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米国の対共和国制裁延長決定について

米国の対共和国制裁延長決定について

                                 愛媛現代朝鮮問題研究所代表 名田隆司
 
 
 6月18日,米国のオバマ大統領は,北朝鮮に科している資産凍結などの制裁を1年間延長することを決定し,議会に通知した。同大統領は,延長の理由について「朝鮮半島には兵器転用可能な核物質が存在し,それが拡散する懸念が,米国の安全保障と外交政策,経済にとって重大な脅威であり続けている」と説明した。

 米国は,安全保障の観点からアジア太平洋地域を重視すると表明した以上,自国が同地域において軍事拡大を行う理由として,脅威となる「敵対者」の存在が必要になる。

 今回の制裁延長の決定は,その「敵対者」として共和国を利用し,米国が同地域における軍事拡大を正当化するための政策の一環である。
 
 また,今回の決定によって米国内ではさらに「北朝鮮脅威論」が加熱し,軍事予算を確保することができ,大統領選挙における産軍関係者の票を集めることにも繋がるだろう。

 オバマ大統領は,共和国政策について,大統領選挙が終了するまでは対話に動くことはなく,このように「脅威」であると煽り続けながら,様子を見ていくつもりだろう。

 しかし,現在の米国は,失業者の減少が止まらないなど,一番重要な国内経済の回復が実現していないことから,このままでは,オバマ大統領の再選の見通しは危い。

6月20日
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危険な「日韓軍事同盟」化の推進

危険な「日韓軍事同盟」化の推進


                                 愛媛現代朝鮮問題研究所代表 名田隆司

 
 この間、日本と韓国が「日韓軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)と「物品役務相互提供協定」 (ACSA)の、日韓軍事協定を締結しようとしていた。

 田中直紀防衛大臣の時の5月中に、日韓共同作戦遂行体制を念頭にした軍事協定を、日韓双方とも国会批准を必要とする「条約」ではなく、了解覚書 (MOU)で早々に締結しようとしていたようである。

 ところが、韓国側の野党と市民団体の強い反対運動に押されて、李政権はいったんは取下げたため、締結が延期状態となっている。

 日本では野党も含めて市民側からも反対の声が挙がらず、メディアの一部が締結の動きを短く伝えただけで、関心が薄かった。

 こうした日韓の差こそが問題ではなかろうか。

 この日韓軍事協定は、米国が以前から進めていたもので、米軍を頂点とした日米韓の三角軍事同盟化を完成させようとするものである。

 実は日本が未だに植民地思考・過去の朝鮮半島侵略に対する反省と清算をしていないために、日韓軍事協定締結と日米韓三角軍事同盟の完成は、日本の朝鮮半島への再侵略を準備していくものだとの朝鮮人たちの反対で、これまで具体化してこなかった。

 反北、好戦的な李明博政権が実現して、このテーマが一気に進んでしまったようだ。

 植民地史観を清算していない日本の自民党・民主党両政権下では、反対よりも積極的に推進したいと考えていたのだろう。

 だから今後、南朝鮮で出現する政権が現李政権と同じタイプであれば、日韓軍事同盟は推進されるだろう。そうなると軍事力をバックにした勢力が、「6・15宣言」を無視して、朝鮮半島を再び戦争へと導く危険性がある。

 「軍事情報包括保護協定」は、主に北朝鮮に関連した軍事情報を共有することを目的にしている。軍事技術、戦術データ、暗号情報、高度なシステム統合技術など、戦争発生時に共同軍事作戦を展開するためのすべての情報が含まれている。

 「物品役務相互提供協定」は、日韓両国が国連平和維持活動などにおいて、兵たん問題での協力に関して、軍需物資と装備などを人道的次元で協力するとしている。

 さらに、有事の際には食糧と水、燃料などを支援することにもなっている。

 つまり、自衛隊の活動を韓国が支援 (その反対も)することになっているので、憲法上の「自衛権」や「集団権」「多国籍軍協力」問題の意味を破壊していることになる。

 現実は、天安号沈没事件をテストとして、米国はさらに日米韓の軍事同盟化の深度を要求してきた。

 10年7月、東海で行われた米韓合同軍事演習に海上自衛官将校が参観、同10月には釜山近海で実施した大量破壊兵器拡散防止構想 (PSI)訓練に日本側は護衛艦とP3C哨戒機で参加し、同12月の日米合同軍事演習に韓国軍将校が参加するといった、日米韓軍事体制への布石は進行していた。

