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「イスラム国からのメッセージ」

「イスラム国からのメッセージ」

1.
 衝撃的なニュースだった。

 イスラム過激派組織「イスラム国」のメンバーと思われる男性が、日本人2人(フリージャーナリストの後藤健二氏と会社経営者の湯川遥菜氏)をインターネット上に公開し、72時間(菅官房長官によれば23日午後2時50分頃)以内に2億ドル(約236億円)を払わなければ、拘束している2人を殺害すると、日本政府を脅した20日のインターネット映像のことである。

 中東歴訪中であった安倍晋三首相は同日、訪問地のイスラエル・エルサレムで記者会見し、「人命を盾にとって脅迫することは許し難い行為で、強い憤りを覚える」と非難すると共に、「2人の日本人に危害を加えないよう、そしてただちに解放するよう強く要求する」、「今後も国際社会と連携し、地域の平和と安定のために一層貢献していく。この方針を変えることはない」と、強調した。

 安倍首相は17日に、「イスラム国」対策として、無償資金協力の2億ドルの供出を表明していた。

 同時に、首相は「避難民が命をつなぐための支援だ。必要な医療、食料、このサービスをしっかり提供していく」と、今後とも非軍事分野において積極支援をしていくとの考え方を示した。

 日本が中東周辺国に拠出を約束した2億ドルは、「イスラム国」から逃れた難民、避難民たちが、周辺国の難民キャンプで暮らすための支援金だとしている。

 だがこの拠出金、「イスラム国」側から考えると、「自ら進んで十字軍(中世欧州のキリスト教徒による対イスラム遠征軍のことで、今日の対『イスラム国』戦争に参加するという意味)への参加を志願した」のだと解釈できる。

 身代金2億ドルは、日本政府が拠出するとした2億ドルだ。

 一般に、イスラム世界における欧州は、十字軍による対イスラム遠征軍であり、植民地支配の当事者であった。

 また米国は、パレスチナを抑圧しているイスラエルの支援者で、欧州やアラブ諸国などとの有志連合による軍事作戦の主導者だと映っている。

 日本が「イスラム国」からの避難民を支援することは、欧米の有志連合が避難民を作り出している現実を無視していると、批判した。

 しかも安倍首相は、彼らが忌避するパレスチナの地に立っていた時に、インターネット映像を公開した意味をいま少し考えるべきだろう。

 拠出する2億ドルが、真に難民支援のための非軍事援助だと強調するのであれば、「イスラム国」周辺の国々に直接拠出するのではなく、なぜ、国連機関を通じて拠出しなかったのであろうか。

 2人の無事救出を願っている。


2.
 2億ドル拠出表明は、安倍政権なりの政治計算があってのことだろう。

 そのことを誰もが人道的支援だと言い、犯人側は「誤解」していると言う。

 「イスラム国」側は安倍政権の真意を見抜き、人道という名の軍事的支援であることを理解し、決して誤解などしていないだろう。

 「イスラム国」内に居住している人々を、「難民」名目での脱出を誘引する条件を、日本が提供したのだと、「イスラム国」側は理解していると考えることができる。

 誘引・誘拐、殺人は、誰がどのような条件下で行おうとも、それは暴力であって、米国中心の有志連合の空爆、一般住民を殺傷している行為は暴力ではないとする識者がいる。

 テレビ画面に登場する中東専門識者たちの一部は、「イスラム国」を「ならず者」「暴力集団」だと規定して、現状を解説している。

 視点そのものが米国意識のため、「イスラム国」の攻撃、戦争だけを悪だと理由付けし、二重基準観を解説し、米国の帝国主義的所業を擁護している。

 こうした現象は、朝鮮半島問題を解説する時も、同じであったことを思い出した。


                                                             2015年1月22日 記
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「二重言語を許さない」

「二重言語を許さない」

 
 イスラエルを訪問していた安倍晋三首相は19日午前(日本時間同日午後)、ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺の犠牲者を追悼するホロコースト記念館を視察後、同館内で演説した。

 「・・・特定の人々を差別し、憎悪の対象とすることが、人間をどれほど残酷にするのか、学ぶことができました。・・・差別と戦争のない世界、人権の守られる世界の実現に向け、働き続けなければなりません。日本としても、人々の人権を守り、平和な暮らしを守るため、世界の平和と安定に、より積極的に貢献」し、「先の大戦終結から70年・・・このような悲劇を二度と繰り返させないとの決意を表明します」とした。

 その決意、言うやよし。

 だが、その言葉はユダヤ人、またはイスラエルにだけ向けたものなのか。それともアムステルダムの「アンネ・フランクの家」(昨年3月訪問)と、今回の「ホロコースト記念館」見学後の感想にしか過ぎなかったのだろうか。

 安倍氏は、特定の人々を差別し、憎悪の対象とすることが、人間をどれほど残酷にするかを学んだと強調しているが、差別は悪いといつ気付いたのであろうか。

 ともあれ、差別を憎む気持ちがあったことを多とし、現在の在日朝鮮人関連の差別政策から転換するのかどうかをしっかりと見詰めさせてもらおう!


                                                             2015年1月20日 記

「朝の風景」

「朝の風景」


朝。洗顔後、コーヒー豆を挽く。

 トーストパン1枚、餡パン、冷蔵庫にある野菜を刻んだサラダ風、卵料理、果物、ヨーグルトなどを食卓に並べる。

 ゆったりとした音楽を流し、新聞(3紙)を読みつつ、一時間近くかけて噛む。

 マンション6階の大きなガラス戸越しの、石鎚連山を遠景とした風景が、私を畏敬の世界に連れていく。

 流れくる音楽から豊かな情味を感じ、新聞の活字からは不条理な政治や社会に怒り、なだらかに広がる山並みからは生きていこうとする力を与えてくれる。

 幾つもの情感と思考を織り交ぜながら、食べ終わる頃には10時になっている。

 元気であった時には、会議や講演、個人事務所に出掛けていくために、朝食はもっと簡単に済ませていた。

 今は、食後に胃腸を休める必要上、ゆったりとした午前中を過ごし、食卓に積み上げている書籍の中から、その日の気分次第の本を取り出し、活字を追っている。

 膵臓癌のことを忘れることもできないし、乗り越えていく力をまだ整っていない。過去、誤解されることも多く、誹謗や中傷の類も多く、私とは違う私が勝手に徘徊している現実を認めつつ、これまでと同じように朝鮮(共和国)と向き合い、帝国主義と戦い抜く姿勢を崩さず、最期を迎えることを考えている。

 それが私の朝の刻である。


                                                             2015年1月18日 記

「風刺と侮蔑の境界線は」

「風刺と侮蔑の境界線は」


 事件から14日で一週間。

 バルス仏首相は「テロとの戦争」を宣言し、治安対策(過激思想などへの取締まり)の強化に乗り出した。

 襲撃を受けた仏週刊新聞「シャルリー・エブド」は、14日の特別号(海外向け30万部を含む300万部、16の言語で25カ国に発行)で、再びイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載。

 「表現の自由を守り、暴力に屈しないため」だという。

 イスラム国家と信者たちを再び侮蔑し、悲しませている。

 風刺と侮蔑との境界は難しい。

 日本では、学校や職場などで、差別や苛め言語に対して、発信者の意図がどうであれ、向けられたその人自身が差別言語だと受け取れば、それは差別語であり、差別行為であるとしている。

