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「『北朝鮮人権騒動』の裏側」

「『北朝鮮人権騒動』の裏側」

1.
 第69回国連総会第3委員会(人権)で、共和国への「人権決議」が11月8日、通過した。
 決議を提起した主な国は、日本・EU・韓国などであったが、真の仕掛け人は米国であった。
 今回の人権「騒動」は、米国が反共和国、敵視政策を実施してきた政治的孤立、経済封鎖、軍事的圧殺、敵視政策などに次ぐ、5番目の「人権問題」を創作し、共和国崩壊を早めることを目論むものであった。
 決議の内容は、朝鮮人権状況に関連する調査委員会(委員長はオーストラリア人のマイクル・コビ)の「報告書」に基づいている。
 この委員会は2013年3月、ジュネーブにある国連人権理事会で、3人の構成によって急きょ設立された。委員会が設立される直前の状況は、共和国が衛星打ち上げに成功(2012年12月)、第3次核実験に成功(2013年2月)していて、米国が共和国への制裁策を強化しようとしていた時期であった。つまりは、朝米対決が先鋭化していた時期である。
 米国はこの時から「人権問題」を創り上げて、共和国に対する国際的圧迫、孤立化攻勢を新しく加え始めようとしていたのだ。
 たった3人の委員が1年足らずの間に、一国の人権実態を総合的に判断し、評価し、勧告案まで添付する「報告書」に、果たして科学性と信頼性、公正性が保障されていたかどうかについては、多くの人々が疑問視している。
 調査委員会メンバーは、各国300人程度の証人と会い、調査をし、報告書を作成したとしている。
 彼らが訪問し調査した国は、日本、米国、南朝鮮、EUの一部などで、主として共和国と敵対関係にある国々であった。
 委員の誰ひとりとして、対象となる共和国には一度も訪問せず、ましてや共和国の人々への取材、調査などは一度も実施していない。
 つまり当該国の証言や意見をまったく反映していない、欠陥報告書であったということである。
 しかも証言を得たとする脱北者たちの名前や出身地を、共和国に住んでいる彼らの近親者らに被害が及ぶとの理由で公開していない。
 これでは脱北者だとする彼らの名前、経歴、職業、陳述内容などの事実関係が保障されていない。
 国際機構の報告書としては、決定的に欠陥であったにも関わらず、国連は疑念のある「報告」文書を採択してしまった。
 また、国連憲章がかかげる、主権平等の原則をも犯している。
 
2.
 今回の国連での「人権騒動」は、米国が朝鮮戦争時に、国連安保理で共和国を「侵略者」だと決議させ、強引に「国連軍司令部」編成を認めさせていくカテゴリーや手口と酷似している。
 当時、安保理に証言者として出席したのは、38度線一帯を視察していたとする「国連朝鮮委員団」の委員と「北朝鮮軍38度線突破」の第一報をワシントンに送った米韓国大使のムチオだけであった。
 当事者である共和国政府はもちろん、一方の韓国軍からも誰一人、証言者には呼ばれなかった。
 設立当初から国連は、対立する重要案件を決議する場合には、必ず、当時者双方の出席と証言の機会を保障していた。
 しかし、米国は、設立当初から強権と米ドルによって、国連を支配してきたこともあって、「憲章」は「原則」止まりになっている。
 国連朝鮮委員団の報告「3人」にしても、38度線南側に6月23日までいただけで、主にソウルに移動してからの韓国軍将兵たちの「ソウル情報」であった。
 同じくムチオ大使にしても、朝鮮委員団等から得た間接情報でしかなかった。
 米国にとって都合の良い情報だけを報告させ、共和国に「侵略者」のレッテルを貼り付ける作業を急いだことになる。
 すでに在日米軍の空軍機が6月25日午後、38度線近くまで出動していたからである。
 米軍爆撃機はやがて38度線を越え、北部へと飛来する可能性があった。
 そうなれば、米軍が侵略軍となってしまう。
 時の安保理は、ソ連欠席、中国代表不在であったから、欠格でもあった。
 その欠格の穴を埋めるため米国は、強権とドルを使用した。

