「日朝平壌宣言」の再考を
「日朝平壌宣言」の再考を
名田隆司
地方新聞社などが加盟している日本世論調査会が6月9. 10両日実施した「外交、危機管理」に関する全国面接世論調査の結果を16日に発表した。
全国250地点から20才以上の男女3千人(1億人余の有権者の縮図となるよう)を選び、 9、 10の両日、調査員がそれぞれ直接面接しての回答であった。 (回収率は59. 8%であった)
質問のなかに「日本と北朝鮮による政府間協議は2008年8月以来、途絶えています。あなたは日朝協議についてどのようにお考えですか」との、拉致問題に関するものがあった。
回答内容は、イ「拉致問題などの進展を前提に政府間協議を再開するのがよい」 71. 2% ロ「前提条件を付けずに再開するのがよい」 16. 1% ハ「再開しなくてよい」9. 7% 二「その他」0. 4% ホ「分からない無回答」2. 6% という結果であった。
「政府間協議を再開するのがよい」とする人々が、イとロを合わせて87. 3%もいたことになる。極めて常識的な世論の声であった。
しかも、この世論調査が 4月の「北の長距離弾道ミサイル」騒動報道の直後であったという意味は、政府などが推進している北朝鮮敵視政策を批判していることにもつながる。
これまで北朝鮮へのネガティブ・キャンペーンがテーマを変えて、繰り返し報道されてきたために、今では「北朝鮮との正常化を」「北朝鮮との交渉を」と言うことさえ、タブー視する雰囲気が日本社会全体を覆っている。
このため、正常な北朝鮮理解を妨げる一方、在日朝鮮人を抑圧し、朝鮮学校の生徒・学生たちにさえ、罵声を浴びせてしまう社会が常態化してしまっている。
こうした排外主義思考、反朝鮮思考が成立してしまったのは、北朝鮮と向き合う政府のスタンスにあった。
拉致問題に対する政府のスタンスは自民党・安倍晋三内閣以降、現野田佳彦内閣までほとんど変わっていない。 (むしろ、経済制裁などを強化してきている)
つまり、安倍政権成立の3日後 (06年9月)に首相を本部長、官房長官を副本部長、全閣僚を部員とする「拉致問題対策本部」を設置した時からのものであった。
対策本部第1回会合(10月16日)では、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化は有り得ない」ことを確認すると同時に、「政府一体となって、すべての拉致被害者の生還を実現」することを宣言した。
さらに、12月10日より15日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」として、政府キャンペーンをする一方、各都道府県学校に実施を要請してきた。
その政府広報広告中には「すべての拉致被害者が生きているとの前提に立ち、被害者全員の奪還に総力をあげて取り組んで」いくとし、「拉致問題はわが国の最重要課題」だと強調してきたことが今日まで続き、社会全体を自己規制させた。
そうした表現や態度からは、「日朝平壌宣言」(02年9月)の基本精神を無視したうえで、拉致問題を解決していくとする意欲と意思よりも、「嫌北朝鮮」「反北朝鮮」の政治キャンペーンに利用し、保守色の強い政権の人気維持に活用してきたように思う。
日朝平壌宣言には「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」を協議し、解決していくことを確認している。
「懸案問題」とは「拉致問題」のことであったのだから、平壌宣言を尊重し協議を進めていたら、解決への出口が見えていたのではなかろうか。
先の世論調査結果の「政府間協議再開」を支持する声が約90%近くもあったということが、何よりもそれを証明しているだろう。
今年は日朝平壌宣言10周年を迎える。
日本が宣言を無視してきたために、貴重な 10年を失ってしまったことになる。
「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」 (家族会)と「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」 (救う会)では、今年を「勝負の年」だと位置付けて、 1千万署名運動 (10月31日まで)を行っている。
政府に対して早期の救出要請を行うためだとしているのだが、その要請内容が、先の世論調査の意見と同じように早期の「政府間協議再開」のことなのか、それとも従来からの制裁強化なのか-署名趣意書からでは不明である。
私は、日朝平壌宣言10周年に当たる今年をこそ、宣言の精神を尊重して北朝鮮との協議再開とその必要性を、野田政権に強く要請するものである。
そのことが拉致問題の早期解決を含む、日朝間に横たわる「懸案問題」を解決していく早期で唯一の道だと考えるからである。
2012年6月17日
名田隆司