 その感覚からすれば、「シャルリー・エブド」紙のムハンマド風刺画は、画刺の一線を越えた侮蔑となっている。

 イスラム教関係者が一様に、風刺画に不快感を持っているからである。

 7月の事件後、「表現の自由」を盾にして、「シャルリー・エブド」紙は商業主義的にテロを利用しており、仏政府は治安強化対策に利用している。

 これ以上、他社を侮蔑する行為は止めるべきだ。


                                                             2015年1月14日 記

「朴槿恵大統領の年頭会見から」

「朴槿恵大統領の年頭会見から」

 
 南の朴槿恵大統領は12日、年頭記者会見を行った。
 
 発言の多くを経済政策の説明に要している。

 財閥企業や官僚たちの不祥事が多発し、経済不安の現在を鎮める必要があったからで、やむを得ないだろう。

 日韓関係と南北関係にも多言を用いている。

 日本との関係では安倍晋三首相との首脳会談開催には「日本の(歴史問題への)姿勢の変化が重要だ」と、厳しい。

 南北関係では、南北離散家族の再会事業を2月19日(旧正月前後)に行うことを提案した。

 金正恩第1書記との首脳会談については、まずは韓国が提案している南北当局者会談に応じることから始めるべきだと、首脳会談そのものは否定しなかった。

 ただし首脳会談を実現するには、北の核問題が全く解決できていない状況では「平和統一の話はできない」とした。

 核兵器で脅迫されている状況下で、平和統一への対話はナンセンスだとして、北が誠意(非核化)ある姿勢を示す必要があるとした。

 その一方で、南北離散家族の再会問題などを協議するための実務者対話を呼び掛けている。

 朴槿恵氏は、大統領就任直後から、南北対話や統一問題などを主張しているが、必ず前提条件をつけていた。

 北が核を放棄すれば民主化を受け入れれば、政治犯を釈放すれば、経済を開放すればなどと、北の制度を否定する要件ばかりである。

 彼女が要求している内容のどれも、北は以前から拒否していたからそれを知らないはずはないだろう。

 前提条件を強く要求すれば、対話はおろか、予備接触さえ不可能になる。それも彼女は理解していただろう。

 ならば、何のための提案だったのだろうか。

 そもそもが誰に向かって対話を提案しているか、誰のために提案をしていたのかが、当時から疑問として残っていた。

 決して相手側が受け入れることのない内容を、前提条件として提案することなどは、決して真摯な提案ではなく、それはパフォーマンスだと見られても仕方がない。

 彼女のパフォーマンスは、米国に向けたものであり、一部は韓国民衆に向けたものであったと思われる。

 オバマ米政権はまだ、北との対話を行うだけの準備ができていないものの、北の金正恩体制の動向を気にかけている。

 北の出方、反応を探るために米国は、朴大統領を使った。

 彼女もまた、忠実にそれを実行してきたからこそ、北が言う「馬鹿なおしゃべり」演技を続けていたのだ。

 一転して、12日の提案は、南北離散家族再会事業の会談から始めることを要求した。

 これは現実的な提案であり、北側も提案している。だから、再会事業の会談に何らの前提条件をつけるべきではない。

 離散家族再会問題は、統一問題とともに、南北両政権にとっては、最重要課題であったからである。

 離散家族たちは高齢化し、恋しい肉親との再会も果たせず、多くは他界している。現状を考えると、無駄なおしゃべりの時間はない。

 これは人道問題であり、政治問題化してはならない。

 南北どの政権とも、自らの面子やイニシアティブに拘って会談をするしないなどの入口論で決裂すべきではないだろう。

 離散家族再会事業を毎年数回、確実に実施していくことによって、南北間の固い政治の氷も、氷解に向かうはずだ。

 南北ともに、対話のための難しい前提条件をつけて、それがクリアーされなければ対話ができないとする提案などは、単に対話ポーズを取っているにしか過ぎないことを知るべきだ。

 それぞれが主張する「前提条件」は、対話を通じて結論へと導いていく姿勢から、平和統一の灯が見えてくることを理解すべきだ。

 すでに6・15を経験していたことを思い出すべきだ。

 提案合戦に終始することほど、虚しいものはなく、人々(特に若い世代)の希望や未来も裏切っていくことになる。

 今年、離散家族再会事業の協議から、南北間の政治対話が始まっていく予感をしている。

                                                             2015年1月13日 記

「仏テロ事件から見えてきたもの」

「仏テロ事件から見えてきたもの」


1.
 仏週刊新聞「シャルリー・エブド」のパリ本社が7日正午に襲撃され、12人が殺害された事件のニュースは、瞬く間に世界へと広がった。

 それを伝える各国のマスメディアは、「国際テロ組織アルカイダの関与か」「表現の自由を守れ」――などと、全体的にテロと暴力を憎み、表現の自由を擁護する論調になっていた。

 事件の発端となった「シャルリー・エブド」は、風刺が売り物の週刊新聞で、今回はイスラム教の預言者ムハンマドを風刺した。

 過去にもイスラム教関連を取り上げ、物議を醸してきたという。フランスでは、それなりに人気のある新聞のようである。

 フランス革命や人権宣言を経験してきたフランスでは、表現の自由、思想の自由は民主主義に必要な基盤で、絶対的に守るべき権利として、自由概念を大切にしてきた歴史をもつ。

 それはフランスだけではなく、欧米各国は「自由」を国是としており、表現の自由は民主主義の共通基盤だと認識している。

 そのため、「表現の自由」擁護への連帯感が、今回の事件でいっそう欧米社会を中心に広がっていったのだろう。

 表現の自由は大切で、守る必要がある。

 しかし、欧米人たちが言う表現の自由には、もう一つの自由を奪い去り、侵害したという歴史を忘れているように思う。

 「欧州と民主主義の価値に対する戦争だ」(仏の保守系紙フィガロ)と、早くもテロとの戦争に移しかえる発言が飛びだしている。

 イスラム社会では、神の冒とくにつながる無制限な表現には、抵抗感を持っていることを忘れてはいけない。

 「私たちの預言者ムハンマドを侮辱することが、なぜ表現の自由なのか」(カイロのイスラム法学者談―愛媛新聞1月10日付)

 「穏健派の間にさえ、イスラム教の冒とくへの報復ならば、暴力を容認できるという空気がある」(エジプト情報研究所のアフマド・バン氏談―毎日新聞1月10日付)などと、欧米の価値観の押しつけには、強い不快感をもっているからだ。

 否、欧米の価値観強要には不快感を持っているのは、なにも、イスラム社会だけとは限らない。

 世界には、様々な価値観が存在し、一つの価値観の押しつけからは、暴力を誘発することについて、世界は何度も体験しているはずだ。

 ちなみにまんがや風刺画などで、イエス・キリストを揶揄したり冒とくすれば、どのような反応をするのだろうか。

 それでも表現の自由を擁護するのであろうか。

2.
 表現の自由が民主主義の維持に不可欠だとの共通認識にある欧米社会では、今回の事件を「反テロ」「民主主義社会擁護」キャンペーンに、余りにも利用している嫌いがある。

 事件後、オランド大統領は「表現の自由こそフランスだ」と、事件発端となった風刺画を擁護した。

 果たして、無制限の表現の自由、行きすぎた表現までも認めていいのだろうか。

 言葉の暴力、言葉のテロを受けた人々の心の傷は、癒し難く深い。

 今回の表現の自由、それを受けたイスラム教徒の人たちにとっては、自己否定されたことと同じであった。

 米国では、共和国の指導者を揶揄したソニー映画の「ザ・インタビュー」に対して、サイバー攻撃があったと共和国を制裁した。米国は表現の自由を守るためだと言った。

 韓国の場合、脱北者らの「自由北韓運動連合」が、映画「ザ・インタビュー」のDVDを風船につけて共和国に散布する計画を進めている。

 南朝鮮政権は彼らに自制を求めつつ、「表現の自由」問題との間で揺れている。

 一方で日本は、ヘイトスピーチと表現の自由問題で右往左往し、裁判所の判断にゆだねた。

 日米韓3カ国の表現の自由に対しては、微妙に違った結論を導いている。

 3カ国での論争には、絶対的な表現の自由には問題があり、言葉の暴力までは許されていないとの、少数意見が存在していたことを忘れてはいけない。

 言論の自由の「自由」は、決してフリーハンドではないからである。


3.
 フランス政府は11日、欧米などの治安関係閣僚をパリに招き、緊急(治安)対策会議を開催した。

 そこでは、過激派組織メンバーや資金の流れなどの情報共有化を検討したようである。

 その後、犠牲者(17人)たちを追悼する反テロ集会と行進が、パリ中心部の共和国広場周辺で行われた。

 集会と行進には、メルケル独首相、キャメロン英首相、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッパス議長など、40カ国・地域の首脳たちが参列し、一般市民150万人以上が参加した。

