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「私は、朝鮮の自主的平和統一を支持します」

「私は、朝鮮の自主的平和統一を支持します」


 数年前から私は、「私は朝鮮の自主的平和統一を支持します」のネームタグを首からぶら下げて歩いている。

 大きなものではないから、通行中の対面者には文字が読めないものの、ネームタグをぶら下げていることは分かるだろう。

 時折、知人と出会い、立ち止まって話をすることがあり、その際、相手とはタグの文字が読める程度の距離まで近づき、話をすることになる。


 ここで少し、私の近い過去のことを記す。

 80年代初めの私は、朝鮮統一支持県民連合、日朝協会、玉串料訴訟を支援する会、県消費者団体連合会、県高齢者協同組合、環境問題団体連絡会など、幾つもの会や団体組織の会長や、共同代表の立場で活動していた。

 忙しかったのは事実だが、それら多方面の運動を行う目的は、日本の自主化実現、社会主義システムの実現であった。

 だからどの団体の創立呼び掛けには、旧社会党と日本共産党を説得し、共に加入してもらうことに力を注いだ。

 すでに社共は反発しあう関係であったのだが、せめて市民運動の場での「社共統一」を願っていたからである。

 そのような私の秘かな努力も虚しく、日本共産党側は私を「新左翼分子」(北朝鮮支持者だとは言わず)だとレッテルを貼り、批判を繰り返して、それぞれの団体からの追放劇を試みてきた。

 それでもどの団体も私が中枢にいて指導していると、彼らは自分の意見だけを強要したり、会議中に引き揚げたり、新聞「赤旗」で私が会議や活動の進行を妨害していると記事を掲載した。

 また、同時期、勤務する新聞社内でも、私はピンチに立たされていた。

 年に2回開かれる社長談話・訓示の全員集会で、社長が私を名指しして、「北朝鮮のスパイ」だとレッテルを貼り、存在を否定した。

 私の北朝鮮や朝鮮総連との関係、県知事を被告とする玉串料訴訟での市民運動を指導していたことが、彼にそのような発言をさせたようだ。

 事実、役員室には、「名田が在籍する限り」新聞不買運動を広めると脅す団体や、右翼連中が出入りしていたと、後日になって聞かされた。

 私自身から退社するようにとの社長からの圧力発言であったのだろうが、この発言に影響された幹部や社員たちは、私と距離を置き、しばらくは返事もしてくれない冷たい空気が支配し、私は孤立した。

 そのような社内の出来事を誰にも話さずにいたから、私に関する誹謗中傷だけが、各種団体に流れ、そこでも不当な非難の目が注がれることがあった。

 もう一点、私自身の周辺に変化が生じていた。

 右翼団体や右派組織(勝共連合など)のほか、公安警察などが私を尾行し始めたのだ。

 特に右翼団体と公安警察はしつこかった。

 80年代中、右翼団体は街宣車を私が勤務する新聞社周辺と朝鮮総連事務所周辺に走らせ、北朝鮮と私への罵声を浴びせた。

 それ以外にも、街中を歩いている私を見つけると、街宣車を近づけてボリュームを上げて威嚇したり、無言の圧力を掛けてきたりした。

 一人では街中を歩かないようにと友人たちから助言を受けていたが、仕事柄そうもいかず、80年代中頃までは右翼連中から襲撃されるかもしれないという警戒心で、通行していた。

 それ以外に右翼は連日、自宅に無言電話、暴言電話や、真夜中から午前3時頃までの数回、いやがらせ電話を、90年代初めまで掛け続けてきた。

 公安警察の方はもっと陰湿で、私が定年退社する日まで、社の周辺で私の動静を見張っていた。

 それでも足りないのか、北朝鮮との関係が緊張している時や、私が訪朝する前後などは、様々な人物を様々な理由をつけて私と接触(間接的な場合も)させて、しつこいほど情報を探ろうとした。

 
 80年代から90年代にかけての、私の社会的身辺的状況を長々と振り返ったのは、もう一面での私が置かれた状況と関連するからである。

 私は朝鮮問題、消費者問題、環境問題、高齢者問題などの代表として、第一線で活動していたため、様々な局面で、県内のマスメディアの注目を受け、年に数回はニュース番組に私の顔と名前が登場した。時には短い番組にも出演した。

