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「開城が世界遺産登録へ」

「開城が世界遺産登録へ」

                                              名田隆司


 *国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が5月13日、朝鮮半島(北側)の開城市の遺跡地区を、世界文化遺産登録することを、ユネスコに勧告したと発表した。

 開城遺跡地区は、高麗王朝(918~1392年)の都として約470年にわたって栄えたところである。

 その古都を復元した街並み、貴族たちが住んでいた家並みは、儒教の風水観によって築かれている。

 市中心から北方6㎞のところに松岳山があり、その麓に高麗建国始祖の王建(ワンゴン)の王陵(94年に改建)があり、近くの万寿山一帯にも高麗時代の王陵が数多く残っている。

 市内には、当時の最高教育機関であった成均館(ソンギョングァン)の建物をそのまま利用し、高麗博物館としている。

 朝鮮戦争時は、激戦区の一つとなり、市街地はひどく破壊された。

 現在は、朝鮮南西部の軍事境界線に接する開城地区の中心都市(1市3郡)で、55年に直轄市に指定されている。

 人口は33万5000人(93年の人口調査)。

 板門店は市内から8㎞のところにある。

 私も遺跡地区を2,3度訪れたが、そこに立つと中世にタイムスリップしたような趣があった。

 朝鮮での世界遺産は、高句麗関連遺跡(04年)に次ぎ2例目である。

 6月にカンボジアのプノンペンで開かれる世界遺産委員会で、日本の富士山などと共に登録が決定される見込みだというから、文化面における日朝交流が活発化していくことを望む。

 開城といえば、南北統一の象徴的存在だった開城工業団地があった。

 2000年8月に現代峨山との間で結ばれ、最終的(第3段階)には複合工業団地として、重化学工業、製鉄、製鋼工場などを誘致する計画があった。

 しかし、李明博政権末期の暴言が重なり、4月に閉鎖されてしまった。

 世界遺産登録発表が、工業団地閉鎖直後で、残念である。

 世界遺産に登録される高麗王朝遺跡は、朝鮮半島全体のものであるとの認識に立てば、登録されれば南北双方で祝賀してほしい。

 そのことによって、工業団地再開の対話へとつながっていくだろう。

 それはまた、古都の存在価値が、統一を志向する朝鮮現代史に連結して、世界平和文化地域となるだろう。


                                       2013年5月14日 記
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「政治の右傾化と言語の貧困化」

「政治の右傾化と言語の貧困化」

                                               名田隆司


1.

*日本語の乱れや貧困化が言われて久しい。

 ことに政治言語における凋落化傾向は、日本政治や社会の右傾化と比例しているようで、寒々しい風景が展開している。

 特に朝鮮半島関係、北朝鮮の政治表現問題に例えば、北朝鮮が人工衛星を打ち上げ(12年12月)たことと、第3回核実験を実施(13年2月)したことに対して米国が国連安保理での制裁決議に動いていたときの一連の問題報道に関して。

 このことに対して北朝鮮は、米国は二重基準を使って、国連機関を利用していると批判した。

 同時に、3月1日から2ヶ月間展開する米韓合同軍事演習の中止も強く要求した。

 それでも米国が軍事演習を強行したため、朝鮮人民軍最高司令部スポークスマンが3月5日、今回の戦争演習が本格的段階に移る3月11日から、朝鮮戦争停戦協定の全ての効力を全面白紙化するとし、板門店の朝米軍部電話線も遮断すると発表した。

 さらに朝鮮外務省スポークスマンは3月9日、「・・・米国は主権国家の合法的な衛星打ち上げの権利を乱暴に侵害し、反共和国圧殺騒動をエスカレートさせて、われわれにやむを得ず自衛的な地下核実験を行わざるを得なくした張本人である。
・・・結局、この8年間、国連安保理が米国の唆しの下に反共和国『制裁決議』を5回もでっち上げたが、自分らが望んだものとはまったく相反してわれわれの核抑止力を質・量的に拡大、強化させる結果だけをもたらした。・・・」

また、朝鮮人民軍最高司令部スポークスマンも3月21日に、「・・・『キー・リゾルブ』『フォールイーグル』合同軍事演習は明日にわれわれの自主権と最高の利益を侵害するための最も暴悪な反共和国敵対行為の延長戦で行われている危険な核戦争騒動である。これはまた、朝鮮戦争停戦協定とすべての北南合意に対する露骨な破棄行為の集中的な発露でもある。・・・看過できないのは、米国がまさに核攻撃手段のうちの戦略爆撃機B52と原子力潜水艦を南朝鮮地域の上空と海上水域に搬入して、われわれを標的にした実働核攻撃訓練を公然と行い、それをわれわれに送る強い警告メッセージであると公然と宣伝する一方、今後、このような威嚇および恐喝行動を続けることを正式に言い散らしていることである。米国の警告メッセージと威嚇、恐喝に驚くわが軍隊と人民ではない。・・・」