 フランス全体では370万人余りの参加があったと、発表している。

 追悼行進を開催した意味には、自由主義国家の団結(対テロ戦)をアピールする狙いがあって、欧州各国の首脳たちが参加したのではないか。

 彼らはまた、テロリストたちをことのほか恐れている。

 行進していた彼らの中世史は、王権や教会の絶対的な権威社会であった。

 抑圧する権威体制とに戦いと勝利によって、市民たちが登場し、彼らは「市民的自由」を獲得することから近代史を開いていった。

 つまり、自ら戦いをとった絶対的権威からの解放的表現、それが自由概念であった。

 自由はしばしば、絶対的自由を主張した。

 それは、抑圧されていた絶対的権威の反語でもあった。

 自由は政治で、資本主義社会を生み、利潤と搾取、グローバル社会を出現させて、格差拡大を地球大へと形成した。

 思想と表現で、社会主義から極右(ファシズム)までの絶対的表現を生み、対立し敵対する者たちへの、公然たる攻撃的武器となった。

 オバマ大統領は9日、テネシー州の演説で、「テロリストは憎しみと苦しみしかもたらさない、我々は自由と希望、人間の尊厳を守る」と訴えて、テロと戦うフランスに連帯感を示した。

 また、米CNNテレビに出演していた米議員は「14世紀の世界観をもった者たちが、21世紀の武器を手にしている。非常に危険な組み合わせだ」と、強い警戒感を示していた。

 米国は敵対する社会主義国やイスラム教関連国などに対して、表現の自由を隠れ蓑に、民間団体や個人などの言論活動(絶対的自由)を許容してきた。

 むしろ、彼らを活用(資金提供など)して、プロパガンダ作戦を行っていたと言ってもよい。


4.
 欧米各国の近代史は、血にまみれ汚れている。

 獲得した自由の概念を都合よく解釈して、その野望を国内から海外へ広げ、植民地主義、侵略主義、略奪主義、破壊主義の暴力の限りを尽くして、世界を勝手に分割し、国境ラインを欲望のままに引き、少数民族たちを自己都合で分離または併合してしまった。

 併せて、キリスト教文化を先兵に立てて、民族宗教と文化を抹殺し、自らの価値観を植え付けていった。

 欧米諸国は、そのような歴史を清算する努力をしていない。

 反省し、清算するどころか、現在もまだ、民主主義と自由主義が唯一正しいのだと、自己の価値観を暴力的に押し付けている。

 テロリストたちの暴力、殺人を憎み、極悪非道な行為だと合唱しキャンペーンを展開する一方で、自らの暴力や殺人(民主主義や自由を強要するための)については正当化し、今も各地域で続行している。

 現代史は、欧米側が「正当化」した残虐な暴力によって殺された数が、テロリストたちのそれをはるかに超えていることを記録する。

 欧米社会の近代から現代史にかけての影の部分が、いまテロリズムとなっている。欧米文明と歴史の所業の裏面がテロ行為であったのだから。


                                                             2015年1月12日 記

「『戦後70年の首相談話』を危惧する」

「『戦後70年の首相談話』を危惧する」


 2015年は、第2次世界大戦終結から70周年を迎える。

 世界は、少なくとも戦火を支えてきた加害・被害者各国は、様々な「記念行事」を計画している。

 「戦勝」「勝利」「終戦」「解放」「独立」「抗日勝利」など、当時の立場の違いによって冠せる名称は様々だが、70年という大きな節目を記念し、未来の平和につなげていこうとする姿勢は同じだろう。

 再び戦火を交えてはならない、戦争につながるいかなる準備もしてはならないとの決意を込めて、それぞれの国は記念集会を開催するはずだ。

 日本の場合、安倍晋三氏が首相として再登場した直後から、新たな「戦後70年の首相談話」を発表するとして、問題化してきた。

 どのような内容にするのか、なぜ、「村山談話」(95年、戦後50年)、「小泉談話」(05年、戦後60年)以外の談話を出すのかなど、基本的な立場は何も応えてこなかったからでもある。

 首相のこれまでの言動から、国の内外から談話の中身が注目され、危惧されてもきた。

 米国のオバマ政権は、未だに中国や韓国との首脳会談ができない安倍氏の政治スタンスを心配して、早くから「村山談話」や従軍慰安婦をめぐる「河野談話」の歴史認識を継承するようにと、クギをさしていた。

 安倍首相は5日の会見で、「安倍内閣としては村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」とした。

 また、翌6日の政府・与党連絡会議では、「安倍政権として、先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、アジア太平洋地域や世界のためにどのような貢献を果たすか、世界に発信できるものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく」と意気込みを語った。

 しかし、「おわび」がどのように受け継がれるのか、「先の大戦への反省」がどのような表現になるのかについては、まだよくわからない。

 表現によっては、周辺国との新たな紛争を引き起こすことになるだろう。

 その懸念が、完全に払拭されていない。

 言葉の上では、歴代内閣の立場を引き継ぎ、「未来志向」を強調し、談話づくりを有識者に検討させるなどとして、世間の風には従順に見える。

 しかし、安倍晋三氏の談話姿勢が未だに不明のため、内容を有識者に検討させる前に、自らの歴史観をはっきりと示し、国会で十分に議論する必要があるのではないか。

 村山談話では、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れたとした上で、「植民地支配とアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与え」、ここにあらためて「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」とした。

 小泉談話もまた、かつての「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して、多大な損害と苦痛を与えました」とし、「こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します」としている。

 両談話とも、アジア諸国に対して「痛切な反省と心からのお詫び」を表明し、日本の植民地支配と侵略政策を認めている。

 安倍談話の場合、このような歴史観と精神が受け継がれていくのか、米国でさえ疑問視し、折に触れてメッセージを送ってきた。

 米国務省のサキ報道官は5日(定例会見)、「これまでに村山富市元首相と河野洋平元官房長官が談話で示した謝罪が近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだったというのが我々の見解だ」と、米国の意図を明確にしている。

 中国外務省の報道局長も6日、「日本の政府と指導者が今年、侵略の歴史について外国にどのようなシグナルを送り、どのような態度を採るのかについて注目している。日本側が歴史問題についてこれまで表明してきた厳粛な態度と約束を固く守り、平和発展の道を歩むことを希望する」と発言。

 韓国の外務省報道官も6日の定例記者会見で「歴代内閣の談話を継承し、正しい歴史認識に基づいた誠実な行動をすることで、周辺国と国際社会の信頼を築いていくことを期待する」とした。

 内外とも、安倍談話に危惧を抱いている。

 それはまた安倍晋三氏のこれまでのファッショ的言動から、談話内容を疑問視しているからでもある。


                                                             2015年1月10日 記

「情けない、沖縄冷遇」

「情けない、沖縄冷遇」


 安倍政権は8日、14日に閣議決定する2015年度当初予算案の沖縄振興予算を、昨年9月の概算要求で計上していた3794億円から、数百億円を減額する方針を固めたという。