3.
 米国は2004年7月、いわゆる「北朝鮮人権法」を成立させている。
 人権保護という美名のもと、共和国への内政干渉と制度転覆への実行を、法制化したものである。
 つまりこの法は、共和国の民主主義、市場経済化を促していくことを目的にしている。
 具体的には、一日12時間の朝鮮語放送を開始し、その放送を聴取できる小型ラジオを共和国内に搬入させ、さらには共和国人民の脱北と、米国への移住、亡命を誘導するための財政的、物質的支援を保障している。
 結局は、様々な手口を用いて、共和国人民間で政府および制度への不満を引き起こさせて、朝鮮式社会主義、または金正恩体制を崩壊させることを狙っていた。そのために米国は毎年、数千ドルもの予算をつぎ込んでいる。
 今回、米国とその追従勢力(日本など)は、国連総会という公的機関を利用して、共和国の尊厳(金正恩第1書記に対して)を甚だしく冒瀆することで、共和国の体制と制度を崩壊させる意図で、共和国「人権決議」を政治的に利用していたことが明白となった。
 米国は黒人や有色人種への民族差別で、日本は在日朝鮮人などアジア人蔑視観などで、告発され続けている。
 日米ともに他国の人権を「問題化」できるほどに、人権模範国だと自負できるのだろうか。
 米上院情報特別委員会が12月9日、中央情報局(CIA)がブッシュ政権下で、テロ容疑者を拘束し、「強化尋問技術」(EIT)という手法の過酷な尋問を行っていたとする報告書の要旨を公表した。
 それによると連続して水責めを行い、「水死に近い状態」に追い込む、手を鎖でつり上げる、一週間近く睡眠を妨害する、暗闇の施設に閉じ込め足かせをして騒音を流す、直腸からの栄養注入、半裸で放置したため凍死するなど――こうした手法は、一般的には拷問である。
 また、イラク戦争の大義名分とされた大量破壊兵器関連情報があいまいであったこと、米政府が安保理に発表した「移動式生物兵器製造施設」の存在も、アルコール依存症の亡命イラク人の作り話であったことなどについても、明らかとなった。
 これが他国の人権を国連の場を使って「問題化」し、政治的に追及しようとしている米国の人権に対する実態であった。
 一方の日本社会もまた、ヘイトスピーチ(憎悪表現)などがはびこり、人間の名誉と人権を傷つけてきた。
 最高裁第3小法廷は同じく12月9日、「在日特権を許さない市民の会」のヘイトスピーチ行為は「人種差別」行為だと認定した。
 日本の司法界はやっと、国連の「人種差別撤廃条約」の精神に近付いたかにみえる。

                                                            2014年12月11日 記 
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「米国による『人権騒動』の本質」

*ブログ読者のみなさまへ

 何か所もの臓器を切り取った大手術後の復帰に、想像以上に時間がかかることを実感している。

 体重も50キロを切ったままで、痩せた体躯と運動不足からは、手術前の漲る感覚がまだ戻ってきてはいない。

 体力ばかりか、読書意欲も思考力も減退している。

 「焦るな」と自分に言い聞かせてはいるのだが、現今の日本政治、朝鮮半島の現在を考えていると、黙っていることが罪であるように思える。

 何とか、「米国による『人権騒動』の本質」を書きあげたので、この原稿をもってブログ復帰とします。

 今後ともよろしくお願いします。



「米国による『人権騒動』の本質」


1.
 米中西部のミズーリ州ファーガソンで今年の8月、黒人青年のマイケル・ブラウンさん(当時18才)が白人警官に射殺される事件があった。

 この事件に対して、同州セントルイス郡の大陪審(市民から選ばれる。白人9人、黒人3人)が11月24日、「起訴に相当する理由がない」として警官を不起訴を決定した。

 大陪審は、黒人青年は拳銃を隠し持っていて、警官を撃とうとしていたとの警官証言を信じて、警官の正当防衛だったとの判断を下した。

 この大陪審の決定は、黒人差別に根ざしたものだとして、抗議デモが全米で広がった。

 8月の事件直後も、地元を中心に抗議行動が起きたが、今回は当時を上回り、ニューヨークやサンフランシスコなど大都市にも広がっている。

 オバマ大統領は24日夜、不起訴決定を受け入れるよう訴える声明を発表する一方で、「ファーガソンの状況では米国が直面する問題を物語っている、法執行機関と有色人種の間に深刻な不信がある」と指摘した。

 米国社会には黒人差別という、根深い人種差別が存在していることを、大統領自らが認めたことになる。(黒人であった彼にも思い当たるものがあったのだろう)

 抗議デモは37州170余の都市(26日現在)に広がり、米国政治・社会における人権問題への不条理さへの怒りが、表現されてもいた。

 オバマ政権は、他国への人権騒動を政治化する戦術を多用しているが、米国内の人権問題を解決できないでいる。


2.
 国連総会第3委員会(人権問題)は、11月18日、日本やEUなどが提出(共同提案国は62カ国)していた北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を、賛成多数で採択した。(賛成111カ国、反対は中国、ロシアなど19カ国、棄権55カ国)

 今回、安全保障理事会に対し、人権侵害の国際刑事裁判所(ICC)への付託を検討することを促している。

 ICCは戦争犯罪や人道に対する罪、大量虐殺などに関わった個人(国家首脳も)を裁く常設の国際刑事法廷である。

 北朝鮮人権問題に関する国連調査委員会は、以下の項目で、人道に対する罪が犯され、国家の最高レベルの政策的関与があったと認定した。

 1.組織的かつ広範な人権侵害が長期間続いている。
 2.拷問や政治犯収容所、外国人を含む組織的な拉致。
 3.拉致問題の即解決を強く要求。
 4.国家の最高レベルによる政策で、人道に対する罪を犯した疑い。