 2012年の米韓合同軍事演習に、海上自衛隊の艦船が堂々と参加している。

 10年10月に行われた日韓外相会議で、両国は「軍事情報包括保護協定」の推進に合意し、翌月からは締結に向けた協議に入っていたと思われる。

 同年12月、菅直人首相 (当時)は「朝鮮半島有事の際、韓国に居住する日本人を避難させるために、自衛隊を派遣する法案を検討中」と発言して、内外に物議を醸し出した。

 「朝鮮半島有事」とか「自衛隊の派遣」とかの発言は、一国の首相としては余りにも不見識には違いないが、「協定」締結への協議が進行していたことを暴露したことになる。

 現在、国際会議などでは朝鮮半島の平和統一、または非核化が議論されているのに、何故、それらと逆行するような戦争「枠組み」を必要とするのであろうか。

 日米安保も、米韓軍事協定も、共に米国主導で運行しているから、日韓軍事協定の締結が米国の許可なくして進行するはずがない。

 日米韓三角軍事同盟の構築は、米国のアジア・太平洋戦略上の要の位置を占めるのだろう。

 日米韓軍事同盟が対北朝鮮、対中国への軍事的圧力となるだけではなく、朝鮮半島内での軍事的対決と危機を必ず招いてしまう。

 これは平和に対する挑発であり、危険でもあり、時代に逆行もしている。

 進行している日韓軍事同盟は、即刻禁止しなければいけない。



2012年6月25日朝鮮戦争勃発 62周年の日に


-追記

 以上のように書いた直後の6月30日付けの新聞に、「日韓情報協定署名を延期」との報道があった。

 韓国内では、当初から野党や市民団体などからの強い批判の声があった。

 それで韓国政府は協定の名称から「軍事」を外し、「GSOMIA」だけでも先行して締結する方針をとってきた。

 政権側が変則的手法で手続きを強行し、26日の閣議で署名を決定し、29日に締結することで隠密裏に事を進めていたことが、裏目に出てしまったようだ。

 通常なら事前に行う次官会議を省略し、閣議後の記者会見でも触れないできたのに、一部のメディアが27日に報じたため、全てが明るみに出てしまった。

 このため、それまで秘密裏に事を運んでいたことを、与党内からも批判をうけて延期しざるを得なくなってしまった。ここにも李政権の陰りが見える。

 署名式を29日午後4時から日本の外務省で行う予定で、玄葉光一郎外相と申カクス駐日韓国大使が待機していたところへ、 1時間前になって韓国の都合で延期になったことが伝えられた。

 協定を反対した韓国世論と、延期を決定した韓国政権側は、「常識」を選んだといえようか。それに反して日本側は、延期を知らされ外務省は「署名は行うべきだ。延期は非常に残念だ」と言った。その言葉から、日本が積極的だったことが分かり、問題だ。

 日本の国会は原子力問題と、消費増税関連法案騒動で消耗していて、それ以外の政策を審議しているのかどうか疑問である。「GSOMIA」は討論したのか。

 今後とも、日韓両政権の「軍事協定」化への動きを警戒していくと共に、日米韓が創作する「北朝鮮脅威」キャンペーンをも警戒していく必要がある。

在朝日本人「遺骨」問題について

在朝日本人「遺骨」問題について

                                 愛媛現代朝鮮問題研究所代表 名田隆司


 民主党の中井洽衆院予算委員長代理の大学教授が、 5月17日から中国東北部を訪問し、共和国の宋日昊 (ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使と会談する方向で最終調整しているとの報道があった。(5月17日)

 会談内容は拉致問題ではなく、敗戦後に残留した日本人のものとみられる遺骨収集・返還に関する意見交換のようである。

 金日成主席生誕百周年慶祝行事で日本側代表団の一人として私が参加した時、4月16日に宋大使との昼食懇談会をもった。

 大使の話しでは、中井洽氏側からオファーがあり、昨年7月以降計4回会ったという。

 共和国側では、拉致問題の解決につながらない人物との会談など無意味だとの意見もあったが、最近の日本側の意向を聞くことも悪くないと考えて会ったという。

 中井氏側との会談テーマは拉致問題よりも、朝鮮に渡った日本人妻の一時帰国、よど号犯の帰国問題、残留日本人の遺骨調査問題などであったという。

 残留日本人のうち、技術関係者数百人が46年後半も残って、共和国で働き生活していた。北部朝鮮に残留していた日本人の大部分は、旧満州にいてシベリアに連行されていった人々のうち、高齢者や病弱者 (労働力にならない人々)が送り返された人々が多く含まれている。