以上の声明から、北朝鮮側の米国への主張ははっきりしている。

つまり、われわれは民族の自主的平和統一を追求してきたけれど、その最大の障害となっているのが、他ならぬ朝鮮戦争停戦協定の存在なのだ。

 そのため米国に対して、朝米平和協定の締結、若しくは朝鮮半島の平和保障体系を形成するための協議について、ずっと呼び掛けてきた。

しかし米国は、平和協定には応じてこなかった。それとは反対に、核恫喝政策を追求して、社会主義体制の崩壊を目論み、毎年、北侵計画の大小の米韓合同軍事演習を実施してきた。

わが国としては止むを得ず、核を保有することで国の自主権と生存権を守り、核抑止力によって米国の核戦争挑発策動を踏みつぶし、祖国統一の歴史的偉業を早めていくために、それを「宝剣」(核保有)とした、ということになるだろう。


2.

今年の「キー・リゾルブ」「フォールイーグル」合同軍事演習は、核搭載のステルスB2機(米国の最新秘密兵器)まで搬入しているため、危険ラインをはるかに越えていて、核恐喝の横暴な敵対行為の無謀な段階に入っていた。

従って、北朝鮮の情報戦・心理戦もまた、従来より一段階レベルを上げざるを得なくなってしまった。

「米帝によって核戦争の導火線に火が付いた」
「重大決心をした」
「正義の最終決断だ」
「無慈悲な核攻撃で、侵略戦争には正義の全面戦争で」
「(米韓の首都を)火の海にする」
「わが革命武力の最初の攻撃に、米本土とハワイ、グアム島をはじめとする太平洋作戦区内の米帝侵略軍基地は滅びるだろう」
「侵略者、挑発者は跡形もなく燃えて灰になるだろう」
「無慈悲な懲罰を」
「侵略者には退く時間はない」

――以上は、朝鮮人民軍最高司令部スポークスマンが、米国に向けた声明のなかの、部分表現である。

これに対する日米側の情報戦言語は、

「瀬戸際戦術」
「対話を求めている」
「意図的に危機を高めている」
「挑発行為だ」
「恫喝だ」
「威嚇外交だ」

などと、北朝鮮にレッテル貼りをしていた。

ケリー米国務長官と会談した安倍晋三首相も、「北朝鮮が挑発的な言動を繰り返し、緊張を高めていることは容認できない」(4月15日)と、米国と同トーンの、ピント外れな表現をしていた。

一連の北朝鮮の情報戦表現については、日米韓の政治家、ジャーナリスト、研究者たちは、挑発、威嚇、恫喝、緊張、暴挙、危機的などの悪意言語を使い、一様に米国主観で語っている。

そのため一般世論に対して、北朝鮮恐怖感を造成させる役目を果している。

こうした米国主観言語を多様にすればするほど、問題の本質から外れ、米国の政策を擁護し、米国の朝鮮半島戦略内に収まっていくしかない、という理解にも欠けている。

そのことが、朝鮮半島理解の妨げとなっているのだが。


3.

 朝鮮半島の平和安定、統一を語るときに、最大のネックとなっているのが、朝鮮戦争停戦協定の存在である。

 だから北朝鮮は停戦協定を破棄して、平和保障体系を形成しようと主張してきた。

 一方の米国は、停戦協定のままでの現状を固守しようとしている。

 その朝米のどちら側が、朝鮮半島の平和安定を真に求めているのかは、誰にでも理解できるだろう。

 真に平和を願っているものが、自ら危機の度合いを高めたりするものだろうか。

 しかも北朝鮮は、朝鮮半島の主人公であったから、どこまでいっても朝鮮半島の平和と安定、発展を追求すべき立場に立っている。

 その反面、朝鮮半島での危機や混乱によって、利益を受け取れるのは米国なのである。

 また、朝鮮戦争停戦協定の規定も無視できない。

 規定は、朝鮮における交戦状態の停止だけではなく、関係国(朝米)政府に対して、一段上の政治会談を開催して、すべての外国軍の撤退、朝鮮問題の平和的解決をすることを勧告していた。