 私の意図することとは違って、私の名前と顔は県内に広がり、知られる存在となってしまった。

 そのことを利用した団体や個人から、松山市議や県議選挙に出ることを要請されたこともあった。ただ、私は政治家になるつもりはなかったから、彼らの期待には応えられなかった。

 意図せず有名人になったことでただ一つよかったことは、街中で右翼から襲撃を受けることがあったとしても、周囲の人間によってそれを防ぐことができるという安心感だった。この考えから、有名人であることに甘んじていたのも事実である。

 その結果、80年代中頃以降になると、何気なく街中を歩いていると、私の顔をまじまじと見つめ、後ろを振り返る人たちの存在に気付くようになった。

 彼等彼女らは、すれ違うまで私を見つめ、通り過ぎて後ろを振り返り、「あの人」「見たことがある」「テレビに出ていた」などと、連れ立つ人々と言葉を交わしていた。一時間ほど歩くと、4、5回そのような人々と出会うこともあったが、さすがに2000年代になる、1~2回までに減った。(それも中年以上の人たち)

 そのような現象を経験してきたから、街中で出会う知人たちの大部分は、私が朝鮮問題関連の活動家で、北朝鮮を支持していることを知っている。

 知ってはいても、彼ら自身の人生の立ち位置によって、朝鮮関連のテーマを無視して話さなかったり、無難な話題で終わったり、わざと韓国のことを持ち出したりして挑発するなど、朝鮮問題を避けていた。彼らは、私がぶら下げているネームタグの文字は見ないふりをしていた。

 ただ、ごく少数の者の中にネームタグの文字を読み、朝鮮半島情勢のことを質問し、教えてほしいと言う者もいた。そんな彼らの中には長年の同志もいる。時には、「立派な立場だ」「尊敬する」などの言葉をかけてくれることもあった。

 こうした街中での人々との出会いでさえ、朝鮮半島の政治情勢によって、変化が出てくる。

 私の北朝鮮との立ち位置は、どの時も何ほどの変化もないにも関わらず、身近な人々の方が豹変し、社会現象の変化や政治状況によって、私への偏見が増減していることも、また面白い。

 北朝鮮が核実験やミサイル発射実験をした直後や、拉致問題がマスメディアで取り上げられた後などは最も厳しく、ある人などは遠くで私を見掛けると、ふいに近くの路地を曲がって姿を消してしまう。

 だから私は、「朝鮮の自主的平和統一を支持」して、その実現に努力していることを、誰に対しても表明することにしている。

 
 ――これらが「私自身」なのである。

 これまで、いつでも、誰に対しても、臆することなく、私は、朝鮮の自主的平和統一支持を表明してきた。これを証明するため、私はネームタグをぶら下げているのである。


                                                                   2016年1月23日 記

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「オバマ大統領の最後の一般教書演説」

「オバマ大統領の最後の一般教書演説」


1.
 オバマ米大統領は1月12日夜(日本時間13日午前)、最後の一般教書演説を行った。

 最後だということもあり、オバマ氏は自らの「レガシー作り」につながるテーマに時間を割いて説明していた。

 刑事司法改革、銃規制の厳格化、雇用回復、医療保険制度改革(オバマケア)、貧困撲滅、環太平洋経済連携協定(TPP)など、国内問題に続いて外交関係では、キューバとの関係、イラン核合意などと、7年間の実績を強調した。

 さらに、テロ作戦、「イスラム国(IS)」掃討戦やシリアなど中東地域での作戦では、国際社会の動員を原則とする「協調主義」を貫く姿勢を示していた。

 しかし、これまで、「アジア回帰」路線政策を強調していたにも関わらず、演説ではアジアについてはほとんど言及せず、北朝鮮関係では一回も発言しなかった。

 一般教書演説の一週間前の6日、北朝鮮が4回目の核実験(水爆)を実施したから、一般的には、北朝鮮に対して何らかのメッセージがあるものと考えられていたが、その期待を裏切ってしまった。

 7年間のオバマ政治の期間、何度も北朝鮮から朝米協議の呼び掛けがあったにも関わらず、米国はずっと無視し続けてきた。

 だから、何らの実績もなく、結果もなかったから、無関心を装ってきたと受け止められている。

 この無関心態度が一般教書演説に表れ、オバマ政権の対北朝鮮政策の総決算書となっていたようだ。


2.
 オバマ政権の対北朝鮮政策は、「戦略的忍耐」および「戦略的無関心」であったと言える。

 北朝鮮が核放棄、非核化政策を表明したときにのみ、その方向に沿っての協議を行うとし、それ以外のどのような協議にも応じないとしてきた。そのことが無関心を装っていると批判されているのだ。