 消費再増税を1年半先送りしたことへの財源不足だと主張しているが、それは一般向けの言い訳にしか過ぎず、本質は米軍普天間飛行場の県内移設反対を掲げて11月に当選した翁長雄志知事への反発、嫌がらせ、けん制であったと思われる。

 そのことは昨年末と今回、翁長知事が上京したおりに、安倍首相や菅官房長官らとの面会を設定せず(希望していたにもかかわらず)、山口俊一沖縄北方担当相が面談しただけという状況からも判断できる。

 「敵対する知事を呼ぶ必要はない」(自民党幹部)などと、沖縄振興予算案を議論する沖縄振興調査会にも知事を呼ばず、翁長氏を冷遇した。

 政府に協力姿勢を示してきた前知事の仲井真氏には、14年度予算概算要求から約50億円上乗せし、21年度まで毎年3000億円台を確保することを約束していた。

 そうした経緯があり、14年度振興予算3501億円が下回ることはあっても、3000億円を切ることはないだろうとみられている。

 普天間飛行場移設問題は、米国との政治、安保問題として、安倍政権はすでに移設を前提として、沖縄県民の声を聞く前に、米国側と話を詰めている。

 沖縄県民たちは、市長選、県知事選、衆院選のいずれにおいても、移設反対を表明した。

 その沖縄県民の声と意思を無視して、強引に政治決定を進めていくやり方は、日米両政権とも、民主主義を否定し、ファッショ政治に向かっていることになる。

 また、米軍基地の存在に反対しているのは、沖縄県民だけではない。

 私たちは日本の自主化を追求している。

 自主化された日本に、米軍基地は必要ない。

 自民党議員たちは、まるで自分たちの天下のような気分で、政府予算も自分たちの力と差配一つで、どうにでもなるような錯覚の中にいる。

 そのような彼等を政治家とは呼ばない。

 このような異例で異常な自民党政治に、翁長氏は「県民や本土の方々があるがままを見て考えてほしい」と、怒りを抑えて国民に訴えていた。

 アメ(予算)の力で真実を黙らせてきた自民党政治の悪弊は、何も今回の沖縄予算だけではなく、多くの恨の声が日本全土に埋まっている。

 私たちの税金は、彼らの権力誇示のために使われ、日本社会と風土を悪臭に染め上げてきた。

 そのような悪弊を絶たなければならない!

                                                              2015年1月9日 記

「朝米サイバー戦始まる」

「朝米サイバー戦始まる」


 オバマ大統領は2日、ソニーの米映画子会社に対するサイバー攻撃への報復として、共和国政府及び党関係組織に、金融制裁を認める大統領令に署名した。

 これを受けた米財務省は、攻撃に関与した疑いが強い共和国の情報機関である人民武力部偵察総局、武器取引などを行う朝鮮鉱業開発貿易会社、朝鮮檀君貿易会社の3組織と、イラン、シリア、中国、ロシア、ナミビアなどに駐在する共和国政府関係者ら10人を制裁対象(米国内の資産凍結のほか、米国民との取引ができない)とした。

 米政権がサイバー攻撃は共和国の犯行だと断定してから2週間、このような迅速な対応を行ったのは、サイバー攻撃が米安全保障上の脅威となりつつあるためであったろう。

 だから断固とした姿勢を示し、次の攻撃を抑止する狙いもあったと思われる。

 これまでの制裁は、共和国への大統領令(制裁措置)として、①核・ミサイルなど大量破壊兵器の開発及び拡散活動、②武器取引やマネーロンダリング、麻薬取引、通貨偽造などの不法行為――などであったが、新たにサイバー攻撃を加えたことになる。

 米政府当局者は、サイバー公的と人権侵害を理由とした「制裁対象」への道を開いたことで、「より広範な北朝鮮の悪行」に圧力を加えることができるとしている。

 米国は、朝米対決戦にサイバー戦を新しく加えた。

 これに対して、共和国外務省報道官は4日、「(制裁に)米国はわれわれを弱めたのではなく、むしろ先軍の宝剣をさらに鋭く研ぐ正反対の結果をもたらしたことを知るべき時になった」と警告した。

 その上で、共和国はサイバー攻撃の関与について否定している。

 オバマ政権の残る2年間の対共和国政策は、サイバー戦と人権侵害戦となっていく。


                                                           2015年1月5日 記

「自衛隊が『日本軍』になる」

「自衛隊が『日本軍』になる」

 安倍政権は来年の通常国会に、自衛隊による米軍など多国軍への後方支援を、いつでも可能とする新法(恒久法)を提出し、新法を作る作業に入った。

 これまで自衛隊の海外派遣は、個別事態(米国の要請)が起きてから、特別措置法を作り、国会で成立させて派遣してきた。

 これでは、時間と手間がかかりすぎるため、自民党内では、以前から、自衛隊を速やかに海外派遣できる規定を盛り込んだ新法づくりへの意見が多くあった。

 そうした意見の集約のひとつに、集団的自衛権の行使容認と海外で自衛隊が米軍などを後方支援する活動範囲の拡大(「非戦闘地域」をなくした)を閣議決定(7日)したことが大きく作用している。

 新法の狙いは、自衛隊の活動範囲・内容の制限をなくし、地球規模で米軍に協力しやすくすることである。

 世界中に展開している米軍への後方支援に積極的に関わり、自衛隊の活動(進出)範囲を拡げようとしている。

 従って、自衛隊の活動範囲・内容を制限してきた「周辺事態法」を廃止し、今後協議する「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)にも、「周辺事態」思考をなくしていくことになる。

 日本の安保体制が変化していく。自衛隊が「日本軍」になる。

 それを阻止するには、今後の通常国会での議論で、自衛隊の活動範囲や内容を制限し、自衛隊出動の国会承認を厳格にしていくことだが――。

 野党は一致結束して、戦術を練ってもらいたい。

 
                                                         2014年12月30日 記

「誰のための統一憲章なのか」

「誰のための統一憲章なのか」


 南朝鮮の「統一準備委員会」(朴槿恵大統領直属)が12月29日、年明けの1月中に南北協議開催を共和国に提案した。(同委員会副委員長の柳吉在統一相が北の金養建・朝鮮労働党統一戦線部長宛てに通知文を送った)

 提案では南北離散家族再会など、双方の関心事について幅広く話し合うとしている。

 南の「統一準備委員会」とは、朴槿恵大統領が「分断70年にあたる来年に必ず示して、統一憲法の基準になるようにすべきだ」との指示に基づき、「統一憲章」作りのために結成した委員会である。

 同委員会では、2015年の8・15を契機に、南の憲法と自由民主主義に合致(米国の世界抑圧プランと同一)する「統一憲章」を制定し、発表するために、関連する討論会や懇談会を行ってきた。

 つまり、すでに存在している南北統一のための3大原則(自主的、平和的、民族団結)と、南北首脳によって調印された6・15共同宣言と10・4宣言を否定し、新たに自由主義思考に基づく統一憲章を発表するということである。

 分断70年、民族の痛みと負の歴史を理解してきた知恵たちは、北と南に互いに異なる思想と制度が長い間存在してきた現状と、統一を渇望する朝鮮人民たちの志向に合わせて、一民族二制度、二政府方式での統一プランを導き出してきた。

 南が発表するという「統一憲章」は、自由民主主義に基づく「制度統一」であって、それそのものが、これまでの朝鮮民族の統一事業に背を向け、民族対決を発動していくものになる。

 仮にも、朴槿恵政権が南北協議を呼び掛けているのであるなら、その相手を否定し、誹謗するいっさいの言動を中止してからにすることが、世の礼儀であろう。

 南の政権が直ちに実効しなければいけないことは、米韓合同軍事演習(北侵戦争演習)の中止、軍事境界線での挑発の中止、反共和国のビラ散布の中止、その他いっさいの反共和国策動の中止などで、自らの反共和国言動の中止、若しくは謹んでこそ、対話がスムーズに始まろうというものだ。

