「政治の季節となるのか」
「政治の季節となるのか」
名田隆司
1.
花々が咲く季節の便りとともに、政治にもようやく春を告げる情報を3月22日、マスメディアが一斉に伝えている。
24~25日にオランダのハーグで開かれる核安全サミットに合わせて、安倍晋三首相と朴槿恵韓国大統領、オバマ大統領による3カ国首脳会談を行うことを、日韓両外務省が発表した。
第2次安倍政権が発足して一年余、日韓首脳会談がまだ一度も行われず、まだその可能性さえ見出せないという異常な政治が続いていた。
その原因は、安倍晋三の政治センスにあった。
彼の突出した右翼チック政治の言動は、日本を戦争準備国家へと導いていくのではないかと、私たち日本人も危惧し、警戒させるほどである。
その政治姿勢は、93年8月の河野談話(軍慰安婦への旧日本軍の関与と強制性を認め、謝罪した)を見直す発言から、韓国や中国などの近隣諸国からの反発を招いていた。
さらに靖国神社への参拝で、米国からも忠告される始末であった。
安倍外交、安倍政治は四面楚歌に陥っていたので、オバマ政権がそれを救った。
米国にとっては、軍事的に経済的に膨張している中国への危機と、いつまた核・ミサイル実験を行うかわからない北朝鮮への、対アジア戦略の要位置にあたる日本政治にいらだっていた。
いつまでも首脳会談さえ開けない「政治的幼稚」な日韓に、オバマ氏はしびれを切らしたのだろう。4月下旬に日韓を歴訪する前に関係修復を促していたはずだ。
ハーグ核安全保障会議が、ぎりぎりでタイミングのよい場所であったから、段取りを米国が決め、日韓の仲介役を行った。
親分(米国)の意向には逆らえない日韓政権であってみれば、安倍首相が14日の参院予算委員会で河野談話の見直しを否定すると、朴槿恵大統領は翌15日、「幸いに思う」と前向きに受け止める評価をした。これで親分の前での簡単な手打ち式は整い、両氏とも親分の顔を立てたことになる。
親分もまた、気を遣い、ハーグでの手打ち式会談のテーマは、核開発を進めようとしている北朝鮮に対して、日米韓3カ国で対応していくとの、古くて新しい米国がもっとも気にしているテーマだけの意思合わせとした。
日韓両政権は、ハーグ首脳会談を入口として、今後は、外務省の局長級協議へと繋げていくことを検討しているようだ。
2.
外務省は同じ21日、日朝局長級の公式政府間協議を30、31両日、北京で開くと発表した。
局長級協議は2012年11月(北がミサイル発射を予告し、日本が協議の延期を通告)以来で、再開となる。
「双方の関心事項を幅広く協議する」ことで一致した。
日本外務省側は「幅広い議題」には、拉致・核・ミサイルが含まれると、従来からの主張をしていた。
そして拉致問題では、日本の立場(拉致被害者の再調査など)をしっかりと「要求する」としている。
やっと局長級協議の再開が整ったにも関わらず、日本側の出方次第では、また、議題が進行しない可能性もある。特にその一週間前に、ハーグで実施される核サミットと3カ国首脳会談での、安倍首相の発言内容によっては危機を招くかもしれない。
拉致問題解決への進展、日朝関係の前のめりになることを警戒している米国が、ハーグ首脳会談を仕掛けていることを、しっかりと理解しておく必要があるだろう。
共和国に対して、一方で核・ミサイル問題をテーマに圧力を仕掛けていく立場を主張し、もう一方で拉致や日本人遺骨収集問題など、人道問題を話し合おうとしている、この日本の矛盾した政治的感覚こそが問題だ。
日本にとってハーグ首脳会談と、日朝局長級協議の双方が、本当に春を告げる政治会談になるかどうかが、安倍政権に試されている。
2014年3月22日
名田隆司
1.
花々が咲く季節の便りとともに、政治にもようやく春を告げる情報を3月22日、マスメディアが一斉に伝えている。
24~25日にオランダのハーグで開かれる核安全サミットに合わせて、安倍晋三首相と朴槿恵韓国大統領、オバマ大統領による3カ国首脳会談を行うことを、日韓両外務省が発表した。
第2次安倍政権が発足して一年余、日韓首脳会談がまだ一度も行われず、まだその可能性さえ見出せないという異常な政治が続いていた。
その原因は、安倍晋三の政治センスにあった。
彼の突出した右翼チック政治の言動は、日本を戦争準備国家へと導いていくのではないかと、私たち日本人も危惧し、警戒させるほどである。
その政治姿勢は、93年8月の河野談話(軍慰安婦への旧日本軍の関与と強制性を認め、謝罪した)を見直す発言から、韓国や中国などの近隣諸国からの反発を招いていた。
さらに靖国神社への参拝で、米国からも忠告される始末であった。
安倍外交、安倍政治は四面楚歌に陥っていたので、オバマ政権がそれを救った。
米国にとっては、軍事的に経済的に膨張している中国への危機と、いつまた核・ミサイル実験を行うかわからない北朝鮮への、対アジア戦略の要位置にあたる日本政治にいらだっていた。
いつまでも首脳会談さえ開けない「政治的幼稚」な日韓に、オバマ氏はしびれを切らしたのだろう。4月下旬に日韓を歴訪する前に関係修復を促していたはずだ。
ハーグ核安全保障会議が、ぎりぎりでタイミングのよい場所であったから、段取りを米国が決め、日韓の仲介役を行った。
親分(米国)の意向には逆らえない日韓政権であってみれば、安倍首相が14日の参院予算委員会で河野談話の見直しを否定すると、朴槿恵大統領は翌15日、「幸いに思う」と前向きに受け止める評価をした。これで親分の前での簡単な手打ち式は整い、両氏とも親分の顔を立てたことになる。
親分もまた、気を遣い、ハーグでの手打ち式会談のテーマは、核開発を進めようとしている北朝鮮に対して、日米韓3カ国で対応していくとの、古くて新しい米国がもっとも気にしているテーマだけの意思合わせとした。
日韓両政権は、ハーグ首脳会談を入口として、今後は、外務省の局長級協議へと繋げていくことを検討しているようだ。
2.
外務省は同じ21日、日朝局長級の公式政府間協議を30、31両日、北京で開くと発表した。
局長級協議は2012年11月(北がミサイル発射を予告し、日本が協議の延期を通告)以来で、再開となる。
「双方の関心事項を幅広く協議する」ことで一致した。
日本外務省側は「幅広い議題」には、拉致・核・ミサイルが含まれると、従来からの主張をしていた。
そして拉致問題では、日本の立場(拉致被害者の再調査など)をしっかりと「要求する」としている。
やっと局長級協議の再開が整ったにも関わらず、日本側の出方次第では、また、議題が進行しない可能性もある。特にその一週間前に、ハーグで実施される核サミットと3カ国首脳会談での、安倍首相の発言内容によっては危機を招くかもしれない。
拉致問題解決への進展、日朝関係の前のめりになることを警戒している米国が、ハーグ首脳会談を仕掛けていることを、しっかりと理解しておく必要があるだろう。
共和国に対して、一方で核・ミサイル問題をテーマに圧力を仕掛けていく立場を主張し、もう一方で拉致や日本人遺骨収集問題など、人道問題を話し合おうとしている、この日本の矛盾した政治的感覚こそが問題だ。
日本にとってハーグ首脳会談と、日朝局長級協議の双方が、本当に春を告げる政治会談になるかどうかが、安倍政権に試されている。
2014年3月22日
スポンサーサイト