 その間、北朝鮮は3回の核実験(今回も含め)を実施した。

 2013年の一般教書演説の前日夜に平壌は核装置を爆発させた。

 オバマ氏は翌日の演説で急遽、北朝鮮の挑発を取り上げ、朝鮮半島の非核化推進を呼び掛けた。

 今回の演説で、北朝鮮に関して何も言及しなかったのは、北朝鮮の非核化実現を重視し、それを気にかけていたこの裏返しでもあったのだろう。

 さらには、国内での難題と中東問題解決(関わり)で精一杯だったという米国自身の事情と、オバマ氏の政治的計算もあったはずだ。

 オバマ氏は、クリントン政権がその政権末期に平壌に急接近し、北の非核化実現と朝米交流、双方首都への事務所設置までの協議が進みながら、挫折してしまったことを知っている。このトラウマが、米民主党内にあることから、足踏みしているのだろう。

 クリントン氏と同じ道へと踏み込みたくなかったから、北朝鮮側からの動きとアプローチを待っていた。


3.
 米歴代政権は朝鮮半島の安定化政策で、第1に北朝鮮の核政策放棄を要求し、実現した後に、朝米関係改善への協議を進めることを主張してきた。

 こうした米国の主張と態度は、戦後、南朝鮮を占領した時から、朝鮮の歴史と社会の実態を理解しようとせず、朝鮮人の民族的要求を受け入れずに無視し、米国式自由と民主主義を押し付けてきた政治姿勢の帰納でもある。

 つまり、朝鮮半島の南北分断現実を米国支配のアジア安保に利用することだけを考え、朝鮮人の民族自主の声を聞こうとしてこなかった。 

 米国は、朝鮮半島内に冷戦体制ラインを敷き、それを固定化して維持することで、自国の産軍発展に利用した。

 だから、いつまでも朝鮮半島の冷戦体制の解除を認めず、そのための協議さえ拒否してきた。

 朝鮮半島の平和安定を実現し、維持するための第1の条件は、朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に転換するための協議である。

 平和協定が締結しない限り、朝鮮半島の平和安定はない。

 今、朝鮮半島の平和安定に必要なことは、米国が主張する北朝鮮の核放棄政策ではなく、朝米平和協定のための協議である。

 北朝鮮は90年代からずっと、朝米平和協定の実現を主張している。

 実現するために、3者協議(南北朝鮮と米国)、または4者協議(南北朝鮮、中国、米国)であってもいいと北朝鮮は主張してきた。

 だが、米国は、この北朝鮮の主張を一度も聞き入れず、代わりに北朝鮮の核政策に対する脅威を持ち出して対抗した。

 その上で、核兵器による攻撃を示唆する米韓合同軍事演習、対北作戦計画の精度を上げる訓練で、軍事的圧力を強化してきた。

 たまらなくなった北朝鮮側は、社会主義体制と民族自主権を守るために、核政策(抑止力)を決定した。

 朝鮮半島の真の平和安定への朝米平和協定締結を無視してきた米国の態度が逆に、北朝鮮に核保有政策を決定させ、朝鮮半島を一層の危険地帯にしてしまったのである。

 こうした米国の罪こそ、国連安保理で議論し、断罪されるべきではないのか。


4.
 北朝鮮の水爆実験後、米国はいち早く、安保理での制裁強化を主張し、同盟国の日本と韓国を引き入れ、中国を説得している。

 それだけではなく、朝鮮半島近辺へ爆撃機および艦船を派遣し米国の戦力追加を見せつけている。

 韓国防衛のための決然とした意思表示で北朝鮮の挑発意思を無力化させようとしているようだ。

 米国は、戦略爆撃機を韓国に展開した後、ステルス機能が高いF22戦闘機12機を米アラスカ州基地から横田基地に派遣。(1月21日)

 さらに、在日米軍は、F16戦闘機15機を横田基地に飛来させる予定だと言う。日米韓3国体制がより強化されていることが分かる。

 一方で、米海軍は、米国防総省当局者が20日、原子力空母ジョン・ステニスをアジア周辺の西太平洋に派遣し、「同盟国との共同演習」(2、3月の米韓合同軍事演習に参加)に参加することを明らかにした。