 朴政権のこの「統一憲章」プランの裏側には、米国の影がちらついているように思える。

 米国は、アジア太平洋支配戦略の実現化のために、共和国「脅威説」を創作しながら、南朝鮮の軍事基地強化策を進めている。

 韓国軍の戦時作戦統制権移管時期を2020年代中盤以降に延期し、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システムの配備など、朝鮮半島への軍事的冒険主義を強めて、共和国を刺激している。

 朴政権の「統一憲章」も、そうした米国の戦略から出発した作品であろう。

 共和国の国防委員会政策局代弁人は、11月15日の声明で、戦争演習と対話は両立しないと強調した上で、「南朝鮮当局の悪辣な反共和国対決騒動が持続する限り、北南関係の改善も、いかなる対話や接触も望まない」との立場を、すでに明らかにしている。

 2015年は、朝鮮半島にとって重要な節目を迎える年である。

 その歴史的な年に民族の怨嗟を再生産する内容をあえて提示するのか、それとも離散家族再会事業、金剛山観光の再開、開城工業団地の拡充など、南北関係の交流と協力への具体的な提案をするのか、朴槿恵政権の真価とともに、彼女の人間性が問われている。

                                                         2014年12月30日 記

「アベノミクスに騙されるな」

「アベノミクスに騙されるな」


 安倍政権は12月26日、景気を下支えする経済対策を取りまとめた。対策では「経済の好循環を確かなものとし、地方にアベノミクスの成果を行き渡らせる」と、その狙いを表明した。

 アベノミクス政策のこれまでの2年間は、経済成長と格差是正を両立させることを狙って、まず、大企業や富裕層を潤す政策を優先させてきた。

 潤った経済環境下の大企業や富裕層からの利潤のおこぼれが、労働者や市民たちに落ちこぼれ、それによって消費活動が起こり、景気が循環し、経済成長につながっていく――それが安倍政権のシナリオだった。

 これは、古い時代の資本主義経済の発展方式(好況経済時代)だ。

 世界はグローバル化し、その結果による富の格差拡大化が進み、富の偏在化がますます進行している。

 マルクスは、貧富の格差を増大させる資本主義は、やがて利潤率の低下によって崩壊すると予告した。

 だが人類は、技術革新で資本主義を延命させ、グローバル化で資本主義を変質させてきた。

 今や一握りの資本家・経営者が莫大な収益を手にする社会となっている。

 アベノミクスがいうところの、経済成長率(マジック的数字)だけを上げることで、利潤がしたたり落ちて、富の不平等感が解消されていくといった時代ではなくなっている。

 その安倍首相と自民党税制調査会が26日、法人税の実効税率を、2015年に2.5%超を引き下げる方針の確認をしている。(将来はもっと引き下げる方針)

 引き下げた税収減の穴埋め財源を、赤字企業への課税強化(外形標準課税)などでまかなうとしている。

 ここにアベノミクスの特徴がよく表現されている。

 大企業、輸出産業、富裕層とその世襲者たちへの優遇政策であったことが。(低下した利潤率を彼らにだけ優遇する)

 成長産業などを優遇して、賃上げや国内での設備投資を促し(このような思考がすでにペーパーレスである)、日本経済全体の底上げを狙っている。

 その反面で、生産性の低い企業(赤字企業)などについては、退出(倒産)を迫っていくという厳しいもの。

 税収を下げ、政府資金を投下した成長産業だけの経済成長率の数字を示せば、日本経済が一時的に上昇しているように見せることはできる。

 これはつまり、平均数字の政府発表のマジックで、国民や市場を騙す姑息なシナリオだ。

 このシナリオの先には、ますますの格差拡大社会が到来し、社会保障が減少した寒々しい風景が、私たちの前に展開していくだろう。

 アベノミクスに将来はなく、安倍氏の言葉に騙されてはいけない。

                                                         2014年12月27日 記

「日米韓で軍事情報の共有化がすすむ」

「日米韓で軍事情報の共有化がすすむ」


 防衛省は、26日、日米韓3カ国で、共和国の核・ミサイルに限定した秘密情報を共有することで合意したことを発表した。(29日に調印)

 3カ国の軍事情報共有化は現在、日米と米韓がそれぞれ「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を締結しているが、日韓間では結んでおらず、穴があいたままとなっている。

 日韓GSOMIAは2012年、締結直前に韓国内の野党や市民たちの反発によって延期された。

 米国は3カ国の情報共有化に強く執着しており、13年10月の日米及び米韓の2プラス2協議時にも、情報共有化への日韓GSOMIAの成立を強く迫った。

 しかし、韓国内の日本軍「アレルギー感」は予想以上に強く、その上、歴史問題の溝が埋まらず、首脳会談さえまだ開催できていない日韓間に対し、米国は苛立ちつつアイデアを出した。

 今回の取り決めでは、共和国の核実験やミサイル発射の「脅威」に対応するため、日韓両国は米国を通じて、間接的に秘密情報を共有する内容となった。

 現在でも、米国を経由して、共和国の軍事秘密情報を共有しているのだが、協定で3カ国の軍事協力体制をより強化することになった。

 今回の取り決めでは、中国を標的から外した。

 中韓関係に配慮したというよりは、東アジア地域内においても、共和国の孤立化を強めていくとする米国自身の戦略であったと見るべきだ。

 一方、海上自衛隊が来年度予算で、イージス艦(高性能レーダーやコンピュータを搭載し、多数の航空機やミサイルに対して同時に迎撃する能力をもっている)を建設する計画に、「共同交戦能力(CBC)」と呼ばれる、即時に迎撃できる先端システムを装備することが明らかとなった。

 CBCは、武力攻撃を受けている米艦を自衛隊が防護する「米軍との一体運用」を視野に入れている。

 日米ともに集団的自衛権の行使が念頭にあるからであろう。

 その意味で、日米韓GSOMIAは、12月10日に施行された特定秘密保護法や集団的自衛権行使とも一体化している。

 日米韓の軍事秘密(共和国への)共有化によって、安倍政権が目論む自衛隊の海外派遣、軍事国家化が一層進んでいくことになる。危険度が高まっている。

                                                          2014年12月27日 記

「米国の人権政策は戦略の一つ」

「米国の人権政策は戦略の一つ」


 国連総会本会議は12月18日、北朝鮮の人権侵害を非難し、拉致問題解決などを求めると同時に安保理に人権侵害の国際刑事裁判所(ICC)への付託検討を促す厳しい決議を賛成多数で可決した。(賛成116カ国、反対20カ国、棄権53カ国)

 北朝鮮の人権侵害とは、拷問や政治犯収容所の存在、外国人を含む組織的な拉致などとしている。

 これらは「国家の最高レベル」で確定した政策だとして、「人道に対する罪」だと最高指導者を指名した。

 同種の決議は10年連続で、ICCへの付託検討を促す内容は初めてである。

 安保理は22日、北朝鮮の人権問題を初めて公式討議した。

 だが、この北朝鮮の人権問題騒動は、米国が仕掛けて政策化し、国連の場に持ち込んだものである。

 米国は、80年代末からのソ連および東欧社会主義国崩壊にも、近年の中東地域での「カラー革命」にも、その他、気に食わない国の政権に対しても「人権問題」を作り出して、内部の政治に口出ししながら、不安定と分裂、瓦解を助長する道具として使ってきた。