 ソ連は、彼らを帰国させるつもりで、当時ソ連軍が駐屯していた北部朝鮮に送り込んだようである。

 病弱者が多くいた関係からか、体力がもたずに途中で亡くなった人々が3万5千から4万人いたとも伝えられている。

 共和国では、数年前から道路、住宅、公園など都市整備や開発工事をしていて、そこから残留日本人のものと思われる遺骨が大量に発見されたという。

 現在、平壌市郊外の三合里 (サムハリ)と竜山(リョンサン)、咸鏡南道 (ハムギョンナムドウ)の定平 (チョンピョン)、富坪 (プピョン)、咸興 (ハムフン)、興南 (フンナム)から、計約8千余体分が発見されている。 (遺骨の多くは、清津から平壌に至る間に埋葬されていたと思われる)

 宋大使は、遺骨の引取りと調査目的であれば、民間団体の訪問を認めると言った。

 中井議員との最後の会談時 (12年3月にはモンゴルの首都ウランバートルで、中井氏代役の大学教授に伝えたのだろう)に伝え、中井議員側から外務省等に調査団訪問実現に関する要請をしていたものと思われる。

 私は、4月の慶祝行事から帰国直後に、松山市に居住している「羅津会」役員に、訪朝ができる可能性があることを伝えた。

 彼は、すでに「清津会」の本部から墓参を兼ねた訪朝ができる可能性があると、3月下旬頃に連絡があったという。

 それで「清津会」と「羅津会」に関係している希望者で、5月20日から訪朝できるよう外務省に申請し交渉中だとも言った。

 新聞報道では、 3回目の核実験実施の懸念も消えないことから、 (訪朝を)見送ることを決定したとしている。

 まだ実験もしていない問題を先行判断材料にして、否定的結論を出す外務省側の態度は、何とも不可解としか言いようがない。

 「清津会」などが外務省を通じて訪朝要請をしていたのは、宋大使が指摘していた遺骨の調査が中心ではなかったのか。

 してみると、遺骨調査・収集のための民間関係団体に対してさえ、外務省はありもしない核実験問題を持ち出して、彼らの訪問を難しくしてしまったことになる。

 だから中井議員代理の大学教授が、宋大使との会談を5月に設定したと思われる。

 なお、新聞報道 (毎日新聞)で、「宋氏側には遺骨問題を進めることで日本から資金や食糧などの人道支援を引き出す狙いがあるとみられる」と、付け加えていた文章には大いに問題がある。

 このところのメディアは、対北朝鮮報道となると決まったように、「支援狙い」とか「脅かし」とかの記者個人の考えを挿入して、北朝鮮脅威論を煽っている。

 先の毎日新聞の記事も全く出来の悪い報道で、記者個人の感覚なのか、新聞社側の意見なのかはともかくとして、北朝鮮を貶めようとする「卑しい」理解からきている。

 ボキャブラリーの貧困以上に、政治感覚の乏しさをさらけ出していると言いたい。

 宋大使は私たちに、遺骨返還問題は人道的な問題であり、日本政府とは何等の交渉窓口も持っていないので、この問題に関しては関連する民間団体 (清津会など)の訪問と調査を、あえて認めることにしたのだと言っていた。

 共和国側の方が、日本人の人道問題を先行して解決していこうと、提案しているのである。なのにまだ発生もしていない問題を予測して、制裁を実行し民間団体の訪問を阻止した政府や外務省、さらに共和国が問題解決を提案すれば、それが「資金や食糧との引き換え」だと理解してしまう日本社会の、政治・社会的な貧困さを憂う。

 そうした貧困思考が、拉致問題を含む日朝間に横たわっている人道・人権問題の解決を遅らせてしまっているのだ。


注-在朝日本人の遺骨問題については、「週刊金曜日」6月15日号に伊藤孝司氏が『外務省の無策が日本を滅ぼす』として、詳しく報告している 。


2012年5月30日
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takasi1936

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