 53年10月(板門店予備)、54年4月(ジュネーブ)の両会談とも、米韓側が国連の機能を中心に据えた統一案を主張して決裂し、今日まで政治会談は開かれていない。

 在韓米軍の駐屯も、米韓合同軍事演習も、停戦協定違反であったから、米国が違反行為を続けていることになり、暴挙を続けていたことになるのだ。

 にも関わらず、暴挙は北朝鮮の側だと言う。

 例えば、松山市議会3月19日の決議。

 「本市議会は、核実験を実施した北朝鮮の暴挙に対し断固として抗議する」と、臆面もなく言っている。

 43議員中、棄権をした3議員と議長以外、共産党議員団、社民党議員を含め全議員が賛成していた。

 「暴挙」には、無謀なくわだて、不法行為といった意味が含まれている。

 その意味通りであれば、昨年末に核実験をしたり、朝鮮戦争停戦協定の破棄に応じない米国にこそ、「暴挙」というレッテルを必要があったのではないだろうか。

 朝鮮半島情勢に関連する表現は、いつの頃からか、このような転移言語が使用されるようになった。

 共産主義は悪、自由主義は善。

北朝鮮は不法、米韓は正常。

 そうした前提で評価し、朝鮮を報道するようになった。

 さて3月と4月に洪水のように流されていた朝鮮半島情報で、北朝鮮に貼り付けてきた危機的行為、挑発的言動、威嚇外交、暴挙などの表現こそ、米国政治の専売特許であったのだ。

 米国のアジア太平洋地域戦略、毎年のように実施する米韓合同軍事演習や核先制攻撃訓練、在韓米軍(在日米軍)の存在自体が、朝鮮半島を不安定化しており、危機感を造成していることを、強調しておこう。

 日本人は余りにも、米国的感覚に染まり過ぎている。

 だから、日常的に米軍の脅威の下で生活している朝鮮半島の事実を、日本人の私たちは、どれだけ理解しているかは疑問だ。

 米国的言語を受け入れて、「北朝鮮脅威」「北朝鮮が危機を造成している」などと、安易に発言をする前に、朝鮮半島の現代史を理解する努力をすべきだ。

 松山市議会議員をはじめ日本人たちは、朝鮮半島および東アジア地域における原則的な脅威者は誰で、危機の造成者が誰であったのかを見誤るようなことがあってはならないと、忠告をしておく。

 歴史や地域政治に盲目であってはならないのだ。


                                       2013年5月13日 記

「日本の核政策は矛盾している」

「日本の核政策は矛盾している」

                                               名田隆司


 ジュネーブで4月22日から開催されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議第2回準備委員会で、南アフリカらが24日、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」を発表した。

 共同声明には70カ国以上が賛同したが、日本は直前までスイスや南アフリカから、共同声明への賛同を求められていたにも関わらず、賛同国には加わらなかった。

 共同声明は「いかなる状況下でも核が再び使用されないことが人類生存のためになる」としている。

 「いかなる状況下でも」核の使用は認めないとの表現は、人類生存のためにこそ、また核抑止力が常識となっている今日こそ、ごく当たり前のことを言っているにしかすぎない。

 非核化政策を追求する者ならば、疑問もないだろう。

 ところが日本は、スイスや南アフリカからの事前交渉で、「いかなる状況下でも」の文言を削ることを要求して、結局は、賛同国には加わらなかった。

 日本(外務省)は、その反対の理由について、

 1.米国が提供する「核の傘」への影響(日本の存亡に関わる事態でも、核の使用を認めないという立場をとれば―声明に名を連ねることになれば、核の傘を提供する米国を刺激するから、というもの)

 2.核の使用を云々している北朝鮮への抑止力低下につながりかねない

 などとの理屈にもならない理屈を並べて、反対のための反対を貫いてしまった。

 これは、日本自身にしか通用しない言語だ。

 その精神こそ、米国への卑屈なまでの配慮(顔色ばかりを伺っている)と、朝鮮への傲慢な抑圧姿勢に貫かれたものである。

 これでは、朝鮮が核実験を実施したことを批判したり、咎める資格など、日本にはない。

 同会議に出席していた広島・長崎両市長をはじめ、被爆者団体や核廃絶を求める非政府組織(NPO)のメンバーらが、24日の同日、国連欧州本部で、天野万利駐ジュネーブ軍縮会議政府代表部大使に抗議した。

 大使は日本政治の立場を説明して、弁明した。

 菅義偉官房長官は25日の記者会見で、共同声明に賛同しなかった理由を、「現在の日本が置かれている安全保障の状況を考えて判断した」と、ここでも米国への配慮の説明をしていた。

 こうした対米追従姿勢は、昨年秋の国連総会での「核兵器を非合法化する努力」を促す共同声明でも、強く賛同を求められながら、安全保障政策に合致しないとして拒否していた。

 日本はこのように、核不使用を決議する国際会議において、自国の安全保障政策と合致しないことを理由にことごとく賛同していない。

 一体、「いかなる状況下でも核を使用しない」「核を必要としない世界こそが人類の繁栄と安寧につながる」こと以上に、核の安全保障があるのだろうか。

 過去の日本の政権は、米国の核の傘を受けることが、唯一の安全保障政策だと妄信してきたけれど、それは核保有政策でしかない。

 核保有政策では、世界で唯一の「被爆国」だとする看板とは矛盾している。

                            
                                       2013年4月26日 記
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愛媛現代朝鮮問題研究所のブログです。

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