 米国の戦略は必ず、対立する国家と体制を転覆させようとする場合、軍事、政治、経済的圧力と弾圧、制裁政策を続けた後、その最後に「人権問題」を作り出して、対象国のイメージを政治的、道徳的に傷つけ、孤立化させて崩壊劇を作り出そうとしている。米国は現在、北朝鮮に対してそのような政策を追求しているのだが、そのことは朝米間の公約に違反している。

 朝鮮半島の非核化を起訴とする2005年の「9・19共同声明」は、朝米双方は「互いの自主権を尊重し、平和的に共存」することを公約している。

 北朝鮮の内政に関与し批判し、転覆を画策している米国はこの「9・19共同声明」時の公約を破っていることになる。

 公約破りの米国こそ、北朝鮮の「人権問題」について喧伝する前に、公約違反をしている自らの立場を反省し、国内の人種・人権問題を抱えていて、他国の人権問題に介入する資格がないことをしっかり自覚するべきである。

                                                         2014年12月24日 記

「米国こそテロ国家だ」

「米国こそテロ国家だ」

 
 オバマ大統領は、アフガニスタン駐留米軍を2014年12月29日、戦闘任務が完了したとして、撤収させると発表した。

 2001年9月の米国同時多発テロから始まった米軍の、対テロ作戦「不朽の自由作戦」の終結を意味する。

 米軍の「不朽の自由作戦」は、米国同時多発テロへの報復として、ブッシュ政権が始めた戦争であった。

 国際テロ組織掃討作戦として、01年10月に米英軍がカブールなどの空爆から「アフガン戦争」を、03年3月には「イラク戦争」を開戦した。

 09年に就任したオバマ大統領は、前共和党政権が始めたイラク戦争政策を批判したが、国際テロ集団(アルカイダ、タリバンなど)掃討のための必要な戦争だとして、軸足を「アフガン戦争」の方に置いた。

 それを実行するためにオバマ大統領は09年12月、アフガンへの増派を発表すると同時に、翌10年8月にイラク駐留米軍の戦闘部隊を撤退させている。

 イラクから米軍戦闘部隊撤退後、治安維持に苦労しながら11年12月、「イラク戦争」の終結を宣言した。

 その後、イラクは、旧政権(フセイン政権)の残党たちが復活し、反米闘争を目的に結集して、その勢力をシリアにまで伸ばした。彼らはシリアで米欧社会が過激派組織だと呼んでいる「イスラム国」を組織した。

 「イスラム国」はその後、世界の帝国主義化に反対する欧米の若者たちを吸収し、新たな反米組織となって米国などに立ちはだかっている。

 一方、最大時10万人規模(北大西洋条約機構加盟国の軍隊を入れると、最大50カ国・14万人参加)だったアフガン駐留米兵が、2015年1月以降はアフガン軍・警察の訓練に当たる1万800人(最大時)だけを残留させ、13年続いた「アフガン戦争」の終結を宣言した。

 だが、現実のアフガンは、米軍とドルの力とによって9月に発足した新政権が民族対立の危機を内包したままで、国家予算の3分の2以上を外国(主として米国)の援助に頼る脆弱な組織でしかない。

 米国が影響力を減退させれば、アフガンのタリバンはパキスタンとの国境地帯を中心に勢力を盛り返してきて、再び内戦の危機と治安上の不安定さが増大してくるだろう。

 以上のようにイランとアフガンを含む周辺地域は、新たな反米組織が誕生するなどして、ブッシュ前政権が始めた「テロとの戦争」の出口は、実際はまだ見えていないのが現実である。

 世界は、01年の米同時多発テロ発生以来、主としてイスラム宗派組織者たちの攻撃、襲撃、自爆、暗殺などの行為を「過激派」によるテロ(テロリズム)だとして非難してきた。

 テロリズムとは、暗殺、弾圧などの暴力集団によって政治上の主義、主張を貫こうとする思想であり、行動である。

 テロリズムが生まれてくる歴史の背景には、特に近代以降の国家暴力、国家主義(帝国主義国家の暴力)に対抗する抵抗、反発、反対、独立、自立への闘争心の表現が強くあった。

 彼らは国家や正規軍を持たない代わりに、同じ主張や志をもつ一般大衆らと共にいて、抑圧的暴力組織(国家または軍隊、警察組織)に対して戦いを挑んできた。

 パルチザン闘争から自爆行為まで、その組織や形態も様々だ。

 現在、国連に加盟している190余の国家組織のすべてが、テロ集団を否定し、テロ行為を非難しているのは、彼らによって自らの国家的存在が否定されるからである。

 であるから、これまで中東地域などで続けてきた米欧国家による「テロ掃討作戦」を、「国家」組織者たちは肯定的に評価してきたのは当然でもある。

 だが、それは一面的で、歴史的に正しい評価、正しい判断だとは言えないだろう。少なくとも、中東地域の近現代においては、米欧諸国家による帝国主義的な暴力支配と収奪の歴史であったことを忘れてはいけない。

 現テロ集団の暴力以前に、帝国主義国家による暴力(テロ)の存在があった。現在、「テロ集団」と呼ばれている彼らの行為は、過去の帝国の傷から立ち直ろうとする主張でもあった。

 その意味で、米政権があらゆる地域・国家に軍事介入し、米政治を押し付けていることこそ現在の問題である。

 しかも、気にいらない他国の政治指導者や要人たちを、米国はCIAやFBIの組織を密かに使って暗殺、または政治的失脚工作を実行している。

 これは正にテロ行為だ。

 米国政治は、民主党であれ、共和党であれ、全世界に民主と自由(世界の米国化)の実現化を、時には軍事力で、時には経済力(制裁またはドルの力で)でもって、実行している。

 これもまたテロ行為だ。

 世界は、こうした米国の、現代帝国主義的暴力(テロ)を糾弾し、問題にする必要がある。

 例え、米国流「理想」が現実離れしていて、朝鮮でも中東でも失敗しているとしても、糾弾すべきだ。

                                                         2014年12月22日 記

「金正恩第1書記の『新年の辞』を読む」

「金正恩第1書記の『新年の辞』を読む」

 金正恩第1書記は1日、テレビを通じて「新年の辞」を発表した。

 内容は、南北統一問題を中心に展開している。

 今年は分断から70年になる。朝鮮民族にとっては堪え難い70年間でもある。

 これ以上の民族分断の悲劇を忍ぶことも許すこともできないとして、「今年を自主統一の大路を開く一大転換の年にしなければなりません」と、金正恩第1書記は、全朝鮮民族と世界に呼び掛けた。

 特に南朝鮮の朴槿恵政権に対しては、中断されている高位級会談や部門別会談の再開、さらには「雰囲気と環境が良い場合」は、最高位級会談の開催もできることを提案した。

 統一実現には、対話と交流は必須条件となる。

 朝鮮民族の統一事業を推進していくのは、政権や政党の特権事項でも、ましてや対米関係の改善といった、特定の政党や団体、国家間での駆け引きや取引問題ではない。

 どこまでいっても全朝鮮人民の意志、民族自主の問題なのである。

 そのことから、金正恩第1書記は、『祖国解放70周年にあたる今年、全民族が力を合わせて自主統一の大路を開いていこう!』との、祖国統一への闘争スローガンを掲げた。

 朝鮮半島の平和統一を実現するにはまず、南北両政府が協議と交流を忍耐強く続けていく必要がある。そのための環境こそ重要である。

 現在の朝鮮半島、特に南朝鮮の政権は、毎年、共和国侵攻を目的とした、大小の米韓合同軍事演習を続行し、戦争演習と緊張を激化させてきた。

 このような環境下では、相互不信感しか生まれず、平和交流への対話・発展などあり得ないだろう。

 新年の辞で、「朝鮮半島での戦争の危険を取り除いて緊張を緩和し、平和的環境をつくりださなければなりません」と主張していたのは、当然のことである。

 米韓合同軍事演習を続けている朴槿恵政権に対して、「相手側に反対する戦争演習繰り広げられる殺伐たる雰囲気の中で信義のある対話が行われるはずはなく、北南関係が前進しないということは言うまでもありません」と、米韓の合同軍事演習をはじめとする戦争策動の一切を中止するよう要求した。