 また、米海軍は、横須賀基地に原子力空母ロナルド・レーガンが配備しており、これで、東アジアは空母2隻の体制となった。

 これらは、4回目の核実験を実施した北朝鮮への対抗措置とみられる。東アジアの米軍の存在感を誇示しようとしているようだ。

 さらに、韓国国防省は22日、米軍が艦艇や軍用機との間で情報を共有するために運用している情報システム「リンク16」と、韓国軍のシステムを年内に連絡、運用させることを明らかにした。

 リンク16には、日本の自衛隊がすでに参加しており、米軍のシステムを介して、日韓が北朝鮮の弾道ミサイル発射に関するデータ情報などを瞬時に共有する体制が整うことになる。

 日韓は2012年に「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の締結直前に、植民地時代の記憶から日本との軍事協力を嫌う韓国世論の反対で、延期となっていた。

 その後の14年末に、米国を加えた3カ国が北朝鮮の核・ミサイルへの防衛機密情報の共有化を取り決めていたのだ。

 米軍は、北の核実験を口実に、長年の課題の完成を急ぎ、北朝鮮への軍事的圧力を強化する日米韓3カ国体制を築いたことになる。

 
 以上の動きから、オバマ氏は北朝鮮の4回目の核実験に対して、無関心を装っていたのではなく、自らの対北朝鮮政策の失敗から来る朝鮮半島の脅威と混乱を、経済制裁と軍事的圧力の力でねじ伏せようとしていることがわかる。

 だが、それもこれまでと同じように失敗するだろう。

 目覚めるべきは米国である。

 米国は自らの政策を朝鮮半島の情勢にフィットさせることができず、「危機」を演出しては、その存在感をアピールしているだけである。

 このままでは、次期大統領は、就任直後の早い段階で、北朝鮮からの5回目の核実験の先礼に見舞われることだろう。

                                                                   2016年1月23日 記

「桜田議員の妄言、許せない」

「桜田議員の妄言、許せない」

1.
 自民党の桜田義孝元文部科学副大臣は1月14日午前、自民党本部の外交・経済連携本部の国際情報検討委員会合同会議(非公開、国会議員約10人が出席)で、ユネスコ拠出金削減問題(中国批判)、慰安婦問題(韓国批判)、日韓基本条約問題などに関して、歴史認識や国際政治情勢認識不足を欠いた妄言を行っていたことが報道された。

 なかでも、慰安婦関連への妄言は許すことはできないほど、酷い内容である。

 以下、桜田議員の発言要旨。

 「ユネスコの機能を(中国が)政治利用ばかりしているなら、趣旨に反するということで拠出金を大幅に減らすべきだ」と、合同会議でユネスコ記憶遺産に南京事件が登録された問題などが議論されているときの発言。

 続いて、「従軍慰安婦の問題は、日本で売春禁止法ができる前までは、売春婦と言うけれど職業としての娼婦、ビジネスだ。これを何か犠牲者のような宣伝工作に惑わされすぎている。そんなのは職業としての売春婦ということを、もう遠慮することはないと思う。遠慮しているから、問題って日本でも韓国でも広まってしまうのではないかと思う。日韓基本条約を結んだ時、韓国の国家予算を日本が援助した。そういうことを韓国人が知らない。韓国人に政府が教えていないと聞いている」(1月15日付け「朝日新聞」から)

 この桜田発言を、さすがの自民党中枢部も、現在の微妙な日韓関係に影響を与える可能性があると認識したようだ。

 菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、「政府としてはコメントを控えるが、政府、党の考え方は決まっている。国会議員であれば、それを踏まえて発言し、自らの発言については自らが説明責任を有するのは当然だ」と、苦言を呈した。

 額賀福志朗元財務大臣(日韓議員連盟会長)は、「日韓で暖かい風が吹き始めている時に、何が一番大切か考えてほしい」と批判。公明党幹部は、「自民党がきちんと考えた方がよい」と、更迭などの処分の必要性を示唆した。

 こうした内部からの批判にさらされた桜田氏は、同日夕、「誤解を招く所があり、発言を撤回する。ご迷惑をおかけした関係者の皆様に心よりおわび申し上げる」と、短いコメントを発表。

