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「朝鮮半島の現実をどう見るか」

「朝鮮半島の現実をどう見るか」

                                               名田隆司


1.
 近代戦(第1次世界大戦)以降、軍備増強と経済の関係は密接となった。

 戦争推進国は、外債を増発して、中立国等から資金(戦費)を集めることに集中する。

 一方、敵対国へは、周辺国と結束しての経済封鎖政策を強化している。

 これが、現代帝国主義の姿である。

 その姿を、朝鮮半島に映し出してみれば、どのように見えるだろうか。


 朝鮮半島は現在、南北に分断したままである。

 どこに住んでいようと、朝鮮人民はみな、南北統一、民族統一を望み、運動をしている。

 にも関わらず、その分断体制が氷解しない理由は、大まかに言って2つ存在する。

 1つは、朝鮮半島唯一の外国軍隊、在韓米軍が南朝鮮に駐屯していることである。

 その米軍駐屯に支えられた政治勢力が、南ではまだ大きな力を持っていることが、民族統一への共通言語の視点を困難にしている。

 2つ目は、朝鮮戦争停戦協定が維持されて、朝米間が敵対関係のまま、推移しているからである。

 つまり朝鮮半島はまだ、平和でもないし、戦争でもない、戦闘が停止したままの、危険な状態が続いているのである。

 このような危険性から脱出する方法は、ただ1つしかない。

 停戦協定を平和協定(講和条約)に転換することである。

 国際社会は、戦争を停止する協定を結んだあと、遅滞なく講和協議を重ね、敵対関係を解消することこそ、独立国家が持つ責任だとしている。

 朝鮮戦争停戦協定には、停戦3カ月後には、政治会議を開き、朝米の間で平和協定を結ぶことを定めている。

 朝鮮側では、停戦協定の定めを守り、また朝鮮半島の主人公として、米国に平和協定の締結をこの間、ずっと呼び掛けてきた。

 それが実現していないということは、米国がそうした会議を好まず、応じてこなかったからである。

 なぜ、米国は、朝鮮半島での平和協定締結を拒否するのであろうか。


2.
 相手国(敵対国)に、いかに効果的に経済封鎖・経済制裁を仕掛けて暴発させるか、あるいはまた国際的孤立化をねらって内部崩壊を誘うことが、現帝国主義者たちの戦争に至る常套手段である。

 米国は、朝鮮に対する自身の経済制裁だけでも、50年以降、20数種類も実施している。

 それでも足りずに、(逆に言えば、朝鮮側が生き延びてきたために)、国連安保理の場を活用して、核、ミサイル、人権など内政干渉がましい問題で、「制裁」決議を叫んでいる。

 自らの核恫喝政策や核削減、人権差別政治について、棚上げしていることはもちろんのこと、停戦協定状態の朝鮮に対して、経済封鎖を実施することは、「宣戦布告」をしたことになる。


3.
 国の指導者、国家政策を決定する者は、過去からの類推、過去の歴史的対比から、現在の死活的な政治問題処理への結論を導くことがあるだろう。

 朝鮮の場合、軍事力をおろそかにした李氏朝鮮が、日本帝国主義侵略者によって国を奪われたことで、武力強国(先軍政治)への選択をしたこと。

 核政策を放棄したイラク、リビアなどの故事から、核保有政策を追求したことが挙げられる。

 朝鮮が政策化し、推進してきた先軍政治も核保有も、ともに米国が朝鮮に対して行っている敵対政治を批判し、自らの自主権を追求した結果の表現でもある。

 にも関わらず、日本のマスメディア、ジャーナリストたちは、朝鮮が核やミサイルの実験をするたび、的外れな報道をしている。


4.
 国連安保理は4月19日、核兵器などの拡散(朝鮮などを想定して)が、世界平和の脅威だとする議長声明を全会一致で採択した。

 その一方で、核保有国(5カ国)の核兵器に関しては、「全加盟国が軍備管理、軍縮、不拡散に関連した義務を果たし、約束を守る」として、自らにはゆるく甘い「約束」をした。