 それはまた、朝鮮半島と朝鮮民族の「自主権と尊厳」を守り、発展させていくための要求でもある。

 朝鮮人民の自主権と尊厳を70年の長きにわたって民族の分断という最悪の状態で強いてきた張本人こそ、朝鮮の侵略策動を第一義とした米国自身である。

 少なくとも統一問題について、南朝鮮の政権は、米国が追及する民族を二つに分ける侵略政策、対共和国敵視政策の側に立つのではなく、「民族自主」「わが民族同士」の観点に立って、政策を進めていくべきである。

 彼らは自民族が分断させられ、対立させられていることに何の痛みも感じていないのであろうか。

 「無意味な口論や些細な問題で時間とエネルギーを浪費」せず、「力を合わせて統一へ新たな道を切り開く」べき時がきていることを、朴槿恵政権は自覚すべきである。

 朴槿恵政権はこれ以上、「体制統一」を追求したり、同族を害する誹謗中傷をするのではなく、全朝鮮民族の「自主」と「幸福」を追求すべきである。

 これまでの民族統一史では、民族が統一への意志と力を合わせた時に「7・4共同声明」、「6・15共同宣言」、「10・4宣言」などの統一憲章、統一大網となるべきものを世界に提示し、統一路を歩んできた。朴槿恵大統領と政権メンバーたちには、民族自主の立場から、まずはこの新年の辞を読み、内容を理解することをすすめる――。


 南朝鮮の柳吉在統一相が1日、新年の辞について「意味のあるものと受け止めている」と、歓迎する立場を表明した。

 一方で、「北朝鮮側の前提条件があまりにも多い」として、2月末から予定している米韓合同軍事演習については、中止する考えはないとの従来の立場を固守した。

 とはいえ、新年の辞は、南北接触・交渉(その始めが南北離散家族の再開事業であるかもしれないが)を準備し、その扉を開くキッカケとなることを知らせている。

 だが懸念が2つ存在する。

 1つは、オバマ米政権が12月のサイバー戦の懲罰として共和国に「制裁」を加えたことである。南北対話の足を引っ張るかもしれない。

 もう1つは、朴槿恵氏が昨年末、自由民主主義に基づく「統一憲章」を発表すると表明していたことである。それは「制度統一」につながっている。

 2つとも米国の朝鮮分断政策そのものである。

 新年の辞で「われわれが先軍の旗を高く掲げて核抑止力を中軸とする自衛の国防力を強固に固め、国の生命である国権を揺るぎなく守ってきたことがいかに正当であったかを妙実に示している」と、力強く宣言をして、米国をけん制したのは当然だ。

                                                           2015年1月5日 記

「金正恩氏のロシア訪問時期」

「金正恩氏のロシア訪問時期」


 ロシアは、2015年5月、対ドイツ戦勝70周年を迎える。

 第2次世界大戦で旧ソ連がナチス・ドイツ勝利した5月9日を毎年、モスクワ中心部の赤の広場で戦勝式典、軍事パレードなどを行い、記念してきた。

 2015年は70周年にあたるため、盛大な式典を計画しているだろう。

 ロシアのペスコフ大統領報道官は12月19日、戦勝70周年記念式典に合わせ、共和国の金正恩第1書記を招待したことを明らかにした。

 それ以前に共和国は、崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党政治局常務委員会委員が11月(17日から24日)、第1書記の特使としてロシアを訪問、金正恩氏の親書をプーチン大統領に渡している。

 特使とプーチン氏との会談で、朝ロ両国の戦争勝利70周年の2015年、共同の祝賀行事を開催し、代表団の交流と両国の往来と協力を活発にしていくとした。

 また、両国の互恵的な協力をさらに拡大、発展させる政治、経済、軍事などのすべての分野での交流と接触を深めていくことを再確認している。

 ロシアとの緊密な交流、協力が確認されたのだ。

 2015年以降、朝ロ関係は朝ロ関係は朝中より密度が増していくだろうと思われるがその具体的な初まりはロシアからの経済協力だろう。

 しかし、ロシアは近年、経済不況と米国を含む西側諸国からの圧力で苦しんでいる。

 その脱出の一つとして共和国から中国への回路、または共和国から南朝鮮回路の利用を考えているのかもしれない。

 特使とプーチン氏との会談で、金正恩氏の訪ロとプーチン氏との首脳会談についても、協議していただろう。

 その返答が、19日の発表であったと思われるが、共和国が望む形であったかどうかについては、疑問が残る。

 ロシアの対ドイツ戦勝70周年式典以前での、首脳会談の可能性の方が強い。

 共和国の4月政治日程も忙しく、それ以降も、解放70周年関連スケジュールが詰まっている。

 一方で、ロシアの戦勝70周年式典には、日本の安倍晋三首相、中国の習近平主席、韓国の朴槿恵大統領らも招待され、出席する可能性があるから、そこでの外交デビューはあり得ないだろう。

 いずれにしても2015年、金正恩第1書記の動向と共和国の「70」関連記念行事に世界は注目している。

                                                         2014年12月29日 記

「米国の計算」

「米国の計算」

 オバマ米政権が、来年1月からキューバと国交正常化交渉を始めるという。これを評価する。

 しかし、米国の政治的原則(社会主義、非キリスト教国などとの外交)の本質も見え隠れしている。

 米国は、国内法の「テロ支援国家」を指定するか解除するかの差で、敵国かそうでないかを弁別している。

 また、経済自由化を実施している国とのみ、国交及び外交の進展を続けている。

 経済、貿易取引での利害一致の回路を通じた後、物品以外の米国式文化、芸術、宗教、社会的モラルなどの侵入を果たすことで、平和的「侵略」を目指している。

 キューバは経済の「窓」を開けているが、朝鮮(北朝鮮)は「自由」の窓を閉じたままである。

 その差違によって米国は、キューバと国交を開こうとしており、朝鮮には制裁と弾圧を強化する政策となっている。

 米国の世界戦略は、経済のグローバル化の拡大(米国市場の世界化)と、政治の民主主義、自由度を定着させていくことを常に計算している。

 キューバに対しても、国交後に様々な「米国式」の導入を目論んでいる。(キューバ側は反対し、警戒している)

 それが米国の計算、オバマの計算であった。

                                                         2014年12月21日 記

「2015年を迎えて」

「2015年を迎えて」


 南国の愛媛県松山市も、冬型の低気圧に覆われて、最低気温1度という寒い2015年元旦を迎えた。

 私は療養の身体を労いつつ、いつも通り、ゆったりとした音楽を聴きながら、積み上げた資料から取り出した本を読んでいる。

 いつもと違うのは癌年齢を数えつつ、余命を生きていく最初の年になったということである。

 とはいえ、同情されることも労われることも拒否する。

 今後は、アトランダムに読んでいた読書傾向を改めることと、このブログで表現する言葉の「弾丸」に、磨きをかけていく。

 その結果、厳しい表現を発信するかもしれない。


 2015年は歴史上の大きな節目を迎える年である。

 特に、日本を含むアジア地域は、それぞれ「70」という数字の周年となる。

 第2次世界大戦の終了であり、日本以外の諸国は、「戦勝」「解放」という誇らしい名称を冠せて、記念式典を盛大に行うだろう。

 同時期、日本の安倍晋三政権は、歴史の「負の遺産」とどのように向き合うつもりなのか。

 過去の政権が積み残してきた課題(植民地支配の清算)の上に、さらにナショナリズム政治が積み上がっていく危惧を感じているのは私一人ではあるまい。

 安倍政権の排外主義思考を厳しくチェックし、つき崩していかなければならないとの覚悟をして、元旦を過ごしている。

 今年もどうかよろしくお願いします。

                                                               2015年元旦

「表現の自由とサイバー戦」

「表現の自由とサイバー戦」

 
 ソニーの米映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテイメント(SPE)が製作した、共和国の金正恩第1書記暗殺計画を描いたコメディ映画「ザ・インタビュー」を、サイバー攻撃や映画館へのテロ予告から、SPE側は上映を中止した。