地方新聞社などが加盟している日本世論調査会が6月9. 10両日実施した「外交、危機管理」に関する全国面接世論調査の結果を16日に発表した。
全国250地点から20才以上の男女3千人(1億人余の有権者の縮図となるよう)を選び、 9、 10の両日、調査員がそれぞれ直接面接しての回答であった。 (回収率は59. 8%であった)
質問のなかに「日本と北朝鮮による政府間協議は2008年8月以来、途絶えています。あなたは日朝協議についてどのようにお考えですか」との、拉致問題に関するものがあった。
回答内容は、イ「拉致問題などの進展を前提に政府間協議を再開するのがよい」 71. 2% ロ「前提条件を付けずに再開するのがよい」 16. 1% ハ「再開しなくてよい」9. 7% 二「その他」0. 4% ホ「分からない無回答」2. 6% という結果であった。
「政府間協議を再開するのがよい」とする人々が、イとロを合わせて87. 3%もいたことになる。極めて常識的な世論の声であった。
しかも、この世論調査が 4月の「北の長距離弾道ミサイル」騒動報道の直後であったという意味は、政府などが推進している北朝鮮敵視政策を批判していることにもつながる。
これまで北朝鮮へのネガティブ・キャンペーンがテーマを変えて、繰り返し報道されてきたために、今では「北朝鮮との正常化を」「北朝鮮との交渉を」と言うことさえ、タブー視する雰囲気が日本社会全体を覆っている。
このため、正常な北朝鮮理解を妨げる一方、在日朝鮮人を抑圧し、朝鮮学校の生徒・学生たちにさえ、罵声を浴びせてしまう社会が常態化してしまっている。
こうした排外主義思考、反朝鮮思考が成立してしまったのは、北朝鮮と向き合う政府のスタンスにあった。
拉致問題に対する政府のスタンスは自民党・安倍晋三内閣以降、現野田佳彦内閣までほとんど変わっていない。 (むしろ、経済制裁などを強化してきている)
つまり、安倍政権成立の3日後 (06年9月)に首相を本部長、官房長官を副本部長、全閣僚を部員とする「拉致問題対策本部」を設置した時からのものであった。
対策本部第1回会合(10月16日)では、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化は有り得ない」ことを確認すると同時に、「政府一体となって、すべての拉致被害者の生還を実現」することを宣言した。
さらに、12月10日より15日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」として、政府キャンペーンをする一方、各都道府県学校に実施を要請してきた。
その政府広報広告中には「すべての拉致被害者が生きているとの前提に立ち、被害者全員の奪還に総力をあげて取り組んで」いくとし、「拉致問題はわが国の最重要課題」だと強調してきたことが今日まで続き、社会全体を自己規制させた。
そうした表現や態度からは、「日朝平壌宣言」(02年9月)の基本精神を無視したうえで、拉致問題を解決していくとする意欲と意思よりも、「嫌北朝鮮」「反北朝鮮」の政治キャンペーンに利用し、保守色の強い政権の人気維持に活用してきたように思う。
日朝平壌宣言には「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」を協議し、解決していくことを確認している。
「懸案問題」とは「拉致問題」のことであったのだから、平壌宣言を尊重し協議を進めていたら、解決への出口が見えていたのではなかろうか。
先の世論調査結果の「政府間協議再開」を支持する声が約90%近くもあったということが、何よりもそれを証明しているだろう。
今年は日朝平壌宣言10周年を迎える。
日本が宣言を無視してきたために、貴重な 10年を失ってしまったことになる。
「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」 (家族会)と「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」 (救う会)では、今年を「勝負の年」だと位置付けて、 1千万署名運動 (10月31日まで)を行っている。
政府に対して早期の救出要請を行うためだとしているのだが、その要請内容が、先の世論調査の意見と同じように早期の「政府間協議再開」のことなのか、それとも従来からの制裁強化なのか-署名趣意書からでは不明である。
私は、日朝平壌宣言10周年に当たる今年をこそ、宣言の精神を尊重して北朝鮮との協議再開とその必要性を、野田政権に強く要請するものである。
そのことが拉致問題の早期解決を含む、日朝間に横たわる「懸案問題」を解決していく早期で唯一の道だと考えるからである。
2012年6月17日
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