 桜田氏のおわびコメントは内向きで、政府、自民党幹部に対して恭順を示したもので、自らの発言を恥じて反省したものではない。

 彼自身の右派ナショナリズム思考の間違いを反省したのでも、韓国や中国への謝罪でもなんでもない。

 だから、桜田氏のような思考は、安倍政権内、自民党内で温存されたままになってしまっている。

 韓国外務省報道官は14日、桜田氏の発言に対して、「歴史の前で恥を知らない一介の国会議員の無知な妄言に対し、いちいち反論する一顧の価値も感じない」と、抑制的にも、強い不快感を表明した。

 その上で報道官は、昨年末(12月27日)の慰安婦問題に関する日韓合意で、日本政府が責任を認め、安倍晋三首相が謝罪したことを着実に履行することを改めて言及。「重要なことは、被害者の心を再び傷つけることなく、合意を着実に履行できるよう環境、雰囲気を醸成することだ」と注文をつけた。

 報道官はさらに、慰安婦問題は「日本の帝国主義膨張の過程で、強制的に連れていかれた女性を対象に広範囲に行われた戦時の性暴力であり重大な人権侵害で、国際社会の共通認識だ」と指摘して、桜田発言を強く非難した。

 また、慰安婦問題を韓国で蒸し返しているとの発言に対して、韓国では配慮を欠いた日本側の言動が原因で、これまで決着しなかったとの認識があると指摘。

 日本側の傲慢さが韓国内からは今後、桜田発言が「最終的かつ不可逆的な解決」を揺るがす可能性があるだろう。

3.
 ところが、安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で、桜田発言を受けた慰安婦問題について「日本にも韓国にも様々な意見があることは事実だ。しかし、これを乗り越えて、日韓両国政府は最終的かつ不可逆的に解決することに合意」したと答弁。

 そのうえで「様々な発言そのものを封じることはできないが、政府関係者や与党関係者はこのことを踏まえて、今後は発言をしていただきたい」と、慎重な対応を求めたものの、桜田発言そのものにはふれなかった。

 首相の答弁からは、さすがに桜田氏と同根の右派ナショナリスト性が漂っていた。

 昨年末の日韓両政府の慰安婦問題での合意は、形式的に日本政府が責任を認め、安倍首相が謝罪(誰に対してなのかは不明)し、韓国側が設立する元慰安婦支援財団に10億円を拠出することで、日本側が韓国政府に対して、「最終的、不可逆的解決」を押し付けたものだ。

 もっとも、この日韓合意劇には、裏でオバマ米政府からの強い圧力と示唆があった。オバマ政権は対中国、対北朝鮮問題の対策で、強固な日米韓体制の構築づくりを焦っていたのである。

 安倍政権はこの米国の意向を追い風として、韓国との間で岩盤の如くにネックとなっていた慰安婦問題を、10億円の拠出金で問題解決することに積極的となった。

 これまでのことを考えれば、10億円は安い金額である。

 ただ、安倍政権の根底には植民地支配や侵略などの帝国主義思考が温存されたままである。そのことから、今後、再び、桜田発言のようなものが、安倍政権から飛び出してくる可能性は十分にある。


4.
 韓国の元慰安婦支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」などの韓国世論は、旧日本軍の従軍慰安婦問題で最終的な解決を約束した日韓合意は無効だと反発している。

 挺対協の尹美香常任代表は、14日、桜田発言に対して、「日本の首相が、自国民や政治家に対しても『被害者を再び傷つける妄言はあってはならない』という立場を明確に示すべきだ」と、安倍政権に対する注文を表明。

 さらに同日の記者会見で、(慰安婦問題での)日韓の再協議を求める世論を国内外で形成し、慰安婦を象徴する少女像の増設などの「全国行動」を始めると明言した。

 さらに、日本が10億円を拠出し、韓国が設立する財団を通じた元慰安婦らに対する支援は「体を張って拒否」し、国民の募金などで独自の財団を立ち上げるとも発表した。

 挺対協のこの提言に、韓国内の各界計約380団体と個人約340人が、すでに賛同している。

 また、旧日本軍の従軍慰安婦問題は、韓国だけに存在するわけではない。日韓両政府の合意に触発されて、台湾とフィリピンの団体は、日本政府に韓国と同内容を要求していくと発表している。

 そのため、「日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」の会合を2月に開き、アジア各国の同様団体との連携を強めていくとしている。