 それに対してオバマ米大統領や米連邦捜査局(FBI)など米政府は、サイバー攻撃を共和国の犯行だと断定し批判すると同時に、SPEにも「間違い」だったと批判した。

 米政府はサイバー攻撃を、表現の自由(米国式民主主義)への挑戦だとして、神経質に対応していた。

 その結果、全米で300を超える独立系映画館が25日、上映へと踏み切った。

 映画の内容は「大騒ぎするほど先鋭的で政治的でもない」「子供じみたコメディーだ」(24日付けのワシントン・ポスト紙電子版)と、評価は低い。

 25日付けの中国・人民日報系の「環球時報」でも、「低級で平凡な映画が、米国の言論の自由を守るという『愛国映画』になり、朝米のサイバー戦争の導火線となった」と皮肉った。

 一方で、「もしオバマ米大統領暗殺の映画だったらFBIはその映画製作者の家に突入するだろう」とし、「金正恩氏暗殺を扱ったこの映画は非礼だと考えている人もいる」、「ハリウッドは反省しなくてもよいのか」(26日付、愛媛新聞)と映画の表現内容を批判している。もっともである。

 表現の自由を「国是」にしている米国でも、いかなる表現をも許しているわけではないだろう。

 自由の概念には「勝手」「自在」「妙意」「束縛を受けない」なども含まれている。

 一方で「自分の意志を自分で決定する」との自決、自主の概念もある。

 本来、自由の表現は後者を指し、それを尊重してきた。

 米政府が今回、サイバー戦で共和国批判を行った「自由」概念は、後者なのだろう。

 ところが「サイバー戦の導火線」となった映画の出来について、映画を観た米国市民でさえ、「C級以下」だったと、余りの無内容さを批判するほどのもの。

 つまりは、自由概念でいう前者表現であったわけだ。

 しかも中国系新聞が指摘しているように、他国の現最高指導者をパロディー化すること自体にも重大な問題があった。

 この映画は、表現の自由を逸脱して、共和国に「挑戦」を仕掛けていたと解釈することもできる。

 映画製作者たちは、現在、朝米間が「停戦」状況での戦時下にあることを、よもや知らぬはずはないだろう。

 そうだとすれば彼らは、朝米間の戦争プロパガンダに荷担していたことになる。

 米政府は、「自由」概念や制度への侵害を批判してはいたが、実は、戦争プロパガンダを煽り、共和国の孤立化、共和国の体制崩壊作戦を、サイバー戦という新たな戦術で仕掛けていたのだ。

                                                         2014年12月26日 記

「安倍政治を信任したのではない」

「安倍政治を信任したのではない」

 
 第47回衆院選が12月14日、投開票した。

 自民290(公示前295)、公明35(公示前31)と両党で定数の3分の2(317)を上回る計325議席を獲得し、安定的な政権(安倍政権)の継続が決まった。

 14日夜のテレビ番組で首相は、「2年間の安倍政権に信任をいただいた。慢心せず、国民に丁寧に説明して政策を進める」と、早くも強気の発言である。

 国民はこの選挙で、安倍政権2年間の政策運営を信任したのではない。

 与党が引き続き衆院で3分の2を確保できた真の理由は、全く別のところにある。

 低投票率、小選挙区・比例代表制のマジック、野党の分裂(9党)、野党が主張する政策のバラツキ、野党第1党の民主党が選挙区の半数にも満たない200人足らずの擁立など――主な理由は、敵失(脆弱な野党)にあった。

 国民は決して、自民党を選択したわけではない。

 慢心した安倍氏は同日夜の別のラジオ番組(ニッポン放送)で、改憲について「私の大きな目標であり、信念だ。国民的な理解を深めるためにリーダーシップを発揮したい」と明言し、安倍長期政権が現実味を帯びてきたことへの自信とナショナリストの本音が言葉となっていた。

 私たちは、安倍政治の2年間で、十分に軍事色の匂いを嗅ぎ、彼を拒否する言動を表現してきた。

 しかし、今回の選挙結果では、安倍政権を拒否したのは唯一、沖縄県だけであった。

 沖縄県では、全4選挙区で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する非自民の候補者が、それぞれ自民前職を破った。

 安倍首相は普天間の移設推進姿勢を崩していないが、直前の県知事選(当選は基地反対の翁長雄志氏)を含めた沖縄県民の意思は辺野古に新基地を造らせないということであったのだ。

 沖縄県民が、米軍基地はもういらないと言っているのだ。

 その県民の意思に反してまで、日米両政府は基地移設を強行するのだろうか。

 民意を否定することは、民主主義を否定することだ。

 民主主義の「本家」を自負する米国が、日米安保体制より民主主義を否定する姿は、自己否定という無様さを世界に曝けることになる。

                                                         2014年12月16日 記

「金正恩政治へ」

「金正恩政治へ」


1.
 朝鮮民主主義人民共和国(共和国)は12月17日、金正日総書記の3周忌を迎えた。
 
 3年喪が明け、金正恩第1書記体制の本格的な政治が始動していく。

 喪の3年間、金正恩氏は遺訓の先軍政治を継承しながら、軍中心システムから党中心体制へと、本来の社会主義政治の姿に戻した。

 その過程で、叔父の張成沢氏を「国家転覆の陰謀」罪で処刑し、その後も張氏人脈につながる粛清が続いているようで、粛清の根深さがうかがえる。

 経済的利権(中国との)を握り、経済政策(改革開放)を重視し、軍中枢部の人脈ともつながっていた張氏が、必ずしも党中央の意向に従っていなかったことが、彼につながる人脈までの粛清になっているのではないだろうか。

 つまり、人民への利益追求の経済措置は実施しても、中国などが要求している開放へとつながる政策は行わない、とするのが金正恩政治の基本だと言うことができる。

 党中心とした遺訓体制を守りつつ、時代の変化にも適応していく政治、それが金正恩政治になる。

 2.
 共和国の2015年は、祖国解放(8月15日)70周年、朝鮮労働党創建(10月10日)70周年の、重要な節目を迎える年である。

 この2つの記念事業を「勝利」感覚で迎えるには、2つのポイントを消化しておく必要があるだろう。

 1つは、金正恩氏自身の外国訪問と首脳会談の実現である。今のところ、ロシア訪問とプーチン大統領との首脳会談が喧伝されているが、中国の可能性もあり得る。

 ロシアまたは中国、どちらの訪問にしても遅くとも8月末までの時期に拘っているだろう。

 もう1つは、日本及び米国との協議進行である。

 日本との間では、日本が言うところの「拉致問題」の解決、ストックホルム日朝協議(日朝間に残されている問題の包括的協議と解決)を前進させられるかどうかにかかっている。

 だが、共和国側の回答いかんによっては、米国の関与と国連のさらなる非難決議を招いてしまうこともあり得る。拉致問題は一見、日本側の問題のように見えて、「人権問題」として米国の手中にある。

 オバマ米政権も、残りの任期が2年となるため、2015年には共和国への「関与政策」(いかなる内容かは別にして)があるだろう。

                                                         2014年12月14日 記
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愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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