 国連安保理とは言っても、その実際は核大国クラブである。その核大国クラブの傲慢な言動がしばしば世界平和を脅かし、紛争をもたらしている。

 朝鮮半島で言えば、米国の核が直接的な脅威となっているのだが、マスメディアたちはそのことを一度も指摘していない。

 朝米関係は現在、戦争継続中であり、敵対関係にあったのだから、米国からの核脅威政策は、他の地域とは違った「現実感」をもってしまう。

 米国はさらに、朝鮮への直接的な核脅迫以外にも、日本および韓国との合同軍事演習を毎年、実施して十二分に軍事的恐喝を与えている。

 しかも日本と韓国には、「核の傘」を提供しているから、日米韓3カ国は常に、朝鮮に「核実戦」「核攻撃」という、計り知れない恐怖感を与え続けている。


5.
 朝鮮は、「核抑止」政策と「核保有」政策を選択した。

 その理由の第一は、祖国と人民、社会主義体制を守るためであり、第二は米国と対等な立場で「世界の非核化」を実現するためである。

 生前の金正日総書記は、人民が生活に困窮しているのに、巨額を投じてミサイルや核を開発せざるを得ない現実に断腸の思いであることを、再三、幹部たちに語っている。

 米国からの軍事的(核)脅威が続く限り、祖国を守り、社会主義を守ることが第一義的に重要だったのである。

 西側では、「人工衛星や核を開発する巨額の資金を、食糧などにまわせ」との言説が出回っている。

 ミサイルや核開発の資金を、食糧などに回せば、確かに一時的には胃袋を満たせるかもしれない。

 しかし、米国が軍事的圧力と脅威を朝鮮に続けている限り、国家的存亡も経済的困難性も続いていくことになる。

 再び亡国の民とならないためにも、米国と対等(軍事的政治的)の立場で対話を続け、対話の先の「平和」を追求していく道を選んだ。

 そのために核保有国とならざるを得なかった。

 核保有が平和追求だと言えば、逆説めく。

 彼ら朝鮮人たちは、一時的な困難性には耐えていくという。


6.
 オバマ米政権は、まだ、「北朝鮮崩壊政策」を捨てていない。

 「そんな金があれば食糧を」といった類のネガティブキャンペーンが米国から出回ってくるのも、オバマ政権の姿を反映している。

 日本のマスメディアたちのペンは、そうした米国政治の意識を下敷きにしているから、「北朝鮮体制の変革」的内容を、平気で主張している。

 そのような彼らは、もはやジャーナリストとも言えないが、せめて、朝鮮半島情勢の分析については、自らの脳力で判断してもらいたいものだ。


                                       2013年9月10日 記
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「シリア攻撃には反対」

「シリア攻撃には反対」

                                               名田隆司


1.
 オバマ米大統領は、悩んでいるだろう。
 
 シリアのアサド政権に対して、軍事攻撃の準備をしたものの、国連安保理や米議会での承認がまだ得られていないからだ。

 米政権は8月30日、シリアのアサド政権が首都ダマスカス近郊で、神経ガスによる化学兵器の攻撃を行ったとする「強い確信」があるとの報告書(シリア外務省は「でっち上げの作り話」だと反論)を発表した。

 米国が一方的に作成した「報告書」を、いったい世界のどこの誰が検証できるというのだろうか。

 シリアでの科学兵器使用疑惑を調査していた国連調査団は、8月31日、急いでシリアを出国(米国からの攻撃の可能性のため)したが、その調査結果はまだ発表していない。

 ここで、イラク戦争をはじめた2003年3月直前のことを思い出してもらいたい。

 イラクのフセイン政権が、大量破壊兵器を隠していると当時のブッシュ政権がクレームをつけ、国連調査団がイラクに入った。

 その第1次報告の際、調査団員の1人であった米民間研究所の人間が、大量破壊兵器は発見できなかったと、一部の報道機関に伝えた。

 その後、その研究者は、調査団からも、米民間研究所からも追放されて、完全に口封じされてしまった。

 こうして、米政権シナリオ通りの報告書が作成されて、ブッシュ大統領は「無法政権から米国民を守る」と広言し、イラク攻撃を行った。(米国の無法行動を誰も批判せず)

 当時の日本は、小泉純一郎首相であった。

 小泉首相は、世界のどこよりも早く、「日本も他人事ではない」との理由で、ブッシュ政権を支持した。

 イラク戦争が間違いであったことを、ブッシュも小泉も謝罪していない。

 現在のシリア攻撃の件についても、安倍晋三首相は、いち早く支持態度を表明していた。

 米政権からの情報を鵜呑みにした判断は、03年当時と何も変わっていない。

 
2.
 以前の取材ノートを整理していたら、偶然、イラク戦争直前に書いた(2003年2月)原稿のメモが見つかった。長くはないので、そのまま掲載する。

 「イラク問題の国連安全保障理事会の公開討論で2月18日(2003年2月)、日本の原口幸市国連大使が『新たな安保理決議の採択が望ましい』と演説し、米英支持の姿勢を国際社会で明確にした。米英が予定している新たな決議案は、武力行使に道を開くもので、日本対米英の追従を、政府表明以前に行っていたことになる。18日に演説した27カ国・組織のうち、日本とオーストラリアのみが、対イラク強硬姿勢を支持する態度をとり、他は査察継続を呼び掛けていた。これまでの日本は曖昧な態度に終始していたが、国連で意見表明したあとも、小泉首相は『日本は国際社会が一致結束してイラクに協力を求めるという決議があった方が望ましいという立場だ』と本心を隠している。国内・国民に向かっては、米国支持をするともしないともはっきりとした態度表明をせず、米国に向かっては常に支持をするとのメッセージを送っている。国連での表明がそれを物語っていた。野党などから『二枚舌外交だ』との批判が出ているが、当然のことである。今からでも遅くはない、政府は納得のいく説明を議会と国民にする責任がある。」

 現安倍政権の態度と似たところがある。


3.
 攻撃を先送りしたオバマ大統領自身は、シリア攻撃の決断を早くからしている。

 彼は、米議会説明のタイミングを計っていたのだろう。

 その際にも、前日に公表した米国情報の「報告書」だけが頼りとなる。この報告書は、自作自演くさい。

 米国を含む各国、または、マスメディアは、シリア攻撃云々をしているが、シリアの紛争は内戦である。内戦に介入する理由など、誰にもない。

 米政権は10年前の悪政をまたもや演じようとしている。

 そのオバマ政権の暴挙を認める安倍政権も、2003年当時の失政を、そのまま上書きしようとしている。

 両政権とも、自国の議会と自国民への説明と共に、世界にも納得がいく説明をする必要がある。


                                        2013年9月1日 記
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