した言語(合意文など)の解釈においてでさえ、常に非難合戦となってきた。
そして、問題「解決」への出口が見出せないまま、70余年が過ぎ去った。
「解決」とは何を指すのかさえ不明のまま、時間だけが流れ去り、朝鮮半島に緊張感だけが繰り返されてきた。
その間、様々な協議体が誕生し、協議が重ねられてきたが、朝米間の政治的不信感情から、交渉は途中で決裂している。
その不信感と会談決裂の根源的な問題は、朝鮮半島が停戦協定を維持したままの準戦時状態で、朝米間が敵国関係にあったからである。
そこから抜け出すことが、朝鮮半島には求められていたのだ。
2.朝米平和協議の進行
昨年11月頃、朝米間に平和協定に関連する協議があったものの、成果なく終わったとの情報が流れていた。
米紙ウォールストリート・ジャーナルが2月21日付で、「米朝平和協定に向けた秘密の協議」があったことを報じているが、内容等の仔細は伝えていない。
それらからして、朝米間に平和協定関連の協議があり、協議が成果なく終わった事実だけは確かなようである。
秘密協議とはいえ、朝米間で平和協定関連問題がテーマとなっていたことに、一つの前進を感じる。
米国がこのテーマでの協議を受け入れたことを考えたとき、リ・スヨン朝鮮外相の昨年10月1日の第70回国連総会基調演説に行きつくことになる。
演説では、停戦協定が締結されてから60年が経ったが、朝鮮半島ではいまだに恒久平和が遂げられずにいる、 朝鮮半島で停戦状態が持続する限り、緊張激化の悪循環は繰り返され、戦争の瀬戸際へと突っ走るのは不可避である、このような深刻な事態を防ぐため、朝米が一日でも早く停戦協定を廃案にし、新たな平和協定を締結するべきである、と朝米平和協定協議の必要性が強調された。
さらに、公式ルートを通じて米国側に、平和協定の締結に心から応じることを促すメッセージを送ったとして、米国が提案に肯定的に応じることについても、公表したことが始まりとなった。
こうして、朝鮮半島に恒久平和保障システムの樹立、平和協定をめぐる議論が始まった。
しかし、朝鮮は平和協定以外は協議しないと主張、米国は非核化に向けた議論が、平和協定協議の一部になるべきだと主張して対立した。
非核化についての米国の立場は、朝鮮半島ではなく、「北朝鮮」を対象としており、それも先行実施を要求している。
朝鮮側にとっては、妥協の余地もない考えで、非核化の話は封印し、平和協定関連協議にこだわった。
平和協定に向けての協議の進展状況に応じて、朝鮮側には、「関連」問題としての非核化を協議する意思があったようである。
その意思をはっきりしたメッセージで米国側に伝える前に、両国ともそれ以上に対話を続けていく意味を見つけられなかったようだ。
それはまた、敵対関係にある両国の不信感情の深さを物語っている。
朝米間に横たわるその不信感情が、表現上の解釈の違いによっても対立を生み、過去、何度も朝鮮半島の緊張を激化させていった。
その後の米国は、朝鮮への制裁を強化した内容を、国連安保理で決議する意思を固め、中国と協議した。
ただ、中国がその場で平和協定の必要性を提起したことで、これに向けた動きが以前よりは確かさを見せ始めたことが分かる。
3.南朝鮮側の疑念
朝米間で、平和協定をテーマに協議をしていたことを知った南朝鮮内では、動揺が走っている。
特に、米中外相会談後の2月23日、平和協定に向けた協議の可能性が言及されたことに、朴槿恵政権の一部から、「平和協定は、韓国が主体にならなけらばならない」と、不快感を表明する声がはっきりと聞こえるようになった。
中国は、05年9月19日の共同声明と07年2月13日の合意には、平和協定が明示されているとして、非核化との同時進行を米国に提起したようである。
朝鮮半島では、核なくして初めて平和が可能であり、対話することこそが活路であり、協力してこそウィンウィンが可能になると、米国を説得した。
南朝鮮政権の関係者は、こうした中国側の言動に不快感を募らせ、「韓国の安全保障政策に口を出すな」と怒りを中国に向けている。
朴槿恵政権のその不快感、不安感、動揺、怒りは結局、平和協定に対する腹案が何もないことの裏返しであったろう。
南朝鮮では、中国が提案する平和協定案は、北が核保有国と認められ、米国と外交関係を結び、在韓米軍の撤収などによって赤化統一に進むという意図があるとされ、それへの危惧と疑念を強めている。
彼らの疑念は、①北の核開発に正当性を与える、②在韓米軍駐留の根拠が弱まる――の2点に集約される。
こうした疑念が生じる背景には、誤解と情勢分析不足、自由主義体制による統一思考、在韓米軍依存安保体制、北への敵対概念などが、長年の中で体質化してしまった結果があるのだと思われる。
だが、南朝鮮にとっては、疑念の2点は切実な問題であったろう。
そのため、仮に、朝米間で平和協定の協議が進展したとしても、途中で、または協議のテーマによっては、南朝鮮が米国を通じてクレームを付けてくる可能性は大きいと思われる。
朝鮮半島の恒久平和を維持していく上で、南朝鮮も対象者だという地位にあるからである。
かつて金正日総書記は、朝鮮半島の恒久平和保障システムを協議する場として、3者もしくは4者協議を提起したことがあるが、その協議体に倣って、まずは中国を入れた4者での「朝鮮半島恒久平和保障システム」協議体を設立することは可能ではないか。協議体は、朝鮮半島の緊張対立状態に二度と戻らないために、停戦協定の平和協定への転換、朝鮮半島の非核化、南朝鮮と在韓米軍の削減、米韓合同軍事演習の中止、朝米および南北間の常設対話機構の設立、非軍事境界線の通路拡大(南北双方からの外国人観光客の通過拡大)などのテーマを整理し、協議する。(事前協議が必要)
同時に、国交正常化を見据えた朝米協議、交流協力と統一を見据えた南北朝鮮の2国間協議を、それぞれ同時的に併設して進める。
本協議での非核化と平和協定、朝米協議の同時進行、ゴールインまでには、難しい調整と多くの時間を必要とするだろうが、協議が継続している期間中は、平和保障の予備期間だと考えれば、事を急いで対立関係に戻るよりは、平和保障への価値があるだろう。
これが可能になるかは、米国の度量が試されていると言える。
4.朝鮮半島の正義の声
米国は核拡散防止政策をかざして、朝鮮の核保有を認めていないが、朝鮮の先核政策放棄を要求し続けている。
過去の6者会談や朝米協議で、朝鮮半島の非核化問題が議論されるとき、必ず「北朝鮮の非核化」と読み替えて、問題を振りだしに戻し、協議の進行を妨害してきた。
朝鮮半島の非核化となれば、米国による南朝鮮への核の傘政策、核搭載可能な空母、潜水艦、戦闘機などの寄港・飛来、核攻撃を想定した軍事演習、核恫喝政策などのすべてを、米国は中止しなければならない。
米国の朝鮮半島政策、ひいてはアジア戦略の転換を迫るものである。
だが、米国のこの戦略転換なくして、朝鮮半島の恒久平和は保障されない。
つまり、米国のアジア太平洋地域の戦略が、朝鮮半島を危機に陥れ、準戦時状態にしているからである。
朝鮮半島における停戦協定の平和協定への転換要求は、国連憲章に則った正義の声であることを改めて米国に訴える。
2016年3月27日 記
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