 以上、最も責任が重いとみられる関係者(金正恩第1書記)への制裁検討を、安保理に呼び掛ける決議となっている。

 この決議内容こそ、米国主導による対北朝鮮人権騒動問題で、米国の力によって国連の場に持ち込まれたものである。

 
3.
 米国の精神的最高規範は、自由と民主主義である。その両方とも、白人種とキリスト教文化を中心点に据えている。

 冷戦後(米ソ対決が氷解)の90年代以降、政治、軍事、経済などのすべての分野で一強として存在すると、自らの規範に従わない国家と勢力を、敵、テロ、悪者などのレッテルを貼り付けて、圧力をかけ続けてきた。

 北朝鮮をはじめ中国、ロシア、キューバ、ベネズエラ、イラン、イラク、アフガニスタン、シリアなどの国と指導者たちに、人権報告書を作成して「人権騒動」を起こして、世界から排除、抹殺劇を演じてきた。

 米国自身の尺度による「人権」モノサシを振りかざして、モノサシに従わない国家を国際的に孤立させ、政策に介入し、体制を崩壊、または最高政治指導者の追放を画策してきた。(これは発砲なき戦争である)

 人権という美名に隠れた、政治的悪用であって、米国はこの人権・人道問題を新たな戦争挑発の武器に利用しようとしている。

 しかも、国連に決議案を提出した主要国(日米韓3カ国)が証拠として示したものは、基本的には「脱北者」の言葉、政治犯が収容されているとする地域の衛星写真、日本が最も貢献した拉致被害者家族たちの言葉などであって実質的な証拠に欠けるものばかりであった。


4.
 北朝鮮の国防委員会(第1委員長は金正恩第1書記)は11月23日、人権侵害を非難した国連総会第3委員会での決議採択に反発して、「未曽有の強硬対応戦に突入する」との声明を発表した。

 その対象国として日米韓の3カ国を名指しし、「決して逃れることができない」との警告を出した。

 国連決議の仕掛人が米国であることを認識していて、「超強硬対応戦」の対象国の最初に米国を挙げ、次いで日本、韓国を列挙している。

 日本に対しては、「今のような状態が続けば『近くて遠い国』程度ではなく、われわれの目の前から永遠になるなる存在だ」と脅し、さらに「聖戦が始まれば日本も丸ごと焦土化され、水葬されなければならない」と、日本への批判を強めている。

 日本と北朝鮮は現在、ストックホルム協議に基づいた政府間協議を進めている。

 協議では、安倍首相が「自らの政権内に解決する」と広言してきた拉致問題も含まれている。

 そうした政治的微妙な時期に、米国の意向だけを汲んで、拉致問題を政治的に利用し、北朝鮮人権騒動に組み入れてしまった。

 北朝鮮を追い詰める政治的道具に拉致問題を利用していて、果たして問題解決につながっていくのかどうかを、しっかりと考えるべき時にきているのではないか。


5.
 根深い人種差別(白人至上主義)を抱える米国に、他国の人権問題を言及する資格などないことは、世界の誰もが知っている。

 しかし米国は、他国の人権政策を「問題」に作りかえて、政治的利用している。

 2期目のオバマ政権は、特に北朝鮮対策に人権騒動を多用し、朝鮮の体制と制度の崩壊を目論んでいる。

 朝鮮半島非核化の基礎となった05年の9・19共同声明(互いの自主権を尊重し、平和的に共存する)の公約を、米国が破ってしまったことになる。

 一方の朝鮮外務省報道官は11月4日、朝鮮通信社記者の質問に、次のように答えている。

 「自国を転覆しようと頑なになっている敵と対座して、自国の一方的な武装解除を論じることなどできないことは、あまりにも明白だ。われわれは、われわれの自主権を尊重する国との真の人権対話には扉を開いているが、われわれを転覆しようとしている敵とは人権対話はもちろん、核対話も許容できない」

 敵対する国とは何らの対話もできないとは、ごく当然のことを言っているにしか過ぎない。

 安倍政権だって、北朝鮮側の言葉をしっかりと記憶しておく必要があるだろう。

 さらに朝鮮国防委員会は10月25日の声明で、米国の反共和国「人権」騒動が、われわれの体制と制度の崩壊を狙っている以上、それを粉砕するための朝鮮式の新しい強硬対応宣戦を、米国とその追随勢力に布告した。

 その内容は、「われわれの革命武力は、われわれに照準を定めている太平洋地域の米帝侵略軍基地と戦争狂信者らがたむろしている米本土の主要都市に対する全面攻撃計画が批准された状態にあるということを全世界に公開している。朝鮮式の最も強力な新しい対応宣戦布告は、抜かりなく確保された協力な核武力と地上、海上、水中、空中に展開される各種の先端攻撃手段によって裏付けられていることを隠さない」としている。

 以上のことは単なる言葉による脅しではなく、共和国側の厳しい覚悟を表現している。

                                                            2014年11月27日 記
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Author:takasi1936
愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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