 3月には米国の市民団体とも協力して、米国でシンポジウムを開く計画もある。

 形式的で稚拙な安倍政権の解決方法に対して、各国の支援団体は再び立ち上がり、結束しようとしている。

 戦後70年以上も、各国の戦争被害者や従軍慰安婦被害者に対して誠実に向き合ってこなかった日本政府、日本政治に対して、決して許さないとして、国際世論からの抗議の声は、ますます高まっていくであろう。


                                                                   2016年1月16日 記

「2016年の『新年の辞』をよむ」

「2016年の『新年の辞』をよむ」


1.
 新年の辞は最初、昨年の成果を以下4点にまとめ、それが今後のチュチェ朝鮮革命発展への礎になるとした。

 ①白頭山英雄青年発電所をはじめ、党の思想と政策を具現し、社会主義の理想郷が実現し、党創健70周年を革命的行事として輝かせたこと。

 ②民族に迫ってきた戦争の危機を防いだこと。

 ③共和国の尊厳と世界平和を守ったこと。

 ④青年たちは、先軍時代の青年突撃精神と青年文化を創造し、党のまわりに団結し、チュチェ革命の継承者として成長したこと。

 ――などと総括し、それは祖国と革命に捧げた、人民軍将兵と人民の尊い血と汗の結晶体だとした。

 そして今年(2016年)、朝鮮労働党第7回大会で朝鮮革命の最後の勝利を早めるための設計図を示すという。

 そのための戦闘的スローガンを、「朝鮮労働党第7回大会が開かれる今年、強盛国家建設の最盛期を開こう!」と提示した。

 このスローガンの具体的内容、つまり経済強盛国家建設で総力を集中していくための以下の課題を掲げた。

 ①電力、石炭、金属工業、鉄道輸送部門の向上。

 ②農業、畜産、水産部門での増産。

 ③軽工業部門の近代化と世界的な競争力を持つ商品の増産。

 ④引き続き、建設部門を、時代のモデルとなるような最高水準、最大速度で建設する。

 以下、人民経済のすべての部門でスケールの大きい闘争目標を立て、力強く推進していくとした。

 次いで、全党、全軍、全人民が立ちあがって、現実的に戦う目標。

 ①山林復旧戦闘を繰り広げること。

 ②政治的、軍事的威力を全面的に強化すること。

 ③国防力を鉄壁のごとく打ち固めること。

 ④人民に最上の文明を最高の水準で享受させること。

 ⑤死活的な民族最大の課題、祖国統一を追求していくこと。

 最後にアメリカに対し、停戦協定を平和協定に変え、朝鮮半島での戦争の危機を除去することを呼び掛けると同時に、共和国は革命の赤旗を高く掲げ、自主、先軍、社会主義の道を変わることなく進み、朝鮮半島と世界の平和と安定を守るために、責任ある努力を尽くしていくことの決意で最後を結んでいる。


2.
 2016年の新年の辞を一読しての印象は、人民の用語を多用し、人民生活の向上を強調していた点である。

 そのために青年たちの活動に多大な期待をしている。

 「青年強国の主人公として押し立てた党の信頼を胸に秘めて祖国を支えるたくましい柱として」、強盛国家建設の各戦闘場で奇跡の創造者、青年英雄になることをと、彼らへの期待を表明していた。

 青年層の活動と創造性に期待することは、未来志向を目指すどの国家も当然のこととしているが、共和国の2016年は、党第7回大会が開催される重要な節目の年になることもあって、よけいに青年層と幹部の革命的な活動を呼びかけたのだと考えられる。

 人民経済と経済発展のためには、エネルギー開発、動力開発、輸送関連の発展、軽工業発展が欠かせないし、従来、何度も呼びかけていた地域「開発特区」構想問題が全くふれられていなかった点が気になった。

 外資導入にしても、人民経済発展にしても、朝鮮半島の平和で安定的な環境が必要である。

 共和国の場合、平和で安定的な環境とは、米国との間の停戦協定を転換し、平和協定を結ぶことと、南朝鮮との南北会談、交流、協力関係が恒常的になることである。

 このため共和国は昨年後半から米国に対して平和協定への協議を呼び掛けている。

 また南朝鮮の朴槿恵政権には南北交流、統一問題を協議し解決するため、様々なチャンネルを通じて要求してきた。

 ところが米韓は、共和国の真摯な要求を無視して、逆に朝鮮半島を危険な状況に置こうとしている。


3.
 米韓は昨年11月2日、ソウルで米韓定例安保協議(SCM)を開き、対共和国の最新作戦計画の履行指針を決定した。

 それは「4D作戦」と言う。

 共和国の弾道ミサイルを「探知」「かく乱」「破壊」「防衛」と策定し、それを有事の際の一連の作戦概念だとした。

 4Dには軍事衛星や無人偵察機「グローバルホーク」などの監視、偵察活動を通じ、共和国の核・ミサイル基地の動きを詳細に監視し、破壊活動まで行うとしている。

 地上発射台や移動式発射台、潜水艦発射弾道ミサイルまでも攻撃対象に含まれている。

 この4D作戦計画指針には、作戦計画と演習計画までが含まれ、今後どのように展開していくのかに関する内容まで盛り込んでいる。

 このように米韓は共和国に対して、常にレベルを上げて軍事的脅威を与え続けている。

 彼らは朝鮮半島の平和的安定政策には無関心のように見える。

 少なくとも南朝鮮政権は、「米韓同盟」に重心を置くのではなく、同じ朝鮮民族の立場から、共和国との間で「わが民族同士」の旗印を握りしめ、朝鮮半島の安定と平和、朝鮮民族の交流と発展にウエイトを置くことこそ、朝鮮民族の万年大計発展にかなっているだろう。

 無益な体制対決を追求することは止めるべきだ。

 以上のような米韓側からの軍事的圧力があるなかで、2016年新年の辞は、よく抑制がとれた内容となっている。

 これが朝鮮半島の平和発展、チュチェ朝鮮発展への序詞となることを願っている。


4.
 この原稿を書き終えようとしていた1月6日、共和国が水爆実験に成功したとのニュースに接し、驚いている。

 しかも、金正恩第1書記が昨年12月15日、水爆実験の許可書に署名していたというから、なお混乱した。

 12月15日頃と言えば、新年の辞の概要、原稿草稿も出来上がっていただろうと思う。

 新年の辞には現在進めている「並進路線」の表現はあるものの、全体としては人民経済発展の方向性と、それを保証し、裏付けるための、朝鮮半島の平和安定環境への追求だけが論じられていたからである。

 米国への攻撃表現はほとんどなかった。

 だから、金正恩第1書記の心中は複雑であったのかもしれない。

 水爆実験は、見方を変えれば、1月8日の金正恩氏の誕生日を祝賀する大花火、5月に開催される党第7回大会への祝砲であったと同時に、米国の核攻撃威嚇に対する反撃への狼煙、さらには中国の米国傾斜姿勢への警告などが含まれていただろう。

 それにしても共和国の水爆実験で、世界は大きく揺れた。

 不可思議なことに、日本、米国を中心とした論調で、国連安保理での共和国制裁論で一致している。

 こうした現象は、世界が朝鮮半島の危機の現状とその本質、問題の根源、真実をよく見ていないからである。

 朝鮮半島危機の現在事実は、米軍が南朝鮮に駐留し、しかも未だに朝鮮戦争当時の「国連軍司令部」を名乗っていることである。

 この「国連軍司令部」名称は、朝鮮戦争直前の1950年6月、緊急安保理会議(ソ連欠席、中国の国民党代表は資格欠如)に38度線近辺での南北双方の軍事衝突に対して、米国はニセ情報を国連に伝え、共和国人民軍に「侵略軍」のレッテルを貼り、米軍自らは「国連軍司令部」を詐称して参戦した。

 しかも米軍は53年7月27日の停戦協定後の平和協定移行協議には60数年間も応じず、共和国を敵視し続け、核脅威を与え、朝鮮半島を戦争危機地帯にしている。

 安保理は、そのような米国の挙動をこそ問題にし、協議すべきではないのか。

 その安保理では、「平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為」が認められた場合、制裁決議を採択する、としている。

 平和への「脅威」、「破壊」、「侵略行為」のすべてを、米国は朝鮮半島で70年余り、続けている。

 「平和への脅威」の張本人は、米国である。

 安保理は、国際平和と安全の維持に主要な責任を負っている、というなら、朝鮮半島および世界平和を脅威に陥れている真犯人を、しっかりと見極めるべきだ。

 だからして安保理は、共和国の「制裁」「圧力」などを協議する前に、米国が南朝鮮で名乗っている「国連軍司令部」の虚偽性から審議するか、停戦協定を平和協定に転換することを要請するべきである。


                                                                    2016年1月8日 記
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Author:takasi1936
愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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